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とある鬼人の戦記 3 嫌われる女 2
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娘の年の頃は二十歳前半に見える。マーキス卿と同じ明るい茶の髪をきちんと結い上げ、紺色の飾り気の少ない地味な衣装を身に着けていた。生地は上等だが、貴族の娘というより使用人のお仕着せのようにさえ見える。飛び抜けた美女という訳ではない、化粧もせず装身具もほとんど付けていなかった。
しずしずと歩く娘は表情をほとんど動かしていないが、かすかに微笑を浮かべているように見えた。娘は無言でマーキス卿の後ろに立つとグリフに黙礼をする。
「我が娘マーシアを紹介します」
「マーシア・デルリメントにございます。お見知りおきを」
グリフに紹介された娘…マーシアは、優雅に淑女の礼を取った。相変わらず僅かな微笑を浮かべたままグリフを見ている。
グリフは困惑したまま、笑みを浮かべるマーシアと対照的な渋面のマーキス卿を交互に見た。
デルリメント家の次女。彼女が援助と引き換えに娶る事になる娘に違いない。だが、対面はこの後でよかったはずだ。王都で討伐の号令が掛かったことはグリフの耳にも届いている。その対応を話し合うのが急務のこの席に、なぜわざわざ彼女を呼んだのだ。
「……なぜ、彼女を今ここに?」
マーキス卿は眉間の皺を一層深くすると、渋々と言った風に口を開いた。
「娘と賭けをしましてな。私と会談して殿下が何とおっしゃるか、…自分の予想通りだったらこの席に同席させろ…と」
「では……」
「殿下のおっしゃりようは、娘の予想した通りでした」
「彼女が?私の考えを読んだ…と?」
「えぇ、娘は『殿下はおそらくは亡命を助けてくれた郎党に報いることしか考えておられませんよ。その先は…きっと、この国をクヴァルシルのようになさりたいのだと思います』…そう言いました」
マーキス卿は、グリフから視線を動かさず、短く「座れ」とだけ言った。
「失礼いたします」
マーシアはそう言って、マーキス卿の隣に座ると、まっすぐグリフを見る。
マーキス卿には一男三女の子がある。最初の子は女子で、二人目に待望の跡取りが誕生、その後二人続けて女子だった。上から三番目の子がマーシアである。マーシアは、とある事で有名であった。
『公爵家の行き遅れ』
それがマーシアに付けられたあだ名である。姉は既に嫁ぎ、妹でさえ婚約者が決まっているというのに、彼女だけが未だに婚約者も決まらず、社交の場にも出てこない。おかげで、顔に傷がある、大きな痣がある、酷い醜女である、吃音で人前で話す事ができない…憶測ばかりが飛び交う有様だった。
実際の彼女は、見た目にも言葉にも作法にも全く問題は無いように見える。それどころか、会ったことも無い自分の言動を予測したというのか…
そう考えていると、マーキス卿は思いもよらぬことを言った。
「長男共々、私の仕事を手伝わせています。親の贔屓目かもしれませんが、嫡男が居なければ婿を取って家を継がせるのに十分な力量を持った娘です」
護衛さえ入れぬ会談に、自ら同席する機会を勝ち取った娘…つまりは……
「討伐軍を迎え撃つにあたり、彼女の知恵が役に立つ…とお考えなのですか?」
「領の経営はともかく、戦には深入りはさせたくなかったのですが……。これからやるのは悪だくみですから、息子よりこれの方が向いているでしょう。……獣人の商人を殿下に引き合わせたのが娘だった……と言ったら信じますかな?」
「なんですと?」
「といっても、私が娘の助言に従い、王国での商売を狙っていた獣人の商会に『殿下を王位につければ、能力次第で只人以外にも商売が可能になる…かもしれない』と情報を流しただけでしたがね」
「即決で文書を出したとお聞きしました。さすがです、これで彼らが殿下を裏切る事は無いでしょう」
マーシアが嬉しそうに言う。自分が提供した機会をグリフが最大限活かした事がよほど嬉しかったのだろうか、その表情は恍惚と言っても良いほどだった。
グリフはそんな娘の顔を見ながら、記憶のページをめくり続けていた。そういう特異な才を持つ女性なら、人材マニアのグリフの捜索網にかかってもおかしく無いはずだった。だが、必死に思い返してもグリフが知っているマーシアの噂と言えば、益体も無いものばかりである。
「失礼ながら、ご息女の事はほとんど知りませんでした。……何か事情があって社交の場には出ていなかったのでしょうか」
