57 / 211
2.
57.鳥達の娯楽
しおりを挟む
「・・・梟お兄様はね、孔雀を天河様にやるつもりでいたのよ」
「えぇー?いやいや、同じギルド出がいいにしたって、もっとマシな女、世の中いくらでもいるだろうよ」
「私もそうだと思うんだけどさ。天河様も珍獣見て何だかびっくりして気に行っちゃったんじゃない?それを聞いた木蓮様が、世の中いろんな子がいるから、いい勉強になるから遊び相手にお城に呼びましょうかなんて言って、川蝉に話したのよ。でも、どうも体も弱いし、就学前だと聞いて、川蝉が、それで宮廷に呼ぶのはまだちょっと気の毒だからもう少し待とうという事になってねえ」
懐かしい思い出。
何度目かの嵐を越えて、まだ宮廷が春の陽のように穏やかで、そのまますくすくと全てが明るい方へ伸びていくのだと思っていた頃。
「梟お兄様も、天河様に将来的に側に上げてもよろしいと言ったのよね。天河様も少年ながら結構乗り気なわけじゃない。ところがしばらくしたら、家令に召し上げられたと来たもんだ」
猩々朱鷺がため息をついた。
「梟お兄様には、天河様が傷つかないように申し上げてよと言ったのに。あの人にそんなことできるわけもないじゃない?」
かくして、梟は「あの子猿は、殿下の花より、陛下の鳥がいいそうですので、そのようになりました」と天河にバッサリ告げたのだ。
本当に孔雀がそんな事言ったのかどうかはわからないが、当時の梟や白鷹に意見など不可能。
「それで、天河様に連れて行けとと言われて、ガーデンに行ったわけ」
今度は雉鳩はため息をついた。
「・・・姉上。そりゃひどい。じゃあ、結果的に翡翠様は息子から女をかっさらった事になる」
「そうなのよねぇ。食い物と女と男の恨みは拗れるのよ・・・。天河様ってほら、見た目より繊細なとこあるじゃない・・・?翡翠様が見た目よりだいぶ雑なのと逆で・・・」
継室は銀の衣装で後宮に上がるのが習わしだ。
それが漆黒のカラスのような真っ黒けな家令服で現れ、しかも総家令、となっては・・・。
「総家令なんて、言っちゃえば、都合の良い使い勝手の良い愛人だもんねえ。まあそうじゃないのもいるけどさあ」
この姉弟子もあけすけというか・・・。
「そりゃあ、拗らせるはずだ」
道理で、と雉鳩は合点が行った。
あの第二太子が必要以上に孔雀に接触しないばかりか、いっそ冷たいのにはこういったわけがあったのか。
「猩々朱鷺姉上。じゃ、孔雀は見当違いの勘違いしてるんじゃないかな」
大嘴が首を傾げた。
「あいつ、前に小児科の先生のとこに相談に行ったよな?ニコニコちびっこクリニックとかいうさ。天河様は心に傷を受けたからこのままだと非行に走るとか何とかうわ言言ってさ。その院長が書いた本に同じ事書いてあったとかで・・・」
面白がった兄弟子と姉弟子に、野苺と小鳥の柄のワンピースを着せられ、髪型も若奥様風にされて、素性を伏せて相談に行ったのだ。
アカデミーの医局でも名高く典医でもある黄鶲が相談内容を書いた紹介状を孔雀に持たせた。
そこには、この者はどこぞの貴族の後妻だと書いてあったらしい。
それを見た医師は当然、「あなたね。実母が亡くなって日が浅いのに、父親の若い愛人が後妻で家庭に入って来たら、そりゃあ非行にも走りたくなるでしょう」と諭すに至った。
黄鶲がどんなざっくりとした説明を書いたものだかしれないが、そういう事になったらしい。
「・・・先生、私、どうしたらいいんでしょう・・・」と嘆く孔雀に、その医師は「あなたにも事情があるのでしょうが・・・。まずは、安心できる居場所、環境を整える事。それから無理に追い詰めない事、本人の意思、意向に沿うように」と指示した。
孔雀は持参した著作にサインまでして貰って帰って来て「素晴らしい先生でした」と黄鶲に礼を言っていた。
「・・・ということは、孔雀は、自分のせいでグレた継子をなんとか更生させようとしてる心理なわけだよ」
大嘴はそう言うと、兄弟子と姉弟子を見た。
明後日の方向の努力を全力でしているわけか。
「となると・・・・天河様に呆れられて、孔雀がもっと嫌われるに俺、二万」
大嘴がそう言った。
「じゃ、私、孔雀が押し負けるに三万!」
雉鳩は、お前はどうする!?とワクワクした顔で姉弟子と弟弟子に迫られた。
「・・・賭けになるほどの関係にも至ってないだろ・・・」
家令は何でも賭けたがる。
大体、これでは進路も退路も、また摩擦を呼ぶ。
まあ、それでもいいではないか。
そもそもが家令など、血と諍いを好む存在。
「よし。・・・翡翠様に天河様が処罰されるに十万」
「それじゃ、オッズ変わっちゃう!」
「もっと募ろう!」
家令達はなんとも生き生きと悪巧みを始めた。
「えぇー?いやいや、同じギルド出がいいにしたって、もっとマシな女、世の中いくらでもいるだろうよ」
「私もそうだと思うんだけどさ。天河様も珍獣見て何だかびっくりして気に行っちゃったんじゃない?それを聞いた木蓮様が、世の中いろんな子がいるから、いい勉強になるから遊び相手にお城に呼びましょうかなんて言って、川蝉に話したのよ。でも、どうも体も弱いし、就学前だと聞いて、川蝉が、それで宮廷に呼ぶのはまだちょっと気の毒だからもう少し待とうという事になってねえ」
懐かしい思い出。
何度目かの嵐を越えて、まだ宮廷が春の陽のように穏やかで、そのまますくすくと全てが明るい方へ伸びていくのだと思っていた頃。
「梟お兄様も、天河様に将来的に側に上げてもよろしいと言ったのよね。天河様も少年ながら結構乗り気なわけじゃない。ところがしばらくしたら、家令に召し上げられたと来たもんだ」
猩々朱鷺がため息をついた。
「梟お兄様には、天河様が傷つかないように申し上げてよと言ったのに。あの人にそんなことできるわけもないじゃない?」
かくして、梟は「あの子猿は、殿下の花より、陛下の鳥がいいそうですので、そのようになりました」と天河にバッサリ告げたのだ。
本当に孔雀がそんな事言ったのかどうかはわからないが、当時の梟や白鷹に意見など不可能。
「それで、天河様に連れて行けとと言われて、ガーデンに行ったわけ」
今度は雉鳩はため息をついた。
「・・・姉上。そりゃひどい。じゃあ、結果的に翡翠様は息子から女をかっさらった事になる」
「そうなのよねぇ。食い物と女と男の恨みは拗れるのよ・・・。天河様ってほら、見た目より繊細なとこあるじゃない・・・?翡翠様が見た目よりだいぶ雑なのと逆で・・・」
継室は銀の衣装で後宮に上がるのが習わしだ。
それが漆黒のカラスのような真っ黒けな家令服で現れ、しかも総家令、となっては・・・。
「総家令なんて、言っちゃえば、都合の良い使い勝手の良い愛人だもんねえ。まあそうじゃないのもいるけどさあ」
この姉弟子もあけすけというか・・・。
「そりゃあ、拗らせるはずだ」
道理で、と雉鳩は合点が行った。
あの第二太子が必要以上に孔雀に接触しないばかりか、いっそ冷たいのにはこういったわけがあったのか。
「猩々朱鷺姉上。じゃ、孔雀は見当違いの勘違いしてるんじゃないかな」
大嘴が首を傾げた。
「あいつ、前に小児科の先生のとこに相談に行ったよな?ニコニコちびっこクリニックとかいうさ。天河様は心に傷を受けたからこのままだと非行に走るとか何とかうわ言言ってさ。その院長が書いた本に同じ事書いてあったとかで・・・」
面白がった兄弟子と姉弟子に、野苺と小鳥の柄のワンピースを着せられ、髪型も若奥様風にされて、素性を伏せて相談に行ったのだ。
アカデミーの医局でも名高く典医でもある黄鶲が相談内容を書いた紹介状を孔雀に持たせた。
そこには、この者はどこぞの貴族の後妻だと書いてあったらしい。
それを見た医師は当然、「あなたね。実母が亡くなって日が浅いのに、父親の若い愛人が後妻で家庭に入って来たら、そりゃあ非行にも走りたくなるでしょう」と諭すに至った。
黄鶲がどんなざっくりとした説明を書いたものだかしれないが、そういう事になったらしい。
「・・・先生、私、どうしたらいいんでしょう・・・」と嘆く孔雀に、その医師は「あなたにも事情があるのでしょうが・・・。まずは、安心できる居場所、環境を整える事。それから無理に追い詰めない事、本人の意思、意向に沿うように」と指示した。
孔雀は持参した著作にサインまでして貰って帰って来て「素晴らしい先生でした」と黄鶲に礼を言っていた。
「・・・ということは、孔雀は、自分のせいでグレた継子をなんとか更生させようとしてる心理なわけだよ」
大嘴はそう言うと、兄弟子と姉弟子を見た。
明後日の方向の努力を全力でしているわけか。
「となると・・・・天河様に呆れられて、孔雀がもっと嫌われるに俺、二万」
大嘴がそう言った。
「じゃ、私、孔雀が押し負けるに三万!」
雉鳩は、お前はどうする!?とワクワクした顔で姉弟子と弟弟子に迫られた。
「・・・賭けになるほどの関係にも至ってないだろ・・・」
家令は何でも賭けたがる。
大体、これでは進路も退路も、また摩擦を呼ぶ。
まあ、それでもいいではないか。
そもそもが家令など、血と諍いを好む存在。
「よし。・・・翡翠様に天河様が処罰されるに十万」
「それじゃ、オッズ変わっちゃう!」
「もっと募ろう!」
家令達はなんとも生き生きと悪巧みを始めた。
2
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
【完】経理部の女王様が落ちた先には
Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位
高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け
ピンヒールの音を響かせ歩く
“経理部の女王様”
そんな女王様が落ちた先にいたのは
虫1匹も殺せないような男だった・・・。
ベリーズカフェ総合ランキング4位
2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位
2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位
関連物語
『ソレは、脱がさないで』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位
『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位
『初めてのベッドの上で珈琲を』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位
『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位
私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。
伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。
物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる