58 / 128
第三章 戦争から帰ってきたら、私の婚約者が別の奴とも結婚するみたい。
第5話 停戦交渉
しおりを挟む
あの後、ストレッチ王国軍からの攻撃が激しくなった。
数の力に物を言わせ、タイミングをずらして何度も敵兵が攻めて来るのだ。
隕石を落としたり、巨大な炎の竜巻を発生させたり、洪水で押し流したりと私が全て対処したから何の問題もなく撃退できたけど。
向こうは引っ込みがつかなくなっているのか、はたまた自然災害が起きたとでも思っているのか。
確かストレッチ王国軍の総司令官はヴァイセン侯爵だったはずよね。
もしかしたら馬鹿なのかしら?
撤退するか、どうせなら残った全軍で一斉に突撃をかけてくれば良いのに。
まぁ、撃退は可能だからどちらにせよ向こうは詰んでる。
一応味方側にはレイベルトと碧ちゃんと私の三人で合体魔法を撃っているという事で報告しておいた。
碧ちゃんが咄嗟に思いついた言い訳を採用した形。
嘘だとバレても面倒なので、本当に合体魔法の練習もして使えるようにだけはした。
二人が好きな様に魔法を撃ち、私がそれを束ねて自身の魔力を乗せて発射するだけという簡易的な合体魔法。
言うのは簡単だけど、勇者桜の知識がなければ決して不可能な魔法の使い方ではある。
相乗効果もあって全員の魔力消費は少な目で、そのくせ大規模な攻撃が可能というあまり世に広めたくない魔法。
やり方を教えても誰にも真似できないだろうから、その点は安心だけどね。
最近は大規模な戦闘の合間に味方側に潜んでいるスパイの貴族も始末し、戦争は順調に進んでいた。
スパイかどうかの判別は簡単。
いちいち難癖をつけてくる奴がいるのだから、そういう奴の頭上に大岩を落としてやるだけで良い。
ただ単に活躍し過ぎている私達を気に入らないだけの奴も中にはいたかもしれないけど、スパイと疑われるような行動をとる方が悪い。
今はもう、そんな奴一人もいなくなってしまったけどね。
「エイって凄いね。もうどっちが勇者か分からないよ。」
「そんな事はないって。碧だって強くなったじゃん。」
「うーん。でも、一応勇者として呼ばれたのに自信無くしちゃうなぁ。」
ちょっとやり過ぎたかもしれない。
碧ちゃんが微妙に気落ちしている。
「気にする必要はないだろう。英雄と呼ばれている俺だって、自分は必要ないんじゃないかと思っている。」
レイベルトまで落ち込んでいる。
「気にしない気にしない。戦争で勝てそうなんだからもっと笑顔笑顔!」
今の私達は死を運ぶ英勇トリオと呼ばれ、戦場では文字通り死神のような扱いを受け始めている。
レイベルト隊の旗が見えた瞬間に敵兵は大混乱するし、味方側の兵も一切近づいて来ようとはしない。
敵はともかく、味方は普通に接してよ。
上官でさえも私達に敬語を使って来る。
つい二日前なんて作戦会議に呼ばれた私達に対し、会議に出席していた貴族達が軒並みビビり倒していた。
しかも「暑いですね。」と何の気なしに言っただけで、上位貴族が自らダッシュで飲み物を持って来てくれたのだ。
私はタチの悪い不良か!
勿論これだけにとどまらない。
レイベルトが居住まいを正しただけでビクリと反応したり、碧ちゃんが少し発言すると場が静まり返ったり、とにかくこちらの機嫌を損ねないようにしているのが丸わかり。
中には質問しただけで謝り始める貴族までいた。
待って? 私達、何もしてないよね?
