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16 興味と恐怖
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「獣も知恵を持つのね」
そう呟く。
草をかき分けながら、クァイリは考える。
独り言として呟いたディエントは、特に気にせず足を進める。
「……私は、」
茎を踏み折る音に混じって、その声が耳に届く。
少し視線が下がっていたディエントは、前へ目を上げる。
淡々と前へ進みながら、振り返ることなく話し始めるクァイリ。
「野性の動物にしては、あれはやり過ぎだと思います」
「ええ ただ現にあんなものを見たら、野生動物にも高い知性を持つ個体も
いるのね、と思わざる得なくない?」
背中に問う。
無反応とも思える間の後、
「……ヤマキバチの毒、ですけど」
「私がそう思っただけよ 正確じゃないわ」
いえ,そういうことではなく、と口をはさむ。
そう、と言って、ディエントは口を閉じる。
バキ,と木の枝を踏み折る。
「柵の先に付ける,という行動も些か頭が良すぎるとは思いますが、それ以前に
あの辺りにはヤマキバチに類する毒草は生えていませんでした」
ちゃんと調べた訳ではないのですけど、と付け足す。
そういえば、と今まで歩いてきた山道を思い出しながら,ディエントも納得する。
「それに,ハリネズミは元々、自身が外敵から守るための武器を持っている動物です」
「それがどうかした?」
話が別の方向へいき、疑問を口にする。
クァイリは文章でしか知らない知識に不安を覚えながらも、事実として口にする。
「ハリネズミは体表を針で被うことで外敵から身を守る動物です
被われていない腹や頭部を守るためには巣穴で充分なはずです」
少なくとも、自然界では。
内心、実際の野生動物を見てきたであろうディエントに否定される事を恐れながらも。
自身が書物で読んだ"事実"が、現実とあったいることを願いながら、反応を待つ。
「……確かにおかしいのは分かるけれど、だから何?」
なかなか結論に辿り着かないことに、少し苛立ちを覚える。
低いトーンの声に興奮しかけていた頭が冷え、冷静に戻るクァイリ。
「あれは、ハリネズミではない,ということです」
「……、っ」
一瞬,間を置いて気がつくディエント。
ばっと顔が上がったのを気配で感じながら、前へ進む。
後ろを振り返らなくても驚きを理解できてもらえたことが分かり、少し笑みを漏らす。
「あれはハリネズミのテイムです」
「…野性の,テイム」
テイムと動物の見分け方は、非常に難しい。
その事だけを専門とする職業が存在するくらいには。
その代表的な方法として知能テストがあるが、それに当てはめても先のハリネズミは
テイムである可能性が非常に高い。
「…採取しなくても良かったの?」
ふと、ディエントが聞く。
クァイリが学園を飛び出して旅に同行することになった理由は、野性のテイムを観察
したいから。そう言ってアンダスも説得していたはずではあった。
「良いんです 捕獲用の、持ってきていませんし」
そう言って背中のリュックを揺らす。
がちゃ、と小びんがぶつかる音が聞こえた。
そこで会話が途切れる。
(テイムってすごいんですね…)
淡々と歩きながら、ぽつりと心の中で呟く。
歩きながら自分の体に巻きついている、テイムを思う。
(…やっぱり、教えられなくても知性って宿っているんですね)
どうやって知るのでしょう、と少し笑みを漏らす。
テイムの謎に面白みをディエントが感じているとき、クァイリは考え込んでいた。
半分目を閉じているような状態で、踏みしめる草木の音が聞こえないほどに集中して。
(アンダス先生………、もしかしたら、……合っているかもしれない)
純粋な喜びとも違う。
どこか恐怖心にも似た激情が、胸に渦巻いていた。
冷や汗が、頬を伝う。
(野性のテイムは、やはり、動物と見分けがつきにくい)
脳裏には先ほどのハリネズミのテイム。
見知らぬ人間に対して、警告音を発する姿。
まるで普通の野性の動物。
(……野性のテイムと、人に飼われているテイムの違いは、)
脳裏には親友リーブと、そのテイムのヘビのスシャータ。
例外なく”人懐こく”警戒心を持たない彼ら。
本当に人懐こいのか、という疑念が形になった瞬間だった。
(人の管理下で生まれたか……、生後間もなく契りを交わしているか…、人に囲まれて
生きているか…)
それともやはり、と眉間にシワがよる。
険しい目で山道を睨みつける。
