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序章 気が付いたら異世界転移
001 あまりに唐突な異世界転移 (改)
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◇ ◇ ◇ ◇ ◇
佐渡 藤馬様へ。
突如として見知らぬ場所に立っていて、さぞ驚かれていることと思います。
僭越ながらの状況把握の一助になればと思い、こうして筆を取らせて頂きました。
私は世界を管理する者、ここは分かりやすく、神と名乗らせて頂きます。
実は昨今、輪廻転生を割り当てる際に、異世界転生への転生を希望する魂が急増しております。
当方と致しましては、急増するニーズに応えるべく、転生用に新たな世界を創造させて頂きました。
しかしより良いサービスを提供するためには、正式にサービスを運用する前に事前調査が必要であると判断致しました。
佐渡様には事前調査員の1名として、現地の調査をお願いしたいのです。
佐渡様が今いる世界は、暫定的に『リンカーズ』と呼称しております。
剣と魔法のファンタジーな世界観、奇跡や神も存在する世界です。
佐渡様はサブカルチャーを嗜まれているそうなので、ロールプレイングゲームのような世界観だと思って頂くと理解しやすいかもしれません。
佐渡様の知覚や体験を通してリンカーズを確認し、問題点の洗い出しなどを行わせて頂く予定です。
佐渡様はリンカーズで自由に行動し、なるべく長生きして頂くだけで大丈夫です。
人類を救済して欲しい。
魔王を討伐して欲しい。
そういった使命は、一切ございません。
どうか、リンカーズでの第二の人生を満喫して頂きたい、と思っております。
リンカーズでの当面の生活資金として、銀貨10枚ほど送らせて頂きました。
手紙を読み終えたらポケットの中をご確認ください。
また、同封の『リンカーズマニュアル』に、知っておくべき一般常識をある程度記載してあります。
リンカーズは魔物も跋扈する世界なので、このまま街の外に留まっているのは大変危険です。
マニュアルは安全な場所で落ち着いてから、ゆっくり内容をご確認ください。
最寄りの街は、傍にある街道を歩いていくと直に到着致します。
現在地からでも、遠目に町並みを確認できるはずですので、迷う心配は無いと思います。
日常会話には不自由が無いように調整致しましたので、ご安心ください。
最後に、誠に申し訳ないことですが、生きて元の世界に帰ることは出来ません。
であるのにも関わらず、リンカーズへのご招待が事後報告になってしまったことを、心よりお詫び申し上げます。
詳しい事情はお伝え出来ませんが、佐渡様の立場からすると、私の都合に理不尽に巻き込んでしまった、という認識で間違いございません。
佐渡様の、リンカーズでの第二の人生が幸福であることを、心よりお祈り申し上げます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はぁーーーーーーー!?」
今まで読んでいた手紙を握り締めながら、思わず全力で叫んでしまう。
「いきなりの異世界転移かよ! 嘘だろっ!?」
そりゃあ俺だって異世界ハーレムチート作品を見てさ。
異世界行って無双してチヤホヤされて、何もしてないのに女の子に好かれまくって使い切れないほどの富を得て、最終的にスローライフな勝ち組人生送ってみたいなぁとか思ったことはあるさ!
でも現実に俺なんかが異世界に来たって、何が出来るっていう話だよ!
しかも事後承諾な上に帰還不可能とか、マジかよぉ……。
日本での日常に満足してたわけじゃないけどさぁ。
剣と魔法のファンタジー世界と言われてワクワクしないって言ったら嘘になるけどさぁ!
「いくらなんでも突然すぎでしょっ! 神様ーーーーーっ!!」
全力で叫んでも、返ってくるのはそよそよとした心地いい風の音だけだった。
恥ずかしくなった俺は、とりあえず読み終えた手紙をズボンのポケットに仕舞う。
「……ん? ポケットの中に何か入ってる?」
俺のズボンのポケットには、どうやら先客が居たようだ。
ポケットの中身を弄りだすと、『リンカーズマニュアル』と書かれたさほど厚くない封筒と、銀色の硬貨が10枚入っていた。
「これは……。手紙に書いてあったマニュアルと、銀貨10枚、か……?」
無一文で放り出されたわけじゃなかった事に少しだけ安心する。
日本だろうと異世界だろうと、先立つものが無いというのは不安しかないからな……。
貨幣価値は分からないけれど、それでもお金を持っているというだけで多少の安心感を得ることが出来た。
「……って、あれ? 俺、こんな服持ってなかったよな?」
ポケットを探って気付いたけど、着ている服が粗い繊維の布の服になっていた。
ベルトやゴムも使用されてない、腰紐で調整するタイプのズボンに、靴もなんか良くわからない皮製の物を履いているな?
