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王宮
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「せっかく綺麗な髪なんですから、綺麗にしないと駄目ですよ?」
「……うぅんっ」
お風呂に入ってもらったシルクを連れ、自分の部屋にまで戻ってきた僕は彼女を椅子に座らせ、何の手入れもしていないという髪を乾かし、櫛を入れていた。
「そんなこと、しても私には意味ないよ」
「そんなことあるわけないじゃないですかっ」
シルクの髪は、名前の通りシルクのように美しく、滑らかだった。
手入れを怠るなんて信じられない!……まぁ、手入れしなくてもこれなのかもしれないが。実際、今の僕の髪とかもそうだし。
「……何で……私なんかに」
「ふんふんふーん」
顔を俯かせているシルクの髪を僕は上機嫌で乾かしていた中、僕の部屋のドアをノックする音が響いてくる。
「どうぞ~」
「失礼します。国王陛下」
部屋の扉を開け、入ってくるのは初老の男性だ。
彼は父上の代から仕えているベテランの文官で、宰相の任に任じられているセバス・ウィルスさんだ。
「っと……そちらの方は?」
「拾ってきた」
「……また、ですか」
「まだ食料は平気でしょう?」
「まぁ、確かにまだ大丈夫ですが……そうですね。その慈悲深き心も国王陛下の美徳ですから。私が何か言っていいはずもありませんでしたね。本日の決裁資料です。お願いいたします」
「あぁ、うん。ありがとう」
「では、失礼いたします」
「うん。いつもありがとう」
セバスさんから渡された決裁資料を魔法で浮かせる僕はシルクの髪を乾かしながら目を通していく。
「……本当に、王様なんだね」
「そうですよ?ちゃんと王様です」
「王宮に帰るところを見て、ちゃんと王様だってわかっていたけど……やっぱり、仕事をしているところを見ると余計に、実感も大きくなる」
「そうですか?ちゃんと仕事出来ているように見えているなら良かったですよ」
「敬語は要らないよ。私の方が、立場が下ですし」
「立場はどうこうってのは気にしなくていいよ。こんな小さな国でそんなの気にしていられないさ。だから、こうして僕が言葉遣いをフランクにしても、シルクのことを下に見ているから、なんて思わないでよ」
「わかっています」
「そっちも敬語じゃなくていいよ。今更だしね?」
「あの、……私の髪に時間を使わなくて。お仕事が」
「別に?こんな小国で必要な決裁なんて大した量ないからね。苦労することも特にないよ」
ちょっと前に最低限の諸改革を終えた後だ。
もう今は静かなもので本当に大した仕事がない。
「っとと。そんなこと話していたらもう髪も十分乾いたようだね」
「……ありがと」
「どういたしまして」
僕はシルクの髪から手を離し、そのまま少し離れてベッドへと腰掛ける。
「さて、と」
「……?」
「改めて、ちゃんとこれからについて話し合おうか」
「……ッ」
「まず、本当にうちの国に身を寄せるんで大丈夫?何か、行くところが本当はあったりしない?」
ここで断れたらどうしよう。
魔女をこの世界に解き放ってしまう……というか、あくまで魔女が善人であるという事実への根拠はゲームの設定でそうだった、ってことしかないんだよなぁ。
どうしよう。凶悪な人だったら。
「いえ……そういうのは、特に。だから、いさせてくれるなら……」
「そう?それならいいんだけど……」
よし、第一関門は一旦突破か。
「それじゃあ、何か得意なこととかってある?」
「……ま、ま……魔法、なら少し」
「おぉ!魔法!うちの国に魔法を使える人はいないので助かりますね。とはいえ、魔法を使えてもそれを役立てられるような場所を作ってあげるのが難しいんだけど」
「えっ……」
「そうだね……うん。魔法が使えるってことは当然文字の読み書きは出来るよね?」
「は、はいっ」
「よし。それなら文官として働いてもらえないかな?」
「……文官?」
「そう。文官。そんな難しくはないから……お願い出来る?」
「うん。お願い、なら」
「ほんと!ありがとう!」
よぉし!やっぱり魔女ってばいい人でしょ。
このままシルクにはうちの国の切り札としてぬくぬく過ごしてもらおう。
「あと、僕に魔法を教えてよ。最低限、自衛のための魔法は使えるようになりたいんだよ」
「わ、私で良かったらいくらでも」
「本当?ありがとう」
後、魔法の師匠も欲しかったんだよね。
