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(オマケ)キャラ解説など(無駄に長い。読み飛ばしても支障ありません)
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下書きを使い果たしたので、本編は少し間が開きます。ごめんなさい。
繋ぎにキャラメモを改稿したのを置いておきます。本人の予想以上に長くなり設定を忘れ気味なので作ったのですが、改めて読み直すと所々矛盾がががが…。
思いついたら更新します。いくつか本編で書いてない情報も含まれますが、別に伏線でもなんでも無いので深く考える必要はありません。所々ネタ風味ですが、こっちが作者の素なので暖かい気持ちでスルーしてください。
たまに好き放題書き散らかさないと暴発しそうなんや!。
年齢は、イメージはあるけどあんまり厳密に決めて無いので書きません。ただほとんどの登場人物は20代以上です(ステレが10代後半で亡命に付き従って3年放浪、内戦を経て森に逃げ込んで数年経過が現在。オーウェンはステレより年上)。
ステレ
【名前】
カンフレー家当主継承後は
ステレ・サルハ・ダス・カンフレー(カンフレーの頭領サルハ)
「サルハ」はカンフレーの女当主が代々受け継ぐ名。
【種族・性別】
只人→鬼人 女性
【出自・地位】
カンフレー男爵クリークスと、カンフレー家当主カーラの一人娘
現在はカンフレー家当主にしてカンフレー子爵
ウィルムポット辺境伯(予定)
【容姿・特徴】
只人の頃は、容姿も体格もごくごく普通の地味な田舎娘だった(髪を切り日焼けした上に男装していたので少年のような見た目ではあった)が、鬼人に転生したら似ても似つかない美人…というかイケメンになった。
深紅の髪、金色の瞳(瞳孔は縦)、犬歯が発達している。耳もややとがり耳
女性だが体格は男性とほとんど変わらず、胸は相当に残念。基本的に普段から男装している。正直、ただドレスを着ただけでは女装した男に見える。
(王国は女性に制限の多い国だが、宗教上異性装がタブーになっている訳ではない)
子供の頃から男勝りの性格で、騎士になって実家を継ぐのを夢見ていた。
王国法でそれが叶わぬと知り、更には性徴期を迎えて身体能力では男の騎士には全く勝てないと悟り、騎士を諦め剣士への道へ進む。そのための援助をしてくれたグリフに、誰にも捧げる事の出来なかった騎士の忠誠を捧げるが、それが王家への叛意と見とがめられ、カンフレー領襲撃へのきっかけの一つとなってしまう。
グリフや他の食客達と共に皇国へ亡命し、逆転のためにツェンダフ公爵領を目指すが、過酷な旅でカンフレーから付き従ってきた家臣を全て失い、自分も致命傷を負う。人である事を捨ててでもグリフのために戦う事を選んだステレは生き延びるために鬼人に転生。その力でグリフの勝利に貢献するが、強敵との戦いを求め続ける鬼人の心を抑えきれずに苦しむ事になる。
たった一つの命を捨てて生まれ変わった不死身の身体は、只人を遥かに上回る筋力、耐久力を誇るが、そのために身体の密度が高く見掛けより体重が重い。近接戦闘では無類の強さを誇るが、どうやっても水に浮かないので、種族的にカナヅチである。また、重武装すると馬の積載限界を超えてしまいがちで、重装騎兵にもあまり向かない。
只人の頃は細剣と短剣を使っていたが、武装した傭兵には効果が薄いため放浪時には長柄の斧を使うようになった。<夜明けの雲>と勝負するようになってからは、ガランドの剣技の見様見真似から両手持ちの長剣を使うようになる。言うまでも無いが、モデルは「チェスト」のアレ。
年に1回初夏に発情期を迎える。ステレの場合グリフに欲情してしまい、その衝動はもしグリフが目の前に居たら「辛抱たまらん」になるのが明らかだったのも、ステレが王都を逃げ出した理由である。
終わった後はやっぱりブルーな日々がやって来る。毎月苦しまなくていいや…と思っていたステレだが、1年分纏めて襲って来るようなディープ・ブルーだった。個人差もあるようなので、鬼人の女性が全員そうという訳でも無いはず(たぶん)。
そんな訳で、初夏のステレはあまりにみっともない姿なので、誰も棲み処に近づけないようにしていた。鬼人のステレが女性らしい姿を見せるのは(見せて無いが)これだけだった
オーウェンの愛を受け入れて、やる事やったらだいぶ発散したらしい。
ほとんど準備もせず魔の森に入り、短期間に鬼人の心を抑えられなきゃ野垂れ死ぬだろう…と思っていたのだが、それを予測していた王妃の願いでドルトンが定期的に補給を行い、とりあえず人間らしい生活ができていた。それでも鬼人でなければ生存は覚束ない環境であり、そんな魔の森で、愉しむために戦うのではなく生きるために戦うという生活を続けた結果、只人ステレの心が闘争心を御せるようになったものの、反動で<夜明けの雲>と出会った頃には、目的も無くし「生きるだけ生きよう。死んだらそこが寿命」という、すっかり老成した境地になっていた。しかし、魔人との生死をかけた戦いの末、剣への情熱を甦らせる事になる。魔の森だけでは足りず、魔人と出会ってようやくステレは人と鬼の心の融合を果たしたと言える。
元々女性らしい事はとことん苦手なうえに、挫折の連続だったせいで自己評価が低く、オーウェンの想いにも全く気づかないままだった(ずっと妹扱いしかしなかったオーウェンも悪い)。それでも転生前はそれなりに慎みもあったのに、鬼人になって以降は悪化しており、放っておくと人前でも平気で全裸でうろつく。
自分が剣士として生きられる道を切り開いてくれたグリフに、初めて異性としての感情を持つこととなったが、かなわぬその想いを最後まで口にする事は無かった。
両親の死の衝撃から自分の心を護るための本能か、家族を愛する心を自身の奥底に沈めてしまっている。そのため、両親が死んだ事は認識しているが、詳細が思い出せない。目の前で家臣が死んでも、全く心動かなくなってしまっている。
アルカレルの屋敷でこの事実を突きつけられ、自分の旅を追体験した末、思い出の母親に腹パン食らって症状は多少は改善したが、それでも感情がロックされたままでいまだに涙を流す事ができない。それは、同僚の騎士や兵が次々死んでいく中で、大した能力の無い自分が女だというだけで保護され、生き残った挙句、致命傷を負ったのに鬼人として転生してまだ生き続けている事に後ろめたさも感じているためだった。
【カンフレー家】
王国の北西隅の山の中にあるド田舎、カンフレー領を治める男爵家。
王国再統一戦争以前からの土着の一族で、爵位(領地)と家名が一緒なのはいまや王国でも数少ない。王国の法では女子は爵位を相続できないので、ステレはカンフレー男爵にはなれない。家を継ぐには婿を取り、カンフレー男爵夫人になるしかない。一方でカンフレー家当主は直系長子の相続のみのため、ステレが当主になる。
グリフが即位後に王国の法が緩和されて、貴族の責務を果たす覚悟のある女性は爵位を継げるようになったが、そこまで気概のある女性はまだまだ少ない。
ステレはグリフを守って討死した事になっており、功績により生前に遡ってカンフレー男爵の位が送られたうえ、子爵位が追贈されている。とはいえ、後継ぎが居ないため表向きにはカンフレー家は断絶となっており、現在カンフレー領は王家預かりとなっている(だから、女子への叙爵がすんなり認められたのである)。僻地のためか代官などは派遣されておらず、領民の自治が黙認されている状況である。
カンフレー家は、統一戦争のおり健国王に鬼人を仲介した取次役…という事になっているが、実際は只人の世界で暮らす事を選んだ鬼人の末裔。
見た目は只人と変わらないが、秘薬により鬼人の能力を引き出す事ができる。つまりは鬼人の秘薬はカンフレー家当主以外の者が飲んでも全く効果は無い。秘薬を心臓に直接注入する事で体を先祖返りさせ、鬼人として転生できる。ただしこれは身体を一から作り替えるので、とてつもない苦痛を伴う事になる。
