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41 久々の出会い、
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「兄さん…」
「何でお前が…」
呆然とした、呟き。
扉を開けて入った2人は、そこで立ち止まった。
何故か動揺を隠すクァイリは、2人の前に立っている人物を睨みつける。
「ディエントさんの後継は、彼らですか」
表情自体は、うっすら笑みを浮かべていた。
サディシャは驚いているような表情を作りながら,応える。
「君には関係のない話だよ」
この状況で、そう言い切る。
無理があるでしょう,と心の中で呟きながら、クァイリはチラリと後ろを窺う。
すぐ後ろにあった大瓶はもうなく、肉塊が胎動しながらゆっくりと下がっていた。
一瞬の確認の後、ホッとして視線をすぐに前へ戻す。
「さぁ、どきたまえ」
にっこりと人の良さそうな笑みがあった。
あまりにも場違いな表情が、気味が悪かった。
ただその表情に、クァイリは安心を得た。
(……見逃された…?)
確証はないものの、気がつかれた様子はない。
すでに跡形もなく取り込み終え、元の場所へ戻っていく肉塊を気配で感じる。
おそらく苦しんでいるであろう肉塊の様子に気がつかれないよう、クァイリは話を続ける。
「2人は何故ここに?」
視線はサディシャから逸らさず。
まるで、どう誘惑された,と聞いているかのように。
予想外の状況に、未だ平静になれていない2人は、その意図には気がつかない。
視線の先が自分たちに向いていないことに気が付かない。
「何故って……、」
視線を彷徨わせるセレンス。
傍に控えて立っているリルは、落ち着いた様子でクァイリに視線を向ける。
ただ今のクァイリには、単に意識が朦朧としているようにしか見えなかった。
「兄さんの仇を討つために…、その災害を、脅威を倒さないかって…」
おどおどと答える。
なるほどね、と納得した視線をサディシャへ向ける。
当然、この程度では表情に変化は現れないが、気にせず話を進める。
「リーブは?」
さすがに視線をずらす。
案の定、落ち着きを取り戻しつつ合ったリーブは、クァイリの目をまっすぐ見る。
若干の戸惑いの色は滲み出てはいたものの、ハッキリと責める意思が感じられた。
「俺たちにはその素質があると,言われてな」
安い誘い文句に,思わず笑いたくなるクァイリ。
しかし、リーブの無言の問いに、応えられずにいた。
何故,お前がそちら側にいるのか、という問い。
「生きていたんだね」
沈黙を守っていたサディシャが、突然話に入ってくる。
その言葉には、嘘は一切含まれていなかった。
喜ばしい予想外かどうかは、薄っぺらい言葉の響きを聞かなくても、分かった。
息をするように零れる、”嘘ではない”言葉。
そう分かっていても、クァイリは何故かカチンと頭にきた。
「あれから自棄になって死んだと思っていたのですか?
あなたと違って無知だから、皆と同じように無駄死にしたとでも?」
サディシャから笑みが消える。
後ろに控えている2人も、驚いて何も言えずにいた。
クァイリ自身、ここまで怒りを感じたのは初めてだった。
(……まぁ、親友や妹が利用されたからではないというのが,私らしいですけど)
心の中の平静なクァイリが、苦笑いを浮かべているような気になる。
激しい怒りを露にしたクァイリを、じっと観察するサディシャ。
品定めするような視線を隠す余裕もないほど、その理由を察するのに必死のようだった。
見透かそうとするサディシャ。
鋭い視線を向けながら、クァイリは静かに口を開いた。
「ロニクルさんに、会いました」
もしかすると、別の名で会っていたのかもしれない。
それでもサディシャはすぐに理解し、驚いた表情になる。
ああ、と納得した表情になり、
ゆっくりと、無表情へと変わっていく。
仮面が剥がれ落ちていくかのように、無表情へと変わる。
「私なりに事情を理解した上で,こうして動いています」
サラァテュを背中に、
サディシャを正面から見据える。
話に入っていけない二人は、変わってしまったクァイリを呆然と見ていた。
その後ろで、ゆっくりと肉塊が天井へ戻っていく様子も見ていたが、意識には入ってこない。
ただただ、同じ顔をした全くの別人としか思えず、何も言えなかった。
「サディシャさん」
明確な敵意を示されたクァイリは、このタイミングで問う。
敵として認識された、対等な立場になった今ならば,はぐらかされないかもしれないと。
長年の研究対象にも、取り繕うべき相手である2人にも意識が向いていない,今ならば。
「何故あなたは自分自身の手でやらず、他人を利用して事を成そうとするのですか?」
落ち着いた声。
挑発しているような言い方に、サディシャは表情を変えない。
この問いの根底にあるものが、批判的ではあるものの疑問であることを感じ取っていた。
「より正確なデータを得るには,第三者的立場にいる観測者が必要でしょう?」
渦中にいては、感情が混じってしまう。
周りが見えていない、とよくアンダスに注意されていた事を思い出すクァイリ。
しかしそれはこれとは関係ない事だと、すぐに片付けるJ。
「だからと言って、こちらの都合で相手を振り回してよい理由にはならないでしょう」
「研究者としては当然のことをしているまでです」
目的のための労力は厭わず。
成功はたくさんの犠牲の上に成り立ち、
多くの人の協力から、研究は成り立つ。
ただクァイリはそういう話ではないと、首を振る。
「人として,どうかと思います」
「話の通じない者と言葉を交わしても,無駄ですよ」
気がついてないのですか,と。
無知な者へ言い聞かせるように、応える。
しかしクァイリが言いたいのは、そういう話ではなかった。
「だから説得も説明もしないのですか?」
「そんなことで人生を終えろとでも言うのですか?」
少し苛つき始めるサディシャ。
伝わらないもどかしさと、何故しなければならないのかという理不尽に対する怒り。
無表情だった顔には,いつしかそれらが入り混じった感情が浮かんでいた。
「何でお前が…」
呆然とした、呟き。
扉を開けて入った2人は、そこで立ち止まった。
何故か動揺を隠すクァイリは、2人の前に立っている人物を睨みつける。
「ディエントさんの後継は、彼らですか」
表情自体は、うっすら笑みを浮かべていた。
サディシャは驚いているような表情を作りながら,応える。
「君には関係のない話だよ」
この状況で、そう言い切る。
無理があるでしょう,と心の中で呟きながら、クァイリはチラリと後ろを窺う。
すぐ後ろにあった大瓶はもうなく、肉塊が胎動しながらゆっくりと下がっていた。
一瞬の確認の後、ホッとして視線をすぐに前へ戻す。
「さぁ、どきたまえ」
にっこりと人の良さそうな笑みがあった。
あまりにも場違いな表情が、気味が悪かった。
ただその表情に、クァイリは安心を得た。
(……見逃された…?)
確証はないものの、気がつかれた様子はない。
すでに跡形もなく取り込み終え、元の場所へ戻っていく肉塊を気配で感じる。
おそらく苦しんでいるであろう肉塊の様子に気がつかれないよう、クァイリは話を続ける。
「2人は何故ここに?」
視線はサディシャから逸らさず。
まるで、どう誘惑された,と聞いているかのように。
予想外の状況に、未だ平静になれていない2人は、その意図には気がつかない。
視線の先が自分たちに向いていないことに気が付かない。
「何故って……、」
視線を彷徨わせるセレンス。
傍に控えて立っているリルは、落ち着いた様子でクァイリに視線を向ける。
ただ今のクァイリには、単に意識が朦朧としているようにしか見えなかった。
「兄さんの仇を討つために…、その災害を、脅威を倒さないかって…」
おどおどと答える。
なるほどね、と納得した視線をサディシャへ向ける。
当然、この程度では表情に変化は現れないが、気にせず話を進める。
「リーブは?」
さすがに視線をずらす。
案の定、落ち着きを取り戻しつつ合ったリーブは、クァイリの目をまっすぐ見る。
若干の戸惑いの色は滲み出てはいたものの、ハッキリと責める意思が感じられた。
「俺たちにはその素質があると,言われてな」
安い誘い文句に,思わず笑いたくなるクァイリ。
しかし、リーブの無言の問いに、応えられずにいた。
何故,お前がそちら側にいるのか、という問い。
「生きていたんだね」
沈黙を守っていたサディシャが、突然話に入ってくる。
その言葉には、嘘は一切含まれていなかった。
喜ばしい予想外かどうかは、薄っぺらい言葉の響きを聞かなくても、分かった。
息をするように零れる、”嘘ではない”言葉。
そう分かっていても、クァイリは何故かカチンと頭にきた。
「あれから自棄になって死んだと思っていたのですか?