一体どんな風に噂されているのかが気になり、レイベルト隊の人に情報収集をお願いしてみたものの、死を運ぶ英勇トリオと呼ばれている事くらいしか情報を得られなかった。
レイベルト隊と言うだけで避けられ、一般兵に聞いても埒が明かないと思い貴族に尋ねてみたらしいけど、その貴族は金品を差し出し許しを請うたのだという。
完全にカツアゲだわ……。
貴族なんだから平民にペコペコしないでよ。
ここまで味方に恐れられてしまうと、正直戦後が心配になってしまう。
私が伝説の勇者の先祖返りである事をもっと大っぴらに喧伝した方が良いのかもしれない。
レイベルト隊には戦力が集中している。
スパイによって私や碧ちゃんがレイベルト達から引き離される事を懸念していたけど、既にそのような動きをする者は一人としていない。
勇者である碧ちゃんは別にしても、レイベルトや私は勇者でもなんでもないのに馬鹿みたいに強いせいで人類のカテゴリーから逸脱しているように見えてしまっている可能性がある。
それもそうか。
前回英勇コンビなんて言われ持て囃されていたのだって、二人が常識外れの活躍を見せつつも敵軍に対してギリギリで勝てていたからだ。
決して今回のように、万単位の敵を相手に一方的な勝利を見せていたわけじゃない。
そして先祖返りである事を喧伝しようと決心した翌日…………
ストレッチ王国軍から停戦の申し出があった。
「レイベルト殿、アオイ殿、エイ殿、お三方にはストレッチ王国軍との停戦交渉の席に同席して頂きたく。何卒、何卒宜しくお願い致します。」
停戦交渉は良いけど、何でこの人は土下座しているの?
「エディンガー侯爵。土下座をやめて下さい。」
「はっ。もしや同席して頂けるので?」
もうこれ、どっちが上か分からないわね。
「あの、俺達よりも身分も立場も上なのですから、どうかそのような態度はやめて欲しいのですが……」
「も、申し訳ありませんでした!」
レイベルトが言い辛そうにしながらもエディンガー侯爵のあり得ない態度に言及すると、英雄の機嫌を損ねたという意味で解釈してしまったようで更に深々と頭を下げてしまった。
それをやめろと言っているのに。
「ダメだこりゃ。」
「ちょっと碧。その発言はマズいよ。」
「ははぁっ! ダメな侯爵でございます!」
本当にダメだこりゃ。
プライド捨て過ぎでしょ。
エディンガー侯爵の必死の土下座に絆され、私達は両国停戦交渉の場に同席する事となった。
両国のトップに加えて英勇トリオの私達も同席し、国境で互いの兵を待機させたまま交渉を開始する。
先ず、ストレッチ王国国王のベグレート王が口を開いた。
「この度は停戦交渉に応じてもらい感謝する。俺の希望通り、英勇トリオが同席している事も大変ありがたい。」
私達三人に参加して欲しいと言い出したのはイットリウム王国側ではなく、まさかのストレッチ王国側だったみたいね。
「して、何故英勇トリオを呼んだのか聞いても良いかの?」
ジャルダン王も不思議に思っているようで、私達の代わりに質問してくれた。
「あぁ。英勇トリオをこの目で直接見たいと思ったのだ。今回我々は停戦交渉と銘打ってこの席を設けた。しかし、英勇トリオの力と考えを確認して問題がなければ、ストレッチ王国は停戦ではなく降伏を考えている。」
現在、ストレッチ王国の軍勢は約二十万程残っている。
このタイミングで降伏を考えているという事は、私達の活躍に余程肝を冷やしたんでしょうね。
「今こうして実物を見させてもらったが、英勇トリオの三人は好んで大虐殺を行うような人間には見えない。」
そう言ってベグレート王は私達に質問を投げかけてくる。
「先ず三人は戦後、貴族の地位がもらえる事は確実だろう。貴族としてどのような政治を行いたいのか、民をどのように扱うつもりなのかを聞きたい。」
質問に対してレイベルトは、民の幸福を考えた公平な政治を行うと答えた。
碧ちゃんは民を富ませ、結果として貴族である自身も富むWinWinな政治をすると答えた。
私は人々を不幸にする人間を憎み、徹底的に処罰すると答えた。
「成る程。三人の考え方は理解した。停戦後、復讐戦などは考えていないのか?」
「そのような事は考えていません。」
「僕も考えてないです。」
「……私もです。」
スパイの親玉であるブレイン侯爵だけはぶち殺してやろうと思っていたけど、実際に悪辣な手法を考えて実行したのはネイル達だった。
前回、頭に血が上ってブレイン侯爵を殺そうとしたのは間違いない。
ネイル達に対する憎しみを解消しきれず、矛先がスパイの元締めに向かってしまったのだ。
それに自国民の為とは言え、結果として前回の私はブレイン侯爵に命を救われている。
何もかもが無かった事になってしまった今の時間軸でこれ以上追及するつもりはなかった。
感情としては納得していないけど、まだやってもいない事を切り口に相手を追及するのは無理がある。
暗殺するという手もあるにはあるが、せっかく話が纏まりそうなのに万一バレて拗れさせるのも望ましくない。
今の私が出来る事はスパイの証拠を王に提供してスパイを処分してもらうのが関の山。
勿論スパイ発覚後はブレイン侯爵に職を辞してもらうけど。
「ところで、あの恐ろしい魔法は何度も使えるのか?」
「はい。私達三人が力を合わせて撃つ合体魔法は連発が可能です。」
「なんと…………分かった。ストレッチ王国は降伏し、イットリウム王国に吸収させようと思う。」
え? そんなにあっさりと?