鬼人の因子が濃い場合は、命の危機に薬を使わずとも先祖返りして鬼人に変化する事例もある。
不思議なことに、カンフレー家では鬼人の血は第一子にのみ受け継がれ、第二子以降は普通の只人としてしか産まれない。鬼人の末裔であるカンフレーの頭領には鬼人の血が必須のため、男女どちらが産まれても一人しか子を設けない場合が多い。ステレも母のカーラも、貴族なのに女子の一人っ子なのはそれが理由である。
一子のみの継承にも拘わらず、いまだに血が途絶えず続いているのが鬼人の血の恐ろしい所。歴代必ず子が産まれ、後継ぎを残すまで必ず生きているのである。
他のカンフレーの住民は鬼の血が混じっているものの、ほとんど只人になってしまっている。最も、こんな山奥の僻地で餓死者も出さずに集落が営まれているのは、鬼人の血による強靭さのためであろう。鬼人になったステレは、生のドングリを皮ごと食べても平気な胃腸になっており、秋には魔の森の獣とドングリの取り合いをしていた。
<夜明けの雲>
【名前】
<夜明けの雲>
一見奇異に見える魔人の名前は、彼らの本名を大陸語に直訳したものだから。かつて翻訳魔法の精度が低い時代の名残りらしい。彼の本名は「ギョウウン(暁雲)」という。
【種族・性別】
魔人 男性
【出自・地位】
詳細不明。魔の森の奥、岩に囲まれた広場にある謎のゲートから現れる男。なんらかの罰で、魔の森の管理人(暴走を防ぐため変異魔獣を間引く仕事)をやらされている。制約のせいで山で囲まれた魔の森の外に出る事はできない。
【容姿・特徴】
青味がかった黒髪というか濃紺の髪、同じく黒に見える濃紺の瞳。中肉中背。筋肉ダルマではなく横幅と厚みはそれほど無い、ステレより華奢に見えるほど。種族差が現れやすい瞳も耳も只人と同じで見た目は只人の青年にしか見えないが、既に数百年を生きている。
内包する魔力は桁違いだが、それを感知させない程隠蔽が巧み。
森人(エルフ)は只人の上位互換な種族だが、更にその上位互換が魔人。
魔の森の生き物は、魔力の影響で血が青味を帯びる。ステレも血は紫色になっているが、<夜明けの雲>の血は真っ青な色をしている。
魔人は強力な魔法の使い手として知られ、只人が数人がかりで一燭時かけて織り上げる「火球」を単独発動できると言われている。<夜明けの雲>も魔法使いなのだが、制約により接触しないと魔法を発動できなくなっている。そもそも本人は滅多に外部魔法を使わず、基本的には身体強化のみで戦っているので、傍目には拳士にしか見えない。八極拳モドキの怪しげな体術で戦う。その戦闘力は、徒手空拳にも拘わらず意味不明なほどに強大。魔法金属の鎧だろうと防御を無視して打撃を通す事ができるし、普通の鉄板であれば素手で物理的に破壊する事も可能。
見た目は気さくな「隣の家の兄ちゃん」でしか無いのだが、その内面は戦いこそが全て、戦いこそが生甲斐の男。ステレよりよっぽど鬼人っぽい。強者と見れば、即座に口説き、食事に誘うようにデートに誘うように、勝負に誘う。ナンパしているように見えるが、ステレに対する性的な感情は皆無である。とにかく、命を削るギリギリの勝負をしたくて仕方ないのだが、何しろ魔人は強力な種族なので、そんな身を焼く如き戦いができずに鬱屈している
これは、魔人全部がそうなのではなく彼が特別、というかキッパリ言って異常なだけ。多分彼が受けている罰の原因はコレだろう。
『命を大事に、安心安全な殺し合い』が信条。殺し合いをしたいが相手は殺さない。致命傷を叩き込んだ瞬間に治癒魔法を発動させて相手を殺さずに勝ち、その後の成長とリベンジに期待している。…なんて事ができるのは、要するに、今まで手加減できる相手しか居なかったのである。だが、彼が勝負をしていた時代は王国騎士が蛮族スレスレだった時代で、ほとんどの相手が負けを認めると自害してしまった。
少なくとも300年くらい前から魔の森の奥の広場で剣士相手の決闘をしており、一度も負けた事が無い。ここしばらく休眠しており、そのせいで魔の森は度々魔獣の暴走を引き起こしていた。
戦い以外については基本的にポンコツ。
森を離れることができないうえ、妙なこだわりで戦うのは自分の領域である広場だけで、そこまで来た相手としか戦わない。だからこの男が戦うのは多くても年に数回であり、つまるところ、この男は9割方ポンコツである。…というかステレの同類。コイツもステレの前でも平気で脱ぐ。
オーウェン
【名前】
オーウェン・アルガ
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
アルガ家(伯爵)の次男
現在はロイツェル侯爵アルガ家の当主
【容姿・特徴】
黒髪、鳶色の瞳。体格は鬼人のステレよりちょっと大きいくらい。
王国でも有数の剣の使い手。鬼人のステレが勝てないチート只人の一人。
実家は田舎の伯爵家。放漫経営をしていた訳ではないが、領地が天災による被害を受け財政破綻しかけていた。オーウェンが成人する頃は王都に出仕すらままならない程で、オーウェンは金策に駆け回る父の手伝いをしている。窮乏を打開するため、グリフの支援によって仕官し、貴族でも平民でもいいから、実家を支援してくれる、できるだけ裕福な家への婿入りを…と考えていたが、その矢先にグリフの大雑把のせいで年頃の女子(ステレ)と相部屋にされ、その結果裕福とは真逆の貧乏男爵家の娘に恋してしまい、挙句に互いに「初めて」した結果、ステレ以外の女は愛せなくなってしまったという。ある意味グリフの最大の被害者。
それなのに、どーーーーーしても本人の前では妹扱いしかできなかったせいで、ステレの王都出奔を許す事になってしまう。相手は直球で言っても時々通じないほど察しの悪いステレなのだから、察して君のオーウェンではすれ違いになるしか無かった。
家臣ではなくグリフの食客という立場だったが、グリフの護衛としてクヴァルシルに向かう途中で襲撃を受け、カンフレーでの防衛ののち共にクヴァルシルへ亡命する。家臣ではないから実家に戻る事もできたが、剣以外に無い自分を支援してくれた恩を忘れず、そのまま皇国へも同道する。
巡り巡って王国でも有数の要地ロイツェルを治める侯爵になり、実家の支援もする事ができたが、妻を娶らずステレを待ち続けていた。その一方で、魔の森との連絡をするドルトンと王城の間の取次役となっているが、自分の想いは一切出さずに事務的な対応に徹しており、ドルトンがとうとう気づかなかったほどである。堅物もここまでくるともはや清々しいほどである。
未婚の侯爵のうえ王の側近であり、かつその風貌、物腰、剣の腕で王国の女性からは『最後の優良物件』として圧倒的に人気があるが、その押しの弱さとどうしてもステレを女性ではなく剣士として扱ってしまうせいで、同僚からはおしなべて「残念なイケメン」と思われている。多数の縁談はすげなく断り続けており、かといって周囲に想いを寄せる女性の陰も見えない事から、事情を知らない人々からは男色疑惑まで出ていたが、本人はステレ以外の女性はどうでもいいので、一向に気にしていなかった。
意識不明のステレが担ぎ込まれ、彼女が放浪と苦痛を追体験する過程で隠していた絶望の片鱗を知り、家を捨ててでも共に生きる決心をした(ようやく)。そのうちなんとかなるんじゃないかと思っているうちに、自分だけ忘れ去られているO-ウェンにならなくてよかった。
剣の腕は超一流だがそれだけではなく、実家の経営を補佐していた経験から、文官としての能力もある程度持っている。が、それは人を動かし決められたルールを忠実に実行するという職務においてであり、基本的には剣士らしく脳筋である。
ちなみに「おたのしみ」は酔った勢いで二人とも身体強化を全開にしてやっていた。双方とも、相手が逸般人で良かったね。
ドルトン
【名前】
サルモンの子ドルトン
彼らの一族には家名は無く父姓を名乗る。
(只人も平民は姓を持たない場合が多く、父姓を名乗る)
【種族・性別】
獣人 男性