恐らく世界で最も魔法に精通した人物だ。その人を師匠に持てるんだ。最高だよね。
「……うぅんっ」
お風呂に入ってもらったシルクを連れ、自分の部屋にまで戻ってきた僕は彼女を椅子に座らせ、何の手入れもしていないという髪を乾かし、櫛を入れていた。
「そんなこと、しても私には意味ないよ」
「そんなことあるわけないじゃないですかっ」
シルクの髪は、名前の通りシルクのように美しく、滑らかだった。
手入れを怠るなんて信じられない!……まぁ、手入れしなくてもこれなのかもしれないが。実際、今の僕の髪とかもそうだし。
「……何で……私なんかに」
「ふんふんふーん」
顔を俯かせているシルクの髪を僕は上機嫌で乾かしていた中、僕の部屋のドアをノックする音が響いてくる。
「どうぞ~」
「失礼します。国王陛下」
部屋の扉を開け、入ってくるのは初老の男性だ。
彼は父上の代から仕えているベテランの文官で、宰相の任に任じられているセバス・ウィルスさんだ。
「っと……そちらの方は?」
「拾ってきた」
「……また、ですか」
「まだ食料は平気でしょう?」
「まぁ、確かにまだ大丈夫ですが……そうですね。その慈悲深き心も国王陛下の美徳ですから。私が何か言っていいはずもありませんでしたね。本日の決裁資料です。お願いいたします」
「あぁ、うん。ありがとう」
「では、失礼いたします」
「うん。いつもありがとう」
セバスさんから渡された決裁資料を魔法で浮かせる僕はシルクの髪を乾かしながら目を通していく。
「……本当に、王様なんだね」
「そうですよ?ちゃんと王様です」
「王宮に帰るところを見て、ちゃんと王様だってわかっていたけど……やっぱり、仕事をしているところを見ると余計に、実感も大きくなる」
「そうですか?ちゃんと仕事出来ているように見えているなら良かったですよ」
「敬語は要らないよ。私の方が、立場が下ですし」
「立場はどうこうってのは気にしなくていいよ。こんな小さな国でそんなの気にしていられないさ。だから、こうして僕が言葉遣いをフランクにしても、シルクのことを下に見ているから、なんて思わないでよ」
「わかっています」
「そっちも敬語じゃなくていいよ。今更だしね?」
「あの、……私の髪に時間を使わなくて。お仕事が」
「別に?こんな小国で必要な決裁なんて大した量ないからね。苦労することも特にないよ」
ちょっと前に最低限の諸改革を終えた後だ。
もう今は静かなもので本当に大した仕事がない。
「っとと。そんなこと話していたらもう髪も十分乾いたようだね」
「……ありがと」
「どういたしまして」
僕はシルクの髪から手を離し、そのまま少し離れてベッドへと腰掛ける。
「さて、と」
「……?」
「改めて、ちゃんとこれからについて話し合おうか」
「……ッ」
「まず、本当にうちの国に身を寄せるんで大丈夫?何か、行くところが本当はあったりしない?」
ここで断れたらどうしよう。
魔女をこの世界に解き放ってしまう……というか、あくまで魔女が善人であるという事実への根拠はゲームの設定でそうだった、ってことしかないんだよなぁ。
どうしよう。凶悪な人だったら。
「いえ……そういうのは、特に。だから、いさせてくれるなら……」
「そう?それならいいんだけど……」
よし、第一関門は一旦突破か。
「それじゃあ、何か得意なこととかってある?」
「……ま、ま……魔法、なら少し」
「おぉ!魔法!うちの国に魔法を使える人はいないので助かりますね。とはいえ、魔法を使えてもそれを役立てられるような場所を作ってあげるのが難しいんだけど」
「えっ……」
「そうだね……うん。魔法が使えるってことは当然文字の読み書きは出来るよね?」
「は、はいっ」
「よし。それなら文官として働いてもらえないかな?」
「……文官?」
「そう。文官。そんな難しくはないから……お願い出来る?」
「うん。お願い、なら」
「ほんと!ありがとう!」
よぉし!やっぱり魔女ってばいい人でしょ。
このままシルクにはうちの国の切り札としてぬくぬく過ごしてもらおう。
「あと、僕に魔法を教えてよ。最低限、自衛のための魔法は使えるようになりたいんだよ」
「わ、私で良かったらいくらでも」
「本当?ありがとう」
後、魔法の師匠も欲しかったんだよね。
恐らく世界で最も魔法に精通した人物だ。その人を師匠に持てるんだ。最高だよね。
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