80 / 235
八十
しおりを挟む
灯台をグルリ。と回り込み、岸壁に寄り掛かる大岩との隙間に腕を入れる。三十センチ程腕を入れて手首を曲げ、指先に当たった出っ張りを押し込んだ。途端、灯台の真下にある岸壁の一部が動き出し、それが終わると人一人が通るには十分な高さ幅の穴が出来上がる。
「こ、これは!」
声を発し大きく驚くウォルハイマーさん。他の衛兵さん達も顔を見合わせて驚いていた。
「まさか、こんな場所に隠し通路があったなんて……」
「この奥に牢屋があります」
「そうか……。お嬢さん、辛いだろうが後を付いて来てくれるか?」
「……分かりました」
本当ならあの場所はもう見たくはない。しかし、罪を犯した彼女を罰する為には今はこの人の言う事を聞いておいた方が得策に思えた。
松明の炎を灯し、足元を確かめる様にゆっくりと階段を降りてゆく。先頭はウォルハイマーさん衛兵の二人と続き、四番目に私。水辺が近い所為もあって内部は湿気で溢れ、底へと近付くとその中に鉄分の臭いが鼻を突く様になる。その頃になると通路の幅は大人二人横に並んでも十分な広さになっていた。
「あの角を曲がった先です」
「分かった。貴女はここで待っていてくれ。兵を一人護衛に着かせる」
「分かりました」
「では、頼んだぞ」
「ハッ!」
衛兵の一人がガチャリ。と音を立て、直立不動でそれに応えると、ウォルハイマーさんは部下を連れて角を左へと曲がっていった。
暫くして、戻ってきたウォルハイマーさんの表情は、険しいモノに変わっていた。後からやって来た三人の衛兵さんのうち二人は、麻袋の様なモノを二人掛かりで運んでいる。ソレがマリー先輩の遺体であろう事は容易に察する事が出来た。
「待たせてすまない。それでは街に戻ろう」
一人増えた隊列は再び街へと引き返した――
街の衛兵詰所へと戻って来た私は、そのまま質素な部屋に入れられて軟禁状態にされていた。室内にはテーブルが二つ置かれ、椅子は三つ。多分ここは取調室みたいな役目を果たす部屋なのだろう。と、ギギギ。とドアを開けて、ウォルハイマーさんが部下を二人連れて入って来る。
ウォルハイマーさんは私の対面に腰を下ろし、部下の一人はもう一つの椅子に座って机に羊皮紙を広げる。最後の一人はドアの前で佇んでいた。
「殺風景ですまないが、事情を話して貰えるかな?」
「分かりました」
私はこれまでの事を包み隠さず話して聞かせる。ただ、私の能力の事だけは口に出さずにいた――
「こ、これは!」
声を発し大きく驚くウォルハイマーさん。他の衛兵さん達も顔を見合わせて驚いていた。
「まさか、こんな場所に隠し通路があったなんて……」
「この奥に牢屋があります」
「そうか……。お嬢さん、辛いだろうが後を付いて来てくれるか?」
「……分かりました」
本当ならあの場所はもう見たくはない。しかし、罪を犯した彼女を罰する為には今はこの人の言う事を聞いておいた方が得策に思えた。
松明の炎を灯し、足元を確かめる様にゆっくりと階段を降りてゆく。先頭はウォルハイマーさん衛兵の二人と続き、四番目に私。水辺が近い所為もあって内部は湿気で溢れ、底へと近付くとその中に鉄分の臭いが鼻を突く様になる。その頃になると通路の幅は大人二人横に並んでも十分な広さになっていた。
「あの角を曲がった先です」
「分かった。貴女はここで待っていてくれ。兵を一人護衛に着かせる」
「分かりました」
「では、頼んだぞ」
「ハッ!」
衛兵の一人がガチャリ。と音を立て、直立不動でそれに応えると、ウォルハイマーさんは部下を連れて角を左へと曲がっていった。
暫くして、戻ってきたウォルハイマーさんの表情は、険しいモノに変わっていた。後からやって来た三人の衛兵さんのうち二人は、麻袋の様なモノを二人掛かりで運んでいる。ソレがマリー先輩の遺体であろう事は容易に察する事が出来た。
「待たせてすまない。それでは街に戻ろう」
一人増えた隊列は再び街へと引き返した――
街の衛兵詰所へと戻って来た私は、そのまま質素な部屋に入れられて軟禁状態にされていた。室内にはテーブルが二つ置かれ、椅子は三つ。多分ここは取調室みたいな役目を果たす部屋なのだろう。と、ギギギ。とドアを開けて、ウォルハイマーさんが部下を二人連れて入って来る。
ウォルハイマーさんは私の対面に腰を下ろし、部下の一人はもう一つの椅子に座って机に羊皮紙を広げる。最後の一人はドアの前で佇んでいた。
「殺風景ですまないが、事情を話して貰えるかな?」
「分かりました」
私はこれまでの事を包み隠さず話して聞かせる。ただ、私の能力の事だけは口に出さずにいた――
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる