神に愛された子

鈴木 カタル

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1巻

1-1

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 神の世界に、一つの〝純白じゅんぱく〟な魂が流れてきた。
 その魂の白さに、神は驚く。
 そっと手にして魂を見詰めると、生前の様子がうかがえた。
 この魂の持ち主は、日に何度も困っている人に手を差し伸べていたらしい。
 一つ一つは小さな事でも、ちりも積もれば何とやら……とは、よく言ったものである。
 この魂は地球で生まれ、その生を終えた。
 八十近くまで生きていたのだから、相当長い間善行ぜんこうをしていたのだろう。


 人は欲望のままに生き、その欲望でおのが身の内へけがれをめるものだ。
 穢れの無い魂を保つなど、余程の事が無い限り不可能なはずなのだが……


 なれどこの魂は〝純白〟である。
 神は魂を見て、ふと考えた。


 この魂ならば、やがて【神】になれるだろう。
 だが、どうしたものか……神はこの純白の魂の処遇に悩んだ。
 そして熟考の末に、ある世界へ送る事に決めた。
 神が創り出した世界は数多あまたあるが、その中に魔法を使える世界がある。
 地球には無かった力を、この魂はどう使うのか……それを見てみるのも良いだろう。 
 手の内にある魂にそっと口付けをし、両手を広げ送り出す。



 おぎゃあ、おぎゃあ……



 この日、アルペスピア王国に、一つの新しい命が生まれた。
 これこそ、神が送り出した純白の魂を宿している命だ。


 神には一人の女性が、いとおしそうに赤子を抱いている姿が見えた。
 さて、その純白の魂が本物なのかどうか……
 この世界でどう生きるのか、神は行く末を見守る事にした。 


         †


 太陽の光が差し込む部屋の中で、心地よい声が僕に降り注ぐ。

「今日も一緒に勉強をしようね、リーン」

 そう言ったのは僕の兄だ。彼が呼んだ「リーン」とは、僕の名前。彼が家族の中で一番多く、僕の名前を呼んでくれるのだが、毎日、何度も何度も呼びかけられたお陰で、自分がリーンという名前なのだと気が付けた。
 彼は目尻めじりを下げ、穏やかな声で話しかけてくれる。僕の兄は、声だけでなく、性格もとても優しいらしい。
 繰り返し呼ばれるまで自分がリーンだと気が付けなかったのは、僕に前世の記憶があったからだ。
 僕は、この世界に生まれてくる前の記憶を持っている。と言っても、断片的なもので、はっきりはしていないんだけど。しかも、今はリーンとして見聞きした事も記憶していっているせいか……今自分がどちらの世界に居るのか、分からなくなってしまう事があった。
 その度に僕は、言葉にならない音を発するものの、傍から見れば赤ん坊が「あーあー」と言っているだけなので、当然、家族には何も伝わらない。
 頭の中で「ここは何処どこ?」と話しているのに、出た言葉は「うー」だけだったりする。
 そうやって三年の日々を過ごし、家族の会話を耳にしている内に、この世界の言葉を自然と理解していった。
 今はもう、聞けば内容は理解出来る。だけど、まだ上手に話せない。頭では分かっていても、実際に話すとなると、別次元の難しさだ。この世界で日本語が使われていたら、楽に話せたのに。
 そんな僕に、兄は沢山たくさん話しかけてくれて、僕は色々な事を知れた。
 ここが異世界で、僕が転生者だって事も、最近理解出来た。
 そして今もまた、彼は僕に本の読み聞かせをしてくれるようだ。


         †


 広い机の上に書物を置き、僕はそれを広げて弟のリーンオルゴットに読み聞かせる。


 アルペスピア王国は〝賢王けんおう〟が居た国として有名であり、『魔法』発祥はっしょうの地としても知られている。
 広い領土に、森や山があり、海に面している所もある。
 魔法が発達したお陰で、他国と比べて豊かな国だ。
 各領地には教会が必ずあり、教会では「神は人のそばり」「日々の暮らしに、魔法に感謝を」といている。
 ここに表される神は神であり、名前はない。この世界をお創りになった御方おかたである。


