私のアレに値が付いた!?

ネコヅキ

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港の横のアルカイック。

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「あ、アレだぁ……」

 思い当たる事はあのディープキスしか無い。『プレゼント』と言っていた割には何の変化も見られなかったから、キスの口実かと思っていた。イケメン天使の言う『困らない様に』というのが、金銭的に。ととらえれば、こんなモノが出て来た事もうなずける。だけど、よりにもよって何でコレなのよっ。逆に困るでしょうがっ!

 コレがアレだって知られたら、受け入れてもらえる筈がないだろうに……。そういえば、元の世界でそういうのが好きな人が居るって聞いた事があったっけ。だったら、コッチでもおそらく……イケるか?

「いやいや、そうじゃなくてっ」

 頭をブンブン振って、脳内にわき出したアブノーマルな世界を外へと追い出す。

 ともかく、原因は分かったんだ。出て来てしまう事が避けられないのなら、その対策を練らなければならない。黙ったままで売り続けるか、全てを打ち明けるか、二つに一つ。日常生活を満喫するのなら前者。良心に従うのなら後者。ただし後者を選んだ場合、私はこの街に居られなくなるオプションがもれなく付いてくる。

 噂が隣町にまで波及すれば、私の居場所はなくなると言っても過言じゃない。そうなれば野宿するしかなくなり、目が覚めたら魔物のお腹の中でしたって事になり兼ねない。でも、前者を選んだとしても可憐な美少女──コホン。美女のアレを買い求めているのには違いないんだけど……

 売らずにこのまま隠しておくにも問題がある。とある人の伝手で借りた、月千五百ドロップのこのアパート。バス、キッチン、トイレ付きで、クローゼットも有るものの、かさばる銀鉱をいつまでも入れておける筈もなく、セキュリティもあって無きが如しだから盗難が怖い。

「あーあ、こんな時に物置とか倉庫があれば、しまっておけるのになぁ……」

 思わず呟いたその言葉に、ハッと気が付いた。

「……そっか、倉庫が無ければ借りれば良いじゃないのっ」

 ここは大きな港街。ならば、貸倉庫の一つや二つある筈だ。

「ふっふっふ。これでもう、猜疑心の眼差しを受けずに済むぞ」

 喉に刺さっていた小骨が取れたような、そんな清々しい気分に浸りながら一日を過ごした。



 私が住んでいるこの街は、大河に隣接した港街。海からは遠く離れた内陸部にあるこの街にも、大きな船が毎日の様に出入りしている。

 昔は、ガレー船という船でオールを漕いでここまで登って来ていたらしいが、流れに逆らって登ってくるのは効率が悪く、また奴隷のアレを垂れ流しにしていた為に、飲食物がダメになってしまっていた様だ。近年、魔導技術の発達で蒸気船によく似た魔導船が登場し、それまでの輸送事情が大きく様変わりをしたらしく、船舶での大量輸送が可能になったという話だ。

「──と、いうわけでして、当店では安心安全をモットーに、最高の管理とセキュリティを実現しております」

 倉庫の案内をしてくれているこの女性。落ち着いた雰囲気が凛々しくてカッコイイ。ミニのタイトスカートからスラリと伸びた生足、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるスレンダーボディ。赤毛のロングヘアを風になびかせながら、背筋をピンッと伸ばして歩くその姿は、キレイの一言に尽きる。私もそれなりと自負しているが、顔はともかくスタイルは負けている。

「お客様……?」

 案内をしてくれている女性が頭をわずかに傾げる。それまで、プリンプリンと左右に揺れ動く彼女のお尻を眺めながら、一体何を食べたらこんな風になるんだ? と、入念に視姦していた私は慌てて返事をする。変に思われた、かな?

「説明は以上となりますので、これから応接室へご案内致します」
「あ、はい。お願いします」

 再びお尻を揺らしながら、先導する案内をしてくれている女性。私一人ならば、迷ってしまいそうになる倉庫群を縫う様に歩き、通商ギルド『アルカイック』へと戻った。



 お店に戻った私を待っていたのは、元の世界でよく見かけるビジネススーツの様な衣服を身にまとった男性。短髪の黒髪は私にとっても見慣れたもので、なんか安心感がある。日本のビジネスマンとの相違点は、片眼鏡モノクルを掛けている。あとは、店名に恥じる事のないアルカイックスマイルを輝かせているくらいだろう。

「ようこそお越しいただきました。ここからは私がご案内致しますので、どうぞこちらへ」
「あ、はい」

 そうして案内された商談室。棚にはそれなりの価値があるのだろう調度品が並び、内装は派手すぎず地味すぎないシンプルな作りになっている。勧められたソファに腰を下ろすと尻肉が僅かに沈んだ。テーブルを挟んだ向かい側にアルカイックスマイルを燦然と輝かせた男性が座る。

「それで、倉庫の貸し出し。というお話ですね?」
「はい。そんな大きなモノじゃなくて良いんです。一番小さなモノで」

 あまり儲けられないと感じたのかもしれない。絶やす事の無いアルカイックスマイルが僅かに曇った気がした。

「そうですか。当ギルドで一番小さな倉庫ですと、容量は約三千キログリム。お値段は、管理費と維持費を込みまして、月四千ドロップになります」

 予想外のその値段に、口に含んだお茶を思わず吹き出しそうになった。

「よ、四千ですかっ!?」
「はい、保冷費を付けますと、五千になります」

 あ、甘かった。月二千、もしくは二千五百くらいまでなら、少々キツイが何とかなると思っていた。まさか倍近くするとは……

「そ、そうですか……」

 私はうーん。と考え込む。飲食店でバイトをして月八千ドロップがせいぜい。アパートの家賃が月千五百で、食費は約三千。その他光熱費と上下水道維持費で千五百を払わねばならない。……た、足りない。全っ然足りない。

「あ、あの。もっと安い倉庫はありませんか……? 出来ればその半分くらいの値段で……」

 その言葉に、男性のアルカイックスマイルがさらに曇った気がした。

「そう仰られましても、保安費用込みのお値段でして。当ギルドではこれが最低値になります」

 そういえば、案内の女性が言っていたっけ。倉庫街は常時警備兵が巡回しているのだと。

「ところで付かぬ事をお伺い致しますが、預け荷はどの様な物なのでしょうか?」
「え?」
「ご存知の通り、当ギルドでは万全な保安体制を敷いております。故に、この街随一の安全な倉庫として、借り主の方々には信用を得ております。その信用を失わない為にも、お預け頂く際には荷をあらためさせて頂いているのです。危険物など持ち込まれては堪りませんので」

 確かに、この男性の言う通りだ。しかし、預かって貰うモノは実はアレなんです。と言った日にゃぁ、馬小屋か下水道に持っていけと言われるに違いない。

「た、大切な物……じゃダメですかね?」

 私の返答に、男性の表情が更に曇った気がしていた。アルカイックスマイルは全く崩れてないけど。

「そう仰られましても、預ける皆さんは大事な商品ばかりですからね」

 まあそうだよね。全然価値の無い物をお金を払ってまで預ける様なおバカさんは居ないよね。

「う……こ、鉱物を預かって欲しいと思ってたんですよ」
「鉱物ですか?」
「はい。今はそれ程多くは無いんですが、今後少しずつ増えていく予定でして……」

 今までの経緯を思えば、週イチくらいで増えていくだろうな。

「それでしたら、換金されてしまった方が管理も楽になると思いますが?」
「そうなんですけどね……」

 最初はそうしていたんだけど、受付嬢の犯罪者を見る様な目が嫌なんだよぅ。

「ふむ。でしたらこうするのはいかがでしょうか? 貴女様がお持ちになった鉱物を、私共が買い取らせて頂く。ただし、私共も利益を出す為に若干安値で買い取らせて頂きます。今日は、その鉱物はお持ちでは無いのですね?」
「あ、はい」
「でしたら、持ち込みされた時に鑑定致しましょう。如何でしょうか?」

 それはとても良い話に思える。しかし──

「あのぅ。もしも、入手経路は聞かないで下さいと言っても、買い取ってくれるのでしょうか?」

 ココが問題なのだ。

「それは構いませんが……しかし、もしお持ちになった物が盗品であったのなら、即座に衛兵に通報する事になりますが、宜しいでしょうか?」

 盗品じゃないからそこの所は問題なし。そういう事であれば願ってもないな。元々、ジト目で見られて入手経路を根掘り葉掘り聞かれるのが嫌だった。何も聞かずに買い取ってくれるというのなら、この提案に乗らない手はない。だけど、どれくらい安く買い叩かれるのか気になるよね……

「あの、安値ってどれくらい引かれるのですか?」
「モノにもよりますが……そうですね。手数料とそして口止め料として、二千程頂く事になるかと」

 換金ギルド『ポーン』での鑑定額は一万。手数料を払ったとしても八千なら、余裕でひと月過ごせるな。十分だ。これ以上の良い条件は他じゃ出ないだろう。

「分かりました。それでお願いしても良いですか?」
「畏まりました。では、入手されたらお持ち下さい。鑑定後、必要書類にサインを頂き換金額をお支払い致します」

 通商ギルド『アルカイック』さんと望み通りの商談を終え、アパートへと帰路に就いた。いやぁ、こうも商談がスパッと決まると気持ちの良いもんだね。
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