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17 生を奪う草
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野宿で3泊。
4日目の夕暮れで、やっと村に到着した。
「……宿,探しますか?」
なれない野宿に、疲れが溜まっているクァイリ。
フローリアの監視を全面的に信頼しているディエントは、すっきりしたものだった。
「いえ、ちょっとその前に…」
そう言いながら、畑の中の道を歩く。
しばらく歩いていると、村へ帰る住人たちの背中が見えてくる。
ちょっと持ってて,と手荷物を渡し、走っていくディエント。
「すいませーん」
その声に、何人かが振り返る。
追いついて何かを話しているが、虫の音に紛れて聞き取れない。
ゆっくりと荷物を持って歩いていくと、次第に声が聞こえるようになる。
「……、そうでしたか ありがとうございます」
少し気落ちしている様子。
土に汚れた村人は、少し笑いかけ
「サディシャに会ったら伝えておくよ」
一言、礼を言って分かれる。
一緒に村にいけば良いのでは、と内心思いながらディエントと合流する。
手荷物を返しつつ表情を伺うが、いつも通りで気落ちした様子は見られなかった。
「人探しですか?」
「まぁ,…そうだね」
別に会わなくても良いのだけど、と付け加える。
そうですか、と適当に相槌を打って歩き始める。
「この村は、どの辺なんですか?」
預かっていた地図を広げながら聞く。
話題が変わり、どこかホッとした様子のディエント。
やっぱりショックだったんだ,と内心呟くクァイリ。
「えっと………、ここ、かな」
山中を指差す。
見るとそこには何も描かれていなかった。
歩きながら目を凝らすが、単に等高線が描かれているだけで、村の表示はない。
改めて周りを見回すが、山の斜面に畑があり、向かう先の盆地には小さな村がある。
訝しげに地図と周りの風景を見比べながら歩くクァイリ。
村に近づくと、向こう側にあるものも見えてきた。
(……、あれ?)
山奥の地図にのっていない村。
村の向こう側に見える、堅牢な檻。
「…ディエントさん ここって薬草の産地ですか?」
「どうなのかしら」
少し分けていただけないだろうか、と。
村に着くなり村長のところへ押しかけ、クァイリはそう頼み込んだ。
(……ここが薬草を作っていると分かっている風を装えば、その確認にもなりますし)
付け焼き刃のカマ掛けであることは、重々承知ではある。
ただ、幼いころから何を考えているのか分かりにくい,と言われてきた事を信じる。
村長は形式的な挨拶から流れるように話題が変わり、驚いていた。
しばらくして我に返り、考え始める。
「…何のためかな?」
かくして、クァイリのカマ掛けは成功はした。
ただ基本的に付け焼き刃の行き当たりばったりのため、その先の計画は全くなかった。
したがって駆け引きもなく、本来の目的を言うしかなかった。
「研究の為です」
何の、とは説明しなかった。
ただでさえ、テイムの生態研究は忌み嫌われやすいものである。
「断る」
即答であった。
断られる事自体は予想通りだったものの、即答は意外だった為、反応が遅れる。
ディエントの小さな咳払いに、ハッと我に返る。
「…、分かりました ありがとうございました」
素直に引き下がる。
あっさりとした引き下がりに、村長は少し拍子抜けする。
失礼しました,と立ち上がり、ディエントもそれに続く。
一礼をして、応接間から出る。
「ーー旅人さんよ」
後ろから、村長の声がとぶ。
振り返ると、村長はお茶を手に座っている。
「そんなに多くの薬草が必要なのかい?」
普通に買うことはしないのか、と。
別に量が欲しいわけではないものの、取り立ての新鮮な状態が欲しい為、返事を悩む。
ただ説明するのも,と考え頷く。
「村々の人に頼むのは良いが、やめておけ」
そんな気はなかったクァイリは、何も言わず聞いておく。
そういう手段を提案しかけていたディエントは、やはり無駄なのか,と考える。
「あれは”生を奪う草” おいそれと使ってはならんものだ」
ん?、と引っかかるクァイリ。
部屋の中で一人椅子に座っている村長は、どこか謝っているようにも見えた。
「外から来たのならば、一日,この村にいるだけでも十分であろう それで我慢せい」
