戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ

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最終章 幸せな日々

番外編 第30話 過保護な母

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 サクラが良からぬモノを呼び出しているとメメちゃんが言っていた。

 もう一人の母親として教育的指導が必要だね。


「サクラ。アンタ良くないモノを召喚してるんだってね?」

「あ、バレちゃった?」


 頬をポリポリと掻き、悪びれる様子もないサクラ。

 反省の色がまるで見えない。


「あんな危険なモノを故意に呼び出すなんて何考えてんの!」

「大丈夫だよ碧ママ。魔力で作られた分体を召喚してるだけだから。」

「そういう問題じゃないでしょ!」


 どうしてこうも危機感がないのか。


「本当に大丈夫なんだってば。侵食されないよう精神防御も張ってるし制御も出来てる。召喚したモノに対してはきちんと魔力を与えてお礼だってしてるんだから。毎回喜んでるのよ?」

「だとしても危険極まりないからやめなさい! 向こうの世界と繋がりが出来ると勝手に来たりするらしいじゃん!」

「勝手に来れるようなのは世界移動の能力持ちか、シューメルやメメちゃんみたいな戦時に現れた怪物の血縁関係者だから基本的に来ることは無いよ。それに……その人、メメちゃんを好きだって言ってるんだもん。協力してあげたいじゃん。」

「え?」


 何それ?


「ドゥエナリルって子なんだけど、ずっと前からメメちゃんが好きだったんだって。つい最近メメちゃんがこっちに来た事を知ってお母さんにコンタクトを取ってきたの。」

「エイミーに? なら、何でサクラが対応してるのよ。」


 エイミーに対処してもらえば良いじゃん。その方が余程確実で安全だ。

 というか、いつの間にかエイミーが向こうの世界との窓口になってない?


「今後もこういう事があった時対処出来る人が他にもいないと困るからって私が任されたの。召喚魔法を経由して意思疎通を図り、危険がないと分かればメメちゃんに会わせてあげようって思ってるんだ。」


 事情は理解した。

 でも、こんな事をサクラ一人が受け持つのは危ない気がする。


「タダ働きは勘弁して欲しかったから私もマジナガムーンキャットの演出に協力してもらったけどね。」

「サクラ。危ないから今後は私の目の届く範囲でやって。」

「碧ママってば過保護過ぎ。特に言ってなかったけど、さぐぬtヴぃらヴんみr対策は碧ママより私の方が上よ? 私が何年魔法の研究してきたと思ってるの?」

「せいぜい数年くらい?」


 長年研究してきたかのような発言してるけど、アンタまだ17歳でしょうが。


「残念。正解は45年。」

「は?」


 年齢以上の数字が出て来た事に驚いてしまった。

 全然計算が合ってないじゃん。


「お母さんが繰り返しの能力持ちなのは知ってるでしょ? 私はお母さんが幸せになれるよう前回は一緒に魔法の研究をしてたの。」

「つまり、サクラは前回の記憶があると言う事?」

「そう。碧ママは話が早くて助かるわ。」

「でも、能力者でもないサクラが記憶の引き継ぎなんて…………あぁ。そういう魔法を開発したって事か。」

「正解。ある程度はお母さんからも聞いてたでしょ? 前回の碧ママが超難解なヒントを手紙に書いたから、お母さんは苦労したんだよ。」


 そうだった。エイミーってばちょっとだけ怒ってたんだよね。

 手紙に関しては前回の私が書いたんであって今回の私は何もしてないし記憶にもないんだけど、少しばかり悪い事したような気分になったんだった。

 前回の手紙がサクラにまで迷惑かけちゃってたのか。


「いやぁ……あはは。その節はご迷惑をお掛けしました。」

「お蔭で私も記憶を引き継げたから感謝してるけどね。」

「まあそれはともかく、サクラ一人で対処させるのは心配だから向こうの住人とのやり取りは私がいる時にしてよね。」


 前回の記憶を引き継ぎ、魔法の技量に関しては私の上をいくんだろう。

 でも、サクラはエイミーの娘だけど私の娘でもある。こんな危ない事を一人で任せられないよ。


「あのね? だから私一人で対処出来ないと任された意味が……。」

「あくまで見学だから大丈夫。私だって対策出来るようになった方が良いし。」


 建前だけどね。


「はあ。碧ママってそういうところあるよね。ほんと過保護なんだから。」

「過保護じゃない。」


 子供を心配しない親なんていないっての。


「ま、良いか。これからドゥエナリルとやり取りするけど、見てみる?」

「勿論!」


 私とサクラは練兵場へと足を運んだ。























 碧ママってば相変わらず過保護なんだから。

 もしかしたらお母さんが放任過ぎるのかもしれないけど。


「じゃ、召喚するよ。」

「オッケー。」


 私は召喚魔法を使用しドゥエナリルに呼びかける。

 彼女からは食い気味の返事が返って来て、即座に召喚に応じた。

 召喚魔法に特別適性があるとかではないけど、今回の場合は向こうがこちらに来る気満々なので、難しい手順も必要ない。

 地面には禍々しい模様の陣が映し出され、その中から一人の美少女が現れた。


「召喚してくれてありがとうサクラさん。」

「いえいえ。私も色々と協力してもらったからね。」

「ねえサクラ。分体を召喚するんじゃなかったの? 本体召喚しちゃってない?」


 やり取りするとは言ったけど本体を召喚するとは言ってなかったかも。


「あら。貴女は初めましてですね。私はドゥえnAmリyる。ドゥエナリルって呼んで下さい。」


 碧ママに頭を下げて挨拶をするドゥエナリルは礼儀正しい。

 やっぱり、シューメル同様この子も人間社会に馴染めそうね。


「私は碧。よろしく。」

「よろしくお願いします。あぁ……ようやくヴィrmえなゲ様に会えると思うと感動もひとしおです……って二人とも神ランキング上位レベル!?」

「「え?」」

「ま、まさか……二人して私を騙して食うつもりだったんですか!?」


 ドゥエナリルは腰が抜けたのかその場に尻もちをついていた。

 そしてとんでもない誤解を受けている。


「そんな事しないって。ほら、恐くないから。」

「嫌ぁ……食わないで。」


 手を差し伸べるが食われると思ったようで、頭を両手で抱えて首を振っている。


「ちょっと失礼じゃん。いきなり食うわけないでしょ。」

「嘘よ……アオイさんは魔力値四十万もあるじゃないですか。サクラさんだって魔力値十六万。それだけ強ければどんな相手だって食い放題ですぅ……。」


 凄く怖がられてる。


「あのねドゥエナリル。こっちではいきなり相手を食う文化なんてないわ。」

「……本当ですか?」


 チラリと様子を伺い、疑念の眼差しで見てくる美少女。

 なんだか少しだけ……意地悪してみたくなる感じの子だ。


「本当だよ。食うつもりだったら即座に首を刎ねて血をすするよね?」

「ひぃぃぃぃっ!!」


 ちょっと碧ママ。

 意地悪したくなるのは分かるけど、それはやり過ぎ。
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