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とある鬼人の戦記 13 血戦3
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ダハルマ卿は、指揮権をハイリ卿に譲渡し王都に向かうにあたり、決して無理に砦を攻めぬよう厳命していた。この命に反すれば、斬って捨てるとさえ付け加えていた。
ダハルマ卿が力攻めを控え慎重に事を進めたのは、とにかく犠牲をなるべく減らす事を考えたからである。
もはや豪族が離合集散していた時代は遥か昔だが、騎士の面目という文化は未だに残っている。むしろ、平和な時代で形式化しているからこそ質が悪いと言える。実利でなく心情が先に立つようになっているからだ。犠牲が増えれば後に引けない騎士が増える。凄惨な犠牲は交戦の意思を根こそぎ奪う場合もあれば、かえって意地で戦いを続ける可能性とてあるのだ。その上、戦後の貴族間の関係に大きな禍根を残す事になる。
犠牲を減らしつつ短期決戦。そんな難しい舵取りをしなければならない中、グリフを西砦に包囲しサリサリ砦を抑えたことで、短期間で犠牲無く決着する可能性が見えたのである。グリフ一人を抑えれば、旗頭を失ったツェンダフ軍の大義名分は無くなる。大きな砦ではない、後詰さえ防げばさほど時間を掛けずとも食料が尽きる。だからこそグリフ救援のために後詰が出る可能性は高かったし、砦のグリフが降伏する可能性は低い。力押しすれば決死の覚悟での反撃がある。そう考えたダハルマ卿は、後詰の出るであろうサリサリ砦の警戒を厳とする一方で西砦の力攻めを禁じた。
もちろん、それはツェンダフ軍の作戦ではあった。砦の守りが固ければ、ダハルマ卿は無駄な犠牲を避けるため持久に入る…と予測できたからこそ、グリフは前線で孤立して籠城する事ができたのだ。
だが、功を焦る代将ハイリ卿により、その作戦に綻びが生じようとしていた。
「どうかお考え直し下さい」
魔法使い達の長であるリシャルは、ハイリ卿をどうにか翻意させようと必死に食い下がっていた。
「くどい、何を躊躇する必要がある。半日もかからずにこの戦いに勝利できるというのに」
「ダハルマ卿のご命令に反します」
「だから何だというのだ、総大将とはいえ無役の王国騎士だぞ、何を恐れる必要がある。私がこの戦いを終わらせたら、ダハルマ卿と言えど私を罰する事はできないはずだ」
「閣下はダハルマ卿を見誤っておられます。ダハルマ卿は命令違反は斬るとおっしゃいました。ならば本当に斬ります。仮に閣下が現役の伯爵や侯爵だったとしてもです」
リシャルはダハルマ卿のかつての伝手でこの遠征に参加している。ダハルマ卿の為人はよく知っていた。何より、ハイリ卿の命に従えば、犠牲を減らそうとしたダハルマ卿の今までの努力が全て無駄となる。
ダハルマ卿は今までの所は指揮官としての威厳は保ちつつも、諸侯の騎士達を立てる態度で接しているが、それは一応は総大将であるダハルマ卿の命令に従う姿勢が見えるからだ。もし、帰還したダハルマ卿が命令違反を知ったら、例え爵位持ちの貴族であろうと処断するのは間違い無い。
「ま、まさか…だ、だが…いや、やはりこの戦いの決着は私が付けるのだ。総大将不在の今、次席指揮官の私に軍の専権がある。その私が命じるのだ、部隊長として命に従え。それとも抗命の罪で裁かれたいか?」
いかにも貴族らしく、地位を盾に無理強いをしようとするハイリ卿に、リシャルは怒りを露わにしそうになった。だが、ダハルマ卿と幕僚のいないいま、味方はほとんどない。このままでは本当に抗命罪で処断されかねない。一つ息を大きく吐くと、リシャルはどうにか怒りを飲み込んだ。
「そこまでおっしゃるのであれば、今の言葉を命令書にして下さい。後々、魔法使いが独断で砦を攻撃したなどと言われてはたまりません」
「な、この私の言葉を信用しないというのか!」
「信用できません。ご存じないかもしれませんが、我々魔法使いは貴族家にいいように使い捨てにされて来た歴史がございます。ですから今となっては貴族家の家臣ではない魔法使いは、厳密な契約が無ければ絶対に動きません。総指揮官の命令に反する以上、これができる最大の譲歩です」
「ぬ、ぬぅ……判った、私が責任を負う旨、文書にて出す。少し待て」