【出自・地位】
各国を回って行商を行う遍歴商人ドルトン商会の会長
かつては獣人の国があったが、大昔に滅んでいる。現在の獣人は小部族毎に分かれて只人の国家で共存している。ドルトンはそのうちの一つを率いる族長でもある。
【容姿・特徴】
年齢不詳。只人とは異なる顔つきなので、容姿から年齢を推し量るのは難しい。が、甥が既に成人していたくらいなので、そこそこの年齢ではあるはず。
獣人は、獣の特徴が混じった人間の姿をしている。耳だけ猫とか頭が猫そのものという訳ではなく、全身が体毛に覆われた獣っぽい人間。ドルトンのイメージはローガン(ウルヴァリン)のような感じ……って、ローガンは獣人じゃないが。獣人にも個人差があり、チェシャなどは不気味の谷を飛び越えて、只人から見ても綺麗だと思わせる容姿をしている。
獣人は体格、筋力、耐久力は只人と同様だが、身軽な者が多く五感の感覚に優れている。斥候や密偵をやらせるならこれ以上適任の種族はいない。ただ、平原の出なので海は苦手にしており、深い森もあまり得意ではない。故国が滅んで以降は分散して只人の世界で生きているが、見た目で差別される事が多いため、苦しい生活を強いられている部族も多い。
ドルトンの一族は、とにかく(只人基準で)清く正しく生きる事で只人の世界に認知されるよう努力し続けている。身寄りを無くした只人の子を養育しているのもそのためである。数世代に渡る努力が実り、遍歴商人が務まるほどの信頼を得るに至っている。各地の商いで得た信頼を元に、ドルトンの代でとうとうそれらを束ねた商会の設立までこぎ着けた。只人至上の王国に本拠を構えての商売は、その総仕上げと言える。しかし、王国での他種族差別は根強く、更には他の獣人からは只人に媚を売るような行動が批判される事もある。
彼らに養育された只人は、多くが文官の即戦力になるくらい優秀なのだが、やはり獣人と一まとめに差別されがちで、商会で働く只人が多い。獣人の影響なんだか只人の影響なんだか、ドルトンの一族では性に対する意識がかなり独特で、一言で言えば腐女子が多い。基本雑食で、リバも下克上も、なんなら女性同士でもOKである(…いやこの情報必要か?)。
チート商人。「金さえ出すなら皇主宮だって持ってきてやる!」。万能なので、作品の辻褄を合わせるのに重宝する便利キャラ。異世界もので戦闘職以外のチートいえば、錬金術師か商人ですよね。
あちこちに妻が居るが、「金と権力を持つものは、持たない虐げられた同胞を救う責任がある」…という信念に基づいて寄る辺ない女を妻にしているため。妻たちは第〇夫人などとは呼ばず序列は付けていないが、妻として表に出すのは貴族の相手をしても平気なチェシャだけで、他の妻は名前も居所も明らかにしていない。というか何人いるかさえ不明である。数の少ない彼らは実力主義の社会で、族長も世襲ではないので、正妻やら側室やら愛妾の区別はあまり意味が無い。そもそも、彼らに養育された只人の孤児もみな「ドルトンの子」と名乗っている。
甥の仇を討ってくれたステレに感謝の念を抱いてることから過保護気味で、どうしょうも無いときはステレも妻にして守るつもりだった。
只人の社会では獣人の就ける職は少なく傭兵になる獣人も多いが、ドルトンは戦士ではなくあくまで商人である。それは、自分たちが生きて行かねばならない只人の世界で最強の武器が、第一に「情報」、次が「財力」だと考えているからである。一方で、獣人の長をするなら相応の実力が無ければならない。ドルトンは自分の存在を周囲に溶け込ませる技に長けており、その能力は獣人の一族でもトップクラス。夜間に限ればステレでも姿を捉える事が出来なかった。オーウェンやテンゲンクラスの剣士でなければドルトンを捕捉することすらできない。実際、野営中の商会を襲おうとした野盗が、ドルトン一人に皆殺しにされた事もある。
ところで…尻尾ってあった方がいいですかね?(有り無しで未だに迷ってるので明確に描写してないのです)
イーヒロイス
【名前】
イーヒロイス・カリス
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
カリス伯爵家の四男。男ばかりの四兄弟の末っ子。
【容姿・特徴】
弓の名手。幼少の頃から修練を積んでおり、骨格が変形して上半身が左右非対称になっている(左手の方が少し長い)ほどである。今では王国一の名手として、森人(エルフ)にまで名が知られている。
彼が世に出られなかったのは、経済的理由ではなく性格のため。
いわゆるコミュ障で、とにかく無口だった。伯爵家子息に求められる社交が全くできないため、唯一の味方だった母親が亡くなった後は、末っ子なのに可愛がられる事もなく厄介者扱いされていた。
兄三人がいずれも秀才で家は安泰だったが、貴族として優秀であるが故に弟を理解する事が出来なかった。兄達は自分たちと同じことができない弟を見限っていたようである。結果、本人は益々弓にのめり込み、実家との関係は修復不能なほど悪化していた。
グリフに援助されてからも、他人に弓を教える事もできないため、黙々と矢の自作をし黙々と的を射る日々を送っていた。彼の矢を天秤に乗せると、重さの誤差が1目盛りも無いほど几帳面。そんなイーヒロイスは『人間嫌い』、『弓を伴侶にする男』などと呼ばれていたが、彼自身は人嫌いな訳ではなく嫌っているのは自分自身だった。彼は他人の前に出ると(家族の前ですら)どうしても言葉が出なくなってしまうのである。イーヒロイスはそんな自分を嫌い、他人との関わりあいを避け、どんどん内に籠るようになっていった。
そんな重度のコミュ障の彼が内戦の功で侯爵に叙せられた後、どうやってか妻を娶って、いつの間にかに後継ぎまで生まれていたのは、王国の新七不思議のひとつとされている。
亡命中、弓を教えてもらおうと、とにかく必死になってコミュニケーションを取ろうと絡んで来たステレに、少し心惹かれていた(彼にとってステレはオタサーの姫のような存在だった)が、オーウェンの想いを知っていたので表に出す事はなかった。コミュ障のイーヒロイスに同情される残念さってどうよオーウェン。
ソルメトロ
【名前】
ソルメトロ・エルキュルス
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
元は、アーキリーズ伯爵家の長男ソルメトロ・アーキリーズ。
実家と絶縁し、叙爵にあたって新たにエルキュルス侯爵家を興したが、運営は家宰に丸投げして自分は市井で「貧乏貴族の三男坊」とか称してフラフラしている。そうして目につく「気にいらない奴」を腕力で黙らせてたら、とりあえず治安が良くなった。どんな事件も腕力で解決。見た目は筋肉、頭脳も筋肉。その名は王国騎士ソルメトロ…という訳で、もちろん領民にはバレバレである。お前のような三男坊がいるか!!。
とはいえ、領民は自ら治安維持に乗り出した領主を敬愛しており「ヒューーっ、見ろよあの筋肉を…、まるでご領主みたいだ。こいつは親戚か何かか?」などと、わざとらしくも気づかないフリをしているんだとか。
【容姿・特徴】
身体強化魔力に長けた男。というか、それしか鍛えていない男。『力こそパワー』の信奉者。
おかげで騎士のくせに剣も槍も弓も並み以下。だが、この一芸で王国中で「剛力のソロメトロ」で通じるくらい名が通っている。ぶっちゃけ、丸太を振り回し、拾った石を投げつけるだけで、小賢しい「技」は制圧されてしまう。彼の身体強化はそれくらい強力というか、常識外れのレベルに達している。
体格は同僚よりも一回り以上大きく、身体強化抜きでも怪力。
性格は一言で言えば…前田慶次郎(創作の方の)みたいな感じ。実は伯爵家の長男だったが、この性格のせいで廃嫡されている。だが、家のために何かを我慢するなどできない事を自分でも承知しており、廃嫡は当然だと思っている。とにかく、損得関係無しに自分が正しいと思った道しか進まないので、宮仕えには全く向かない。貴族を嫌っている風すらある。グリフの亡命に従ったのは、理不尽な追討に反発したためである。