「公爵家の二女が婚約に失敗した…妹でさえとうの昔に相手がいるのに……という話を耳にした事は?」
「えぇ…まぁ」
「誰に似たのか、自分で采配を振るえる場を求めておりましてね。何度か見合いをしたものの、相手から断られてばかりで。実をいえば、ブレス王の妃に…という内々の打診もあったのですが、そういった顛末が王家の耳に入ったらしく、それも立ち消えに…」
「あれは、こちらからお断り申し上げる話でした。王妃では、子供を産んで育てるだけの人生になってしまいます。そういうのが向いている女性と向かない女性が居ると知るべきです」
グリフの前だというのに、マーシアは歯に衣着せる気も無いようだった。この国の女性の最高位も、この娘にとっては主婦と変わりないならしい。そもそも、王からの婚姻の打診を断れる訳が無いのに、それをこちらから断る話と言い切るのは、かなりブッ飛んだ思考だった。
(これは相当の変わり者だ…)
と、変わり者のグリフに思わせたのだから、大したものである。
「正直立ち消えになってホッとしました。いつもの調子だったら、死を賜りかねませんから……」
「何をしたのです?」
興味の出てきたグリフは、マーキス卿ではなくマーシアに直接言葉をかけた。
「女主人としてだけでなく、あなたの片腕となって家を支えたいのです…と申し上げたら、『どのように?』と聞かれたので、先方の経済状況と領地の運営についての問題点とその改善についてまとめた3年間の行動計画書作ってをお渡ししたのですが、お二人は中を見もせず破談となり、お一人は読んだ上で『なぜ我が家の経済状況まで把握しているのだ、乗っ取る気かと』、烈火のごとくお怒りになり…」
「それは……」
答えはグリフの想像の範囲外だった。
「徹夜して書き上げたというのに…。殿方というのは、賢しい女が許せないようですわね」
「……まぁ、こんな具合で、公爵家の娘だというのに、どこからかも声がかからなくなる程嫌われておる訳です」
(なるほど、これでは夜会に出ても居たたまれないだろう。社交に出てこないのはこのせいか)
「そんな折、殿下を援助する見返りの玉の輿。在庫処分の恰好の相手が見つかった訳です。売れ残りでも思わぬ役に立つ事があるものですね」
「ざ、在庫……」
あまりにぶっちゃけた言い方に、さすがのグリフですら絶句する有様だった。むしろ、横でこめかみを抑えているマーキス卿に同情してしまうほどだ。
「しかも殿下は地位も性別も…人種さえも問わず、能力を示しさえば良い…とおっしゃいました。私は普通の貴族の娘よりは、多少知恵が回ると自負しております。どうかお役立て下さい」
「このように調子にのるのが分かっていたので、対面はもう少し先にしたかったのです……」
(つまりは…)グリフは、マーシアが賭けをしてまでこの会談に乗り込んで来た意図が分かった。自分はただの妃になる気は無い、自分の能力を見て、それに相応しい扱いをしてほしい…というアピールのためだ。
「自分で采配を振るいたい…と。では、私の妃となって王家を乗っ取るおつもりですかな?」
「えぇ……と申したらどうされます?」
「できるならどうぞ」
「え?」
予想外の一言に、それまでグリフを翻弄していたマーシアが、逆に呆気にとられる事になった。
「私は凡人にすぎない。が、人を観る目はあるつもりです。あなたが国政を担うに足る力量をお持ちなら、それに従いましょう。王たる私の責任に置いてだが。まずは、宰相にでもなってみますか?もちろん、今後の実績次第ですが」
「ご冗談………では無いようですね」
笑い飛ばそうとしたマーシアはそれが本気だと気付き、初めてグリフという公子の暗い心を知った。
彼は自身が見出した人材に自分の全てを賭け、しかし自らの家臣にする事はなく国に推挙する事を続けていた。そして、自分の人生そのものは兄であるブレス王の添え物に過ぎないと達観しているのに、推挙した人材が貶められると激昂する。その理由は…
ブレス王と同じく、この男もキブト王に対するコンプレックスを抱えているのだ。しかも飛び抜けた才を持たないグリフは、ブレス王以上に劣等感を感じていたに違いない。いかに努力しようとも、決して超えられぬ才能の壁を嘆く日々。そう言った負の感情を周囲には欠片も見せる事なく、彼は世に出られぬ才能を見出し、自分の分身として王城に送り込んだ。そして、自分が見出した人材が重用され受ける称賛を、自分への称賛として受け取り満足する事に昏い喜びを感じていたのだ。それこそが彼が食客に過度に入れ込み、食客の自由を許し、害されると我が事以上に激高する理由だった。