怒りに肩を震わせながら、ハイリ卿は幕舎に戻って行った。
その後ろ姿を見送り、リシャルはため息をつく。あの調子だと、やたら遠回しの書き方をした、どうとでも取れる穴だらけの命令書を出しかねない。その時は遠慮なく出し直しと言うつもりだった。
リシャルがハイリ卿に命じられたのは……下手をすると100人単位で死者の出る…砦を一撃で破壊できる魔法なのだから。指揮官が責任を明言してくれなければ、とても使う事などできなかった。
この戦に参加した騎士は二種類居る。面倒と思いながら仕方なく出兵した騎士と、どうにか手柄を挙げたい騎士である。グリフを追い詰め勝ちが見えた事で、前者から後者に宗旨替えした騎士も居る。ハイリ卿は後者の騎士だった。ダハルマ卿の召還で指揮官の座が転がり込んで来たものの、思うままの指揮を禁じられて鬱屈していたハイリ卿は、魔法使いのぼやきから攻城用の魔法の存在を聞きつけた。味方に損害を出さず砦を破壊できる魔法がある。そう聞いたハイリ卿は、リシャルにその使用を命じたのだ。
なるほど、この魔法を使えば砦を落とす事はできるかもしれない、だが、旧知の魔法使いを呼び寄せたダハルマ卿が、この魔法の存在を知らぬ訳ではなかった。知っていてなおダハルマ卿は使う気が無かったのだ。ダハルマ卿の考える「犠牲を少なく」には、ツェンダフ側の犠牲も含まれていた。だが、ハイリ卿はそこまでの考えに至る事はできなかった。
「ではやるぞ」
未明から出丸と相対する陣地に入ったリシャルは、夜明けと同時に配下の魔法使いに陣の構築を命じた。
魔法使い達が青白い顔をしているのは、早朝のためだけではない、これから自分たちが編み上げる魔法の威力を知っているからだ。
結局、ハイリ卿は命令書を3回書き直す事になった。最終的には姑息な責任回避を諦め、自分が命令の責任を取る事が明らかな命令書にサインしている。そうしてまで手柄が欲しかったし、目的さえ達すればダハルマ卿はどうとでもできると思っていた。
この魔法には時間がかかる。幸い、この討伐軍に雇われた魔法使いは、皆水準以上の使い手だった。人数を揃えれば発動までの時間を短縮できる。陣を組んだ5人の魔法使いが一点に熱を送り込み集中させていく。後ろに控える3人の魔法使いが、その周囲を力場で囲い圧縮していく。一燭時(2時間)近くの時間をかけ8人の魔法使いが魔力を押し込み、赤黒く輝く砲弾を作り上げた。想定通りの出来に頷いたリシャルは、砲弾を慎重にコントロールし敵陣に向けて誘導する。リシャルは脂汗を流しながら必死に砲弾を制御する。8人がかりの魔法を一人で制御するには、高度の集中力と魔力の維持が必要だった。長であるリシャルが魔力充填に参加せず、操作を行うのはこのためだ。何より、何かにぶつけでもしようものなら、味方陣地が甚大な被害を受ける代物である。だが、高度を上げれば、直ぐに攻撃だと見破られてしまう。慎重に操り味方陣地の障壁の間を抜けると、地表ギリギリの低空を少しずつ加速させていく。遥かに見えるのは、攻略の障害となっている西砦の出丸。射程はギリギリ、直撃しなくても威力は十分のはずだが、リシャルは魔力を凝らす。出丸の真上で発動させて根こそぎ吹き飛ばすつもりだ。詰めている兵は皆死ぬだろう。
(願わくば…、この威力を見て殿下が降伏を決意してくれますように…)
出丸までの半ばを過ぎ、自軍からの安全距離を確保したところで、砲弾を上昇させる。出丸の兵にはまだ気づかれていない。リシャルは戦果を確信していた。
リシャルが操る魔法は、平和な王国ではもう知る者の少ない魔法だったが、防戦の指揮官として魔法使いのメイガーが城壁の上から指揮を執っていたのは幸いだった。
地面ギリギリを飛ぶ、赤黒く輝く魔力の塊を見た瞬間、メイガーは蒼白になった。
(馬鹿な…火球だと!?。まさかダハルマ卿が…撃ち落とさねば…いや、もう近すぎる、間に合わん)
魔力の塊は、出丸の上空に向かって上昇を始めている。メイガーは拡声の魔法を使った。身体強化の一種で、魔法を投射できないメイガーでも使える魔法だ。城壁から落ちんばかりに身を乗り出すと、出丸に向かって出せる限りの大声で叫んだ。
「魔法使い、空にありったけの障壁を張れ!、張ったら出丸を捨てて逃げろっ!」
