とある少女の日常

鳴鳳

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第五話 激情

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実行に移した事、その結果を使用人から報告を受け、令嬢は顔を青ざめさせた。
いくらなんでもやり過ぎだ。そんな事までしろだなんて言ってない。
多少は手荒な真似をして、いい感じで泣かせれば良かったのに。





雇ったゴロツキは4人。少女1人を拐うなんて訳ないぐらいに悪事に手を染めた屑たちだった。
倉庫区画に長年使用してない、侯爵家所有の倉庫がいくつかあり、その中でも1番目立たない倉庫に目をつけゴロツキ達に提供された。

指定された少女は中々1人になる事がなく、姉妹だろうが構わないじゃないのか?と言う仲間に、じゃあ、侯爵家に逆らうのか?と言われれば、口を噤むしかなかった。
それに、2人拐うより、1人だけの方が楽なのは確か。順番は減るし、壊れるのもその分早いが。少女1人を拐って監禁して、殺さなければ何してもいいという美味しい仕事でもある。
拐う前から下卑た笑いと、どうヤろうかと股間を膨らませ、いまかいまかと拐うタイミングを計っていた。

食堂の裏口から大通りはすぐだったが、暗がりで物が多い曲がり角を過ぎねば大通りに出られない。2人が裏口と大通り側を見張り、2人が実行犯として、日を過ごした。
焦れてきて、我慢の限界に差し掛かった時、少女が1人、籠を持って裏口から出てきた。
今しかない!と素早く猿轡と腹を殴り声を出せないように、痛みで動けなくしてから、見張りと共に裏路地へと消え、幌付きの馬車に乗り込み倉庫を目指した。

少女はずっと震えており、涙や嗚咽は止まらず、恐怖に染まった目でグリグリと落ち着かない様子だった。
まぁ、大抵の奴はこうなるよな。ションベンちびってないだけ…うわ!こいつ漏らしてやがる!と少女を遠慮なく蹴り殴る。
おいおい、殺すなよ?じゃれてるだけじゃねぇか!ぎゃははは!

倉庫に馬車ごと乗り入れ、管理小屋に少女を放り込む。管理小屋は外からのみ施錠されるようになっていて、内からは開ける事は出来ない。
保存食や酒類はすでに倉庫に運び込まれており、適当に飲み食いしたゴロツキ達はそろそろヤるか、と前もって順番決めしていた2人が管理小屋に入っていった。
残り2人はよろしくやってる声や物音で酒を飲んで過ごした。

それから、気の向くままに犯し殴り、吐いても食べさせ飲ませ、糞尿塗れになれば水をぶっかける。
少女が泣き叫んでいたのは最初の日ぐらいで、その後はブツブツと何かを言いながらされるがまま。時折殴られ、意識が浮上してもガチガチと歯を鳴らして震えるばかり。
殺さない程度にな?首を絞めるのがコツなんだよ。すげぇ!反応良くなったぞ!ゆるゆるなのは、それはそれでアリなんだがな。

ゴロツキ達は倉庫に籠り数日を過ごした。食事や酒は倉庫入口に目印を置いておけば、すぐに用意される。
その日、仕立てのいい服を着た男がゴロツキ達の前に姿を現し、嫌悪感丸出しの表情で口元をハンカチで抑えて、依頼した仕事はどうか、と聞いてきた。
見るかい?と管理小屋を指差し、丁度、ゴロツキの1人が下半身丸出しで小屋に入っていく所だった。
適当な所で解放するように、とだけ伝え足早に男は倉庫を出て行った。
ヤリたい放題とはいえ、少女1人だけでは飽きてきたゴロツキ達は、最後に全員でまわすか、と管理小屋から少女を引き摺りだし、酒を飲みながら少女に掛けながら、ぎゃははははは!と狂ったように少女を犯し続けた。





「以上です」

ゴロツキ達に話を聞きに行った使用人の1人である男は、侯爵令嬢に話して聞かせた。
詳細を聞いた訳では無いが、クズどもがやりそうな事は聞かなくても分かるし見たくもなかった。なので、想像の範囲で令嬢に報告する事にした。