恐怖心に似た何かで足を止めてしまわないように、射殺すように前を見据えた。
そう呟く。
草をかき分けながら、クァイリは考える。
独り言として呟いたディエントは、特に気にせず足を進める。
「……私は、」
茎を踏み折る音に混じって、その声が耳に届く。
少し視線が下がっていたディエントは、前へ目を上げる。
淡々と前へ進みながら、振り返ることなく話し始めるクァイリ。
「野性の動物にしては、あれはやり過ぎだと思います」
「ええ ただ現にあんなものを見たら、野生動物にも高い知性を持つ個体も
いるのね、と思わざる得なくない?」
背中に問う。
無反応とも思える間の後、
「……ヤマキバチの毒、ですけど」
「私がそう思っただけよ 正確じゃないわ」
いえ,そういうことではなく、と口をはさむ。
そう、と言って、ディエントは口を閉じる。
バキ,と木の枝を踏み折る。
「柵の先に付ける,という行動も些か頭が良すぎるとは思いますが、それ以前に
あの辺りにはヤマキバチに類する毒草は生えていませんでした」
ちゃんと調べた訳ではないのですけど、と付け足す。
そういえば、と今まで歩いてきた山道を思い出しながら,ディエントも納得する。
「それに,ハリネズミは元々、自身が外敵から守るための武器を持っている動物です」
「それがどうかした?」
話が別の方向へいき、疑問を口にする。
クァイリは文章でしか知らない知識に不安を覚えながらも、事実として口にする。
「ハリネズミは体表を針で被うことで外敵から身を守る動物です
被われていない腹や頭部を守るためには巣穴で充分なはずです」
少なくとも、自然界では。
内心、実際の野生動物を見てきたであろうディエントに否定される事を恐れながらも。
自身が書物で読んだ"事実"が、現実とあったいることを願いながら、反応を待つ。
「……確かにおかしいのは分かるけれど、だから何?」
なかなか結論に辿り着かないことに、少し苛立ちを覚える。
低いトーンの声に興奮しかけていた頭が冷え、冷静に戻るクァイリ。
「あれは、ハリネズミではない,ということです」
「……、っ」
一瞬,間を置いて気がつくディエント。
ばっと顔が上がったのを気配で感じながら、前へ進む。
後ろを振り返らなくても驚きを理解できてもらえたことが分かり、少し笑みを漏らす。
「あれはハリネズミのテイムです」
「…野性の,テイム」
テイムと動物の見分け方は、非常に難しい。
その事だけを専門とする職業が存在するくらいには。
その代表的な方法として知能テストがあるが、それに当てはめても先のハリネズミは
テイムである可能性が非常に高い。
「…採取しなくても良かったの?」
ふと、ディエントが聞く。
クァイリが学園を飛び出して旅に同行することになった理由は、野性のテイムを観察
したいから。そう言ってアンダスも説得していたはずではあった。
「良いんです 捕獲用の、持ってきていませんし」
そう言って背中のリュックを揺らす。
がちゃ、と小びんがぶつかる音が聞こえた。
そこで会話が途切れる。
(テイムってすごいんですね…)
淡々と歩きながら、ぽつりと心の中で呟く。
歩きながら自分の体に巻きついている、テイムを思う。
(…やっぱり、教えられなくても知性って宿っているんですね)
どうやって知るのでしょう、と少し笑みを漏らす。
テイムの謎に面白みをディエントが感じているとき、クァイリは考え込んでいた。
半分目を閉じているような状態で、踏みしめる草木の音が聞こえないほどに集中して。
(アンダス先生………、もしかしたら、……合っているかもしれない)
純粋な喜びとも違う。
どこか恐怖心にも似た激情が、胸に渦巻いていた。
冷や汗が、頬を伝う。
(野性のテイムは、やはり、動物と見分けがつきにくい)
脳裏には先ほどのハリネズミのテイム。
見知らぬ人間に対して、警告音を発する姿。
まるで普通の野性の動物。
(……野性のテイムと、人に飼われているテイムの違いは、)
脳裏には親友リーブと、そのテイムのヘビのスシャータ。
例外なく”人懐こく”警戒心を持たない彼ら。
本当に人懐こいのか、という疑念が形になった瞬間だった。
(人の管理下で生まれたか……、生後間もなく契りを交わしているか…、人に囲まれて
生きているか…)
それともやはり、と眉間にシワがよる。
険しい目で山道を睨みつける。
恐怖心に似た何かで足を止めてしまわないように、射殺すように前を見据えた。
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