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35 いつか読んだあの話
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まぁ、座ってくれ。
その言葉にクァイリはソファに座る。
机の目の前に置かれた、二対のソファと間の長机。
女性はわざわざ席を立ち、クァイリの正面に座る。
目は、先程までとは違い、少しやわらかいものに。
緊張感も薄れており、程よい空気が流れていた。
「少年 君はテイムはどういった存在だと考える?」
女性から口を開く。
名乗ることを忘れ、名乗るタイミングを逃したクァイリは、考える。
自分は、テイムをどういう存在として研究対象にしているのか,と。
(……アンダス先生と、同じ質問ですよね…?)
改めて考え出した答えは、その時とはまったく別の言葉だった。
「人より賢く生命力が強い、生き物だと ただ、あまり生きることに執着していない
ような、お伽話の妖精や精霊のような存在だと思います」
クァイリ自身、少し極端な言い方をしているのは自覚していた。
しかし、これまで見てきた野性のテイムや、自分が考えている仮定が真実ならば、そう
言っても間違いではないと思っていた。
非凡な事を言いたがる子供のような応えに、女性は笑みをこぼす。
「では、そんなテイムの、人間との関係について,どう考えている?」
その問いには、すぐに答えた。
「対等ではなく、奴隷として飼われていると」
根拠はない、単なる勘のようなものだった。
その何となくの印象から、後付けのように推測をしていき、仮定としているクァイリ。
若さ故の根拠のない自信に、デジャブを覚える女性。
(やはり…、こういう小難しくない奴も、見ていて気持ちな)
その笑いの意味を知らないクァイリは,キョトンとする。
「まぁ、なんだ…」
笑いを収めつつ、答えを受けて話を再開しようとする。
息が整った辺りで,女性は座り直して、改めて正面から向き合う。
「奴隷は、言いすぎだな」
一種の共存とも言える、と訂正を加える。
あまり腑に落ちないものの、頷いて話を先へ進める。
(只、的は射ているんだな……)
納得できていない様子のクァイリを、見ながら心の中で呟く。
目を細めて観察しているような視線に気がつき顔をあげると、女性は話を続けた。
「どうせ、アンダスは私の本ばかり集めて研究の方針にしているんだろう」
大方,その影響を受けているだろう,と。
女性の言葉を理解できず、クァイリは戸惑う。
アンダスの研究で使われるのは、伝承や古文書のような、昔から語り継がれてきたような
誰の著書という特定の本ではないからだった。
訂正の必要はないだろうと考え、話の続きを聞く。
「テイムは元々、自然の片隅でひっそりと考え暮らす存在だった」
静かに語る。
その言葉にどこか聞き覚えを感じるクァイリ。
「何かを知る為にその者に成り、その集団の中には入り込む
時には直接取り込み,時には違う形で接触し,知ろうとする,不定の異形の生物」
その言葉に、クァイリはサラァテュを思い出す。
天井にびっしり付いていた、肉塊としか表現できない不定の存在。
ディエントを貫いた後、取り込んでいたあの光景。
(禁種とは……、元々の姿により近い個体ということなのか?)
しかし、クァイリの中で通常のテイムと、禁種の姿が結びつかない。
なぜ,あそこまで違うのか。
その疑問を見透かしたように、女性は話を続ける。
「ある時、人間に興味を持った彼らは人里に降りてきた」
その言葉に、クァイリの中で何かがつながる。
はっとした表情を見つつ、言葉を紡ぐ。
「私たちはあなたたちと共に生きてゆく友人です,と」
クァイリの脳裏には、一冊の本が思い出されていた。
アンダスの研究室に入ってすぐの頃、勧められて開いた、古びた伝承集。
その冒頭。
「人々は受け入れたが、彼らの多様性と賢さに畏れを抱いた」
伝承を纏めた人の名が、著者として書かれていた。
村の人々から聞いた名とは違うものの、まさか、と手に汗をかく。
「そこで彼らは、自分たちの能力を一時的に抑える薬を作り、渡した」
これで大丈夫です,と。
無邪気に人々に渡したのだろうと、容易に想像できた。
自虐的な笑みを浮かべながら、話を続ける。
「だが人々の目には、それはこう映った」
クァイリは聞かなくても、その答えが分かった。
「私たちはあなた方の従順な僕です,と」
その言葉にクァイリはソファに座る。
机の目の前に置かれた、二対のソファと間の長机。
女性はわざわざ席を立ち、クァイリの正面に座る。
目は、先程までとは違い、少しやわらかいものに。
緊張感も薄れており、程よい空気が流れていた。
「少年 君はテイムはどういった存在だと考える?」
女性から口を開く。
名乗ることを忘れ、名乗るタイミングを逃したクァイリは、考える。
自分は、テイムをどういう存在として研究対象にしているのか,と。
(……アンダス先生と、同じ質問ですよね…?)
