ステュムパーリデスの鳥 〜あるいは宮廷の悪い鳥の物語〜

ましら佳

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57.鳥達の娯楽

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「・・・ふくろうお兄様はね、孔雀くじゃく天河てんが様にやるつもりでいたのよ」
「えぇー?いやいや、同じギルド出がいいにしたって、もっとマシな女、世の中いくらでもいるだろうよ」
「私もそうだと思うんだけどさ。天河てんが様も珍獣見て何だかびっくりして気に行っちゃったんじゃない?それを聞いた木蓮もくれん様が、世の中いろんな子がいるから、いい勉強になるから遊び相手にお城に呼びましょうかなんて言って、川蝉かわせみに話したのよ。でも、どうも体も弱いし、就学前だと聞いて、川蝉かわせみが、それで宮廷に呼ぶのはまだちょっと気の毒だからもう少し待とうという事になってねえ」
懐かしい思い出。
何度目かの嵐を越えて、まだ宮廷が春の陽のように穏やかで、そのまますくすくと全てが明るい方へ伸びていくのだと思っていた頃。

ふくろうお兄様も、天河てんが様に将来的に側に上げてもよろしいと言ったのよね。天河てんが様も少年ながら結構乗り気なわけじゃない。ところがしばらくしたら、家令に召し上げられたと来たもんだ」
猩々朱鷺しょうじょうときがため息をついた。
ふくろうお兄様には、天河てんが様が傷つかないように申し上げてよと言ったのに。あの人にそんなことできるわけもないじゃない?」
かくして、ふくろうは「あの子猿は、殿下の花より、陛下の鳥がいいそうですので、そのようになりました」と天河てんがにバッサリ告げたのだ。

本当に孔雀くじゃくがそんな事言ったのかどうかはわからないが、当時のふくろう白鷹はくたかに意見など不可能。
「それで、天河てんが様に連れて行けとと言われて、ガーデンに行ったわけ」
今度は雉鳩きばばとはため息をついた。

「・・・姉上。そりゃひどい。じゃあ、結果的に翡翠ひすい様は息子から女をかっさらった事になる」
「そうなのよねぇ。食い物と女と男の恨みはこじれるのよ・・・。天河てんが様ってほら、見た目より繊細なとこあるじゃない・・・?翡翠ひすい様が見た目よりだいぶ雑なのと逆で・・・」
継室は銀の衣装で後宮に上がるのが習わしだ。
それが漆黒のカラスのような真っ黒けな家令服で現れ、しかも総家令、となっては・・・。
「総家令なんて、言っちゃえば、都合の良い使い勝手の良い愛人だもんねえ。まあそうじゃないのもいるけどさあ」
この姉弟子もあけすけというか・・・。
「そりゃあ、こじらせるはずだ」
道理で、と雉鳩きじばとは合点が行った。

あの第二太子が必要以上に孔雀くじゃくに接触しないばかりか、いっそ冷たいのにはこういったわけがあったのか。
猩々朱鷺しょうじょうとき姉上。じゃ、孔雀くじゃくは見当違いの勘違いしてるんじゃないかな」
大嘴おおはしが首を傾げた。
「あいつ、前に小児科の先生のとこに相談に行ったよな?ニコニコちびっこクリニックとかいうさ。天河てんが様は心に傷を受けたからこのままだと非行に走るとか何とかうわごと言ってさ。その院長が書いた本に同じ事書いてあったとかで・・・」
面白がった兄弟子と姉弟子に、野苺と小鳥の柄のワンピースを着せられ、髪型も若奥様風にされて、素性を伏せて相談に行ったのだ。

アカデミーの医局でも名高く典医でもある黄鶲きびたきが相談内容を書いた紹介状を孔雀くじゃくに持たせた。
そこには、この者はどこぞの貴族の後妻だと書いてあったらしい。
それを見た医師は当然、「あなたね。実母が亡くなって日が浅いのに、父親の若い愛人が後妻で家庭に入って来たら、そりゃあ非行にも走りたくなるでしょう」とさとすに至った。
黄鶲きびたきがどんなざっくりとした説明を書いたものだかしれないが、そういう事になったらしい。
「・・・先生、私、どうしたらいいんでしょう・・・」と嘆く孔雀くじゃくに、その医師は「あなたにも事情があるのでしょうが・・・。まずは、安心できる居場所、環境を整える事。それから無理に追い詰めない事、本人の意思、意向に沿うように」と指示した。
孔雀くじゃくは持参した著作にサインまでして貰って帰って来て「素晴らしい先生でした」と黄鶲きびたきに礼を言っていた。

「・・・ということは、孔雀くじゃくは、自分のせいでグレた継子をなんとか更生させようとしてる心理なわけだよ」
大嘴おおはしはそう言うと、兄弟子と姉弟子を見た。
明後日の方向の努力を全力でしているわけか。
「となると・・・・天河てんが様に呆れられて、孔雀くじゃくがもっと嫌われるに俺、二万」
大嘴おおはしがそう言った。

「じゃ、私、孔雀くじゃくが押し負けるに三万!」
雉鳩きじばとは、お前はどうする!?とワクワクした顔で姉弟子と弟弟子に迫られた。
「・・・賭けになるほどの関係にも至ってないだろ・・・」

家令は何でも賭けたがる。
大体、これでは進路も退路も、また摩擦を呼ぶ。
まあ、それでもいいではないか。
そもそもが家令など、血といさかいを好む存在。
「よし。・・・翡翠ひすい様に天河てんが様が処罰されるに十万」
「それじゃ、オッズ変わっちゃう!」
「もっとつのろう!」
家令達はなんとも生き生きと悪巧わるだくみを始めた。
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