本来は、グリフの即位と共に野に下るつもりだったが、叙爵を受けて侯爵となった。その際には、実家と縁を切り新たにエルキュルス家を起こしている。ざまぁがしたかった訳ではない。彼らとグリフが計画している貴族の特権返上に一番熱心な男であり、その実現のために叙爵を受けたのである。実家と絶縁したのは、自分の急進的行為で実家が巻き添えにならぬようにという配慮であった。
彼自身はエルキュルス家は自分一代で潰すつもりで…というか、自分が自分らしく生きたら結果として潰れるだろうと思っている。そのため、後継ぎを作る気もなく、便宜上妻としているのは実は愛妾である。
デルンシェ
【名前】
デルンシェ・ベンホータン
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
ベンホータン伯爵家の次男。
ベンホータン家は代を重ねると共に負債を重ね、現状では領地の実権をほとんど失っている。天災のせいで急に貧乏になったオーウェンと違って、彼は数代前から既に貧乏。街育ちなのに、ド田舎育ちのステレと食べられる草ネタで話が通じるんだから、かなりの苦労人である。
【容姿・特徴】
馬術の名手。
経済的困窮により馬や馬具にも事欠く有様だったから、彼も馬の世話すらした事が無いほどだったが、ダハルマがボランティアで開いていた貴族子息への騎士教育に参加した事で、馬術の才能を開花させる事になる。ダハルマはそんなデルンシェに目をかけて特に厳しく鍛えるようになったが、その教えを残らず吸収し、戦乱の時代さながらの強力な騎士になった。兄は文官肌で講習にも参加しておらず、平和な王国で今更どこと戦うつもりだ…といった態度だったそうだ。
優秀な騎兵として仕官できる事になっていたが、グリフ追討の報を聞くやその道を捨ててグリフの元に駆け付けた。そんな愚直な性格もダハルマの薫陶と言える。亡命中は馬を使う事もできずずっと徒士として戦うしか無かったが、ツェンダフにたどり着いてからは騎士の一隊を任されたうえ、討伐軍を迂回奇襲する騎兵の総指揮官に抜擢された。だが、師であるダハルマに一騎討を挑むために指揮官の位を返上している。
オーウェンと同様の好青年で、オーウェンと異なり「残念な」が付かないイケメン。オーウェンのように拗らせる事もなく、叙爵後に普通に結婚している。
メイガー
【名前】
メイガー・ジンクロム
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
ジンクロム家の長男だが妾腹なので嫡男では無かった。
実家からは追放されているが、ソルメトロとは違って叙爵後に元の家名を名乗り続けている。もちろん嫌がらせである。
かなり特殊な魔法使い。
【容姿・特徴】
魔力量は絶大なのに、魔力を投射する事ができず、魔法の矢を作っても魔法の盾を作っても、足元に落ちる役立たずの魔法使い。建国王に魔法で貢献し、魔法伯爵とまで言われたジンクロム家の当主…父に、伯爵家の恥として母親共々追い出されている。その上というか、そのせいでというか、恐ろしく口が悪く冷笑癖があり、優秀ではあったが文官としても仕官できなかった。
グリフに見いだされた後、王国中の魔法使いの元を訪れて師事し、それらを独学で昇華させて独自の魔法を組上げる事に成功した。現在は、メイガーが具現化した武器を麾下の兵が振るう事で己の魔法の活路を見出している。
それだけでなく、魔法使いなのに剣の腕を磨き、軍略を学び、経営や法令にも通じている。皮肉屋で歯に衣着せぬ毒舌で嫌われているが、そんな表の顔と裏腹に当人は恐ろしい程の努力家である。
なお、態度が悪いのは上役に対してであり、部下には配慮を欠かさない。自分一人では何もできない事を誰よりもよく知っているからだ。
護衛役のオーウェンと共にグリフの秘書としてクヴァルシルに向かう途中で襲撃に逢い、共に亡命した。母親は心を病んだ末に既に他界しており、彼の帰るべき場所はグリフの元しか無かった。
脳筋の多いグリフの騎士の中では貴重な頭脳派。
絶縁されたのに何故ジンクロム家を名乗れるかというと、彼の妻はジンクロム一族の分家の娘なのである。こちらも一族内のゴタゴタで本家と折り合いが悪く、利害の一致で婚姻となった。メイガーが義父と悪い笑顔で談笑している姿はよく目撃されているが、奥方との夫婦中については、誰も知らない。
グリフ
【名前】
グリフ・ヤルタ・カーライズ・グランダス・グラスヘイム(グラスヘイムの総領、カーライズ家のグリフ)
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
物語時点でのグラスヘイム王。
型破りで知られた先々代キブト王の二人の王子兄弟の一人で、先代の王ブレス王の弟。
ブレス王とは母親が違う。ブレス王の生母(正室)は皇国貴族から嫁いできたが、彼の母親は王国貴族の出の側室である。
母親の身分の差以前に、本人は自身が凡人である事を承知しており、早々に「王位を望まない」と宣言して事実上の臣籍降下していたが、ブレス王即位後にまだ男児に恵まれていないため、弟であるグリフが継承権一位になり、フレイスリーター(フレイ大公。王位継承権一位の称号)となっていた。亡命時に称号は剥奪されているが、その後も非公式に「公子殿下」と呼ばれる事が多かった。内戦に勝利してブレス王から禅譲を受け、正式に国王となる。
【容姿・特徴】
亜麻色の髪、青い瞳
とにかく平々凡々で知られた王子。父親のキブト王が超人的な才能で有名だったのに対し、何から何まで人並みだった。そんな自身を誰よりもよく理解しており、早々に王位継承を放棄すると王国発展に役立つであろう人材の発掘と援助を始めた。家臣にする訳では無く食客として遇し、見出した人材の才能が開花するや王家に推挙している。
王国に尽くす忠臣と思われていたが、実のところ父であるキブト王へのコンプレックスから、一芸でも才に秀でた人材を見つけては我が分身として推挙し、その活躍を自分に重ねる事に喜びを見出していたのだった。だから、食客が害されると我が事以上に激高する。
才能を愛し、身分や地位に関係なく才能だけが評価基準となるクヴァルシル公国に憧れを持っていた。それは凡人の自分がクヴァルシルで生きる事ができないという諦めの裏返しでもある。
亡命中は、名簿を片手に、毎日一兵卒に至るまでその事績をなぞり、記憶に刻み込んでいた。血統以外に何も持たない自分にできる事は、『忘れない事』であったから。
兄に勝利した自分がどのような国を作るか…と考えた際、王や領主個人の能力で国政が左右されないよう、行政機関に決定権を持たせ、王が行うのはその承認という体制を構築する事とした。それに合わせて、能力による人材の抜擢を身分性別人種問わずに行うことを明言している。内戦の後始末による領地の削減はどうにか飲み込んだ諸侯も、急進的な制度変更には反対の姿勢を見せており、今後の舵取りで真価を問われる事となるだろう。
ステレの想いに気付いてはいたが、どうやっても応える事ができないと承知していたから、主と家臣という態度を最後まで崩さなかった。それでも、母親カーラの言動と共にステレは今も王の心に大きな跡を残している。
繋ぎにキャラメモを改稿したのを置いておきます。本人の予想以上に長くなり設定を忘れ気味なので作ったのですが、改めて読み直すと所々矛盾がががが…。
思いついたら更新します。いくつか本編で書いてない情報も含まれますが、別に伏線でもなんでも無いので深く考える必要はありません。所々ネタ風味ですが、こっちが作者の素なので暖かい気持ちでスルーしてください。
たまに好き放題書き散らかさないと暴発しそうなんや!。
年齢は、イメージはあるけどあんまり厳密に決めて無いので書きません。ただほとんどの登場人物は20代以上です(ステレが10代後半で亡命に付き従って3年放浪、内戦を経て森に逃げ込んで数年経過が現在。オーウェンはステレより年上)。