理由は言わずとも、ツェンダフの兵は指揮官の命令に従うよう訓練されている。そうでなくともメイガーの切迫した声は、ただ事ではない事態が起きていると思わせるに十分だった。
出丸に詰めていた三人の魔法使いは、言われた通り魔力の限り障壁を張ると、防備の兵共々出丸を捨てて砦の門に向かって駆け出した。
「気づいたヤツがいるか…だが、もう遅い……」
西砦出丸の真上まで誘導するつもりだったが、その手前で砲弾は空中に張られた障壁に当たって炸裂した。物理法則を無視して圧縮されたエネルギーは、解放された瞬間に周囲の木材を発火させるほどの高熱を発した。高熱で膨張した大気が轟音と共に爆風となり周囲の瓦礫ごと人馬を吹き飛ばし、ついで強烈な上昇気流が周囲のもの全てを空中に巻き上げ、砂塵がまるでキノコのような雲を作り出した。
ただの一撃で出丸は半壊していた。砦の城壁も上部がかなり崩落し、旗指物は残らず吹き飛ばされていた。何人か城壁から落ちた兵もいる。
城門へ向けて退避していた兵も、残らずなぎ倒された。空中に張った障壁は悉く破壊されたが、それでもどうにか威力を減じる事ができた。特に、熱を減衰できたのは大きかった。重傷の兵も居るようだったが、なんとか生きているようだ。もし気づかずに直撃を食らっていたら出丸の兵は残らず全滅していたはずだ。
「正面、救助を急がせろ。連発は無い、出丸にも人を出して警戒しろ。……まずいな。今時あんな大技を使える魔法使いが敵陣に居るのは予想外だった」
炸裂の瞬間に胸壁の陰に伏せて難を逃れたメイガーは、降り注ぐ瓦礫から頭をかばいながら命令を飛ばす。強烈な気圧の変化で、まだ耳鳴りがしていた。
こちらも耳を抑えたイーヒロイスが城壁伝いにやって来た。当初出丸に陣取っていたイーヒロイスは、当面大規模な攻城戦は無いと踏んで一時的に砦に戻っていたのだ。危ない所だった、彼を失えば取返しがつかないところだった。
「い、今のは?」
「火球の呪文。攻城用の魔法だよ。複数の魔法使いが魔力の熱を出して、これまた複数の魔法使いが障壁で包んで圧縮、別の魔法使いが操って敵に当てるんだ」
イーヒロイスがわずかに首をかしげる。音と爆風だけでも尋常でない威力だと思ったからだ。それだけであれほどの威力が出るものだろうか?だが、つまらない疑問で重要な話を中断させる事にならないだろうか。そう思うとそれを口にすることができない。
付き合いの長いメイガーは、その仕草で聞きたい事を察した。
「喩えるなら…だが、火に掛けた鍋が煮詰まって空焚きになって鍋が溶けるまでに何燭時かかかるだろ?、その何燭時かの間の竈の熱を全部貯めて圧縮しておいて、一瞬で解放させるようなものだ。だからその一瞬で鍋が溶ける高熱が出る。瞬時の高熱は周囲の空気や水を一気に膨張させて爆発になる」
噛んで含めるメイガーの説明を反芻していたイーヒロイスは、納得したのか無言でうなずいた。
「……二発目は?」
「今すぐは無いが来るだろうね。敵陣で何かあったのか知らんが、おそらく今指揮を執っているのはダハルマ卿ではない。脅しではなく、こちらを丸ごと磨り潰してでも勝つという意図が見えた。今度は砦に直撃させに来るだろう。あの威力を出すには、魔法使い数人がかりでかなり長時間魔力を熱を送り込み続けなきゃならんし、予め蓄積しておく事はできない。射程もそう長く無いから、連中が砦の前に陣地を作ったらそれが合図だな、魔法使いが入って一燭時くらい後には二発目が来る」
「防げるか?」
今日のイーヒロイスは、いつになく饒舌だった。それほどの脅威だと認識していたのだ。そして自分は魔法についてよく知らない。魔法の正体を知らねば、対策しようが無い。そう思えば、会話が苦手などと言っている場合では無かった。
「破裂しても防げるか…という意味なら無理だ。障壁展開に特化した魔法使いが10人も居りゃ砦の中心を護れるが、残りの兵は死ぬ。火球の呪文は、かつてあちこちの戦争でとんでもない犠牲者を出したが、おかげで対抗策は考えだされた、要するに、途中で撃ち落として敵陣で炸裂させる…って事だけどな。だから今は使うヤツも居ないんだよ。だが…、いまの状況はちょっと我らの分が悪い。敵の方が魔法使いが多いんだよねぇ。御大も、どこからあんな魔法使い連れて来たんだか…」
