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懐疑の回避。
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換金ギルド『ポーン』の受付嬢が疑いの眼差しを私に向けている。この女……いや、恐らくはこのお店自体が、二度も鉱物を持ち込んだ私がどこからか盗んで来たのではないかと疑っている。どうすれば良いのか? 私は必死になって考えを巡らせていた。
「悪いけど、教えられないわ」
考えに考え抜いた答えがこれだった。下手な言い訳は逆効果。しかし、本当の事を言うには周りに人が多過ぎる。……まあ、人が居なくても恥ずかしいから言わないけど。
「どうしてですか? まさか、何処からか盗んで──」
「待って」
私は掌を受付嬢に向けて、その先の言葉を中断させる。
「そう結論付けるのは早計よ。いい? しっかりと想像して頂戴。冒険者でもなんでも無い私の様な一般市民でも、無傷で手に入れられる鉱物があったとするわ。もしもあなただったなら、『その場所を教えて』と言われたら素直に教えるの? それを聞いた大勢の人達に乱獲されて、確実にあなたの収入が減るのよ?」
これでなんとか納得して欲しいな……。でも、考え込んでいる所を見る限りじゃまだ足りないか。もうひと押しかな……
「いいわ。教えてあげる」
「え……? 教えていただけるのですか?」
「ただし条件があるの」
「条件……?」
「ええ。さっきも言ったけど、コレを話せば私の収入源が無くなるわ。だから、例え鉱物が採れなくても一切文句を言わずに、このお店で私を一生養ってくれるのなら全部話すわ」
これが通れば全部話さなければならないが、無茶な請求だしほぼ通らないとみて間違いないだろう。通ったところで他の場所を示してやれば良いだけだ。
「し、少々お待ち下さい。マスターに相談して参ります」
受付嬢が慌ててお店の奥へと引っ込んで行く。その背中を見て、言い過ぎた感が否めず不安が込み上げて来ていた。黒い服を着た強面の人が出て来たらどうしよう。とか、つい思ってしまう。しかし、受付嬢に代わって出て来たのが、笑みを絶やさない男の人であった事でその不安も吹き飛んだ。急に般若の様な顔付きにはならない、よね。
「先ほどは大変失礼いたしました。盗品等を売りに来る様な輩も増えてきておりますので、こちらも警戒をしているところでして」
マスターらしき男の人はそう言うが、私は声を大にして言い切る事が出来る。コレは決して誰かから盗んだわけではない、と。だけど、コレは私のアレなんです。とは口が裂けても言えない。
「そうなんですか?」
「はい。最近、南へと向かう街道沿いに盗賊が出没する様でして、南方に在る街に盗品が持ち込まれた、と連絡が有りましたので」
なるほど。それで疑っていたという訳か。
「換金ギルドも大変なんですね」
「ご心配、痛み入ります。おっと、話が長くなってしまいましたね。それではこちらが鑑定結果の額となります。お確かめ下さい」
手渡された封筒を開け、中身を出さずに確認する。千と書かれたお札が……アレ? 前回より多いような……
「あの、多いんですけど……?」
「ええ、ほんの僅かですがご迷惑をお掛けしたお詫び。と、言った所です。これからも『ポーン』をご贔屓に」
マスターらしき男の人は受付嬢と共に深くお辞儀をする。まあ、そういう事なら貰っておくか。
「ふう……」
ドサリ。と腰を下ろすと、木製のベッドからギシリ。と軋む音が聞こえた。ゴロリ。とそのまま寝転がると、ドッと疲れが押し寄せる。今日は妙な心理戦が有ったから余計に疲れた気がする。そう思いつつ、横になりながら木製のテーブル上に置かれた封筒を、ぼんやりと眺めていた。
中身は先程ギルドで換金した一万『八千』ドロップが入っている。男の人はほんの僅かと言っていたが、千と書かれたお札が八枚も多く入っていたのだ。この額は月々の生活費と同じだ。全然僅かじゃ無いじゃん。
「どうしてあんなモノが出る様になっちゃったんだろ……」
元の世界で生活していた頃にはそんなモノなんか出なかった。アレが出る様になったのはコッチに来てからだ。
「あの天使が何かしたのかな……」
──ある日、目を覚ますと見知らぬ天井があった。一瞬、まさかラブホ!? とか思ったが、周りの情景からそんな考えも吹き飛んだ。雲一つ無い蒼い空が地平線まで続き、咲き乱れた花々が寝ていたお姫様ベッドの周囲を埋め尽くしていた。ここは明らかにラブホとは違う。咲いた花が風に揺れているのだから室内ですら無い。そもそも、こんな場所は世界中のどこ探しても見つかる事は無いだろう。
「……夢?」
にしては、現実感が強い。『ナルコレプシー』って可能性も捨てきれないが……
「夢とはちょっと違うね」