ステレ
【名前】
カンフレー家当主継承後は
ステレ・サルハ・ダス・カンフレー(カンフレーの頭領サルハ)
「サルハ」はカンフレーの女当主が代々受け継ぐ名。
【種族・性別】
只人→鬼人 女性
【出自・地位】
カンフレー男爵クリークスと、カンフレー家当主カーラの一人娘
現在はカンフレー家当主にしてカンフレー子爵
ウィルムポット辺境伯(予定)
【容姿・特徴】
只人の頃は、容姿も体格もごくごく普通の地味な田舎娘だった(髪を切り日焼けした上に男装していたので少年のような見た目ではあった)が、鬼人に転生したら似ても似つかない美人…というかイケメンになった。
深紅の髪、金色の瞳(瞳孔は縦)、犬歯が発達している。耳もややとがり耳
女性だが体格は男性とほとんど変わらず、胸は相当に残念。基本的に普段から男装している。正直、ただドレスを着ただけでは女装した男に見える。
(王国は女性に制限の多い国だが、宗教上異性装がタブーになっている訳ではない)
子供の頃から男勝りの性格で、騎士になって実家を継ぐのを夢見ていた。
王国法でそれが叶わぬと知り、更には性徴期を迎えて身体能力では男の騎士には全く勝てないと悟り、騎士を諦め剣士への道へ進む。そのための援助をしてくれたグリフに、誰にも捧げる事の出来なかった騎士の忠誠を捧げるが、それが王家への叛意と見とがめられ、カンフレー領襲撃へのきっかけの一つとなってしまう。
グリフや他の食客達と共に皇国へ亡命し、逆転のためにツェンダフ公爵領を目指すが、過酷な旅でカンフレーから付き従ってきた家臣を全て失い、自分も致命傷を負う。人である事を捨ててでもグリフのために戦う事を選んだステレは生き延びるために鬼人に転生。その力でグリフの勝利に貢献するが、強敵との戦いを求め続ける鬼人の心を抑えきれずに苦しむ事になる。
たった一つの命を捨てて生まれ変わった不死身の身体は、只人を遥かに上回る筋力、耐久力を誇るが、そのために身体の密度が高く見掛けより体重が重い。近接戦闘では無類の強さを誇るが、どうやっても水に浮かないので、種族的にカナヅチである。また、重武装すると馬の積載限界を超えてしまいがちで、重装騎兵にもあまり向かない。
只人の頃は細剣と短剣を使っていたが、武装した傭兵には効果が薄いため放浪時には長柄の斧を使うようになった。<夜明けの雲>と勝負するようになってからは、ガランドの剣技の見様見真似から両手持ちの長剣を使うようになる。言うまでも無いが、モデルは「チェスト」のアレ。
年に1回初夏に発情期を迎える。ステレの場合グリフに欲情してしまい、その衝動はもしグリフが目の前に居たら「辛抱たまらん」になるのが明らかだったのも、ステレが王都を逃げ出した理由である。
終わった後はやっぱりブルーな日々がやって来る。毎月苦しまなくていいや…と思っていたステレだが、1年分纏めて襲って来るようなディープ・ブルーだった。個人差もあるようなので、鬼人の女性が全員そうという訳でも無いはず(たぶん)。
そんな訳で、初夏のステレはあまりにみっともない姿なので、誰も棲み処に近づけないようにしていた。鬼人のステレが女性らしい姿を見せるのは(見せて無いが)これだけだった
オーウェンの愛を受け入れて、やる事やったらだいぶ発散したらしい。
ほとんど準備もせず魔の森に入り、短期間に鬼人の心を抑えられなきゃ野垂れ死ぬだろう…と思っていたのだが、それを予測していた王妃の願いでドルトンが定期的に補給を行い、とりあえず人間らしい生活ができていた。それでも鬼人でなければ生存は覚束ない環境であり、そんな魔の森で、愉しむために戦うのではなく生きるために戦うという生活を続けた結果、只人ステレの心が闘争心を御せるようになったものの、反動で<夜明けの雲>と出会った頃には、目的も無くし「生きるだけ生きよう。死んだらそこが寿命」という、すっかり老成した境地になっていた。しかし、魔人との生死をかけた戦いの末、剣への情熱を甦らせる事になる。魔の森だけでは足りず、魔人と出会ってようやくステレは人と鬼の心の融合を果たしたと言える。
元々女性らしい事はとことん苦手なうえに、挫折の連続だったせいで自己評価が低く、オーウェンの想いにも全く気づかないままだった(ずっと妹扱いしかしなかったオーウェンも悪い)。それでも転生前はそれなりに慎みもあったのに、鬼人になって以降は悪化しており、放っておくと人前でも平気で全裸でうろつく。
自分が剣士として生きられる道を切り開いてくれたグリフに、初めて異性としての感情を持つこととなったが、かなわぬその想いを最後まで口にする事は無かった。
両親の死の衝撃から自分の心を護るための本能か、家族を愛する心を自身の奥底に沈めてしまっている。そのため、両親が死んだ事は認識しているが、詳細が思い出せない。目の前で家臣が死んでも、全く心動かなくなってしまっている。
アルカレルの屋敷でこの事実を突きつけられ、自分の旅を追体験した末、思い出の母親に腹パン食らって症状は多少は改善したが、それでも感情がロックされたままでいまだに涙を流す事ができない。それは、同僚の騎士や兵が次々死んでいく中で、大した能力の無い自分が女だというだけで保護され、生き残った挙句、致命傷を負ったのに鬼人として転生してまだ生き続けている事に後ろめたさも感じているためだった。
【カンフレー家】
王国の北西隅の山の中にあるド田舎、カンフレー領を治める男爵家。
王国再統一戦争以前からの土着の一族で、爵位(領地)と家名が一緒なのはいまや王国でも数少ない。王国の法では女子は爵位を相続できないので、ステレはカンフレー男爵にはなれない。家を継ぐには婿を取り、カンフレー男爵夫人になるしかない。一方でカンフレー家当主は直系長子の相続のみのため、ステレが当主になる。
グリフが即位後に王国の法が緩和されて、貴族の責務を果たす覚悟のある女性は爵位を継げるようになったが、そこまで気概のある女性はまだまだ少ない。
ステレはグリフを守って討死した事になっており、功績により生前に遡ってカンフレー男爵の位が送られたうえ、子爵位が追贈されている。とはいえ、後継ぎが居ないため表向きにはカンフレー家は断絶となっており、現在カンフレー領は王家預かりとなっている(だから、女子への叙爵がすんなり認められたのである)。僻地のためか代官などは派遣されておらず、領民の自治が黙認されている状況である。
カンフレー家は、統一戦争のおり健国王に鬼人を仲介した取次役…という事になっているが、実際は只人の世界で暮らす事を選んだ鬼人の末裔。
見た目は只人と変わらないが、秘薬により鬼人の能力を引き出す事ができる。つまりは鬼人の秘薬はカンフレー家当主以外の者が飲んでも全く効果は無い。秘薬を心臓に直接注入する事で体を先祖返りさせ、鬼人として転生できる。ただしこれは身体を一から作り替えるので、とてつもない苦痛を伴う事になる。
鬼人の因子が濃い場合は、命の危機に薬を使わずとも先祖返りして鬼人に変化する事例もある。
不思議なことに、カンフレー家では鬼人の血は第一子にのみ受け継がれ、第二子以降は普通の只人としてしか産まれない。鬼人の末裔であるカンフレーの頭領には鬼人の血が必須のため、男女どちらが産まれても一人しか子を設けない場合が多い。ステレも母のカーラも、貴族なのに女子の一人っ子なのはそれが理由である。
一子のみの継承にも拘わらず、いまだに血が途絶えず続いているのが鬼人の血の恐ろしい所。歴代必ず子が産まれ、後継ぎを残すまで必ず生きているのである。
他のカンフレーの住民は鬼の血が混じっているものの、ほとんど只人になってしまっている。最も、こんな山奥の僻地で餓死者も出さずに集落が営まれているのは、鬼人の血による強靭さのためであろう。鬼人になったステレは、生のドングリを皮ごと食べても平気な胃腸になっており、秋には魔の森の獣とドングリの取り合いをしていた。
<夜明けの雲>
【名前】
<夜明けの雲>