「と、教会では、残された書物からそう説いている」
「くみ、しゃ、まぁ?」

 机の上の書物に向かって首を傾げ、独り言のようにつたなく呟く僕の弟。
 その可愛らしさに全身が震える……
 僕の弟は、白に近い銀色のくせ毛に、深い青色の瞳、それに加えてプルプルな白い頬を持つ。
 フニフニした小さな手足で、ひざの上に乗っている弟は、僕の言葉を繰り返した。
 言葉をまだちゃんとしゃべれず、その口調はたどたどしい。妹が同じ年頃だった時より、言葉の習得がゆっくりでちょっと心配だけど、こうやって一緒に居ると、そんな事はどうでも良くなる。
 見た目もさることながら、仕草しぐさがとても愛らしい。
 僕の弟として生まれてくれた事に、本当に感謝してもしきれない。
 この可愛い弟と過ごせる日々は、生涯しょうがいで一番の宝物になるだろうと思っている。
 将来も楽しみなこの可愛さに、これから何度悶絶もんぜつする事になるのだろうか。
 僕は、もう一度弟に言い聞かせる。

「ふふ。神様ね」
「くみしゃら……」
「か、み、さ、ま、だよ。リーン」
「か……んんん、みしゃま!」

 言いきった感を露わにして、微笑みを見せる弟。
 どうにも言い表せない可愛さに、僕は口元を押さえて身悶みもだえる。
 このリーンオルゴット……リーンが生まれてくる時は、本当に大変だったんだ。
 母様の体力もギリギリで、母子共に駄目かもしれない……と、薬師くすし達が言っていた。
 僕は自分の無力さがやるせなくなって……母様の傍に居た父様の、不安そうなお顔を見る度に涙が溢れてしまった。
 難産なんざんだったから、リーンが生まれた瞬間、僕は宝物を見付けたように「わぁ!」と声を出して喜んだ。
 母様の苦しみや、父様の不安そうなお顔も忘れてしまうくらいの感動だったんだ。
 そんな弟は、今三歳になった。
 僕は少しでも長くリーンと一緒に居たくて、勉強しながら膝の上で抱っこするのが最近の日課になっている。
 フワフワとした髪の毛に頬擦ほおずりしながら、そっと抱きかかえると、リーンは青い目を細めて「にぃたま」と言って微笑んでくれる。
 僕に弟という天使をくれた神様に感謝したい。
 頑張ったのは母様なので、僕にプレゼントしてくれた訳ではないと思うけれども……
 可愛いリーンを膝に乗せたまま、僕は別の書物を広げた。

「神様はね、世界が創られた頃には、そこに住んでいたようなんだよ」
「う……?」
「僕の好きな、この『世界創生と魔法について』にはこう書かれているんだ」


 世界が創られた頃、神は人の傍に居ました。神の少しの慈悲じひから人に自我が芽生めばえ、やがて欲望が生まれます。
 欲望まみれになる人々に神は心を痛め、人とは哀れなる生き物だと嘆きました。
 そして手を差し伸べる慈悲を無くし、神は人の傍から消えてしまったのです。


 一つの国の王が、人々の傍から神がいなくなっている事に気が付き、神から見放されたのだと理解しました。
 神がいなくても人が人として生きていける世にするべく、国王は自ら民の為に手を尽くしました。
 やがてその王は人々から〝賢王〟と呼ばれるようになったのです。


 神を失くした世界は酷く荒れていました。
 賢王は苦しみながらも知恵を生かし、人々の為にと懸命に政治を行います。
 賢王の尽力じんりょくで、少しずつ安定した生活を送れるようになった人々は、やがて賢王に感謝し始めました。
 人々の支持を得た賢王は、また神に会えるようにと、人々に〝祈り〟を広めます。


 賢王と人々の祈りに、神は少しだけ心をいやされました。そして、賢王の命と引き換えに、人々に魔法を授けたのです。


 魔法を使うようになり、人々の暮らしは以前よりも良くなりました。
 そして魔法と引き換えに生を終えた賢王の事を【魔法神まほうしん】とあがめ、魔法に祈りを込め、感謝して日々を過ごします。