思い掛けない方向からの答えに慌てて振り向き、答えた人物とのあまりの近さに更に驚いて飛び退いて花畑に尻もちをつく。舞い上がる花びらの最中私が見たのは、舞った花びらにも負けない真っ白な翼を持った天使だった。
「悪いけど、教えられないわ」
考えに考え抜いた答えがこれだった。下手な言い訳は逆効果。しかし、本当の事を言うには周りに人が多過ぎる。……まあ、人が居なくても恥ずかしいから言わないけど。
「どうしてですか? まさか、何処からか盗んで──」
「待って」
私は掌を受付嬢に向けて、その先の言葉を中断させる。
「そう結論付けるのは早計よ。いい? しっかりと想像して頂戴。冒険者でもなんでも無い私の様な一般市民でも、無傷で手に入れられる鉱物があったとするわ。もしもあなただったなら、『その場所を教えて』と言われたら素直に教えるの? それを聞いた大勢の人達に乱獲されて、確実にあなたの収入が減るのよ?」
これでなんとか納得して欲しいな……。でも、考え込んでいる所を見る限りじゃまだ足りないか。もうひと押しかな……
「いいわ。教えてあげる」
「え……? 教えていただけるのですか?」
「ただし条件があるの」
「条件……?」
「ええ。さっきも言ったけど、コレを話せば私の収入源が無くなるわ。だから、例え鉱物が採れなくても一切文句を言わずに、このお店で私を一生養ってくれるのなら全部話すわ」
これが通れば全部話さなければならないが、無茶な請求だしほぼ通らないとみて間違いないだろう。通ったところで他の場所を示してやれば良いだけだ。
「し、少々お待ち下さい。マスターに相談して参ります」
受付嬢が慌ててお店の奥へと引っ込んで行く。その背中を見て、言い過ぎた感が否めず不安が込み上げて来ていた。黒い服を着た強面の人が出て来たらどうしよう。とか、つい思ってしまう。しかし、受付嬢に代わって出て来たのが、笑みを絶やさない男の人であった事でその不安も吹き飛んだ。急に般若の様な顔付きにはならない、よね。
「先ほどは大変失礼いたしました。盗品等を売りに来る様な輩も増えてきておりますので、こちらも警戒をしているところでして」
マスターらしき男の人はそう言うが、私は声を大にして言い切る事が出来る。コレは決して誰かから盗んだわけではない、と。だけど、コレは私のアレなんです。とは口が裂けても言えない。
「そうなんですか?」
「はい。最近、南へと向かう街道沿いに盗賊が出没する様でして、南方に在る街に盗品が持ち込まれた、と連絡が有りましたので」
なるほど。それで疑っていたという訳か。
「換金ギルドも大変なんですね」
「ご心配、痛み入ります。おっと、話が長くなってしまいましたね。それではこちらが鑑定結果の額となります。お確かめ下さい」
手渡された封筒を開け、中身を出さずに確認する。千と書かれたお札が……アレ? 前回より多いような……
「あの、多いんですけど……?」
「ええ、ほんの僅かですがご迷惑をお掛けしたお詫び。と、言った所です。これからも『ポーン』をご贔屓に」
マスターらしき男の人は受付嬢と共に深くお辞儀をする。まあ、そういう事なら貰っておくか。
「ふう……」
ドサリ。と腰を下ろすと、木製のベッドからギシリ。と軋む音が聞こえた。ゴロリ。とそのまま寝転がると、ドッと疲れが押し寄せる。今日は妙な心理戦が有ったから余計に疲れた気がする。そう思いつつ、横になりながら木製のテーブル上に置かれた封筒を、ぼんやりと眺めていた。
中身は先程ギルドで換金した一万『八千』ドロップが入っている。男の人はほんの僅かと言っていたが、千と書かれたお札が八枚も多く入っていたのだ。この額は月々の生活費と同じだ。全然僅かじゃ無いじゃん。
「どうしてあんなモノが出る様になっちゃったんだろ……」
元の世界で生活していた頃にはそんなモノなんか出なかった。アレが出る様になったのはコッチに来てからだ。
「あの天使が何かしたのかな……」
──ある日、目を覚ますと見知らぬ天井があった。一瞬、まさかラブホ!? とか思ったが、周りの情景からそんな考えも吹き飛んだ。雲一つ無い蒼い空が地平線まで続き、咲き乱れた花々が寝ていたお姫様ベッドの周囲を埋め尽くしていた。ここは明らかにラブホとは違う。咲いた花が風に揺れているのだから室内ですら無い。そもそも、こんな場所は世界中のどこ探しても見つかる事は無いだろう。
「……夢?」
にしては、現実感が強い。『ナルコレプシー』って可能性も捨てきれないが……
「夢とはちょっと違うね」
思い掛けない方向からの答えに慌てて振り向き、答えた人物とのあまりの近さに更に驚いて飛び退いて花畑に尻もちをつく。舞い上がる花びらの最中私が見たのは、舞った花びらにも負けない真っ白な翼を持った天使だった。
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