「さすがに辞退いたします。私たちの孫の世代なら、それも可能かもしれませんが、今は無理でしょう」
グリフの言葉に嘘はない。ハイテンションで好き放題ぶっちゃけていたマーシアが、声を落とすほどだった。この男は、王家に生まれながら王国の伝統になんの意義も憧憬も感じて居ない。それは…危うくさえある。
「気が変わったら遠慮なく手を挙げてくれていいですよ。それに、地位はともかく、聞くべき意見であれば私は誰の声でも聴きます。私を動かす事ができれば、影の宰相と呼ばれるのも夢ではありません、当面はそれで我慢してください」
「……承知しました」
マーキス卿は、意外そうな目で娘と将来の義理の息子を見ていた。今までの貴族の子息は、一方的にマーシアに振り回されるばかりだった、だからこそ、十分な根回しをしてから対面させたかったのだ。だが、意図的にか素でか、グリフがマーシアを振り回しているように見える。だが、少なくともグリフがマーシアを粗略に扱う事は無いだろう事は予想できた。
政略結婚でも娘には幸せを掴んで欲しい…それは公爵としては甘い考えだろうと思っていた。特に「幸せ」が他者と大きく異なるこの娘は、王妃となって死んだように生きるしか無いと思っていた。だがこの婿殿となら、娘は「生きる」事ができるだろう…。
(しかし…)
追わず口角が上がりそうになるを辛うじて抑えた。果たしてこれは『破れ鍋に綴蓋』だろうか、はたまた『類が友を呼ぶ』だろうか……。
「話がだいぶ逸れましたが、殿下のお心は判りました。結構です、娘を嫁がせて大きな顔をしていると思われるのも業腹なので息子に任せようと思っていましたが、円卓の長として殿下を唸らせる政策をひねり出してみましょう。まぁ、時間もありません、細かい点は殿下が至高の座に座ってからといたしましょう」
直にグリフを見、その腹の内を聞いたことで、マーキス卿も支持する覚悟決めた。だが、まずは生き残らなければならない。
「僅々の問題は王城の動きですね」
「それについては、王都からの報告が届いております。王が討伐の号令を発したのはお耳に入っているかと思いますが、近々…といっても報告があった時点でですが、王都を発する事が決まったそうです。そこまでは予想通りでしたが…なんと、総大将はあのダハルマ・トライバル殿との事ですよ」
「まさか!?。ダハルマ殿はだいぶ前に隠居したはずでは?」
「王城が討伐の軍の陣立てを公表しています。間違い無いでしょう」
この情報には、グリフも驚きを隠せない。ダハルマ・トライバル元子爵は、既に六十歳を超えているはずだった。
ダハルマ卿は、下位の貴族でありながら兵馬相を務めた事もあり、当代最高の騎士と名高い人物である。太平の世で緩んだ近衛の規律を立て直し文字通りの精鋭に仕立て上げ、騎士子弟の教育に尽力した後、『自分の役目は戦場にある』として職を退き、南方森林の紛争地帯を転戦してその安定に尽くした。魔獣の獣害の混乱に乗じて度々侵入していた南方のクア藩国は、散々に翻弄された末『ダハルマ卿存命のうちは二度と国境を超えぬ』と称賛して兵を引いたと、まことしやかに語られているほどである。そんなダハルマ卿も南部が安定すると、伯爵への陞爵が確実視されながら『煩いジジイはとっとと去るわ』と言い残して隠居してしまった。
「隠居した老騎士を旗頭にせねばならないほど、統制に苦慮しているという事でしょうか」
「えぇ、王が号令をかけたものの、各家とも出兵には及び腰のようで、士気も練度も低い兵士しか集まらぬようです。それらをまとめ上げるには、ダハルマ卿しか無い…と」
そこで一旦区切ると、マーキス卿は僅かに悲しげな眼をした。
「王は、かなり猜疑心が強くなっています。だからこそ、裏表が無く忠節を曲げぬダハルマ卿を頼みとしたのでしょう。ダハルマ卿は、『自分が戦うのは王国を脅かす敵のみ』と、一旦は固辞したのですが、王が直に乞うて復職したそうです…頼る家臣の無い王を見かねたのでしょうな。王は伯爵と護国卿の位をもって遇しようとしましたが、王国騎士の位しか受け取らなかったとの事」
「いかにもダハルマ卿らしい」
「まさに」
爵位を断るダハルマ卿の姿が想像できるようで、二人とも思わず笑みをこぼした。ダハルマ卿が騎士の中の騎士と称賛されるのは、戦働きだけではない。その清廉な人柄と、王家相手でも直言する実直さからである。まさに物語の中の騎士が実体を持ったかのような、そんな騎士なのである。キブト王にすら苦言を呈する姿は、一時期王宮の名物になっていた。そして、護国卿は国家危機の際の臨時職であり総指揮官に当たる。たかが内戦の鎮圧に赴くダハルマ卿が受け取る訳もなかった。