「元々はイットリウム王国もストレッチ王国であったのだ。600年前にイットリウム公国として独立し、500年前には属国となり、400年前には独立戦争で伝説の勇者が活躍してイットリウム王国となった。そして今、ストレッチ王国が吸収される形で新生イットリウム王国となるのだ。」
「いくら何でも簡単に決めすぎじゃありませんか?」
碧ちゃんの疑問は尤もだ。
「俺だって簡単に決めたわけではないし、英勇トリオという大戦力相手に勝てると思う程ボケてもいない。ただ……英勇トリオを見極めた結果、ストレッチ王国としての歴史は終わるが、新生イットリウム王国として存続していく方に可能性を見出したに過ぎん。」
私達と戦い続ける事で、下手をすれば殲滅戦をされてしまう可能性に思い至ったんでしょうね。
そんな事をされるくらいならば、国ごとあげてしまえば民達も被害を被る事はないって事か。
「良し。ならば今後についての話し合いをしようかのう。」
ストレッチ王国は降伏を申し出、イットリウム王国はそれを受け入れる。
両国トップが詳細を詰める為に話し合い、私達三人が手持ち無沙汰になっていたところ…………。
「緊急!! ご報告申し上げます!! 付近に正体不明の怪物が突如として出現!! 両国の兵に多大な被害が出ております!!」
とうとう来たわね。
今度は圧倒的な力で叩き潰してやるから、覚悟しておきなさい。
数の力に物を言わせ、タイミングをずらして何度も敵兵が攻めて来るのだ。
隕石を落としたり、巨大な炎の竜巻を発生させたり、洪水で押し流したりと私が全て対処したから何の問題もなく撃退できたけど。
向こうは引っ込みがつかなくなっているのか、はたまた自然災害が起きたとでも思っているのか。
確かストレッチ王国軍の総司令官はヴァイセン侯爵だったはずよね。
もしかしたら馬鹿なのかしら?
撤退するか、どうせなら残った全軍で一斉に突撃をかけてくれば良いのに。
まぁ、撃退は可能だからどちらにせよ向こうは詰んでる。
一応味方側にはレイベルトと碧ちゃんと私の三人で合体魔法を撃っているという事で報告しておいた。
碧ちゃんが咄嗟に思いついた言い訳を採用した形。
嘘だとバレても面倒なので、本当に合体魔法の練習もして使えるようにだけはした。
二人が好きな様に魔法を撃ち、私がそれを束ねて自身の魔力を乗せて発射するだけという簡易的な合体魔法。
言うのは簡単だけど、勇者桜の知識がなければ決して不可能な魔法の使い方ではある。
相乗効果もあって全員の魔力消費は少な目で、そのくせ大規模な攻撃が可能というあまり世に広めたくない魔法。
やり方を教えても誰にも真似できないだろうから、その点は安心だけどね。
最近は大規模な戦闘の合間に味方側に潜んでいるスパイの貴族も始末し、戦争は順調に進んでいた。
スパイかどうかの判別は簡単。
いちいち難癖をつけてくる奴がいるのだから、そういう奴の頭上に大岩を落としてやるだけで良い。
ただ単に活躍し過ぎている私達を気に入らないだけの奴も中にはいたかもしれないけど、スパイと疑われるような行動をとる方が悪い。
今はもう、そんな奴一人もいなくなってしまったけどね。
「エイって凄いね。もうどっちが勇者か分からないよ。」
「そんな事はないって。碧だって強くなったじゃん。」
「うーん。でも、一応勇者として呼ばれたのに自信無くしちゃうなぁ。」
ちょっとやり過ぎたかもしれない。
碧ちゃんが微妙に気落ちしている。
「気にする必要はないだろう。英雄と呼ばれている俺だって、自分は必要ないんじゃないかと思っている。」
レイベルトまで落ち込んでいる。
「気にしない気にしない。戦争で勝てそうなんだからもっと笑顔笑顔!」
今の私達は死を運ぶ英勇トリオと呼ばれ、戦場では文字通り死神のような扱いを受け始めている。
レイベルト隊の旗が見えた瞬間に敵兵は大混乱するし、味方側の兵も一切近づいて来ようとはしない。
敵はともかく、味方は普通に接してよ。
上官でさえも私達に敬語を使って来る。
つい二日前なんて作戦会議に呼ばれた私達に対し、会議に出席していた貴族達が軒並みビビり倒していた。
しかも「暑いですね。」と何の気なしに言っただけで、上位貴族が自らダッシュで飲み物を持って来てくれたのだ。
私はタチの悪い不良か!