「やがて……賢王の居た国、アルペスピア王国から世界中へ魔法が広がっていったのです。ってね? 今はもう居ないけれども、この世界には神や賢王が居たんだ。それが分かるのも、こうやって書物が残っているからだよねぇ」
「う!」

 リーンにはまだ理解出来ないだろうけど、僕はこの話が好きだ。好きな話をリーンにも知って欲しい。
 それが伝わったのかは分からないけれども、ニコニコと微笑むリーンは、僕が好きなこの書物を手で触って遊んでいた。


         †


「……レーモンド兄様ったら、私のリーンに」

 扉の隙間から覗きながら、私は歯をギリギリと噛み締めた。
 部屋の中でデレデレと緩んだ顔をさらす兄様へ、じっとりとした視線を送る。

「私のリーン……」

 ポソッと呟くと、部屋の中に居たリーンと視線が合った気がして、ハッとした。
 もう兄様の独り占めは我慢出来ない!
 ――バーン!
 大きな音を立てて扉を開け、スタスタと机の方へ歩いて行くと、私に気が付いた兄様がアワアワと慌て出す。顔をそむけ、視線を合わせようとしない。
 そんな時でも、私の弟リーンオルゴットは、フワッと微笑みながら私の事を見ている。
 その美しい瞳を向けられるだけで、心の中を見透みすかされているような気がするわ。

「ヴァイラ……」
「レーモンド兄様の時間は、終わりですわ」

 サッと弟を奪うと、兄様が「あぁ!」と小さく叫ぶ。
 情けない声に、私はクスリと笑った。
「お勉強、頑張ってくださいませ」と告げて、そのまま中庭までリーンを抱っこして歩いて行く。
 途中からは腕が疲れてしまったので弟を降ろし、手を繋いで二人で仲良くゆっくりと歩いた。

「リーン?」
「ふぁ~い?」

 名前を呼ぶと、歩く事に集中しているからか、いつもより少し気の抜けた声で返事をくれた。
 そんな返事でも、とても嬉しくなるの。
 私が十歳で、リーンは三歳。
 少し歳の離れた弟は、本当に可愛いものだわ。
「可愛い」の一言では言い表せないんですけどね!
 中庭に着くと、木陰にセットされたテーブル席に母様が座っていた。
 美味しそうに紅茶を飲んでいる。
 母様に気が付いたリーンは、両手を伸ばして駆けて行く。

「お、かあしゃま!」
「ああ、危ないわ」

 私の手を離し、頭の重さに引っ張られつつ、トトトッと走って行ったリーン。
 母様にぶつかると、膝の上にトンッと乗せられて、ボリュームたっぷりなお胸に、ぎゅっと抱き着いた。
 母様は「リーンったら~」なんて言いながら、愛おしそうに優しく頭をゆっくりと撫でている。
 フッと目を細めると、リーンの体から白い光が出ているのが見える。
 その白い光は、母様を包むように輝いているの。
 私の瞳には人の魔力を見る事が出来る、『魔力視』と言われる力が宿っている。
 ただ、力は弱い方なので、少し集中しないと見えないのだけれど。
 リーンは今、多分治癒ちゆ魔法を使って母様を癒しているんだわ。
 何故「多分」なのかと言うと、リーン本人に魔法を使っている自覚が無いからよ。
 無自覚で、無意識に母様を癒している。
 初めてそれを見たのは、リーンが生まれた時ね。
 ぐったりとしていた母様に、父様がリーンを抱かせた瞬間、リーンの体から出た白い光が、母様を包んだの。
 しばらくしたら、母様が元気になった!
 何故か分からないけど……私はリーンがしてくれたんだと感じたの。
 だから私は、リーンが使うそれを治癒魔法だと思う事にしたわ。
 私の弟は、将来が楽しみなくらい優秀な魔法使いさんみたい。
 母様に抱かれてウトウトとし始めたリーンを見ていたら、ふと母様と目が合った。
 それから、二人でクスクスと笑い合う。
 今は元気な母様だけれども、リーンが生まれてくるまでは、体が弱かったの。
 私は母様の体が心配で、教会でよく神様にお祈りしていた。
 だから、きっと神様が私の祈りに答える為に、リーンに『癒しの力』をくれたんだわ!
 本当にありがとう、リーン。
 私の天使な弟さん。
 幸せそうな顔をして寝ている弟と、柔らかく微笑み弟を抱っこする母様。それを見る、私。
 この時間が生涯で一番の宝物になる気がするわ。
 幼子の時間は、あっという間なんですもの。
 今の幸せな時間を、神に感謝します。