あなたと違って無知だから、皆と同じように無駄死にしたとでも?」
サディシャから笑みが消える。
後ろに控えている2人も、驚いて何も言えずにいた。
クァイリ自身、ここまで怒りを感じたのは初めてだった。
(……まぁ、親友や妹が利用されたからではないというのが,私らしいですけど)
心の中の平静なクァイリが、苦笑いを浮かべているような気になる。
激しい怒りを露にしたクァイリを、じっと観察するサディシャ。
品定めするような視線を隠す余裕もないほど、その理由を察するのに必死のようだった。
見透かそうとするサディシャ。
鋭い視線を向けながら、クァイリは静かに口を開いた。
「ロニクルさんに、会いました」
もしかすると、別の名で会っていたのかもしれない。
それでもサディシャはすぐに理解し、驚いた表情になる。
ああ、と納得した表情になり、
ゆっくりと、無表情へと変わっていく。
仮面が剥がれ落ちていくかのように、無表情へと変わる。
「私なりに事情を理解した上で,こうして動いています」
サラァテュを背中に、
サディシャを正面から見据える。
話に入っていけない二人は、変わってしまったクァイリを呆然と見ていた。
その後ろで、ゆっくりと肉塊が天井へ戻っていく様子も見ていたが、意識には入ってこない。
ただただ、同じ顔をした全くの別人としか思えず、何も言えなかった。
「サディシャさん」
明確な敵意を示されたクァイリは、このタイミングで問う。
敵として認識された、対等な立場になった今ならば,はぐらかされないかもしれないと。
長年の研究対象にも、取り繕うべき相手である2人にも意識が向いていない,今ならば。
「何故あなたは自分自身の手でやらず、他人を利用して事を成そうとするのですか?」
落ち着いた声。
挑発しているような言い方に、サディシャは表情を変えない。
この問いの根底にあるものが、批判的ではあるものの疑問であることを感じ取っていた。
「より正確なデータを得るには,第三者的立場にいる観測者が必要でしょう?」
渦中にいては、感情が混じってしまう。
周りが見えていない、とよくアンダスに注意されていた事を思い出すクァイリ。
しかしそれはこれとは関係ない事だと、すぐに片付けるJ。
「だからと言って、こちらの都合で相手を振り回してよい理由にはならないでしょう」
「研究者としては当然のことをしているまでです」
目的のための労力は厭わず。
成功はたくさんの犠牲の上に成り立ち、
多くの人の協力から、研究は成り立つ。
ただクァイリはそういう話ではないと、首を振る。
「人として,どうかと思います」
「話の通じない者と言葉を交わしても,無駄ですよ」
気がついてないのですか,と。
無知な者へ言い聞かせるように、応える。
しかしクァイリが言いたいのは、そういう話ではなかった。
「だから説得も説明もしないのですか?」
「そんなことで人生を終えろとでも言うのですか?」
少し苛つき始めるサディシャ。
伝わらないもどかしさと、何故しなければならないのかという理不尽に対する怒り。
無表情だった顔には,いつしかそれらが入り混じった感情が浮かんでいた。
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