一見奇異に見える魔人の名前は、彼らの本名を大陸語に直訳したものだから。かつて翻訳魔法の精度が低い時代の名残りらしい。彼の本名は「ギョウウン(暁雲)」という。
【種族・性別】
魔人 男性
【出自・地位】
詳細不明。魔の森の奥、岩に囲まれた広場にある謎のゲートから現れる男。なんらかの罰で、魔の森の管理人(暴走を防ぐため変異魔獣を間引く仕事)をやらされている。制約のせいで山で囲まれた魔の森の外に出る事はできない。
【容姿・特徴】
青味がかった黒髪というか濃紺の髪、同じく黒に見える濃紺の瞳。中肉中背。筋肉ダルマではなく横幅と厚みはそれほど無い、ステレより華奢に見えるほど。種族差が現れやすい瞳も耳も只人と同じで見た目は只人の青年にしか見えないが、既に数百年を生きている。
内包する魔力は桁違いだが、それを感知させない程隠蔽が巧み。
森人(エルフ)は只人の上位互換な種族だが、更にその上位互換が魔人。
魔の森の生き物は、魔力の影響で血が青味を帯びる。ステレも血は紫色になっているが、<夜明けの雲>の血は真っ青な色をしている。
魔人は強力な魔法の使い手として知られ、只人が数人がかりで一燭時かけて織り上げる「火球」を単独発動できると言われている。<夜明けの雲>も魔法使いなのだが、制約により接触しないと魔法を発動できなくなっている。そもそも本人は滅多に外部魔法を使わず、基本的には身体強化のみで戦っているので、傍目には拳士にしか見えない。八極拳モドキの怪しげな体術で戦う。その戦闘力は、徒手空拳にも拘わらず意味不明なほどに強大。魔法金属の鎧だろうと防御を無視して打撃を通す事ができるし、普通の鉄板であれば素手で物理的に破壊する事も可能。
見た目は気さくな「隣の家の兄ちゃん」でしか無いのだが、その内面は戦いこそが全て、戦いこそが生甲斐の男。ステレよりよっぽど鬼人っぽい。強者と見れば、即座に口説き、食事に誘うようにデートに誘うように、勝負に誘う。ナンパしているように見えるが、ステレに対する性的な感情は皆無である。とにかく、命を削るギリギリの勝負をしたくて仕方ないのだが、何しろ魔人は強力な種族なので、そんな身を焼く如き戦いができずに鬱屈している
これは、魔人全部がそうなのではなく彼が特別、というかキッパリ言って異常なだけ。多分彼が受けている罰の原因はコレだろう。
『命を大事に、安心安全な殺し合い』が信条。殺し合いをしたいが相手は殺さない。致命傷を叩き込んだ瞬間に治癒魔法を発動させて相手を殺さずに勝ち、その後の成長とリベンジに期待している。…なんて事ができるのは、要するに、今まで手加減できる相手しか居なかったのである。だが、彼が勝負をしていた時代は王国騎士が蛮族スレスレだった時代で、ほとんどの相手が負けを認めると自害してしまった。
少なくとも300年くらい前から魔の森の奥の広場で剣士相手の決闘をしており、一度も負けた事が無い。ここしばらく休眠しており、そのせいで魔の森は度々魔獣の暴走を引き起こしていた。
戦い以外については基本的にポンコツ。
森を離れることができないうえ、妙なこだわりで戦うのは自分の領域である広場だけで、そこまで来た相手としか戦わない。だからこの男が戦うのは多くても年に数回であり、つまるところ、この男は9割方ポンコツである。…というかステレの同類。コイツもステレの前でも平気で脱ぐ。
オーウェン
【名前】
オーウェン・アルガ
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
アルガ家(伯爵)の次男
現在はロイツェル侯爵アルガ家の当主
【容姿・特徴】
黒髪、鳶色の瞳。体格は鬼人のステレよりちょっと大きいくらい。
王国でも有数の剣の使い手。鬼人のステレが勝てないチート只人の一人。
実家は田舎の伯爵家。放漫経営をしていた訳ではないが、領地が天災による被害を受け財政破綻しかけていた。オーウェンが成人する頃は王都に出仕すらままならない程で、オーウェンは金策に駆け回る父の手伝いをしている。窮乏を打開するため、グリフの支援によって仕官し、貴族でも平民でもいいから、実家を支援してくれる、できるだけ裕福な家への婿入りを…と考えていたが、その矢先にグリフの大雑把のせいで年頃の女子(ステレ)と相部屋にされ、その結果裕福とは真逆の貧乏男爵家の娘に恋してしまい、挙句に互いに「初めて」した結果、ステレ以外の女は愛せなくなってしまったという。ある意味グリフの最大の被害者。
それなのに、どーーーーーしても本人の前では妹扱いしかできなかったせいで、ステレの王都出奔を許す事になってしまう。相手は直球で言っても時々通じないほど察しの悪いステレなのだから、察して君のオーウェンではすれ違いになるしか無かった。
家臣ではなくグリフの食客という立場だったが、グリフの護衛としてクヴァルシルに向かう途中で襲撃を受け、カンフレーでの防衛ののち共にクヴァルシルへ亡命する。家臣ではないから実家に戻る事もできたが、剣以外に無い自分を支援してくれた恩を忘れず、そのまま皇国へも同道する。
巡り巡って王国でも有数の要地ロイツェルを治める侯爵になり、実家の支援もする事ができたが、妻を娶らずステレを待ち続けていた。その一方で、魔の森との連絡をするドルトンと王城の間の取次役となっているが、自分の想いは一切出さずに事務的な対応に徹しており、ドルトンがとうとう気づかなかったほどである。堅物もここまでくるともはや清々しいほどである。
未婚の侯爵のうえ王の側近であり、かつその風貌、物腰、剣の腕で王国の女性からは『最後の優良物件』として圧倒的に人気があるが、その押しの弱さとどうしてもステレを女性ではなく剣士として扱ってしまうせいで、同僚からはおしなべて「残念なイケメン」と思われている。多数の縁談はすげなく断り続けており、かといって周囲に想いを寄せる女性の陰も見えない事から、事情を知らない人々からは男色疑惑まで出ていたが、本人はステレ以外の女性はどうでもいいので、一向に気にしていなかった。
意識不明のステレが担ぎ込まれ、彼女が放浪と苦痛を追体験する過程で隠していた絶望の片鱗を知り、家を捨ててでも共に生きる決心をした(ようやく)。そのうちなんとかなるんじゃないかと思っているうちに、自分だけ忘れ去られているO-ウェンにならなくてよかった。
剣の腕は超一流だがそれだけではなく、実家の経営を補佐していた経験から、文官としての能力もある程度持っている。が、それは人を動かし決められたルールを忠実に実行するという職務においてであり、基本的には剣士らしく脳筋である。
ちなみに「おたのしみ」は酔った勢いで二人とも身体強化を全開にしてやっていた。双方とも、相手が逸般人で良かったね。
ドルトン
【名前】
サルモンの子ドルトン
彼らの一族には家名は無く父姓を名乗る。
(只人も平民は姓を持たない場合が多く、父姓を名乗る)
【種族・性別】
獣人 男性
【出自・地位】
各国を回って行商を行う遍歴商人ドルトン商会の会長
かつては獣人の国があったが、大昔に滅んでいる。現在の獣人は小部族毎に分かれて只人の国家で共存している。ドルトンはそのうちの一つを率いる族長でもある。
【容姿・特徴】
年齢不詳。只人とは異なる顔つきなので、容姿から年齢を推し量るのは難しい。が、甥が既に成人していたくらいなので、そこそこの年齢ではあるはず。
獣人は、獣の特徴が混じった人間の姿をしている。耳だけ猫とか頭が猫そのものという訳ではなく、全身が体毛に覆われた獣っぽい人間。ドルトンのイメージはローガン(ウルヴァリン)のような感じ……って、ローガンは獣人じゃないが。獣人にも個人差があり、チェシャなどは不気味の谷を飛び越えて、只人から見ても綺麗だと思わせる容姿をしている。
獣人は体格、筋力、耐久力は只人と同様だが、身軽な者が多く五感の感覚に優れている。斥候や密偵をやらせるならこれ以上適任の種族はいない。ただ、平原の出なので海は苦手にしており、深い森もあまり得意ではない。故国が滅んで以降は分散して只人の世界で生きているが、見た目で差別される事が多いため、苦しい生活を強いられている部族も多い。