勿論これだけにとどまらない。
レイベルトが居住まいを正しただけでビクリと反応したり、碧ちゃんが少し発言すると場が静まり返ったり、とにかくこちらの機嫌を損ねないようにしているのが丸わかり。
中には質問しただけで謝り始める貴族までいた。
待って? 私達、何もしてないよね?
一体どんな風に噂されているのかが気になり、レイベルト隊の人に情報収集をお願いしてみたものの、死を運ぶ英勇トリオと呼ばれている事くらいしか情報を得られなかった。
レイベルト隊と言うだけで避けられ、一般兵に聞いても埒が明かないと思い貴族に尋ねてみたらしいけど、その貴族は金品を差し出し許しを請うたのだという。
完全にカツアゲだわ……。
貴族なんだから平民にペコペコしないでよ。
ここまで味方に恐れられてしまうと、正直戦後が心配になってしまう。
私が伝説の勇者の先祖返りである事をもっと大っぴらに喧伝した方が良いのかもしれない。
レイベルト隊には戦力が集中している。
スパイによって私や碧ちゃんがレイベルト達から引き離される事を懸念していたけど、既にそのような動きをする者は一人としていない。
勇者である碧ちゃんは別にしても、レイベルトや私は勇者でもなんでもないのに馬鹿みたいに強いせいで人類のカテゴリーから逸脱しているように見えてしまっている可能性がある。
それもそうか。
前回英勇コンビなんて言われ持て囃されていたのだって、二人が常識外れの活躍を見せつつも敵軍に対してギリギリで勝てていたからだ。
決して今回のように、万単位の敵を相手に一方的な勝利を見せていたわけじゃない。
そして先祖返りである事を喧伝しようと決心した翌日…………
ストレッチ王国軍から停戦の申し出があった。
「レイベルト殿、アオイ殿、エイ殿、お三方にはストレッチ王国軍との停戦交渉の席に同席して頂きたく。何卒、何卒宜しくお願い致します。」
停戦交渉は良いけど、何でこの人は土下座しているの?
