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田中神代

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47 彼らとの昔の話、これからの道

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 1週間後。
学園の広い敷地に、人が押し寄せていた。
その広大な光景を見渡せるバルコニーの奥に、2人は立っていた。
「ここら一帯の住人、全学生とその親族、関わりのある研究者とその家族です」
 見渡す限りの人だかり。
この高さまで伝わるくらい、ざわついていた。
ふん、と鼻を鳴らしロニクルは前へ進み出る。
「及第点だ」
 背を向けたまま、そう伝える。
紫紺色のローブに身を包んだ後姿を黙って見送る。
キィンとマイクのハウリングに、ざわつきが引いていく。
『初めまして、アンダス氏の友人とも言える、ロニクルという者だ』
 壇上に立ったロニクルは、間をおかず話を始めた。
バルコニーに立つ姿を見上げる人々は、皆、疲れていた。
いつも傍らにいたテイムを持つものは少なく、寂しい空間を抱えていた。
『君らで言う、禁種にあたる、純粋な人型テイムだ』
 一瞬の静寂。
この瞬間、人々の顔に浮かんでいた濃い疲労の色が消えた。
そして波が押し寄せてくるかのように騒がしくなる広場。
 ロニクルはそれらに構うことなく、話を続ける。
『信じるかどうかは任せる  ここへは少し、話をしに来ただけだ』
 後ろから見守るアンダスの手には、一冊の民話集が抱えられていた。



『君らに与えた薬水  それを毒として多量に与え続けた人間』
 ”昔話”を終えたロニクルは、広場の人々を見下ろしていた。
いつの間にか水を打ったように静かになっている人々は、顔も見えぬ高みにいる
ソレを、黙って見上げていた。
『君らとテイムたちの間には、絆などない』
 非難めいた言葉にも、反応はない。
あまりに突拍子もなく、それでいて凄味のある言葉に、ただ耳を傾けていた。
『ただ、今、その薬水もなくなっている』
 たった数週間で、大きな影響が出ている。
もうどうしようもない状況に追い込まれていたからこそ,こんなにも人が集まっていた。
『ノップスという古き友人が薬草の大半を枯らしたからだ』
 その言葉に、人々はざわつき始める。
薬水がなく禁断症状によって死んでしまったテイムも少なくない。
しかし、それに繋がる感情が表れる前に、話は前へ進む。
『長年、捻れてきた関係を解消する,良い機会だ』
 良い機会,と言いながら、ロニクルは少しも嬉しそうではなかった。
今まで待っていたのだからいい加減動け,と言わんばかりの、冷たく冷酷な言葉。
そこに込められている感情を合えて言うならば、諦めと怒りだった。
『今後,君らがどういう行動を取るか,君らが決めろ  私たちの心は既に決まっている』
 高らかに,宣言をする。
奮い立たせるようなものではなく、鼓舞するような響きもなく。
ただ淡々と商談を交渉しているかのような、逃げを許さない鋭さを持っていた。
 言うべき事を伝え追えると、人々のざわめきに背を向ける。
 ふっ、と小さく息を吐き、ロニクルは壇上から下りた。
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