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八十四
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白磁の器に鎮座するソフトボール大の梅干しに、目が飛び出すんじゃ? と思える程に見開いていた。
「うめぼし……じゃ、ないわよね……」
パンツが足元にストン。と落ちる。今までは銀に輝く鉱物や黄金色の鉱物だったが、今回出たモノはそのいずれでも無かった。
「何で、どうして……?」
器に鎮座するその物体は、赤に染まった鉱物だった――
ただでさえ余裕が無いというのに、ここへ来てさらに追い討ちが掛けられる。予定日で出てきたモノは銀でも金でも無く、赤に染まっている鉱物だった。ソレをテーブルに置いて、ベッドに腰掛けて眺めていた。
「これってマサカ……宝石?」
赤い宝石……。頭の中でルビーの名が浮かんだ。
「でも、どうしてこんなモノが……? 今日は別に特別な日でも何でも無い、ただの金曜――」
頭に浮かんだアノ光景が、続く言葉を詰まらせる。それは、濁った目で私を見下ろし、その顔を紅に染めながら笑みを浮かべるあの女の姿だった。
「まさか……まさかこれは……」
一刺しで致命傷だったにもかかわらず、あの女は執拗に刃を振り下ろしていた。
「私の血が混じったから?!」
あくまで仮定だけれど、ソレしか考えられなかった。
滅多刺しで体内に流れた血液が、予定日前日のアレと交わり、何らかの化学反応を起こしてコレになったのだとすれば……。その想像は辛うじて持ち直した心を折るに足るモノだった。
これは……これだけは絶対に気付かせてはならない。もし、邪な心を持つ者がこの事を知れば、必ず試すだろう。その先に死が待っているのならば苦痛は一度で済む。しかし、不死である私は永遠にその苦しみを味わわなくてはならない。
「そんなのいやぁ……」
払拭した筈の恐怖が鎌首をもたげて再び私に襲いかかる。私は膝を抱えて身を固くし、押し寄せる恐怖に必死に耐えるしかなかった――
トントン、トントン。ドアがノックされる音で目が覚める。外は既に明るくなっており、朝の光が室内に差し込んでいる。どうやらあのまま寝入ってしまったらしかった。
トントン、トントン。再びドアをノックする音。
「は、はーい」
『お姉様、お迎えに参りましたわ』
ノックの主はリリーカさんだ。
「ま、待って。いま――」
玄関に向かう途中でピタリ。と動きを止める。その姿は非常口に描かれている絵と変わらない。振り返って室内を見ると、テーブルの上にはルビーと思しき原石が置かれたまま。慌ててソレを枕の下に隠して、リリーカさんを出迎えた。
「お早う御座いますお姉様。今日も絶好のデート日和ですわ」
向日葵の様なその笑顔が、私の心に染み入っていった――
「うめぼし……じゃ、ないわよね……」
パンツが足元にストン。と落ちる。今までは銀に輝く鉱物や黄金色の鉱物だったが、今回出たモノはそのいずれでも無かった。
「何で、どうして……?」
器に鎮座するその物体は、赤に染まった鉱物だった――
ただでさえ余裕が無いというのに、ここへ来てさらに追い討ちが掛けられる。予定日で出てきたモノは銀でも金でも無く、赤に染まっている鉱物だった。ソレをテーブルに置いて、ベッドに腰掛けて眺めていた。
「これってマサカ……宝石?」
赤い宝石……。頭の中でルビーの名が浮かんだ。
「でも、どうしてこんなモノが……? 今日は別に特別な日でも何でも無い、ただの金曜――」
頭に浮かんだアノ光景が、続く言葉を詰まらせる。それは、濁った目で私を見下ろし、その顔を紅に染めながら笑みを浮かべるあの女の姿だった。
「まさか……まさかこれは……」
一刺しで致命傷だったにもかかわらず、あの女は執拗に刃を振り下ろしていた。
「私の血が混じったから?!」
あくまで仮定だけれど、ソレしか考えられなかった。
滅多刺しで体内に流れた血液が、予定日前日のアレと交わり、何らかの化学反応を起こしてコレになったのだとすれば……。その想像は辛うじて持ち直した心を折るに足るモノだった。
これは……これだけは絶対に気付かせてはならない。もし、邪な心を持つ者がこの事を知れば、必ず試すだろう。その先に死が待っているのならば苦痛は一度で済む。しかし、不死である私は永遠にその苦しみを味わわなくてはならない。
「そんなのいやぁ……」
払拭した筈の恐怖が鎌首をもたげて再び私に襲いかかる。私は膝を抱えて身を固くし、押し寄せる恐怖に必死に耐えるしかなかった――
トントン、トントン。ドアがノックされる音で目が覚める。外は既に明るくなっており、朝の光が室内に差し込んでいる。どうやらあのまま寝入ってしまったらしかった。
トントン、トントン。再びドアをノックする音。
「は、はーい」
『お姉様、お迎えに参りましたわ』
ノックの主はリリーカさんだ。
「ま、待って。いま――」
玄関に向かう途中でピタリ。と動きを止める。その姿は非常口に描かれている絵と変わらない。振り返って室内を見ると、テーブルの上にはルビーと思しき原石が置かれたまま。慌ててソレを枕の下に隠して、リリーカさんを出迎えた。
「お早う御座いますお姉様。今日も絶好のデート日和ですわ」
向日葵の様なその笑顔が、私の心に染み入っていった――
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