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第一章
第4話 失意の英雄
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神は残酷だ。人がどれ程苦しい目にあっていても助けてくれたりなんてしない。
神を信じ祈る人がいても、決して手を差し伸べる事などしない。
神に縋りたくとも姿を見せやしない。
俺はこんなにも苦しいというのに……
王宮へと戻った俺は、急いでアオイの所へと向かう。
いつも通りの笑顔で迎えてくれるアオイに、少しだけ救われたような気持ちになった。
「やぁ。随分と早かったね……どうしたんだい?!」
俺の顔を見て驚いた様子のアオイが肩を掴んでくる。
「あぁ……お前の顔が見たくてな。」
「それだけじゃないでしょ! 明らかに何かあったって顔してるよ!」
「フラれちまったよ。」
俺はアオイに全てを吐き出した。
戦争に行った後、両家がすぐさま婚約を解消していた事。
エイミーは俺が手紙を出しているにも拘らず他の男と会っていた事。
そして彼女が妊娠していながら、裏切りなど無かったかのように俺に結婚を迫ってきた事。
あんな家を捨てて来た事。
とにかく泣きながら全てを伝えた。
「復讐……したいと思う?」
ぽつりと呟いたアオイの顔を見れば、今までに見た事もないような怒気を放っている。
「……そこまでは考えちゃいない。あいつらの顔は二度と見たくないと思ってはいるがな。」
「なら、復讐じゃなくて事実だけを王様に報告したらどうかな? 少なくとも、英雄をここまでないがしろにした家に対して、罰……とまでは言わないけど、落とし前は付けさせなきゃ。」
「どういう事だ?」
「多分だけどさ。法的な部分で言えば、婚約解消も出来てるし、浮気……ともまた違うと思う。レイベルトの気持ちとしてはそうかもしれないけど、法的には違う。でもさ、人としての道理を問うなら、間違いなくそいつらは最低だよね?」
「そうだな。」
俺はエイミーの事が頭にちらつき、拳を握りしめる。
「だからさ、そんな事がありましたって王様に報告すれば良い。レイベルトは復讐を望んでないんだ。そいつらは罪にだってならない。」
「……だろうな。」
「でもね? レイベルトの家や、元婚約者の家は誰からも相手にされなくなると思わない? 勿論そうならない可能性もあるけど、君は元々復讐を望んでないんだ。第三者達がどう思いどう行動するか、に委ねてしまえば良いのさ。」
「……そう、かもな。」
「第三者がこの話を聞いた上で、誰もがそいつらを相手にしなくなるなら自業自得だよ。」
第三者に委ねる。それも悪くはない……か。
やり返そうとは思わないが……あいつらが何も気にせず今ものうのうとしているのだとすれば、それはそれで吐き気がする。
人任せってのもどうかとは思うが、アオイの言う通りにしよう。
「お前のお蔭で少しだけ楽になった気がする。」
本当にアオイには感謝しないとな。
「すぐに王様に報告しよう。後から家の奴らに適当な事をでっち上げられると面倒だよ?」
「あぁ……って引っ張るなよ!」
「君の家がどんなかは知らないけど、早く報告しないと面倒になるかもしれない。実家で魔法までぶっ放したんでしょ?」
そう言うアオイに引き摺られて、そのままの流れで王に報告した。
ありがたいことに、王はすぐさま非公式の会談を設けてくれたのだ。
「そうであったか……。良くもまぁ、此度の英雄に対して酷い仕打ちをするものだ。罪には問わんが、その二家は覚えておく事にしよう。」
「そうですね。そもそも人として信用出来ませんし。」
アオイが王に同調する。
「儂が気に入らんから今後その二家に対しては一切の手助けはせんし、信用ならん家だから他の貴族に対しても周知だけはしておくとしよう。そのような家ならば、他の貴族が騙しうちされかねんからの。」
「流石ですね。」
「何がじゃ? 別に儂が個人的に気に入らんからというのに加え、他の貴族達の事を考えた結果そうするのであって、潰してやろうなどとは思っておらん。勝手に潰れるなら別だがの。」
アオイ……お前いつの間に王と仲良くなったんだ?
コソコソと内緒話までしてるし。
「その顔は何故勇者と儂が仲良くなったのか気になっとるな?」
「えっと……はい。」
公の場とは違った雰囲気の王に俺は戸惑いを隠せない。
「戦争も終わった事だし、儂だって勇者の世界の話を聞いてみたかったんじゃ。」
「王様とはそれで仲良くなったのさ。」
確かにアオイは話も上手いしな。仲良くなっていても不思議ではないか。
「さて、真面目な話もしておくとするか。英雄レイベルトよ、お前を伯爵に任じる。家名は好きなものを考えておくと良い。そしてとある人間と結婚してもらいたい。」
結婚? 今はあまり考えたくない話題だ。エイミーとの一件が、結婚に対して後ろ向きな感情を想起させる。
「恐れながら……まだ結婚については気持ちの整理がつけられず、考えられない状況でして……。」
「お主の言いたい事は勿論分かる。だがな、絶対に気に入る相手だと思うぞ?」
「ですが……。」
「すぐに結婚しろとは言わん。会うだけでも会ってみて欲しいのじゃ。結婚は気持ちの整理がついてからで良い。万が一相手を気に入らんなら、それもまた仕方なし。」
「そういう事であれば、会うだけ会ってみたいと思います。」
ここまで言われて嫌だと言うのも不敬かと思い、渋々了承した。
神を信じ祈る人がいても、決して手を差し伸べる事などしない。
神に縋りたくとも姿を見せやしない。
俺はこんなにも苦しいというのに……
王宮へと戻った俺は、急いでアオイの所へと向かう。
いつも通りの笑顔で迎えてくれるアオイに、少しだけ救われたような気持ちになった。
「やぁ。随分と早かったね……どうしたんだい?!」
俺の顔を見て驚いた様子のアオイが肩を掴んでくる。
「あぁ……お前の顔が見たくてな。」
「それだけじゃないでしょ! 明らかに何かあったって顔してるよ!」
「フラれちまったよ。」
俺はアオイに全てを吐き出した。
戦争に行った後、両家がすぐさま婚約を解消していた事。
エイミーは俺が手紙を出しているにも拘らず他の男と会っていた事。
そして彼女が妊娠していながら、裏切りなど無かったかのように俺に結婚を迫ってきた事。
あんな家を捨てて来た事。
とにかく泣きながら全てを伝えた。
「復讐……したいと思う?」
ぽつりと呟いたアオイの顔を見れば、今までに見た事もないような怒気を放っている。
「……そこまでは考えちゃいない。あいつらの顔は二度と見たくないと思ってはいるがな。」
「なら、復讐じゃなくて事実だけを王様に報告したらどうかな? 少なくとも、英雄をここまでないがしろにした家に対して、罰……とまでは言わないけど、落とし前は付けさせなきゃ。」
「どういう事だ?」
「多分だけどさ。法的な部分で言えば、婚約解消も出来てるし、浮気……ともまた違うと思う。レイベルトの気持ちとしてはそうかもしれないけど、法的には違う。でもさ、人としての道理を問うなら、間違いなくそいつらは最低だよね?」
「そうだな。」
俺はエイミーの事が頭にちらつき、拳を握りしめる。
「だからさ、そんな事がありましたって王様に報告すれば良い。レイベルトは復讐を望んでないんだ。そいつらは罪にだってならない。」
「……だろうな。」
「でもね? レイベルトの家や、元婚約者の家は誰からも相手にされなくなると思わない? 勿論そうならない可能性もあるけど、君は元々復讐を望んでないんだ。第三者達がどう思いどう行動するか、に委ねてしまえば良いのさ。」
「……そう、かもな。」
「第三者がこの話を聞いた上で、誰もがそいつらを相手にしなくなるなら自業自得だよ。」
第三者に委ねる。それも悪くはない……か。
やり返そうとは思わないが……あいつらが何も気にせず今ものうのうとしているのだとすれば、それはそれで吐き気がする。
人任せってのもどうかとは思うが、アオイの言う通りにしよう。
「お前のお蔭で少しだけ楽になった気がする。」
本当にアオイには感謝しないとな。
「すぐに王様に報告しよう。後から家の奴らに適当な事をでっち上げられると面倒だよ?」
「あぁ……って引っ張るなよ!」
「君の家がどんなかは知らないけど、早く報告しないと面倒になるかもしれない。実家で魔法までぶっ放したんでしょ?」
そう言うアオイに引き摺られて、そのままの流れで王に報告した。
ありがたいことに、王はすぐさま非公式の会談を設けてくれたのだ。
「そうであったか……。良くもまぁ、此度の英雄に対して酷い仕打ちをするものだ。罪には問わんが、その二家は覚えておく事にしよう。」
「そうですね。そもそも人として信用出来ませんし。」
アオイが王に同調する。
「儂が気に入らんから今後その二家に対しては一切の手助けはせんし、信用ならん家だから他の貴族に対しても周知だけはしておくとしよう。そのような家ならば、他の貴族が騙しうちされかねんからの。」
「流石ですね。」
「何がじゃ? 別に儂が個人的に気に入らんからというのに加え、他の貴族達の事を考えた結果そうするのであって、潰してやろうなどとは思っておらん。勝手に潰れるなら別だがの。」
アオイ……お前いつの間に王と仲良くなったんだ?
コソコソと内緒話までしてるし。
「その顔は何故勇者と儂が仲良くなったのか気になっとるな?」
「えっと……はい。」
公の場とは違った雰囲気の王に俺は戸惑いを隠せない。
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「王様とはそれで仲良くなったのさ。」
確かにアオイは話も上手いしな。仲良くなっていても不思議ではないか。
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「お主の言いたい事は勿論分かる。だがな、絶対に気に入る相手だと思うぞ?」
「ですが……。」
「すぐに結婚しろとは言わん。会うだけでも会ってみて欲しいのじゃ。結婚は気持ちの整理がついてからで良い。万が一相手を気に入らんなら、それもまた仕方なし。」
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ここまで言われて嫌だと言うのも不敬かと思い、渋々了承した。
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