彼と私のお友達計画

百川凛

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STEP2:部活を見に行きましょう

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 その日の夜。やけに鳴り続けるスマホを手に取ると、画面に映っていたのは〝着信 鳴海優人〟という驚きのパワーワードだった。

 はっ、えっ!? で、電話!? 鳴海くんから!? ななななんで!? も、もしかして勝手に部活見に行ったこと怒ってる!? 私はパニックを起こしながらも画面をスライドさせ、とりあえず電話に出る。

「も、もしもし?」
『……こんばんは。鳴海だけど』

 スマホの向こうからは、ちょっとくぐもった低い声が聞こえてきた。

「あ、えと、うん……こ、こんばんは」
『……突然電話してごめん。今時間大丈夫?』
「時間は、大丈夫です、けど」

 そう答えると、鳴海くんは一拍間を置いて話し出した。

『あのさ。今日、部活見に来てたよな?』

 私の肩は大袈裟にビクついた。や、やっぱり部活見学のこと怒ってるんだ!

「ごごごごめんなさい! 皐月ちゃんに誘われて見に行きました!」
『……やっぱマネージャーの入れ知恵か』
「ご、ごめんなさい! もう勝手に見に行かないから!」
『別に怒ってねーし。むしろ見に来てくれたのは嬉しかったよ』
「え?」

 そう言った鳴海くんは『ただ……』と拗ねたような声色で続けた。

『来るなら来るって事前に言っといてほしかった。……そしたらあんなカッコワリィとこ見せなかったのに』
「カッコ悪いところ?」
『……俺、ボール落としたりシュート外したりしただろ。言っとくけど、普段はあんなミスしねーからな』

 さっきまでの練習風景を思い出した私の口からはするりと素直な言葉が出ていた。

「え? 十分カッコ良かったと思うけど?」
『っ、』
「別にシュート外してもカッコ悪いとは思わなかったよ。練習中はすごく真剣だったし後輩にもアドバイスしてたし。そういう鳴海くん初めて見たからなんか新鮮だった」

 鳴海くんは息を呑んだまま何も言わない。

『……』
「な、鳴海くん?」
『……いや、なんでもない。そ、それより! なんで途中で帰ったんだよ』
「それは……」

 まさかそこを突っ込まれるとは思わず私は俯く。

「……他の人に色々聞かれたの。だから、あのまま居たら鳴海くん達の迷惑になると思って」
『迷惑なんて思わない。……帰り、送っていこうと思ってたのに気付いたらいなくなってて焦った』
「えっ?」
『次から見に来る時は俺に言って。それから、明後日の部活、ミーティングだけだから送ってく』
「は?」
『用件はそれだけ。今日はありがとな。じゃあ』
「えっ、ちょ!」

 待ったをかけるも、スマホからはもう何の音も聞こえてこなかった。ええと……送るってことは、もしかして一緒に帰るってこと!? ど、どうしよう。とりあえず皐月ちゃんに相談しなきゃ。
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