「エディンガー侯爵。土下座をやめて下さい。」
「はっ。もしや同席して頂けるので?」
もうこれ、どっちが上か分からないわね。
「あの、俺達よりも身分も立場も上なのですから、どうかそのような態度はやめて欲しいのですが……」
「も、申し訳ありませんでした!」
レイベルトが言い辛そうにしながらもエディンガー侯爵のあり得ない態度に言及すると、英雄の機嫌を損ねたという意味で解釈してしまったようで更に深々と頭を下げてしまった。
それをやめろと言っているのに。
「ダメだこりゃ。」
「ちょっと碧。その発言はマズいよ。」
「ははぁっ! ダメな侯爵でございます!」
本当にダメだこりゃ。
プライド捨て過ぎでしょ。
エディンガー侯爵の必死の土下座に絆され、私達は両国停戦交渉の場に同席する事となった。
両国のトップに加えて英勇トリオの私達も同席し、国境で互いの兵を待機させたまま交渉を開始する。
先ず、ストレッチ王国国王のベグレート王が口を開いた。
「この度は停戦交渉に応じてもらい感謝する。俺の希望通り、英勇トリオが同席している事も大変ありがたい。」
私達三人に参加して欲しいと言い出したのはイットリウム王国側ではなく、まさかのストレッチ王国側だったみたいね。
「して、何故英勇トリオを呼んだのか聞いても良いかの?」
ジャルダン王も不思議に思っているようで、私達の代わりに質問してくれた。
「あぁ。英勇トリオをこの目で直接見たいと思ったのだ。今回我々は停戦交渉と銘打ってこの席を設けた。しかし、英勇トリオの力と考えを確認して問題がなければ、ストレッチ王国は停戦ではなく降伏を考えている。」
現在、ストレッチ王国の軍勢は約二十万程残っている。
このタイミングで降伏を考えているという事は、私達の活躍に余程肝を冷やしたんでしょうね。
「今こうして実物を見させてもらったが、英勇トリオの三人は好んで大虐殺を行うような人間には見えない。」
そう言ってベグレート王は私達に質問を投げかけてくる。
「先ず三人は戦後、貴族の地位がもらえる事は確実だろう。貴族としてどのような政治を行いたいのか、民をどのように扱うつもりなのかを聞きたい。」
質問に対してレイベルトは、民の幸福を考えた公平な政治を行うと答えた。
碧ちゃんは民を富ませ、結果として貴族である自身も富むWinWinな政治をすると答えた。
私は人々を不幸にする人間を憎み、徹底的に処罰すると答えた。
「成る程。三人の考え方は理解した。停戦後、復讐戦などは考えていないのか?」
「そのような事は考えていません。」
「僕も考えてないです。」
「……私もです。」
スパイの親玉であるブレイン侯爵だけはぶち殺してやろうと思っていたけど、実際に悪辣な手法を考えて実行したのはネイル達だった。
前回、頭に血が上ってブレイン侯爵を殺そうとしたのは間違いない。
ネイル達に対する憎しみを解消しきれず、矛先がスパイの元締めに向かってしまったのだ。
それに自国民の為とは言え、結果として前回の私はブレイン侯爵に命を救われている。
何もかもが無かった事になってしまった今の時間軸でこれ以上追及するつもりはなかった。
感情としては納得していないけど、まだやってもいない事を切り口に相手を追及するのは無理がある。
暗殺するという手もあるにはあるが、せっかく話が纏まりそうなのに万一バレて拗れさせるのも望ましくない。
今の私が出来る事はスパイの証拠を王に提供してスパイを処分してもらうのが関の山。
勿論スパイ発覚後はブレイン侯爵に職を辞してもらうけど。
「ところで、あの恐ろしい魔法は何度も使えるのか?」
「はい。私達三人が力を合わせて撃つ合体魔法は連発が可能です。」
「なんと…………分かった。ストレッチ王国は降伏し、イットリウム王国に吸収させようと思う。」
え? そんなにあっさりと?
「元々はイットリウム王国もストレッチ王国であったのだ。600年前にイットリウム公国として独立し、500年前には属国となり、400年前には独立戦争で伝説の勇者が活躍してイットリウム王国となった。そして今、ストレッチ王国が吸収される形で新生イットリウム王国となるのだ。」
「いくら何でも簡単に決めすぎじゃありませんか?」
碧ちゃんの疑問は尤もだ。
「俺だって簡単に決めたわけではないし、英勇トリオという大戦力相手に勝てると思う程ボケてもいない。ただ……英勇トリオを見極めた結果、ストレッチ王国としての歴史は終わるが、新生イットリウム王国として存続していく方に可能性を見出したに過ぎん。」
私達と戦い続ける事で、下手をすれば殲滅戦をされてしまう可能性に思い至ったんでしょうね。
そんな事をされるくらいならば、国ごとあげてしまえば民達も被害を被る事はないって事か。
「良し。ならば今後についての話し合いをしようかのう。」
ストレッチ王国は降伏を申し出、イットリウム王国はそれを受け入れる。
両国トップが詳細を詰める為に話し合い、私達三人が手持ち無沙汰になっていたところ…………。
「緊急!! ご報告申し上げます!! 付近に正体不明の怪物が突如として出現!! 両国の兵に多大な被害が出ております!!」
とうとう来たわね。
今度は圧倒的な力で叩き潰してやるから、覚悟しておきなさい。
15
あなたにおすすめの小説
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる