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31.総家令の収集癖
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鵟はキッチンを手伝いながら、孔雀と食器や食具の数をチェックしていた。
少しづつ、出来る事が増えているのが嬉しかった。
仕事と言うより、まだまだ手伝い程度だけれど。
白鴎は厨房を預かっている料理長であるが、料理に合わせてテーブルクロスや飾り花や食器類を選んでいるのは孔雀らしい。
「新郎新婦のご希望で、食器は素朴で可愛らしいもの。カンペール焼きがいいと思うの」
言いながら、食器をどんどん出してくる。
果物や花が描かれた、可愛らしいデザイン。
「・・・これかよ・・・」
白鴎が唸った。
「孔雀、可愛いのはいいけど、これで料理が映えるか?」
「その分、お料理をもっと、素朴な田舎風にして欲しいの。最初のお料理、ステキだけどあれじゃ派手すぎよ。設宴じゃなくって、ちょっと豪華なカントリーホームパーティー風というのがご要望なんだから」
「皿は白が一番なんだけどなあ・・・」
白鴎は試食結果のレポートを確認しながらぶつぶつ言っている。
「それであれだろ?天河様の希望は、寿司と蕎麦。・・・毎回思うんだけどさ、最初からこの調子でずっとフレンチ食ってきて、なんでいきなり寿司と蕎麦なんだよ。バレエ見に来てんのにいきなり関取出てくるようなもんだろうが」
披露宴の料理なんてそんなものだろうが、白鴎のプライドが許さないらしい。
「孔雀お姉様、これもきれい」
鵟は棚から可愛らしい花束の描かれた皿を取り出した。
「それもすてきよね!それはリモージュ。そっちは伊万里、セラドン。・・・塗り物もあるのよ!これは琉球、これが津軽でこっちが会津・・・」
またまた山のように出て来る。
驚いて見ていると、白鴎《はくおう》が笑った。
「孔雀は収集癖があるんだよ。更に模様替え好きでリフォーム好き。その度に皿だの家具だの買うタイプ。いくつリフォームしたっけ?そもそも総家令が新しくなると、宮廷の内装だのは全部新調する決まりではあるんだけど。宮城が丸ごと、離宮が三つだろ、鳥達の庭園・・・。その度に、食器だのカーテンだの集めるからな。冗談抜きで船が沈む程の収集癖だ。そのおかげで、現在この仕事に繋がってるわけだけど」
総家令を返上する際には、通例の様に翡翠が孔雀個人に離宮をいくつか下賜しようとしたが、孔雀は離宮なんて持って行けないからいらない、でも食器は持って行く!と頑張ったらしい。
あれ程、離宮の改築に夢中だった総家令がそれよりもと所望する食器類とは如何なる品物、と誰もが期待したが、実のところは歴史的に重要な器などではなく、現在設宴で実用している食器と聞き、次期政権の監査委員会に中古の皿なんかいらないと言われて、孔雀が大喜びで私費で買い取った。
リフォーム好きの収集癖有りとは。
「・・・私、学校の修学旅行で故宮に行きました。とてもすてきでした。そっか、あれ孔雀お姉様のお好みなんですね」
宮殿というから、もっと豪華絢爛だと思っていたのだ。
あちこちにある威風堂々たる彫刻より、柔らかなペールグリーンや、グリーンブルーの壁紙やカーテンが印象的だった。
最後の皇帝は男性なのに、なんだか柔らかくて優しいお城だと思ったのだ。
年頃の女の子に褒められて孔雀は嬉しそうに微笑んだ。
「まあ、孔雀は趣味がいいからな。小さな孔雀風と言われて宮廷でも人気だったんだよ」
「でも、そういうのって。・・・ほら、浪費家とか言われて叩かれないんですか?昔はどこかの国の王妃様とか、贅沢しすぎて殺されたりしたんでしょう?」
「それがさ。そもそも家令というのは私服を肥やす。白鷹姉上なんて、琥珀様から土地つき物件をいくつも下賜されたし。梟兄上なんかプラチナや美術品で儲けてた。今までも総家令だって、だいぶいろんなものを皇帝から毟り取ってる。で、孔雀は、と言えば。牧場だの、図書館だの、研究水族館だの牧場を欲しがるから、まさか個人の所有物にはできないから結局、公に還元されちまうわけで利益として戻ってくる。収支決算書出されると、議会でも何も言えないわけだ」
「それにね、リフォームだってね、実家で建材もやってるから、見積安くしてるし。白鴎お兄様のおうちの銀行で、公共リフォーム用商品作って貰って利率低くして貰って借り入れて堅実に返すっていうのでね。だから、国のお財布に負担はかけていないのよ」
「そうなんだよなあ。独占禁止法だろうって、言う向きもあったけど、じゃあ入札にしますかって言っても、孔雀んちで安く出すしなあ・・・。軍のレーションもだいぶ安くしてただろ。どうなってんだあれ」
「うち中抜きが少ないのよ。配送も自社だし、お弁当にしても、お弁当箱自体も作ってるから」
「中間業者に儲けさせなきゃ、経済回らんわ」
「白鴎お兄様んとこのシブ銀、その中間業者や下請けに貸付貸し剥がししてるじゃない」
さすがギルド系らしく、二人で商売の話を初めてしまう。
鵟は果物が描かれたティーカップとティーポットを眺めていた。
まるでままごとの食器のように可愛らしい。
そうかこの食器は、本当にあの宮城で使われていたのか。
