140 / 235
百四十
しおりを挟む
フォワールの物言いにメアリーさんが再考してしまった事で、勝負の行方に暗雲が漂い始めた。くっそー余計な事を……
「それを踏まえた上で、もう一度お考え下さい!」
「……確かに。オマエの言う通りだな」
メアリーさんの言葉に、顔が強張り嫌な汗が大量に流れ始めた。ウソ……負ける?! リリーカさんが取られてしまうの!?
「そうで御座いましょう?」
「ああ、そうだな。だが、オレの答えは変わらんよ」
「なっ!? 何故ですか!?」
「分からないのか? フォワール、オマエは言ったな? これはS級職人が作り出した武器である、と」
「左様です」
「人の手にて作り出せし物は、幾らでも生み出せる。今現在では最高傑作だが、いずれはコレを超えるモノを生み出す事が出来るだろう。対してこの鉱物は自然が作りしモノ。生成する為には長い時が必要となる。それこそ人知を超越した時がな。コレが稀に見る鉱物だったのならフォワール。オマエの勝ちだ。しかしコレは、自然が齎らしたたった一つの鉱物。故に希少価値が高いのはこちらだ」
フォワール卿は再びガクリ。と膝をついた。この時点で私達の完全勝利が決まった。良かったぁ、どうなる事かとヒヤヒヤしたよ。……まあ、そこまで絶賛されてもソレはアレなんだけど。
「んで? 誰だ、こんモン持ち込んだのは……」
「私で御座いますメアリー様」
右手の平を肩に添え、メアリーさんに一礼をする。
「見た事の無い奴だが、誰だオマエ」
「私はカーン=アシュフォードと申す者。リリーカ=リブラ=ユーリウス様の婚約者で御座います」
「婚約者だぁ? 女だろオマエ」
「めっ! メアリーっ!」
メアリーさんの言葉に、マリエッタ王女が慌てて立ち上がる。
「何だよ姫サン。そんなでっかい声出さなくても聞こえてるゼ?」
「り、『リブラ』っ! そなたの勝ちだ。ここはもう良い、下がって休めっ!」
王女に一礼し、私達は大広間を後にする。内心では平静では無かったが、それを表に出さない様、細心の注意を払っていた。チラリ。と目をフォワールへとやると、突然の事で思考が停止している様子だった。
「姫! コレは一体どういう――」
扉が閉じられる間際、フォワールの声が耳に届き、閉じられた事でその声が途絶えた。
「だ、大丈夫かな……」
馬車に揺られオジサマのお店に戻る途中で、大広間で繰り広げられているであろう問答に、マリエッタ王女が慌てふためいて言い繕っている姿が脳裏に過ぎる。
「分かりません……」
メアリーさんの最後の一言が無ければ、抱き合って喜び、勝利の余韻に浸る事が出来たのだが、今やその気は失せ、冷や汗すら出る始末。事態は再び暗雲が漂う事になったのだった――
「それを踏まえた上で、もう一度お考え下さい!」
「……確かに。オマエの言う通りだな」
メアリーさんの言葉に、顔が強張り嫌な汗が大量に流れ始めた。ウソ……負ける?! リリーカさんが取られてしまうの!?
「そうで御座いましょう?」
「ああ、そうだな。だが、オレの答えは変わらんよ」
「なっ!? 何故ですか!?」
「分からないのか? フォワール、オマエは言ったな? これはS級職人が作り出した武器である、と」
「左様です」
「人の手にて作り出せし物は、幾らでも生み出せる。今現在では最高傑作だが、いずれはコレを超えるモノを生み出す事が出来るだろう。対してこの鉱物は自然が作りしモノ。生成する為には長い時が必要となる。それこそ人知を超越した時がな。コレが稀に見る鉱物だったのならフォワール。オマエの勝ちだ。しかしコレは、自然が齎らしたたった一つの鉱物。故に希少価値が高いのはこちらだ」
フォワール卿は再びガクリ。と膝をついた。この時点で私達の完全勝利が決まった。良かったぁ、どうなる事かとヒヤヒヤしたよ。……まあ、そこまで絶賛されてもソレはアレなんだけど。
「んで? 誰だ、こんモン持ち込んだのは……」
「私で御座いますメアリー様」
右手の平を肩に添え、メアリーさんに一礼をする。
「見た事の無い奴だが、誰だオマエ」
「私はカーン=アシュフォードと申す者。リリーカ=リブラ=ユーリウス様の婚約者で御座います」
「婚約者だぁ? 女だろオマエ」
「めっ! メアリーっ!」
メアリーさんの言葉に、マリエッタ王女が慌てて立ち上がる。
「何だよ姫サン。そんなでっかい声出さなくても聞こえてるゼ?」
「り、『リブラ』っ! そなたの勝ちだ。ここはもう良い、下がって休めっ!」
王女に一礼し、私達は大広間を後にする。内心では平静では無かったが、それを表に出さない様、細心の注意を払っていた。チラリ。と目をフォワールへとやると、突然の事で思考が停止している様子だった。
「姫! コレは一体どういう――」
扉が閉じられる間際、フォワールの声が耳に届き、閉じられた事でその声が途絶えた。
「だ、大丈夫かな……」
馬車に揺られオジサマのお店に戻る途中で、大広間で繰り広げられているであろう問答に、マリエッタ王女が慌てふためいて言い繕っている姿が脳裏に過ぎる。
「分かりません……」
メアリーさんの最後の一言が無ければ、抱き合って喜び、勝利の余韻に浸る事が出来たのだが、今やその気は失せ、冷や汗すら出る始末。事態は再び暗雲が漂う事になったのだった――
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件
やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる