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三章 宿命と自由
後は頼んだど
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バタバタという足音が近づいたと思うや、静香の部屋に父と母が飛び込んできた。
「ばんつぁん!」
父が静香を呼ぶ。反応はない。するわけがない。紗英は嫌というほど確認したのだ。そうしているうち、祖父と祖母も集まった。
祖父が母に町医者への連絡を乞う。母は備え付けの電話へと走る。祖母は静香の懐を探り、小袋を引き出すと、丸薬だろうか。黒い小さな玉を静香の口に突っ込んだ。
父はそれを待っていたように、心臓マッサージをはじめ、祖父は父の心臓マッサージに合わせて、人工呼吸をはじめる。
「かか様、戻ってございん」
「ばんつぁん!」
「まだ逝くのは早えよおっ母さん」
まるで、夢を見ているのか、はたまたそれは、ドラマのワンシーンか、スローモーションで繰り広げられる救命処置を、紗英は放心状態で見つめていた。
***
「残念だけんども……もう」
息を切らせてやっとこ到着した町医者は、脈を診たり、目にライトを当てたり……お決まりの死亡確認をした後で、そう静かに告げた。
交互に心臓マッサージをしていた父と祖父は、力尽きて息をあげながら、その場に尻餅をついてしまった。母と祖母は、さめざめと泣いた。
死んだ。
死んだ。
死んでしまった。
壊れたレコードのように、紗英は何度も何度も、言い聞かせながら夜が更けていく。
(おばば……私に、なんて言ったっけ……ねえ)
静香のしゃがれた声を探しては、回らない頭でひたすらに考える。
(あとは……たのん)
確信部分に触れたくなくて、弾き出しそうになる「答え」を、激しく頭を振って、無理やりにやり過ごした。
「知らない……っ、私知らない」
静香の倒れた部屋を逃げるように後にすると、涙が湧いて出た。自覚する。
「オババ……っオババ、私……どうしたらいいのっ」
蚊の鳴くような声で紗英は、静香に助けを乞う。その声は、夜空に輝く星に吸い込まれる様に消えていった。今宵は毎晩のように聴こえていた静香の、祈祷の声はしない。
飛び出した外の草むらで鳴く虫の音が、紗英に寄り添うように、ただ優しく響いていた。
「ばんつぁん!」
父が静香を呼ぶ。反応はない。するわけがない。紗英は嫌というほど確認したのだ。そうしているうち、祖父と祖母も集まった。
祖父が母に町医者への連絡を乞う。母は備え付けの電話へと走る。祖母は静香の懐を探り、小袋を引き出すと、丸薬だろうか。黒い小さな玉を静香の口に突っ込んだ。
父はそれを待っていたように、心臓マッサージをはじめ、祖父は父の心臓マッサージに合わせて、人工呼吸をはじめる。
「かか様、戻ってございん」
「ばんつぁん!」
「まだ逝くのは早えよおっ母さん」
まるで、夢を見ているのか、はたまたそれは、ドラマのワンシーンか、スローモーションで繰り広げられる救命処置を、紗英は放心状態で見つめていた。
***
「残念だけんども……もう」
息を切らせてやっとこ到着した町医者は、脈を診たり、目にライトを当てたり……お決まりの死亡確認をした後で、そう静かに告げた。
交互に心臓マッサージをしていた父と祖父は、力尽きて息をあげながら、その場に尻餅をついてしまった。母と祖母は、さめざめと泣いた。
死んだ。
死んだ。
死んでしまった。
壊れたレコードのように、紗英は何度も何度も、言い聞かせながら夜が更けていく。
(おばば……私に、なんて言ったっけ……ねえ)
静香のしゃがれた声を探しては、回らない頭でひたすらに考える。
(あとは……たのん)
確信部分に触れたくなくて、弾き出しそうになる「答え」を、激しく頭を振って、無理やりにやり過ごした。
「知らない……っ、私知らない」
静香の倒れた部屋を逃げるように後にすると、涙が湧いて出た。自覚する。
「オババ……っオババ、私……どうしたらいいのっ」
蚊の鳴くような声で紗英は、静香に助けを乞う。その声は、夜空に輝く星に吸い込まれる様に消えていった。今宵は毎晩のように聴こえていた静香の、祈祷の声はしない。
飛び出した外の草むらで鳴く虫の音が、紗英に寄り添うように、ただ優しく響いていた。
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