改めて考え出した答えは、その時とはまったく別の言葉だった。
「人より賢く生命力が強い、生き物だと ただ、あまり生きることに執着していない
ような、お伽話の妖精や精霊のような存在だと思います」
クァイリ自身、少し極端な言い方をしているのは自覚していた。
しかし、これまで見てきた野性のテイムや、自分が考えている仮定が真実ならば、そう
言っても間違いではないと思っていた。
非凡な事を言いたがる子供のような応えに、女性は笑みをこぼす。
「では、そんなテイムの、人間との関係について,どう考えている?」
その問いには、すぐに答えた。
「対等ではなく、奴隷として飼われていると」
根拠はない、単なる勘のようなものだった。
その何となくの印象から、後付けのように推測をしていき、仮定としているクァイリ。
若さ故の根拠のない自信に、デジャブを覚える女性。
(やはり…、こういう小難しくない奴も、見ていて気持ちな)
その笑いの意味を知らないクァイリは,キョトンとする。
「まぁ、なんだ…」
笑いを収めつつ、答えを受けて話を再開しようとする。
息が整った辺りで,女性は座り直して、改めて正面から向き合う。
「奴隷は、言いすぎだな」
一種の共存とも言える、と訂正を加える。
あまり腑に落ちないものの、頷いて話を先へ進める。
(只、的は射ているんだな……)
納得できていない様子のクァイリを、見ながら心の中で呟く。
目を細めて観察しているような視線に気がつき顔をあげると、女性は話を続けた。
「どうせ、アンダスは私の本ばかり集めて研究の方針にしているんだろう」
大方,その影響を受けているだろう,と。
女性の言葉を理解できず、クァイリは戸惑う。
アンダスの研究で使われるのは、伝承や古文書のような、昔から語り継がれてきたような
誰の著書という特定の本ではないからだった。
訂正の必要はないだろうと考え、話の続きを聞く。
「テイムは元々、自然の片隅でひっそりと考え暮らす存在だった」
静かに語る。
その言葉にどこか聞き覚えを感じるクァイリ。
「何かを知る為にその者に成り、その集団の中には入り込む
時には直接取り込み,時には違う形で接触し,知ろうとする,不定の異形の生物」
その言葉に、クァイリはサラァテュを思い出す。
天井にびっしり付いていた、肉塊としか表現できない不定の存在。
ディエントを貫いた後、取り込んでいたあの光景。
(禁種とは……、元々の姿により近い個体ということなのか?)
しかし、クァイリの中で通常のテイムと、禁種の姿が結びつかない。
なぜ,あそこまで違うのか。
その疑問を見透かしたように、女性は話を続ける。
「ある時、人間に興味を持った彼らは人里に降りてきた」
その言葉に、クァイリの中で何かがつながる。
はっとした表情を見つつ、言葉を紡ぐ。
「私たちはあなたたちと共に生きてゆく友人です,と」
クァイリの脳裏には、一冊の本が思い出されていた。
アンダスの研究室に入ってすぐの頃、勧められて開いた、古びた伝承集。
その冒頭。
「人々は受け入れたが、彼らの多様性と賢さに畏れを抱いた」
伝承を纏めた人の名が、著者として書かれていた。
村の人々から聞いた名とは違うものの、まさか、と手に汗をかく。
「そこで彼らは、自分たちの能力を一時的に抑える薬を作り、渡した」
これで大丈夫です,と。
無邪気に人々に渡したのだろうと、容易に想像できた。
自虐的な笑みを浮かべながら、話を続ける。
「だが人々の目には、それはこう映った」
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