「とはいえ、最高騎士が敵に回るのですから、笑ってばかりもいられません。ダハルマ卿が指揮を執るなら、いかに烏合の衆でも侮れぬ敵となります」
「加えて、数はこちらより多いでしょうね」
「まだ最終的な報告は届いていませんが、まず間違いなく。ただ、朗報もあります。ケッセンリング家は、この戦いからも外されているとか。戦力差が倍以上になる事は避けられるそうです」
「それはまた……」
この国最大貴族のケッセンリング家は、ブレス王により遠ざけられて久しい。王の怒りは未だに解ける気配もなかった。ただ、難しい立ち回りをしなければならないこの時期に、王に遠ざけられているというのは、ある種の利点でもあった。実際ケッセンリング家は「王にお味方を申し出ているが断られている」という態度をありありと取っている。最大貴族が日和見を続けているのは、戦力差を詰めたいグリフにはありがたい話だった。
「……この戦いに、ただ勝てばいいというものではありません」
それまで黙っていたマーシアが口を開いた。グリフもマーキス卿も咎め立てることもなく、黙って頷くと先を促した。
「ただ勝つだけなら、わが領地の地の利を活かせば持ち堪える事は可能です。そして持久戦になれば、長期の遠征に耐え切れなくなった諸侯の兵は、何かと理由を付けて引き上げるでしょう…」
王国では、基本的に軍の費用は貴族の自弁である。貴族の義務として出兵しなければならない。その点、ツェンダフ領とその寄子が主力となるツェンダフ軍より、諸侯の寄せ集めである討伐軍の方が不利である。経済的に厳しい貴族の兵は、長期の従軍には耐えられないだろう。
「だが、それだけでは勝利とは言えない…」
「はい。我々の目的は、討伐の軍を破る事ではありません。その後、王都に向かいブレス王を玉座から追い出さねばなりません。また、いたずらに内戦を長引かせれば、民も貴族も我々に背を向けてしまいます。理想的な勝利は、短期間で、損害を抑えて勝利する…これは敵の損害も…という事になります。犠牲が多ければ、貴族は後に引けなくなります」
それは、あまりに現実を無視した理想論であった。だが、軍事を知らない娘の戯言…と切り捨てることはできない。マーシアは、目先の戦いだけでなく最終的な目的…王城への進軍もきちんと見据えていた。そして、戦争が国力の消耗の最たるものであることも。軍を整え一戦するだけで夥しい金銭、食料、…時として人命…が失われる。国民にのしかかる負担は計り知れない。他国との争いならともかく、これは内戦なのだ。そして、戦争は終わらせることこそが難しい。討伐軍を全滅などさせたら、子弟を失った貴族は引くに引けなくなる。どうにか王位を得てもグリフの治世は困難なものとなるだろう。
…とはいえ、理想は理想に過ぎない。そこから妥協すべきは妥協し、まずは現実的な線で勝利を得なければならない。
「話し合いで敵軍を丸ごと引き込むか、一撃で兵の心を折って降伏させられれば最善なのですが」
「相手がダハルマ卿では無理だろうな」
マーキス卿が首を振る。まさに、それを避けるためにダハルマ卿は総大将に任じられたのだから。
「次善策に何か腹案はありますかな?」
グリフは笑みを浮かべてマーシアを見た。
それは婚約者への視線ではない。戦局を読んで、自ら口を挟んで来た戦友…いや、献策をしようとする軍師への視線だった。
(試されている…)
マーシアの背筋を緊張が走る。この国の貴族なら、女に軍事の意見を聞く事などありえない。それをいともあっさりとやってのけた。能力を愛し実力を至上とする男。彼の前では性別も種族も関係無い。だが逆に、夜会にしか興味を示さないような女なら、どれほどの美姫であろうと彼の心を掴む事は出来ないだろう。そうなれば、政略結婚の相手として…良くてもただ女として愛され、そうでなければお飾りの王妃として…生きる事になる。
そんなのは真っ平御免だ。それならいっそ……
「嫌われついでに、殿下にも嫌われてみましょうか………」
自分を鼓舞するために小声でつぶやくと、おそらくはグリフが激怒するであろう提案を口にした。
「殿下の郎党は、皆一騎当千の強者とか」
「あ、えぇ。彼ら無ければ私は生きてあなた方とお目にかかる事は出来なかったでしょうね」
「当家に譲っていただけませんか?」
「なんですと?」
マーシアは、それはそれは黒い笑みを浮かべて言った。
