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十章 化身覚醒
狂気
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「か、んちゃんっ何してんの、何したの!」
「紗英が傷つけらんねえなら、オレがやるしかあんめえよ」
幹太の手のひらは、痛みに震えた。幹太は拳を握ったまま、川のようにしたたる血液を紗英の目の前に突き出す。
幹太の赤々とした血液の色が、紗英の網膜に焼き付いた。
「舐めて消毒してけろや」
幹太は、紗英におどけて見せた。辛そうに眉をしかめているのに、紗英の為に懸命に笑顔を作っている。
結局、清三と同じようなことを、幹太にさせてしまった。罪悪感が紗英の胸に渦巻く。紗英は幹太の姿を見てうつむきながら、静かに覚悟を決めた。
「……ほー…んと、かんちゃんは変態だっちゃね」
「うっせえど」
幹太は苦笑して、手を開く。
拳がにぎられていた時には、圧迫されていた傷口から、血液は溢れた。
紗英は膝をつき、幹太を見上げた。前に出された幹太の手を優しくとると血液は紗英の腕に伝う。ぞわぞわと言い様のない感覚が、紗英を襲った。
大らのために、ここまでする幹太が愛しい。紗英はそう思い込む。わずかでもいい。楽にしてやりたい。痛みを消してやりたい。この傷に意味を持たせたい。
感情を奮い立たせて、舌を出し、とうとう朱の血液を一滴、舐めとった。
舌に当たるとろりとした液体。あたたかく、わずかな酸っぱさを覚える。鼻から抜けていく。幹太の血液の匂い。紗英の体を満たしていく充足感。
「かんちゃん……おい、し」
もっと、もっと、もっと、もっと……これ以上進んでは元には戻れないかもしれない。ひしひしと感じる。「儀式」の危険性を。
しかし、やめられぬ。紗英の中に花火が散った。
頭が、痺れる。目眩を起こす。倒れる寸でだ。
それでも幹太の血を欲する細胞。生き返っていく。紗英の死んだ細胞が。嬉しい。幹太の血液が紗英の中でひとつになる。
キスだけでは物足りなかった。舌を入れても満足出来なかった。きっとセックスをしたところで、この渇きは潤わなかったはずだ。
これだ。これだったのだ。紗英と幹太が一つになる方法はこれだった。どうしてもっと早くにしなかったのだろう。紗英はこの上ない喜びに陶酔していく。
「紗英、いてえ、もちっと優しく」
手をぎりぎりと掴まれた幹太は、堪えられず声をあげた。
「ごめ……ん、むりよ、おいしいかんちゃん」
紗英は、鼻まで赤く染めて、あとからあとから湧いてくる血液をずるずると啜った。 幹太のこめかみに、汗が浮く。
もしか、やってはならない事をやってしまったか。今さら、そんなことを思うのだ。
「紗英」
呼び掛けに応じない。今一度呼んでみる。
「紗英っ」
それでも紗英の声は還らない。幹太がどうしたものかとあぐねていると、突然、指先を万力で擦り潰されるような痛みが走った。
「紗英が傷つけらんねえなら、オレがやるしかあんめえよ」
幹太の手のひらは、痛みに震えた。幹太は拳を握ったまま、川のようにしたたる血液を紗英の目の前に突き出す。
幹太の赤々とした血液の色が、紗英の網膜に焼き付いた。
「舐めて消毒してけろや」
幹太は、紗英におどけて見せた。辛そうに眉をしかめているのに、紗英の為に懸命に笑顔を作っている。
結局、清三と同じようなことを、幹太にさせてしまった。罪悪感が紗英の胸に渦巻く。紗英は幹太の姿を見てうつむきながら、静かに覚悟を決めた。
「……ほー…んと、かんちゃんは変態だっちゃね」
「うっせえど」
幹太は苦笑して、手を開く。
拳がにぎられていた時には、圧迫されていた傷口から、血液は溢れた。
紗英は膝をつき、幹太を見上げた。前に出された幹太の手を優しくとると血液は紗英の腕に伝う。ぞわぞわと言い様のない感覚が、紗英を襲った。
大らのために、ここまでする幹太が愛しい。紗英はそう思い込む。わずかでもいい。楽にしてやりたい。痛みを消してやりたい。この傷に意味を持たせたい。
感情を奮い立たせて、舌を出し、とうとう朱の血液を一滴、舐めとった。
舌に当たるとろりとした液体。あたたかく、わずかな酸っぱさを覚える。鼻から抜けていく。幹太の血液の匂い。紗英の体を満たしていく充足感。
「かんちゃん……おい、し」
もっと、もっと、もっと、もっと……これ以上進んでは元には戻れないかもしれない。ひしひしと感じる。「儀式」の危険性を。
しかし、やめられぬ。紗英の中に花火が散った。
頭が、痺れる。目眩を起こす。倒れる寸でだ。
それでも幹太の血を欲する細胞。生き返っていく。紗英の死んだ細胞が。嬉しい。幹太の血液が紗英の中でひとつになる。
キスだけでは物足りなかった。舌を入れても満足出来なかった。きっとセックスをしたところで、この渇きは潤わなかったはずだ。
これだ。これだったのだ。紗英と幹太が一つになる方法はこれだった。どうしてもっと早くにしなかったのだろう。紗英はこの上ない喜びに陶酔していく。
「紗英、いてえ、もちっと優しく」
手をぎりぎりと掴まれた幹太は、堪えられず声をあげた。
「ごめ……ん、むりよ、おいしいかんちゃん」
紗英は、鼻まで赤く染めて、あとからあとから湧いてくる血液をずるずると啜った。 幹太のこめかみに、汗が浮く。
もしか、やってはならない事をやってしまったか。今さら、そんなことを思うのだ。
「紗英」
呼び掛けに応じない。今一度呼んでみる。
「紗英っ」
それでも紗英の声は還らない。幹太がどうしたものかとあぐねていると、突然、指先を万力で擦り潰されるような痛みが走った。
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