ドルトンの一族は、とにかく(只人基準で)清く正しく生きる事で只人の世界に認知されるよう努力し続けている。身寄りを無くした只人の子を養育しているのもそのためである。数世代に渡る努力が実り、遍歴商人が務まるほどの信頼を得るに至っている。各地の商いで得た信頼を元に、ドルトンの代でとうとうそれらを束ねた商会の設立までこぎ着けた。只人至上の王国に本拠を構えての商売は、その総仕上げと言える。しかし、王国での他種族差別は根強く、更には他の獣人からは只人に媚を売るような行動が批判される事もある。
彼らに養育された只人は、多くが文官の即戦力になるくらい優秀なのだが、やはり獣人と一まとめに差別されがちで、商会で働く只人が多い。獣人の影響なんだか只人の影響なんだか、ドルトンの一族では性に対する意識がかなり独特で、一言で言えば腐女子が多い。基本雑食で、リバも下克上も、なんなら女性同士でもOKである(…いやこの情報必要か?)。
チート商人。「金さえ出すなら皇主宮だって持ってきてやる!」。万能なので、作品の辻褄を合わせるのに重宝する便利キャラ。異世界もので戦闘職以外のチートいえば、錬金術師か商人ですよね。
あちこちに妻が居るが、「金と権力を持つものは、持たない虐げられた同胞を救う責任がある」…という信念に基づいて寄る辺ない女を妻にしているため。妻たちは第〇夫人などとは呼ばず序列は付けていないが、妻として表に出すのは貴族の相手をしても平気なチェシャだけで、他の妻は名前も居所も明らかにしていない。というか何人いるかさえ不明である。数の少ない彼らは実力主義の社会で、族長も世襲ではないので、正妻やら側室やら愛妾の区別はあまり意味が無い。そもそも、彼らに養育された只人の孤児もみな「ドルトンの子」と名乗っている。
甥の仇を討ってくれたステレに感謝の念を抱いてることから過保護気味で、どうしょうも無いときはステレも妻にして守るつもりだった。
只人の社会では獣人の就ける職は少なく傭兵になる獣人も多いが、ドルトンは戦士ではなくあくまで商人である。それは、自分たちが生きて行かねばならない只人の世界で最強の武器が、第一に「情報」、次が「財力」だと考えているからである。一方で、獣人の長をするなら相応の実力が無ければならない。ドルトンは自分の存在を周囲に溶け込ませる技に長けており、その能力は獣人の一族でもトップクラス。夜間に限ればステレでも姿を捉える事が出来なかった。オーウェンやテンゲンクラスの剣士でなければドルトンを捕捉することすらできない。実際、野営中の商会を襲おうとした野盗が、ドルトン一人に皆殺しにされた事もある。
ところで…尻尾ってあった方がいいですかね?(有り無しで未だに迷ってるので明確に描写してないのです)
イーヒロイス
【名前】
イーヒロイス・カリス
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
カリス伯爵家の四男。男ばかりの四兄弟の末っ子。
【容姿・特徴】
弓の名手。幼少の頃から修練を積んでおり、骨格が変形して上半身が左右非対称になっている(左手の方が少し長い)ほどである。今では王国一の名手として、森人(エルフ)にまで名が知られている。
彼が世に出られなかったのは、経済的理由ではなく性格のため。
いわゆるコミュ障で、とにかく無口だった。伯爵家子息に求められる社交が全くできないため、唯一の味方だった母親が亡くなった後は、末っ子なのに可愛がられる事もなく厄介者扱いされていた。
兄三人がいずれも秀才で家は安泰だったが、貴族として優秀であるが故に弟を理解する事が出来なかった。兄達は自分たちと同じことができない弟を見限っていたようである。結果、本人は益々弓にのめり込み、実家との関係は修復不能なほど悪化していた。
グリフに援助されてからも、他人に弓を教える事もできないため、黙々と矢の自作をし黙々と的を射る日々を送っていた。彼の矢を天秤に乗せると、重さの誤差が1目盛りも無いほど几帳面。そんなイーヒロイスは『人間嫌い』、『弓を伴侶にする男』などと呼ばれていたが、彼自身は人嫌いな訳ではなく嫌っているのは自分自身だった。彼は他人の前に出ると(家族の前ですら)どうしても言葉が出なくなってしまうのである。イーヒロイスはそんな自分を嫌い、他人との関わりあいを避け、どんどん内に籠るようになっていった。
そんな重度のコミュ障の彼が内戦の功で侯爵に叙せられた後、どうやってか妻を娶って、いつの間にかに後継ぎまで生まれていたのは、王国の新七不思議のひとつとされている。
亡命中、弓を教えてもらおうと、とにかく必死になってコミュニケーションを取ろうと絡んで来たステレに、少し心惹かれていた(彼にとってステレはオタサーの姫のような存在だった)が、オーウェンの想いを知っていたので表に出す事はなかった。コミュ障のイーヒロイスに同情される残念さってどうよオーウェン。
ソルメトロ
【名前】
ソルメトロ・エルキュルス
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
元は、アーキリーズ伯爵家の長男ソルメトロ・アーキリーズ。
実家と絶縁し、叙爵にあたって新たにエルキュルス侯爵家を興したが、運営は家宰に丸投げして自分は市井で「貧乏貴族の三男坊」とか称してフラフラしている。そうして目につく「気にいらない奴」を腕力で黙らせてたら、とりあえず治安が良くなった。どんな事件も腕力で解決。見た目は筋肉、頭脳も筋肉。その名は王国騎士ソルメトロ…という訳で、もちろん領民にはバレバレである。お前のような三男坊がいるか!!。
とはいえ、領民は自ら治安維持に乗り出した領主を敬愛しており「ヒューーっ、見ろよあの筋肉を…、まるでご領主みたいだ。こいつは親戚か何かか?」などと、わざとらしくも気づかないフリをしているんだとか。
【容姿・特徴】
身体強化魔力に長けた男。というか、それしか鍛えていない男。『力こそパワー』の信奉者。
おかげで騎士のくせに剣も槍も弓も並み以下。だが、この一芸で王国中で「剛力のソロメトロ」で通じるくらい名が通っている。ぶっちゃけ、丸太を振り回し、拾った石を投げつけるだけで、小賢しい「技」は制圧されてしまう。彼の身体強化はそれくらい強力というか、常識外れのレベルに達している。
体格は同僚よりも一回り以上大きく、身体強化抜きでも怪力。
性格は一言で言えば…前田慶次郎(創作の方の)みたいな感じ。実は伯爵家の長男だったが、この性格のせいで廃嫡されている。だが、家のために何かを我慢するなどできない事を自分でも承知しており、廃嫡は当然だと思っている。とにかく、損得関係無しに自分が正しいと思った道しか進まないので、宮仕えには全く向かない。貴族を嫌っている風すらある。グリフの亡命に従ったのは、理不尽な追討に反発したためである。
本来は、グリフの即位と共に野に下るつもりだったが、叙爵を受けて侯爵となった。その際には、実家と縁を切り新たにエルキュルス家を起こしている。ざまぁがしたかった訳ではない。彼らとグリフが計画している貴族の特権返上に一番熱心な男であり、その実現のために叙爵を受けたのである。実家と絶縁したのは、自分の急進的行為で実家が巻き添えにならぬようにという配慮であった。
彼自身はエルキュルス家は自分一代で潰すつもりで…というか、自分が自分らしく生きたら結果として潰れるだろうと思っている。そのため、後継ぎを作る気もなく、便宜上妻としているのは実は愛妾である。
デルンシェ
【名前】
デルンシェ・ベンホータン
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
ベンホータン伯爵家の次男。
ベンホータン家は代を重ねると共に負債を重ね、現状では領地の実権をほとんど失っている。天災のせいで急に貧乏になったオーウェンと違って、彼は数代前から既に貧乏。街育ちなのに、ド田舎育ちのステレと食べられる草ネタで話が通じるんだから、かなりの苦労人である。