「殿下には指揮権を全て返上のうえ、彼らにはツェンダフ領軍の指揮下に入っていただきたく存じます」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
引き続き無駄に長いけどやっとタイトル回収。主人公どこ行った…
しずしずと歩く娘は表情をほとんど動かしていないが、かすかに微笑を浮かべているように見えた。娘は無言でマーキス卿の後ろに立つとグリフに黙礼をする。
「我が娘マーシアを紹介します」
「マーシア・デルリメントにございます。お見知りおきを」
グリフに紹介された娘…マーシアは、優雅に淑女の礼を取った。相変わらず僅かな微笑を浮かべたままグリフを見ている。
グリフは困惑したまま、笑みを浮かべるマーシアと対照的な渋面のマーキス卿を交互に見た。
デルリメント家の次女。彼女が援助と引き換えに娶る事になる娘に違いない。だが、対面はこの後でよかったはずだ。王都で討伐の号令が掛かったことはグリフの耳にも届いている。その対応を話し合うのが急務のこの席に、なぜわざわざ彼女を呼んだのだ。
「……なぜ、彼女を今ここに?」
マーキス卿は眉間の皺を一層深くすると、渋々と言った風に口を開いた。
「娘と賭けをしましてな。私と会談して殿下が何とおっしゃるか、…自分の予想通りだったらこの席に同席させろ…と」
「では……」
「殿下のおっしゃりようは、娘の予想した通りでした」
「彼女が?私の考えを読んだ…と?」
「えぇ、娘は『殿下はおそらくは亡命を助けてくれた郎党に報いることしか考えておられませんよ。その先は…きっと、この国をクヴァルシルのようになさりたいのだと思います』…そう言いました」
マーキス卿は、グリフから視線を動かさず、短く「座れ」とだけ言った。
「失礼いたします」
マーシアはそう言って、マーキス卿の隣に座ると、まっすぐグリフを見る。
マーキス卿には一男三女の子がある。最初の子は女子で、二人目に待望の跡取りが誕生、その後二人続けて女子だった。上から三番目の子がマーシアである。マーシアは、とある事で有名であった。
『公爵家の行き遅れ』
それがマーシアに付けられたあだ名である。姉は既に嫁ぎ、妹でさえ婚約者が決まっているというのに、彼女だけが未だに婚約者も決まらず、社交の場にも出てこない。おかげで、顔に傷がある、大きな痣がある、酷い醜女である、吃音で人前で話す事ができない…憶測ばかりが飛び交う有様だった。
実際の彼女は、見た目にも言葉にも作法にも全く問題は無いように見える。それどころか、会ったことも無い自分の言動を予測したというのか…
そう考えていると、マーキス卿は思いもよらぬことを言った。
「長男共々、私の仕事を手伝わせています。親の贔屓目かもしれませんが、嫡男が居なければ婿を取って家を継がせるのに十分な力量を持った娘です」
護衛さえ入れぬ会談に、自ら同席する機会を勝ち取った娘…つまりは……
「討伐軍を迎え撃つにあたり、彼女の知恵が役に立つ…とお考えなのですか?」
「領の経営はともかく、戦には深入りはさせたくなかったのですが……。これからやるのは悪だくみですから、息子よりこれの方が向いているでしょう。……獣人の商人を殿下に引き合わせたのが娘だった……と言ったら信じますかな?」
「なんですと?」
「といっても、私が娘の助言に従い、王国での商売を狙っていた獣人の商会に『殿下を王位につければ、能力次第で只人以外にも商売が可能になる…かもしれない』と情報を流しただけでしたがね」
「即決で文書を出したとお聞きしました。さすがです、これで彼らが殿下を裏切る事は無いでしょう」
マーシアが嬉しそうに言う。自分が提供した機会をグリフが最大限活かした事がよほど嬉しかったのだろうか、その表情は恍惚と言っても良いほどだった。
グリフはそんな娘の顔を見ながら、記憶のページをめくり続けていた。そういう特異な才を持つ女性なら、人材マニアのグリフの捜索網にかかってもおかしく無いはずだった。だが、必死に思い返してもグリフが知っているマーシアの噂と言えば、益体も無いものばかりである。
「失礼ながら、ご息女の事はほとんど知りませんでした。……何か事情があって社交の場には出ていなかったのでしょうか」
「公爵家の二女が婚約に失敗した…妹でさえとうの昔に相手がいるのに……という話を耳にした事は?」
「えぇ…まぁ」
「誰に似たのか、自分で采配を振るえる場を求めておりましてね。何度か見合いをしたものの、相手から断られてばかりで。実をいえば、ブレス王の妃に…という内々の打診もあったのですが、そういった顛末が王家の耳に入ったらしく、それも立ち消えに…」