         †


 僕の名前は、リーンオルゴット・ルーナ・アルペスピア。
「リーン」だと思っていたけど、正しくは「リーンオルゴット」だ。
 さて、兄様や姉様のお陰で、家族の事が段々分かってきた。
 父様はアルペスピア王国国王の息子。つまり、国王様は僕のお爺様。
 そんな家系に生まれました。
 血筋の事は、最近までよく分からなかったんだけど、自分が「それなりのお金持ちの、お坊ちゃま」だって事には気付いていた。
 だって、広い家にメイドさんが沢山いるし、僕の事を「坊っちゃま」と呼ぶんだもの。
 嫌でも理解するよね~。
 家具も高そうな物ばかりだし、ベッドも天蓋てんがい付きで、お布団はフワフワ。床にもモコモコとした絨毯じゅうたんが敷かれてる。
 お爺様は国王様だからお城に居るんだけど、僕を含む父様の一家は城には住んでいない。
 父様が領主を務める土地に暮らしている。
 王族の中では、一番王城に近い領地なんだって。
 僕の父様は、アルフォンス・ルーナ・アルペスピア。
 後ろで一つにまとめた金髪に、グリーンの瞳。顔は俳優みたいに整っていて格好いい。
 母様は、レイルス・ルーナ・アルペスピア。
 とても美人で、僕も大好きだ。
 銀髪で黄色の瞳。体が弱いけど、子供を三人も産んでいる。
 産む度に弱っていく母様に、父様もハラハラしたらしい。
 兄様は、レーモンド・ルーナ・アルペスピア。
 父様と同じ、金髪でグリーンの瞳。頭も良くて、顔も父様に似て整ってる。 
 優しいのだけれど、僕の事を好き過ぎるのがたまきず
 僕と居ると、時々びっくりするくらい顔が崩れるの!
 でも、笑顔が綺麗きれいで優しいし、その声は心地よい高さで、聞いていると落ち着く。
 姉様は、ヴァイラ・ルーナ・アルペスピア。
 あわい栗色の髪の毛に、兄様よりも深い色のグリーンの瞳。
 たまにその瞳の色が、光の加減かげんか何かで、茶色く見える時がある。
 兄様に少し冷たいけど、僕には優しくて、とても愛に溢れた人だ。
 母様のお手伝いなどをよくしてて、母様もそれを喜んでいる。
 勉強は少し苦手みたいだ。
 でもきっとゆっくりと勉強してるだけで、やれば出来る姉様だと思うんだぁ。
 ちなみに、僕等一家のミドルネームである「ルーナ」というのは「住んでいる領地の名前」なんだ。
 国王様から領地を任された時に授かるから、親が領主だという事は、名前で分かる。
 さて、以前は混乱する事もあったけど、僕はようやくこの世界の事、僕の前世の事を区別して理解出来るようになってきた。
 前世では日本で結構長生きしたらしい。一日一善を心掛けていた。
 だから困っている人とかを見ると、どうしても助けたくなっちゃって、そのせいで「偽善者」と言われていたみたいだ。
 前世での僕は、大人になっても近所の子供達とゲームをしたり、漫画やアニメも教えて貰ったりしていたらしい。子供と遊んでいたくらいだから、ちょっと子供っぽい人だったんじゃないかと思う。
 僕が異世界であるここに転生した事をすんなり理解出来たのは、子供から借りた本の中に、異世界へ転生、転移する話があって、何となく覚えていたからだろう。
 今思い出せるのはこのくらいだ。前世の記憶は、以前よりははっきりしてきたので、時間が経てばもっと思い出せるのかもしれない。
 前世と今を落ち着いて区別出来るようになったのは、異世界に転生する本の記憶をしっかり思い出してから。
 そして記憶が戻った中で一番驚いたのは、死んだ後に『神様』に会っていた事。
 暖かい場所に向かったら、そこには神様が居た。
 神様は僕を包み込んで、「愛し子よ……いってらっしゃい」と言ってくれたんだ。
 まぁ、これを思い出したのも最近なんだけど。
 素敵な家族の元に転生したんだから、この先の人生を楽しまなければ、勿体もったい無いと思っている。
 神様に会ったといっても、「世界を救え」とか使命を負わされた訳じゃないし、特に何も無かったから、好きに生きても良いんだと勝手に解釈かいしゃくした。
 まずは……勉強かな?
 まだ上手く喋れないんだもんなぁ。
 聞けば理解は出来るんだけど、言葉に出来なくてモヤモヤするの。
 悲しいです……しくしく……