分かりました,と一言。
二人は、村長の屋敷から外へ出た。
4日目の夕暮れで、やっと村に到着した。
「……宿,探しますか?」
なれない野宿に、疲れが溜まっているクァイリ。
フローリアの監視を全面的に信頼しているディエントは、すっきりしたものだった。
「いえ、ちょっとその前に…」
そう言いながら、畑の中の道を歩く。
しばらく歩いていると、村へ帰る住人たちの背中が見えてくる。
ちょっと持ってて,と手荷物を渡し、走っていくディエント。
「すいませーん」
その声に、何人かが振り返る。
追いついて何かを話しているが、虫の音に紛れて聞き取れない。
ゆっくりと荷物を持って歩いていくと、次第に声が聞こえるようになる。
「……、そうでしたか ありがとうございます」
少し気落ちしている様子。
土に汚れた村人は、少し笑いかけ
「サディシャに会ったら伝えておくよ」
一言、礼を言って分かれる。
一緒に村にいけば良いのでは、と内心思いながらディエントと合流する。
手荷物を返しつつ表情を伺うが、いつも通りで気落ちした様子は見られなかった。
「人探しですか?」
「まぁ,…そうだね」
別に会わなくても良いのだけど、と付け加える。
そうですか、と適当に相槌を打って歩き始める。
「この村は、どの辺なんですか?」
預かっていた地図を広げながら聞く。
話題が変わり、どこかホッとした様子のディエント。
やっぱりショックだったんだ,と内心呟くクァイリ。
「えっと………、ここ、かな」
山中を指差す。
見るとそこには何も描かれていなかった。
歩きながら目を凝らすが、単に等高線が描かれているだけで、村の表示はない。
改めて周りを見回すが、山の斜面に畑があり、向かう先の盆地には小さな村がある。
訝しげに地図と周りの風景を見比べながら歩くクァイリ。
村に近づくと、向こう側にあるものも見えてきた。
(……、あれ?)
山奥の地図にのっていない村。
村の向こう側に見える、堅牢な檻。
「…ディエントさん ここって薬草の産地ですか?」
「どうなのかしら」
少し分けていただけないだろうか、と。
村に着くなり村長のところへ押しかけ、クァイリはそう頼み込んだ。
(……ここが薬草を作っていると分かっている風を装えば、その確認にもなりますし)
付け焼き刃のカマ掛けであることは、重々承知ではある。
ただ、幼いころから何を考えているのか分かりにくい,と言われてきた事を信じる。
村長は形式的な挨拶から流れるように話題が変わり、驚いていた。
しばらくして我に返り、考え始める。
「…何のためかな?」
かくして、クァイリのカマ掛けは成功はした。
ただ基本的に付け焼き刃の行き当たりばったりのため、その先の計画は全くなかった。
したがって駆け引きもなく、本来の目的を言うしかなかった。
「研究の為です」
何の、とは説明しなかった。
ただでさえ、テイムの生態研究は忌み嫌われやすいものである。
「断る」
即答であった。
断られる事自体は予想通りだったものの、即答は意外だった為、反応が遅れる。
ディエントの小さな咳払いに、ハッと我に返る。
「…、分かりました ありがとうございました」
素直に引き下がる。
あっさりとした引き下がりに、村長は少し拍子抜けする。
失礼しました,と立ち上がり、ディエントもそれに続く。
一礼をして、応接間から出る。
「ーー旅人さんよ」
後ろから、村長の声がとぶ。
振り返ると、村長はお茶を手に座っている。
「そんなに多くの薬草が必要なのかい?」
普通に買うことはしないのか、と。
別に量が欲しいわけではないものの、取り立ての新鮮な状態が欲しい為、返事を悩む。
ただ説明するのも,と考え頷く。
「村々の人に頼むのは良いが、やめておけ」
そんな気はなかったクァイリは、何も言わず聞いておく。
そういう手段を提案しかけていたディエントは、やはり無駄なのか,と考える。
「あれは”生を奪う草” おいそれと使ってはならんものだ」
ん?、と引っかかるクァイリ。
部屋の中で一人椅子に座っている村長は、どこか謝っているようにも見えた。
「外から来たのならば、一日,この村にいるだけでも十分であろう それで我慢せい」
分かりました,と一言。
二人は、村長の屋敷から外へ出た。
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