「あれは、こちらからお断り申し上げる話でした。王妃では、子供を産んで育てるだけの人生になってしまいます。そういうのが向いている女性と向かない女性が居ると知るべきです」
グリフの前だというのに、マーシアは歯に衣着せる気も無いようだった。この国の女性の最高位も、この娘にとっては主婦と変わりないならしい。そもそも、王からの婚姻の打診を断れる訳が無いのに、それをこちらから断る話と言い切るのは、かなりブッ飛んだ思考だった。
(これは相当の変わり者だ…)
と、変わり者のグリフに思わせたのだから、大したものである。
「正直立ち消えになってホッとしました。いつもの調子だったら、死を賜りかねませんから……」
「何をしたのです?」
興味の出てきたグリフは、マーキス卿ではなくマーシアに直接言葉をかけた。
「女主人としてだけでなく、あなたの片腕となって家を支えたいのです…と申し上げたら、『どのように?』と聞かれたので、先方の経済状況と領地の運営についての問題点とその改善についてまとめた3年間の行動計画書作ってをお渡ししたのですが、お二人は中を見もせず破談となり、お一人は読んだ上で『なぜ我が家の経済状況まで把握しているのだ、乗っ取る気かと』、烈火のごとくお怒りになり…」
「それは……」
答えはグリフの想像の範囲外だった。
「徹夜して書き上げたというのに…。殿方というのは、賢しい女が許せないようですわね」
「……まぁ、こんな具合で、公爵家の娘だというのに、どこからかも声がかからなくなる程嫌われておる訳です」
(なるほど、これでは夜会に出ても居たたまれないだろう。社交に出てこないのはこのせいか)
「そんな折、殿下を援助する見返りの玉の輿。在庫処分の恰好の相手が見つかった訳です。売れ残りでも思わぬ役に立つ事があるものですね」
「ざ、在庫……」
あまりにぶっちゃけた言い方に、さすがのグリフですら絶句する有様だった。むしろ、横でこめかみを抑えているマーキス卿に同情してしまうほどだ。
「しかも殿下は地位も性別も…人種さえも問わず、能力を示しさえば良い…とおっしゃいました。私は普通の貴族の娘よりは、多少知恵が回ると自負しております。どうかお役立て下さい」
「このように調子にのるのが分かっていたので、対面はもう少し先にしたかったのです……」
(つまりは…)グリフは、マーシアが賭けをしてまでこの会談に乗り込んで来た意図が分かった。自分はただの妃になる気は無い、自分の能力を見て、それに相応しい扱いをしてほしい…というアピールのためだ。
「自分で采配を振るいたい…と。では、私の妃となって王家を乗っ取るおつもりですかな?」
「えぇ……と申したらどうされます?」
「できるならどうぞ」
「え?」
予想外の一言に、それまでグリフを翻弄していたマーシアが、逆に呆気にとられる事になった。
「私は凡人にすぎない。が、人を観る目はあるつもりです。あなたが国政を担うに足る力量をお持ちなら、それに従いましょう。王たる私の責任に置いてだが。まずは、宰相にでもなってみますか?もちろん、今後の実績次第ですが」
「ご冗談………では無いようですね」
笑い飛ばそうとしたマーシアはそれが本気だと気付き、初めてグリフという公子の暗い心を知った。
彼は自身が見出した人材に自分の全てを賭け、しかし自らの家臣にする事はなく国に推挙する事を続けていた。そして、自分の人生そのものは兄であるブレス王の添え物に過ぎないと達観しているのに、推挙した人材が貶められると激昂する。その理由は…
ブレス王と同じく、この男もキブト王に対するコンプレックスを抱えているのだ。しかも飛び抜けた才を持たないグリフは、ブレス王以上に劣等感を感じていたに違いない。いかに努力しようとも、決して超えられぬ才能の壁を嘆く日々。そう言った負の感情を周囲には欠片も見せる事なく、彼は世に出られぬ才能を見出し、自分の分身として王城に送り込んだ。そして、自分が見出した人材が重用され受ける称賛を、自分への称賛として受け取り満足する事に昏い喜びを感じていたのだ。それこそが彼が食客に過度に入れ込み、食客の自由を許し、害されると我が事以上に激高する理由だった。
「さすがに辞退いたします。私たちの孫の世代なら、それも可能かもしれませんが、今は無理でしょう」
グリフの言葉に嘘はない。ハイテンションで好き放題ぶっちゃけていたマーシアが、声を落とすほどだった。この男は、王家に生まれながら王国の伝統になんの意義も憧憬も感じて居ない。それは…危うくさえある。
