―海神様伝説―

あおい たまき

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四章 衝動の行く末

隠された文机

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 *女子……おなご
 *おだづな……ふざけるな


「こんぐれえで通れっかい」
 幹太が紗英を呼ぶ。見れば、塞がれていた二階へ、通路が開かれていた。

「かんちゃんやっぱし、男の子だっちゃね、たくましいわ」
 紗英が笑いかけると、幹太の顔はわずかに赤くなった。紗英はここぞとばかり、勘助をからかう。

「照れてんの」
「おだづなでば。全くさっきまで、ピーピーって泣いてた奴とは思えねえっちゃ紗英」
 幹太は紗英の鼻面をピンと跳ねた。

「ひどい、女子の顔っこさ、傷ばついたら、何如すんのさ」
「したらば、オレが舐め回してやるわい」
「もうっ。そんなんばっかでねえか、エロ幹太」
 あきれ口調で紗英は言い、幹太は笑ったまま、木梯子の下まで歩み来た。暗い土蔵にかけられた木梯子は、思いの外、不気味に思えて、二人は顔を見合わせ、息を飲む。

「オレが先に行くかわ」
 幹太が意を決して、木梯子に手をかけるのを、紗英は静止して「私が行く」と、告げる。

 そしてゆっくりひとつ、ひとつ登っていく。ぎっぎっぎっ……紗英の足で踏むたび、古木のきしむ音が不穏に、耳に響く。

「もう、少し」
 最後の段を踏みしめて、紗英が二階へとたどり着くと、やがて、幹太もあがってきた。懐中電灯の光をたよりに、辺りをぐるりと見回す。


壁打ち付けられた棚が続いている。
下段にはつづらが、そして上段には、書簡や巻物などがところ狭しと並んでおり、よくよく見ると巻物と書簡が転げて隠れた、文机ふづくえがあった。

 紗英はまるで吸い寄せられるように、文机に近づくと、辺りの物を避ける。すると、机の中央に、文箱ふばこを見つけたのだった。


 カタリ……と、音がして、開かれた二段の文箱には、折りたたまれ擦りきれそうな、黄ばんだ紙が一枚と、古い紙を分厚く束ねた本のようなものが、一冊入っていた。
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