【容姿・特徴】
馬術の名手。
経済的困窮により馬や馬具にも事欠く有様だったから、彼も馬の世話すらした事が無いほどだったが、ダハルマがボランティアで開いていた貴族子息への騎士教育に参加した事で、馬術の才能を開花させる事になる。ダハルマはそんなデルンシェに目をかけて特に厳しく鍛えるようになったが、その教えを残らず吸収し、戦乱の時代さながらの強力な騎士になった。兄は文官肌で講習にも参加しておらず、平和な王国で今更どこと戦うつもりだ…といった態度だったそうだ。
優秀な騎兵として仕官できる事になっていたが、グリフ追討の報を聞くやその道を捨ててグリフの元に駆け付けた。そんな愚直な性格もダハルマの薫陶と言える。亡命中は馬を使う事もできずずっと徒士として戦うしか無かったが、ツェンダフにたどり着いてからは騎士の一隊を任されたうえ、討伐軍を迂回奇襲する騎兵の総指揮官に抜擢された。だが、師であるダハルマに一騎討を挑むために指揮官の位を返上している。
オーウェンと同様の好青年で、オーウェンと異なり「残念な」が付かないイケメン。オーウェンのように拗らせる事もなく、叙爵後に普通に結婚している。
メイガー
【名前】
メイガー・ジンクロム
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
ジンクロム家の長男だが妾腹なので嫡男では無かった。
実家からは追放されているが、ソルメトロとは違って叙爵後に元の家名を名乗り続けている。もちろん嫌がらせである。
かなり特殊な魔法使い。
【容姿・特徴】
魔力量は絶大なのに、魔力を投射する事ができず、魔法の矢を作っても魔法の盾を作っても、足元に落ちる役立たずの魔法使い。建国王に魔法で貢献し、魔法伯爵とまで言われたジンクロム家の当主…父に、伯爵家の恥として母親共々追い出されている。その上というか、そのせいでというか、恐ろしく口が悪く冷笑癖があり、優秀ではあったが文官としても仕官できなかった。
グリフに見いだされた後、王国中の魔法使いの元を訪れて師事し、それらを独学で昇華させて独自の魔法を組上げる事に成功した。現在は、メイガーが具現化した武器を麾下の兵が振るう事で己の魔法の活路を見出している。
それだけでなく、魔法使いなのに剣の腕を磨き、軍略を学び、経営や法令にも通じている。皮肉屋で歯に衣着せぬ毒舌で嫌われているが、そんな表の顔と裏腹に当人は恐ろしい程の努力家である。
なお、態度が悪いのは上役に対してであり、部下には配慮を欠かさない。自分一人では何もできない事を誰よりもよく知っているからだ。
護衛役のオーウェンと共にグリフの秘書としてクヴァルシルに向かう途中で襲撃に逢い、共に亡命した。母親は心を病んだ末に既に他界しており、彼の帰るべき場所はグリフの元しか無かった。
脳筋の多いグリフの騎士の中では貴重な頭脳派。
絶縁されたのに何故ジンクロム家を名乗れるかというと、彼の妻はジンクロム一族の分家の娘なのである。こちらも一族内のゴタゴタで本家と折り合いが悪く、利害の一致で婚姻となった。メイガーが義父と悪い笑顔で談笑している姿はよく目撃されているが、奥方との夫婦中については、誰も知らない。
グリフ
【名前】
グリフ・ヤルタ・カーライズ・グランダス・グラスヘイム(グラスヘイムの総領、カーライズ家のグリフ)
【種族・性別】
只人 男性
【出自・地位】
物語時点でのグラスヘイム王。
型破りで知られた先々代キブト王の二人の王子兄弟の一人で、先代の王ブレス王の弟。
ブレス王とは母親が違う。ブレス王の生母(正室)は皇国貴族から嫁いできたが、彼の母親は王国貴族の出の側室である。
母親の身分の差以前に、本人は自身が凡人である事を承知しており、早々に「王位を望まない」と宣言して事実上の臣籍降下していたが、ブレス王即位後にまだ男児に恵まれていないため、弟であるグリフが継承権一位になり、フレイスリーター(フレイ大公。王位継承権一位の称号)となっていた。亡命時に称号は剥奪されているが、その後も非公式に「公子殿下」と呼ばれる事が多かった。内戦に勝利してブレス王から禅譲を受け、正式に国王となる。
【容姿・特徴】
亜麻色の髪、青い瞳
とにかく平々凡々で知られた王子。父親のキブト王が超人的な才能で有名だったのに対し、何から何まで人並みだった。そんな自身を誰よりもよく理解しており、早々に王位継承を放棄すると王国発展に役立つであろう人材の発掘と援助を始めた。家臣にする訳では無く食客として遇し、見出した人材の才能が開花するや王家に推挙している。
王国に尽くす忠臣と思われていたが、実のところ父であるキブト王へのコンプレックスから、一芸でも才に秀でた人材を見つけては我が分身として推挙し、その活躍を自分に重ねる事に喜びを見出していたのだった。だから、食客が害されると我が事以上に激高する。
才能を愛し、身分や地位に関係なく才能だけが評価基準となるクヴァルシル公国に憧れを持っていた。それは凡人の自分がクヴァルシルで生きる事ができないという諦めの裏返しでもある。
亡命中は、名簿を片手に、毎日一兵卒に至るまでその事績をなぞり、記憶に刻み込んでいた。血統以外に何も持たない自分にできる事は、『忘れない事』であったから。
兄に勝利した自分がどのような国を作るか…と考えた際、王や領主個人の能力で国政が左右されないよう、行政機関に決定権を持たせ、王が行うのはその承認という体制を構築する事とした。それに合わせて、能力による人材の抜擢を身分性別人種問わずに行うことを明言している。内戦の後始末による領地の削減はどうにか飲み込んだ諸侯も、急進的な制度変更には反対の姿勢を見せており、今後の舵取りで真価を問われる事となるだろう。
ステレの想いに気付いてはいたが、どうやっても応える事ができないと承知していたから、主と家臣という態度を最後まで崩さなかった。それでも、母親カーラの言動と共にステレは今も王の心に大きな跡を残している。
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戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
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わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
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それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
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「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
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※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
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※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
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#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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