「気が変わったら遠慮なく手を挙げてくれていいですよ。それに、地位はともかく、聞くべき意見であれば私は誰の声でも聴きます。私を動かす事ができれば、影の宰相と呼ばれるのも夢ではありません、当面はそれで我慢してください」
「……承知しました」
マーキス卿は、意外そうな目で娘と将来の義理の息子を見ていた。今までの貴族の子息は、一方的にマーシアに振り回されるばかりだった、だからこそ、十分な根回しをしてから対面させたかったのだ。だが、意図的にか素でか、グリフがマーシアを振り回しているように見える。だが、少なくともグリフがマーシアを粗略に扱う事は無いだろう事は予想できた。
政略結婚でも娘には幸せを掴んで欲しい…それは公爵としては甘い考えだろうと思っていた。特に「幸せ」が他者と大きく異なるこの娘は、王妃となって死んだように生きるしか無いと思っていた。だがこの婿殿となら、娘は「生きる」事ができるだろう…。
(しかし…)
追わず口角が上がりそうになるを辛うじて抑えた。果たしてこれは『破れ鍋に綴蓋』だろうか、はたまた『類が友を呼ぶ』だろうか……。
「話がだいぶ逸れましたが、殿下のお心は判りました。結構です、娘を嫁がせて大きな顔をしていると思われるのも業腹なので息子に任せようと思っていましたが、円卓の長として殿下を唸らせる政策をひねり出してみましょう。まぁ、時間もありません、細かい点は殿下が至高の座に座ってからといたしましょう」
直にグリフを見、その腹の内を聞いたことで、マーキス卿も支持する覚悟決めた。だが、まずは生き残らなければならない。
「僅々の問題は王城の動きですね」
「それについては、王都からの報告が届いております。王が討伐の号令を発したのはお耳に入っているかと思いますが、近々…といっても報告があった時点でですが、王都を発する事が決まったそうです。そこまでは予想通りでしたが…なんと、総大将はあのダハルマ・トライバル殿との事ですよ」
「まさか!?。ダハルマ殿はだいぶ前に隠居したはずでは?」
「王城が討伐の軍の陣立てを公表しています。間違い無いでしょう」
この情報には、グリフも驚きを隠せない。ダハルマ・トライバル元子爵は、既に六十歳を超えているはずだった。
ダハルマ卿は、下位の貴族でありながら兵馬相を務めた事もあり、当代最高の騎士と名高い人物である。太平の世で緩んだ近衛の規律を立て直し文字通りの精鋭に仕立て上げ、騎士子弟の教育に尽力した後、『自分の役目は戦場にある』として職を退き、南方森林の紛争地帯を転戦してその安定に尽くした。魔獣の獣害の混乱に乗じて度々侵入していた南方のクア藩国は、散々に翻弄された末『ダハルマ卿存命のうちは二度と国境を超えぬ』と称賛して兵を引いたと、まことしやかに語られているほどである。そんなダハルマ卿も南部が安定すると、伯爵への陞爵が確実視されながら『煩いジジイはとっとと去るわ』と言い残して隠居してしまった。
「隠居した老騎士を旗頭にせねばならないほど、統制に苦慮しているという事でしょうか」
「えぇ、王が号令をかけたものの、各家とも出兵には及び腰のようで、士気も練度も低い兵士しか集まらぬようです。それらをまとめ上げるには、ダハルマ卿しか無い…と」
そこで一旦区切ると、マーキス卿は僅かに悲しげな眼をした。
「王は、かなり猜疑心が強くなっています。だからこそ、裏表が無く忠節を曲げぬダハルマ卿を頼みとしたのでしょう。ダハルマ卿は、『自分が戦うのは王国を脅かす敵のみ』と、一旦は固辞したのですが、王が直に乞うて復職したそうです…頼る家臣の無い王を見かねたのでしょうな。王は伯爵と護国卿の位をもって遇しようとしましたが、王国騎士の位しか受け取らなかったとの事」
「いかにもダハルマ卿らしい」
「まさに」
爵位を断るダハルマ卿の姿が想像できるようで、二人とも思わず笑みをこぼした。ダハルマ卿が騎士の中の騎士と称賛されるのは、戦働きだけではない。その清廉な人柄と、王家相手でも直言する実直さからである。まさに物語の中の騎士が実体を持ったかのような、そんな騎士なのである。キブト王にすら苦言を呈する姿は、一時期王宮の名物になっていた。そして、護国卿は国家危機の際の臨時職であり総指揮官に当たる。たかが内戦の鎮圧に赴くダハルマ卿が受け取る訳もなかった。
「とはいえ、最高騎士が敵に回るのですから、笑ってばかりもいられません。ダハルマ卿が指揮を執るなら、いかに烏合の衆でも侮れぬ敵となります」
「加えて、数はこちらより多いでしょうね」