 父様の書庫しょこに入り、そっと書物を手に取る。
 前世の知識は多少あっても、ちゃんとこの世界の事を知らないと!
 喋れないけど、読み書きはもう出来る。だから今この手にある本、『賢王の偉業いぎょう』もタイトルから読めた。
 僕はパラパラと頁をめくり、文字を読んでいく。


 そこにはこの国の歴史と、賢王が行った偉業が書かれていた。
 最初は歴史からだ。
 太古、この世界の大陸は三つに分かれていて、人族の他にビースト族、エルフ族、ドワーフ族、魔族が大陸中に居た……って――

「まじょく⁉」

 驚いて声を出してしまったが、ちゃんとは言えなかった。
 魔族かぁ……魔族ってあの魔族なのかなぁ?
 頂点には魔王が居るとか? ……ファ、ファンタジーだなぁ!
 あはは。

「ふぅ~」

 心を落ち着かせて、続きに目を走らせる。
 先程の五つの種族に関する事が書かれていた。

「ふむふむ」

 理解出来たのは、次の内容だ。
 ビースト族とは、つまり獣人達の事。身体能力が高く、手先が器用な種族。魔力の強さは個体によって異なる。
 エルフ族は大体、地球のファンタジー作品の定番通りだった。
 長命で、精霊魔法(風と水)が得意。人見知りしがちで、魔力が強いらしい。
 ドワーフ族も定番の通りだった。
 長命で精霊魔法(火と土)が得意。鍛冶錬金術かじれんきんじゅつを使用する。
 魔力の強さは個体によって違うが、年を重ねた者程魔力は強い。
 そして最後に魔族だ。
 上級魔法と錬金術で薬を作る事を得意とし、魔力は強い。
 魔族の中でも種族が分かれていて、その種により短命長命の差がある。
 特に「危険だ」とも書かれていないし、魔族って意外と身近な存在なのかなぁ?
 薬を作るって事は、薬師さんに魔族が多いとか?
 勇者や魔王は、この世界には居ないのかな?
 さらに読み進めると、賢王が基盤を作ったと言われる、異世界ものでお馴染なじみの【ギルド】についての記述があった。その種類は商業ギルド、薬師ギルド、冒険者ギルドの三つだ。
 今もこのギルドはあるらしく、取り決めなどが細々と書かれていた。
 大きくなったら僕も、冒険者ギルドとかに行ってみたいなぁ~!
 転生して冒険者としてギルドに登録するっていう、テンプレな事ってしたくなるよね! なんだかワクワクするなぁ。

「リーン?」
「⁉」

 後ろから突然声をかけられて、体がビクンってなった。
 この声は……

「としゃま」

 その人は僕を抱っこすると、顔をじっと見詰めてからふんわりと微笑む。
 間違いない、僕の父様だ。
 父様は「ここに絵本はないぞ~?」なんて言いながら、僕が散らかした書物をササッと片付けてしまった。
 もう少し読みたかったのになぁ。
 そろそろ夕食の時間らしく、僕を呼びに部屋へ行ったが見当たらなくて、戻る途中でこの書庫の扉が開いているのを見付けて閉めに来たようだ。父様の独り言でそれが分かった。
 結局僕は、父様に回収されてしまった!
 後ろ髪を引かれる思いで、父様と一緒に部屋を後にする。
 またあの本を探すところからしないとだよ。
 トホホ……


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