まさか、こうして今、自分が見ているなんて。
なんとも不思議な気分だった。
少しづつ、出来る事が増えているのが嬉しかった。
仕事と言うより、まだまだ手伝い程度だけれど。
白鴎は厨房を預かっている料理長であるが、料理に合わせてテーブルクロスや飾り花や食器類を選んでいるのは孔雀らしい。
「新郎新婦のご希望で、食器は素朴で可愛らしいもの。カンペール焼きがいいと思うの」
言いながら、食器をどんどん出してくる。
果物や花が描かれた、可愛らしいデザイン。
「・・・これかよ・・・」
白鴎が唸った。
「孔雀、可愛いのはいいけど、これで料理が映えるか?」
「その分、お料理をもっと、素朴な田舎風にして欲しいの。最初のお料理、ステキだけどあれじゃ派手すぎよ。設宴じゃなくって、ちょっと豪華なカントリーホームパーティー風というのがご要望なんだから」
「皿は白が一番なんだけどなあ・・・」
白鴎は試食結果のレポートを確認しながらぶつぶつ言っている。
「それであれだろ?天河様の希望は、寿司と蕎麦。・・・毎回思うんだけどさ、最初からこの調子でずっとフレンチ食ってきて、なんでいきなり寿司と蕎麦なんだよ。バレエ見に来てんのにいきなり関取出てくるようなもんだろうが」
披露宴の料理なんてそんなものだろうが、白鴎のプライドが許さないらしい。
「孔雀お姉様、これもきれい」
鵟は棚から可愛らしい花束の描かれた皿を取り出した。
「それもすてきよね!それはリモージュ。そっちは伊万里、セラドン。・・・塗り物もあるのよ!これは琉球、これが津軽でこっちが会津・・・」
またまた山のように出て来る。
驚いて見ていると、白鴎《はくおう》が笑った。
「孔雀は収集癖があるんだよ。更に模様替え好きでリフォーム好き。その度に皿だの家具だの買うタイプ。いくつリフォームしたっけ?そもそも総家令が新しくなると、宮廷の内装だのは全部新調する決まりではあるんだけど。宮城が丸ごと、離宮が三つだろ、鳥達の庭園・・・。その度に、食器だのカーテンだの集めるからな。冗談抜きで船が沈む程の収集癖だ。そのおかげで、現在この仕事に繋がってるわけだけど」
総家令を返上する際には、通例の様に翡翠が孔雀個人に離宮をいくつか下賜しようとしたが、孔雀は離宮なんて持って行けないからいらない、でも食器は持って行く!と頑張ったらしい。
あれ程、離宮の改築に夢中だった総家令がそれよりもと所望する食器類とは如何なる品物、と誰もが期待したが、実のところは歴史的に重要な器などではなく、現在設宴で実用している食器と聞き、次期政権の監査委員会に中古の皿なんかいらないと言われて、孔雀が大喜びで私費で買い取った。
リフォーム好きの収集癖有りとは。
「・・・私、学校の修学旅行で故宮に行きました。とてもすてきでした。そっか、あれ孔雀お姉様のお好みなんですね」
宮殿というから、もっと豪華絢爛だと思っていたのだ。
あちこちにある威風堂々たる彫刻より、柔らかなペールグリーンや、グリーンブルーの壁紙やカーテンが印象的だった。
最後の皇帝は男性なのに、なんだか柔らかくて優しいお城だと思ったのだ。
年頃の女の子に褒められて孔雀は嬉しそうに微笑んだ。
「まあ、孔雀は趣味がいいからな。小さな孔雀風と言われて宮廷でも人気だったんだよ」
「でも、そういうのって。・・・ほら、浪費家とか言われて叩かれないんですか?昔はどこかの国の王妃様とか、贅沢しすぎて殺されたりしたんでしょう?」
「それがさ。そもそも家令というのは私服を肥やす。白鷹姉上なんて、琥珀様から土地つき物件をいくつも下賜されたし。梟兄上なんかプラチナや美術品で儲けてた。今までも総家令だって、だいぶいろんなものを皇帝から毟り取ってる。で、孔雀は、と言えば。牧場だの、図書館だの、研究水族館だの牧場を欲しがるから、まさか個人の所有物にはできないから結局、公に還元されちまうわけで利益として戻ってくる。収支決算書出されると、議会でも何も言えないわけだ」
「それにね、リフォームだってね、実家で建材もやってるから、見積安くしてるし。白鴎お兄様のおうちの銀行で、公共リフォーム用商品作って貰って利率低くして貰って借り入れて堅実に返すっていうのでね。だから、国のお財布に負担はかけていないのよ」
「そうなんだよなあ。独占禁止法だろうって、言う向きもあったけど、じゃあ入札にしますかって言っても、孔雀んちで安く出すしなあ・・・。軍のレーションもだいぶ安くしてただろ。どうなってんだあれ」
「うち中抜きが少ないのよ。配送も自社だし、お弁当にしても、お弁当箱自体も作ってるから」
「中間業者に儲けさせなきゃ、経済回らんわ」
「白鴎お兄様んとこのシブ銀、その中間業者や下請けに貸付貸し剥がししてるじゃない」
さすがギルド系らしく、二人で商売の話を初めてしまう。
鵟は果物が描かれたティーカップとティーポットを眺めていた。
まるでままごとの食器のように可愛らしい。
そうかこの食器は、本当にあの宮城で使われていたのか。
まさか、こうして今、自分が見ているなんて。
なんとも不思議な気分だった。
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