「まだ最終的な報告は届いていませんが、まず間違いなく。ただ、朗報もあります。ケッセンリング家は、この戦いからも外されているとか。戦力差が倍以上になる事は避けられるそうです」
「それはまた……」
この国最大貴族のケッセンリング家は、ブレス王により遠ざけられて久しい。王の怒りは未だに解ける気配もなかった。ただ、難しい立ち回りをしなければならないこの時期に、王に遠ざけられているというのは、ある種の利点でもあった。実際ケッセンリング家は「王にお味方を申し出ているが断られている」という態度をありありと取っている。最大貴族が日和見を続けているのは、戦力差を詰めたいグリフにはありがたい話だった。
「……この戦いに、ただ勝てばいいというものではありません」
それまで黙っていたマーシアが口を開いた。グリフもマーキス卿も咎め立てることもなく、黙って頷くと先を促した。
「ただ勝つだけなら、わが領地の地の利を活かせば持ち堪える事は可能です。そして持久戦になれば、長期の遠征に耐え切れなくなった諸侯の兵は、何かと理由を付けて引き上げるでしょう…」
王国では、基本的に軍の費用は貴族の自弁である。貴族の義務として出兵しなければならない。その点、ツェンダフ領とその寄子が主力となるツェンダフ軍より、諸侯の寄せ集めである討伐軍の方が不利である。経済的に厳しい貴族の兵は、長期の従軍には耐えられないだろう。
「だが、それだけでは勝利とは言えない…」
「はい。我々の目的は、討伐の軍を破る事ではありません。その後、王都に向かいブレス王を玉座から追い出さねばなりません。また、いたずらに内戦を長引かせれば、民も貴族も我々に背を向けてしまいます。理想的な勝利は、短期間で、損害を抑えて勝利する…これは敵の損害も…という事になります。犠牲が多ければ、貴族は後に引けなくなります」
それは、あまりに現実を無視した理想論であった。だが、軍事を知らない娘の戯言…と切り捨てることはできない。マーシアは、目先の戦いだけでなく最終的な目的…王城への進軍もきちんと見据えていた。そして、戦争が国力の消耗の最たるものであることも。軍を整え一戦するだけで夥しい金銭、食料、…時として人命…が失われる。国民にのしかかる負担は計り知れない。他国との争いならともかく、これは内戦なのだ。そして、戦争は終わらせることこそが難しい。討伐軍を全滅などさせたら、子弟を失った貴族は引くに引けなくなる。どうにか王位を得てもグリフの治世は困難なものとなるだろう。
…とはいえ、理想は理想に過ぎない。そこから妥協すべきは妥協し、まずは現実的な線で勝利を得なければならない。
「話し合いで敵軍を丸ごと引き込むか、一撃で兵の心を折って降伏させられれば最善なのですが」
「相手がダハルマ卿では無理だろうな」
マーキス卿が首を振る。まさに、それを避けるためにダハルマ卿は総大将に任じられたのだから。
「次善策に何か腹案はありますかな?」
グリフは笑みを浮かべてマーシアを見た。
それは婚約者への視線ではない。戦局を読んで、自ら口を挟んで来た戦友…いや、献策をしようとする軍師への視線だった。
(試されている…)
マーシアの背筋を緊張が走る。この国の貴族なら、女に軍事の意見を聞く事などありえない。それをいともあっさりとやってのけた。能力を愛し実力を至上とする男。彼の前では性別も種族も関係無い。だが逆に、夜会にしか興味を示さないような女なら、どれほどの美姫であろうと彼の心を掴む事は出来ないだろう。そうなれば、政略結婚の相手として…良くてもただ女として愛され、そうでなければお飾りの王妃として…生きる事になる。
そんなのは真っ平御免だ。それならいっそ……
「嫌われついでに、殿下にも嫌われてみましょうか………」
自分を鼓舞するために小声でつぶやくと、おそらくはグリフが激怒するであろう提案を口にした。
「殿下の郎党は、皆一騎当千の強者とか」
「あ、えぇ。彼ら無ければ私は生きてあなた方とお目にかかる事は出来なかったでしょうね」
「当家に譲っていただけませんか?」
「なんですと?」
マーシアは、それはそれは黒い笑みを浮かべて言った。
「殿下には指揮権を全て返上のうえ、彼らにはツェンダフ領軍の指揮下に入っていただきたく存じます」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
引き続き無駄に長いけどやっとタイトル回収。主人公どこ行った…
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