顔を青ざめ、あまりの内容に頭が追いつかず困惑する令嬢。
知らずに乱れた呼吸を整え、強気に振る舞う。

「ふ、ふん。いい気味よ。所詮、庶民ね。ちょっといじめられただけでみっともない」
「そうでございますね」

お前が言うか、と心の中で悪態をつく使用人。

「あとは明日にでも解放され、親元に帰るでしょう」
「わかったわ。この事はくれぐれも…」
「はい。抜かりなく」

ただの子供の癇癪で起こした悪戯程度の話ではない。
1人の人間の尊厳や人格を踏み躙る行為だ。
だが、使用人にとって赤の他人の話。憤ったところで、自分には関係ないと思考から追い出した。
そんな事よりも、事態が発覚して当主、特に前当主の耳に入るのは確実に避けたい。
未だに独自の情報網と、優秀な部下がいる為、令嬢を守る事イコール自分達のクビを守る事に繋がる。
考えうる限りの、証拠や事実を隠蔽する事に頭を働かせねばならない。
まずは、下手人であるゴロツキ達を処分しなくては。侯爵家の暗部に声を掛けるのが1番だ。
令嬢への報告を済まし、使用人は暗部の元へと急いだ。





「ここね」

倉庫区画にある1つの倉庫の前に少女が降り立つ。
レーミアが失踪してから、アウラは所在を探していた。
なにぶん、不慣れな街で人も多く、かなり苦労したがようやく見つけた。時間が掛かりすぎたと後悔しても、レーミアはまだ生きている。最悪の事態だけは避けれたと、アウラは自分に納得させ、倉庫入口の鍵を破壊して中に入る。

酒、食べ物、糞尿、汗、体臭…様々な匂い臭い。
空気は淀み、街の下水の方がまだマシと思えるくらい、倉庫の中は酷い有様だった。

倉庫の中央。酒盛りをしていたと思われる場所に男達の姿が照明に照らし映されていた。
ぎゃはは!と聞くに耐えない声で、何かを甚振るように動く影だけが揺れている。

ふ、と男達の1人が顔を上げ、酒にフラつく頭を揺らしながら目を凝らす。
暗くてよく見えないが、誰かがいるのは分かった。

「誰かいるのか?おい、鍵閉めたよな?」
「あ?何言ってんだ?」

テーブル代わりの空き箱に置いていた照明を掲げ、照らした先に少女の姿が浮かび上がる。

腰まで伸びた、艶やかな黒髪に光が当たりキラキラと輝く。
足元まで覆うロングドレスの裾が翻る度に白く透き通るような肌がチラチラと。
目は紅く、まるで宝石のようで、こちらをじいっと見つめている。

「おい、女がいるぞ。娼婦でも呼んだのか?」
「ばっか言え。そんな足がつくような事するかよ」
「マジでいるぞ。すっげー美少女だ」

男達は少女の姿を認め、ズルリと崩れ落ちるモノには目もくれず、少女を凝視する。

アウラはゆっくり崩れ落ちるモノを目で追う。
髪はぐしゃぐしゃにほつれ、顔や全身に殴られた痣や血の跡が見え、目は何も見ておらず、ただ照明の光だけが反射している。

ぞわり

体の表面を何かで撫でられような感覚が男達を支配する。ぶるりと身を震わせ、何かよく分からないが、何か不可解な、何か見てはいけないようなものが。

「私の大事なモノに手を出したのは、だぁれ?」

鈴が鳴るような声が柔らかな唇から漏れ、一瞬でうっとりした顔になる男達。
だが、働くはずの理性は酒と淫行で鈍り、ただ獣欲だけが働き、男達はアウラに襲いかかる。

「そう」

アウラは一言だけ発し、腕を無造作に振るう。
男達が見たのは、くるくると回る倉庫内の風景と、倒れる自分たちの身体だった。

「簡単に殺してはつまらないわ。そのまましばらく生きてなさい」

切られた、おれの身体、痛くない、血が出てない、声が出ない、目は動く、聞こえる、動かない、なんだなんだなんだなんなんだ、え?、だれか

アウラはレーミアの元へ急ぎ、ドレスが汚物まみれになろうが構わず、レーミアの身体を抱き締める。

「ごめんなさい。私がもっと早く見つけていれば。ごめんなさい。あなたを1人にするべきでは無かった。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

アウラは涙を流し、レーミアに謝り続ける。
レーミアは全く反応せず、掠れた呼吸のみを繰り返す。

「レーミア、少し目を閉じててね」

言うが、レーミアは答えず、アウラは自分の胸にレーミアの視界を隠し、指先をヒラヒラと動かす。
倉庫の床が最初から水だったように、男達がトプンと沈んだ。
レーミアの頭に手を乗せ、アウラが呟くと、レーミアはゆっくり目を閉じ、寝息を立て始めた。

「ごめんなさい、レーミア。すぐに治してあげたいけど、私の我儘に付き合ってね」

管理小屋にレーミアを運び、毛布で大事に大事に包んで隠し、汚れたドレスを手で払えば一瞬で元に戻る。

アウラは腹の中を駆け回る激情を抑え込む。
一先ずはレーミアの事を知らせなければ。それからだ。全てはそれからだ。

よくも私の大事なモノを穢してくれたな。
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