魔法使いは相手の魔法の矢を自分の矢で相殺することができる。どうにか魔法の矢同士の相殺を切り抜け、障壁を打ち砕き、敵の魔法使いを削るのが戦の第一段階になる事が多い。この場合は魔法使いの数がものを言う。ツェンダフ軍は、迂回する主力に魔法使いを回したため、この砦には最低限戦線を維持できる数しか居なかった。そのうちの貴重な三人がさっきの攻撃で倒れてしまった。あの様子では、命はあってもしばらく前線に立つのは無理だろう。
「どうやったら破裂する?」
「基本的に任意だが、恐ろしく不安定な代物だから、うっかり何かに強く当たるとその衝撃で弾けるよ。魔法でも矢でもなんでもだ、さっきは障壁に当たって弾けたおかげでかろうじて直撃だけは免れた。あれはかなり危険な代物なんだ」
救助に出ていた兵が戻り、メイガーへの報告をした。残念ながら重症の魔法使い一人が搬送中に死んだ。そのほかの兵も軒並み重軽症だ。そして出丸は防御施設が全て破壊され、ほとんど更地になっているという。
「出丸を使えないと、この砦が射程内になるな。予定では今日一日持ち堪える事になっているが、間に合うか…」
出丸は、縦深を稼ぎ、砦が直接攻撃されるのを防ぐ防御の要だった。それが破壊されたのは痛手だった。ぶつぶつ呟きながら防御プランを練り直すメイガーを見てイーヒロイスは唇をかむ。
「俺が…」
「ん?」
何かを言おうとしたが、メイガーが顔を上げるとイーヒロイスは寸前で委縮してしまった。だがメイガーは何も言わず、その先を待つ。メイガーはどうにか気力を振り絞った。言わねばならない。自分はこの砦を任された守将のはずでは無いか。
「俺が出丸に行く」
「やめておけ。仮に撃ち落とす事に成功しても、出丸は火球の威力範囲だ」
「覚悟している」
イーヒロイスは命を捨てる覚悟で火球を撃ち落とすつもりだったのだ。だがメイガーは首を振る。
「無駄死に以前の話だ、出丸はすっかり更地で敵兵が出て来たら防ぎきれん。それに、今度はこちらの迎撃を想定して火球の護衛を置いてるはずだ」
「護衛?」
「魔力の矢の使い手だよ、そいつらが火球への攻撃を片っ端から撃ち落とそうとする。合戦の最初の相殺戦と同じだ。お前がいかな名手でも、放てる矢一筋では防がれるだけだ。こちらの魔法使いは少ない、あれを狙うなら、魔法使いと射手も集めて城壁から総出で狙え。最悪の場合は障壁を張って威力を少しでも殺すつもりだが、その前に障壁を削られたら話にならんからな」
なんとか打開策を…そう思った決死の戦法を言下に否定され、イーヒロイスは肩を落とした。
「出丸も城壁も危険は変わらんぞ?城壁であれを食らえば、多少距離があろうがまず死ぬ。とにかく手数を増やして、どうにかあっちの魔法の矢の迎撃を掻い潜れるよう狙うしかない」
イーヒロイスは魔力の矢の応酬を思い返す。どれほどの弓の名手とて飛来する矢を撃ち落とす事はできない。射手の基準からすれば、魔法使いは常識外れの弓の名手という事になる。魔力の矢は魔法使いの視線によって自動的に誘導され、百発百中に近いと聞いている。どうやったらそんな矢の迎撃を掻い潜る事ができるのだ…。
「……あ」
「なんだ?」
「一つ…考えがあるが…メイガーの呪文次第だ」
「ほう!」
滅多に無いほど言葉を発したイーヒロイスに、メイガーはかつてない自信のようなものを感じた。だが、砦の存亡に関わる話だ、ここから先はグリフの承認が要る。
「その前に、殿下にご報告に行こう。その上で、対策について相談だ」
「…そうだな」
二人は連れ立って砦本陣のグリフの元に向かって行った。なんの攻撃だったのか、どういった魔法なのか、もう一度攻撃された場合、対処は可能なのか、正確に説明しなければならない。何しろあの威力だ。対抗策が皆無となれば、グリフが降伏を選ぶ可能性もある。対抗策があるならばその見込み説明し、グリフの納得を得なければならないだろう。
メイガーの後ろを進みながら、イーヒロイスはその背中に感謝と憧憬の視線を向けていた。無口なイーヒロイスは口にしていないが、メイガーの存在をこれほどありがたいと思った事はなかった。自分一人ではとても守将としての責は果たせなかっただろう。魔法の知識、城兵への配慮、指揮能力、いずれも自分には無理なものだ。自分は矢を射ることしかできない。だが、メイガーの魔法が自分の望むものを実現できるなら。自分の技であの物騒な魔法を打ち破れるかもしれない。