うーん、この世界に違和感の無い服装に強制的に着替えさせられたのかな。
安い量産品の服と比べても重くてゴワゴワで着心地は最悪だけど、そんなことを嘆いていても始まらないかぁ……。
「本当なら直ぐにマニュアルの方にも目を通したいところだけれど、街の外は危険らしいからな……」
もしかしたらマニュアルにはチートで便利な能力の説明とか載ってるかもしれないけれど、確認する前に死んでしまうようなマヌケは晒したくない。
街道の先に目を向けると、確かに手紙に記載されていた通り、遠目に街のようなものが見えた。
結構距離はありそうだけれど歩いていくしかないか。
まずは安全を確保しなければ話にならない。
こうしてワケも分からず唐突に、俺の異世界生活はスタートしたのであった。
佐渡 藤馬様へ。
突如として見知らぬ場所に立っていて、さぞ驚かれていることと思います。
僭越ながらの状況把握の一助になればと思い、こうして筆を取らせて頂きました。
私は世界を管理する者、ここは分かりやすく、神と名乗らせて頂きます。
実は昨今、輪廻転生を割り当てる際に、異世界転生への転生を希望する魂が急増しております。
当方と致しましては、急増するニーズに応えるべく、転生用に新たな世界を創造させて頂きました。
しかしより良いサービスを提供するためには、正式にサービスを運用する前に事前調査が必要であると判断致しました。
佐渡様には事前調査員の1名として、現地の調査をお願いしたいのです。
佐渡様が今いる世界は、暫定的に『リンカーズ』と呼称しております。
剣と魔法のファンタジーな世界観、奇跡や神も存在する世界です。
佐渡様はサブカルチャーを嗜まれているそうなので、ロールプレイングゲームのような世界観だと思って頂くと理解しやすいかもしれません。
佐渡様の知覚や体験を通してリンカーズを確認し、問題点の洗い出しなどを行わせて頂く予定です。
佐渡様はリンカーズで自由に行動し、なるべく長生きして頂くだけで大丈夫です。
人類を救済して欲しい。
魔王を討伐して欲しい。
そういった使命は、一切ございません。
どうか、リンカーズでの第二の人生を満喫して頂きたい、と思っております。
リンカーズでの当面の生活資金として、銀貨10枚ほど送らせて頂きました。
手紙を読み終えたらポケットの中をご確認ください。
また、同封の『リンカーズマニュアル』に、知っておくべき一般常識をある程度記載してあります。
リンカーズは魔物も跋扈する世界なので、このまま街の外に留まっているのは大変危険です。
マニュアルは安全な場所で落ち着いてから、ゆっくり内容をご確認ください。
最寄りの街は、傍にある街道を歩いていくと直に到着致します。
現在地からでも、遠目に町並みを確認できるはずですので、迷う心配は無いと思います。
日常会話には不自由が無いように調整致しましたので、ご安心ください。
最後に、誠に申し訳ないことですが、生きて元の世界に帰ることは出来ません。
であるのにも関わらず、リンカーズへのご招待が事後報告になってしまったことを、心よりお詫び申し上げます。
詳しい事情はお伝え出来ませんが、佐渡様の立場からすると、私の都合に理不尽に巻き込んでしまった、という認識で間違いございません。
佐渡様の、リンカーズでの第二の人生が幸福であることを、心よりお祈り申し上げます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はぁーーーーーーー!?」
今まで読んでいた手紙を握り締めながら、思わず全力で叫んでしまう。
「いきなりの異世界転移かよ! 嘘だろっ!?」
そりゃあ俺だって異世界ハーレムチート作品を見てさ。
異世界行って無双してチヤホヤされて、何もしてないのに女の子に好かれまくって使い切れないほどの富を得て、最終的にスローライフな勝ち組人生送ってみたいなぁとか思ったことはあるさ!
でも現実に俺なんかが異世界に来たって、何が出来るっていう話だよ!
しかも事後承諾な上に帰還不可能とか、マジかよぉ……。
日本での日常に満足してたわけじゃないけどさぁ。
剣と魔法のファンタジー世界と言われてワクワクしないって言ったら嘘になるけどさぁ!
「いくらなんでも突然すぎでしょっ! 神様ーーーーーっ!!」
全力で叫んでも、返ってくるのはそよそよとした心地いい風の音だけだった。
恥ずかしくなった俺は、とりあえず読み終えた手紙をズボンのポケットに仕舞う。
「……ん? ポケットの中に何か入ってる?」
俺のズボンのポケットには、どうやら先客が居たようだ。
ポケットの中身を弄りだすと、『リンカーズマニュアル』と書かれたさほど厚くない封筒と、銀色の硬貨が10枚入っていた。
「これは……。手紙に書いてあったマニュアルと、銀貨10枚、か……?」
無一文で放り出されたわけじゃなかった事に少しだけ安心する。
日本だろうと異世界だろうと、先立つものが無いというのは不安しかないからな……。
貨幣価値は分からないけれど、それでもお金を持っているというだけで多少の安心感を得ることが出来た。
「……って、あれ? 俺、こんな服持ってなかったよな?」
ポケットを探って気付いたけど、着ている服が粗い繊維の布の服になっていた。
ベルトやゴムも使用されてない、腰紐で調整するタイプのズボンに、靴もなんか良くわからない皮製の物を履いているな?
うーん、この世界に違和感の無い服装に強制的に着替えさせられたのかな。
安い量産品の服と比べても重くてゴワゴワで着心地は最悪だけど、そんなことを嘆いていても始まらないかぁ……。
「本当なら直ぐにマニュアルの方にも目を通したいところだけれど、街の外は危険らしいからな……」
もしかしたらマニュアルにはチートで便利な能力の説明とか載ってるかもしれないけれど、確認する前に死んでしまうようなマヌケは晒したくない。
街道の先に目を向けると、確かに手紙に記載されていた通り、遠目に街のようなものが見えた。
結構距離はありそうだけれど歩いていくしかないか。
まずは安全を確保しなければ話にならない。
こうしてワケも分からず唐突に、俺の異世界生活はスタートしたのであった。
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