そして、メイガーとイーヒロイスの状況説明からほどなく、砦の全将兵にグリフの意思として「降伏はせず砦に向かっているであろう、騎士隊本隊を待つ」旨が周知された。
ダハルマ卿が力攻めを控え慎重に事を進めたのは、とにかく犠牲をなるべく減らす事を考えたからである。
もはや豪族が離合集散していた時代は遥か昔だが、騎士の面目という文化は未だに残っている。むしろ、平和な時代で形式化しているからこそ質が悪いと言える。実利でなく心情が先に立つようになっているからだ。犠牲が増えれば後に引けない騎士が増える。凄惨な犠牲は交戦の意思を根こそぎ奪う場合もあれば、かえって意地で戦いを続ける可能性とてあるのだ。その上、戦後の貴族間の関係に大きな禍根を残す事になる。
犠牲を減らしつつ短期決戦。そんな難しい舵取りをしなければならない中、グリフを西砦に包囲しサリサリ砦を抑えたことで、短期間で犠牲無く決着する可能性が見えたのである。グリフ一人を抑えれば、旗頭を失ったツェンダフ軍の大義名分は無くなる。大きな砦ではない、後詰さえ防げばさほど時間を掛けずとも食料が尽きる。だからこそグリフ救援のために後詰が出る可能性は高かったし、砦のグリフが降伏する可能性は低い。力押しすれば決死の覚悟での反撃がある。そう考えたダハルマ卿は、後詰の出るであろうサリサリ砦の警戒を厳とする一方で西砦の力攻めを禁じた。
もちろん、それはツェンダフ軍の作戦ではあった。砦の守りが固ければ、ダハルマ卿は無駄な犠牲を避けるため持久に入る…と予測できたからこそ、グリフは前線で孤立して籠城する事ができたのだ。
だが、功を焦る代将ハイリ卿により、その作戦に綻びが生じようとしていた。
「どうかお考え直し下さい」
魔法使い達の長であるリシャルは、ハイリ卿をどうにか翻意させようと必死に食い下がっていた。
「くどい、何を躊躇する必要がある。半日もかからずにこの戦いに勝利できるというのに」
「ダハルマ卿のご命令に反します」
「だから何だというのだ、総大将とはいえ無役の王国騎士だぞ、何を恐れる必要がある。私がこの戦いを終わらせたら、ダハルマ卿と言えど私を罰する事はできないはずだ」
「閣下はダハルマ卿を見誤っておられます。ダハルマ卿は命令違反は斬るとおっしゃいました。ならば本当に斬ります。仮に閣下が現役の伯爵や侯爵だったとしてもです」
リシャルはダハルマ卿のかつての伝手でこの遠征に参加している。ダハルマ卿の為人はよく知っていた。何より、ハイリ卿の命に従えば、犠牲を減らそうとしたダハルマ卿の今までの努力が全て無駄となる。
ダハルマ卿は今までの所は指揮官としての威厳は保ちつつも、諸侯の騎士達を立てる態度で接しているが、それは一応は総大将であるダハルマ卿の命令に従う姿勢が見えるからだ。もし、帰還したダハルマ卿が命令違反を知ったら、例え爵位持ちの貴族であろうと処断するのは間違い無い。
「ま、まさか…だ、だが…いや、やはりこの戦いの決着は私が付けるのだ。総大将不在の今、次席指揮官の私に軍の専権がある。その私が命じるのだ、部隊長として命に従え。それとも抗命の罪で裁かれたいか?」
いかにも貴族らしく、地位を盾に無理強いをしようとするハイリ卿に、リシャルは怒りを露わにしそうになった。だが、ダハルマ卿と幕僚のいないいま、味方はほとんどない。このままでは本当に抗命罪で処断されかねない。一つ息を大きく吐くと、リシャルはどうにか怒りを飲み込んだ。
「そこまでおっしゃるのであれば、今の言葉を命令書にして下さい。後々、魔法使いが独断で砦を攻撃したなどと言われてはたまりません」
「な、この私の言葉を信用しないというのか!」
「信用できません。ご存じないかもしれませんが、我々魔法使いは貴族家にいいように使い捨てにされて来た歴史がございます。ですから今となっては貴族家の家臣ではない魔法使いは、厳密な契約が無ければ絶対に動きません。総指揮官の命令に反する以上、これができる最大の譲歩です」
「ぬ、ぬぅ……判った、私が責任を負う旨、文書にて出す。少し待て」
怒りに肩を震わせながら、ハイリ卿は幕舎に戻って行った。
その後ろ姿を見送り、リシャルはため息をつく。あの調子だと、やたら遠回しの書き方をした、どうとでも取れる穴だらけの命令書を出しかねない。その時は遠慮なく出し直しと言うつもりだった。
リシャルがハイリ卿に命じられたのは……下手をすると100人単位で死者の出る…砦を一撃で破壊できる魔法なのだから。指揮官が責任を明言してくれなければ、とても使う事などできなかった。
この戦に参加した騎士は二種類居る。面倒と思いながら仕方なく出兵した騎士と、どうにか手柄を挙げたい騎士である。グリフを追い詰め勝ちが見えた事で、前者から後者に宗旨替えした騎士も居る。ハイリ卿は後者の騎士だった。ダハルマ卿の召還で指揮官の座が転がり込んで来たものの、思うままの指揮を禁じられて鬱屈していたハイリ卿は、魔法使いのぼやきから攻城用の魔法の存在を聞きつけた。味方に損害を出さず砦を破壊できる魔法がある。そう聞いたハイリ卿は、リシャルにその使用を命じたのだ。
なるほど、この魔法を使えば砦を落とす事はできるかもしれない、だが、旧知の魔法使いを呼び寄せたダハルマ卿が、この魔法の存在を知らぬ訳ではなかった。知っていてなおダハルマ卿は使う気が無かったのだ。ダハルマ卿の考える「犠牲を少なく」には、ツェンダフ側の犠牲も含まれていた。だが、ハイリ卿はそこまでの考えに至る事はできなかった。
「ではやるぞ」
未明から出丸と相対する陣地に入ったリシャルは、夜明けと同時に配下の魔法使いに陣の構築を命じた。
魔法使い達が青白い顔をしているのは、早朝のためだけではない、これから自分たちが編み上げる魔法の威力を知っているからだ。
結局、ハイリ卿は命令書を3回書き直す事になった。最終的には姑息な責任回避を諦め、自分が命令の責任を取る事が明らかな命令書にサインしている。そうしてまで手柄が欲しかったし、目的さえ達すればダハルマ卿はどうとでもできると思っていた。
この魔法には時間がかかる。幸い、この討伐軍に雇われた魔法使いは、皆水準以上の使い手だった。人数を揃えれば発動までの時間を短縮できる。陣を組んだ5人の魔法使いが一点に熱を送り込み集中させていく。後ろに控える3人の魔法使いが、その周囲を力場で囲い圧縮していく。一燭時(2時間)近くの時間をかけ8人の魔法使いが魔力を押し込み、赤黒く輝く砲弾を作り上げた。想定通りの出来に頷いたリシャルは、砲弾を慎重にコントロールし敵陣に向けて誘導する。リシャルは脂汗を流しながら必死に砲弾を制御する。8人がかりの魔法を一人で制御するには、高度の集中力と魔力の維持が必要だった。長であるリシャルが魔力充填に参加せず、操作を行うのはこのためだ。何より、何かにぶつけでもしようものなら、味方陣地が甚大な被害を受ける代物である。だが、高度を上げれば、直ぐに攻撃だと見破られてしまう。慎重に操り味方陣地の障壁の間を抜けると、地表ギリギリの低空を少しずつ加速させていく。遥かに見えるのは、攻略の障害となっている西砦の出丸。射程はギリギリ、直撃しなくても威力は十分のはずだが、リシャルは魔力を凝らす。出丸の真上で発動させて根こそぎ吹き飛ばすつもりだ。詰めている兵は皆死ぬだろう。
(願わくば…、この威力を見て殿下が降伏を決意してくれますように…)
出丸までの半ばを過ぎ、自軍からの安全距離を確保したところで、砲弾を上昇させる。出丸の兵にはまだ気づかれていない。リシャルは戦果を確信していた。
リシャルが操る魔法は、平和な王国ではもう知る者の少ない魔法だったが、防戦の指揮官として魔法使いのメイガーが城壁の上から指揮を執っていたのは幸いだった。
地面ギリギリを飛ぶ、赤黒く輝く魔力の塊を見た瞬間、メイガーは蒼白になった。
(馬鹿な…火球だと!?。まさかダハルマ卿が…撃ち落とさねば…いや、もう近すぎる、間に合わん)
魔力の塊は、出丸の上空に向かって上昇を始めている。メイガーは拡声の魔法を使った。身体強化の一種で、魔法を投射できないメイガーでも使える魔法だ。城壁から落ちんばかりに身を乗り出すと、出丸に向かって出せる限りの大声で叫んだ。
「魔法使い、空にありったけの障壁を張れ!、張ったら出丸を捨てて逃げろっ!」
理由は言わずとも、ツェンダフの兵は指揮官の命令に従うよう訓練されている。そうでなくともメイガーの切迫した声は、ただ事ではない事態が起きていると思わせるに十分だった。
出丸に詰めていた三人の魔法使いは、言われた通り魔力の限り障壁を張ると、防備の兵共々出丸を捨てて砦の門に向かって駆け出した。
「気づいたヤツがいるか…だが、もう遅い……」
西砦出丸の真上まで誘導するつもりだったが、その手前で砲弾は空中に張られた障壁に当たって炸裂した。物理法則を無視して圧縮されたエネルギーは、解放された瞬間に周囲の木材を発火させるほどの高熱を発した。高熱で膨張した大気が轟音と共に爆風となり周囲の瓦礫ごと人馬を吹き飛ばし、ついで強烈な上昇気流が周囲のもの全てを空中に巻き上げ、砂塵がまるでキノコのような雲を作り出した。
ただの一撃で出丸は半壊していた。砦の城壁も上部がかなり崩落し、旗指物は残らず吹き飛ばされていた。何人か城壁から落ちた兵もいる。
城門へ向けて退避していた兵も、残らずなぎ倒された。空中に張った障壁は悉く破壊されたが、それでもどうにか威力を減じる事ができた。特に、熱を減衰できたのは大きかった。重傷の兵も居るようだったが、なんとか生きているようだ。もし気づかずに直撃を食らっていたら出丸の兵は残らず全滅していたはずだ。
「正面、救助を急がせろ。連発は無い、出丸にも人を出して警戒しろ。……まずいな。今時あんな大技を使える魔法使いが敵陣に居るのは予想外だった」
炸裂の瞬間に胸壁の陰に伏せて難を逃れたメイガーは、降り注ぐ瓦礫から頭をかばいながら命令を飛ばす。強烈な気圧の変化で、まだ耳鳴りがしていた。
こちらも耳を抑えたイーヒロイスが城壁伝いにやって来た。当初出丸に陣取っていたイーヒロイスは、当面大規模な攻城戦は無いと踏んで一時的に砦に戻っていたのだ。危ない所だった、彼を失えば取返しがつかないところだった。
「い、今のは?」
「火球の呪文。攻城用の魔法だよ。複数の魔法使いが魔力の熱を出して、これまた複数の魔法使いが障壁で包んで圧縮、別の魔法使いが操って敵に当てるんだ」
イーヒロイスがわずかに首をかしげる。音と爆風だけでも尋常でない威力だと思ったからだ。それだけであれほどの威力が出るものだろうか?だが、つまらない疑問で重要な話を中断させる事にならないだろうか。そう思うとそれを口にすることができない。
付き合いの長いメイガーは、その仕草で聞きたい事を察した。
「喩えるなら…だが、火に掛けた鍋が煮詰まって空焚きになって鍋が溶けるまでに何燭時かかかるだろ?、その何燭時かの間の竈の熱を全部貯めて圧縮しておいて、一瞬で解放させるようなものだ。だからその一瞬で鍋が溶ける高熱が出る。瞬時の高熱は周囲の空気や水を一気に膨張させて爆発になる」
噛んで含めるメイガーの説明を反芻していたイーヒロイスは、納得したのか無言でうなずいた。
「……二発目は?」
「今すぐは無いが来るだろうね。敵陣で何かあったのか知らんが、おそらく今指揮を執っているのはダハルマ卿ではない。脅しではなく、こちらを丸ごと磨り潰してでも勝つという意図が見えた。今度は砦に直撃させに来るだろう。あの威力を出すには、魔法使い数人がかりでかなり長時間魔力を熱を送り込み続けなきゃならんし、予め蓄積しておく事はできない。射程もそう長く無いから、連中が砦の前に陣地を作ったらそれが合図だな、魔法使いが入って一燭時くらい後には二発目が来る」
「防げるか?」
今日のイーヒロイスは、いつになく饒舌だった。それほどの脅威だと認識していたのだ。そして自分は魔法についてよく知らない。魔法の正体を知らねば、対策しようが無い。そう思えば、会話が苦手などと言っている場合では無かった。
「破裂しても防げるか…という意味なら無理だ。障壁展開に特化した魔法使いが10人も居りゃ砦の中心を護れるが、残りの兵は死ぬ。火球の呪文は、かつてあちこちの戦争でとんでもない犠牲者を出したが、おかげで対抗策は考えだされた、要するに、途中で撃ち落として敵陣で炸裂させる…って事だけどな。だから今は使うヤツも居ないんだよ。だが…、いまの状況はちょっと我らの分が悪い。敵の方が魔法使いが多いんだよねぇ。御大も、どこからあんな魔法使い連れて来たんだか…」
魔法使いは相手の魔法の矢を自分の矢で相殺することができる。どうにか魔法の矢同士の相殺を切り抜け、障壁を打ち砕き、敵の魔法使いを削るのが戦の第一段階になる事が多い。この場合は魔法使いの数がものを言う。ツェンダフ軍は、迂回する主力に魔法使いを回したため、この砦には最低限戦線を維持できる数しか居なかった。そのうちの貴重な三人がさっきの攻撃で倒れてしまった。あの様子では、命はあってもしばらく前線に立つのは無理だろう。
「どうやったら破裂する?」
「基本的に任意だが、恐ろしく不安定な代物だから、うっかり何かに強く当たるとその衝撃で弾けるよ。魔法でも矢でもなんでもだ、さっきは障壁に当たって弾けたおかげでかろうじて直撃だけは免れた。あれはかなり危険な代物なんだ」
救助に出ていた兵が戻り、メイガーへの報告をした。残念ながら重症の魔法使い一人が搬送中に死んだ。そのほかの兵も軒並み重軽症だ。そして出丸は防御施設が全て破壊され、ほとんど更地になっているという。
「出丸を使えないと、この砦が射程内になるな。予定では今日一日持ち堪える事になっているが、間に合うか…」
出丸は、縦深を稼ぎ、砦が直接攻撃されるのを防ぐ防御の要だった。それが破壊されたのは痛手だった。ぶつぶつ呟きながら防御プランを練り直すメイガーを見てイーヒロイスは唇をかむ。
「俺が…」
「ん?」
何かを言おうとしたが、メイガーが顔を上げるとイーヒロイスは寸前で委縮してしまった。だがメイガーは何も言わず、その先を待つ。メイガーはどうにか気力を振り絞った。言わねばならない。自分はこの砦を任された守将のはずでは無いか。
「俺が出丸に行く」
「やめておけ。仮に撃ち落とす事に成功しても、出丸は火球の威力範囲だ」
「覚悟している」
イーヒロイスは命を捨てる覚悟で火球を撃ち落とすつもりだったのだ。だがメイガーは首を振る。
「無駄死に以前の話だ、出丸はすっかり更地で敵兵が出て来たら防ぎきれん。それに、今度はこちらの迎撃を想定して火球の護衛を置いてるはずだ」
「護衛?」
「魔力の矢の使い手だよ、そいつらが火球への攻撃を片っ端から撃ち落とそうとする。合戦の最初の相殺戦と同じだ。お前がいかな名手でも、放てる矢一筋では防がれるだけだ。こちらの魔法使いは少ない、あれを狙うなら、魔法使いと射手も集めて城壁から総出で狙え。最悪の場合は障壁を張って威力を少しでも殺すつもりだが、その前に障壁を削られたら話にならんからな」
なんとか打開策を…そう思った決死の戦法を言下に否定され、イーヒロイスは肩を落とした。
「出丸も城壁も危険は変わらんぞ?城壁であれを食らえば、多少距離があろうがまず死ぬ。とにかく手数を増やして、どうにかあっちの魔法の矢の迎撃を掻い潜れるよう狙うしかない」
イーヒロイスは魔力の矢の応酬を思い返す。どれほどの弓の名手とて飛来する矢を撃ち落とす事はできない。射手の基準からすれば、魔法使いは常識外れの弓の名手という事になる。魔力の矢は魔法使いの視線によって自動的に誘導され、百発百中に近いと聞いている。どうやったらそんな矢の迎撃を掻い潜る事ができるのだ…。
「……あ」
「なんだ?」
「一つ…考えがあるが…メイガーの呪文次第だ」
「ほう!」
滅多に無いほど言葉を発したイーヒロイスに、メイガーはかつてない自信のようなものを感じた。だが、砦の存亡に関わる話だ、ここから先はグリフの承認が要る。
「その前に、殿下にご報告に行こう。その上で、対策について相談だ」
「…そうだな」
二人は連れ立って砦本陣のグリフの元に向かって行った。なんの攻撃だったのか、どういった魔法なのか、もう一度攻撃された場合、対処は可能なのか、正確に説明しなければならない。何しろあの威力だ。対抗策が皆無となれば、グリフが降伏を選ぶ可能性もある。対抗策があるならばその見込み説明し、グリフの納得を得なければならないだろう。
メイガーの後ろを進みながら、イーヒロイスはその背中に感謝と憧憬の視線を向けていた。無口なイーヒロイスは口にしていないが、メイガーの存在をこれほどありがたいと思った事はなかった。自分一人ではとても守将としての責は果たせなかっただろう。魔法の知識、城兵への配慮、指揮能力、いずれも自分には無理なものだ。自分は矢を射ることしかできない。だが、メイガーの魔法が自分の望むものを実現できるなら。自分の技であの物騒な魔法を打ち破れるかもしれない。
そして、メイガーとイーヒロイスの状況説明からほどなく、砦の全将兵にグリフの意思として「降伏はせず砦に向かっているであろう、騎士隊本隊を待つ」旨が周知された。
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