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1章 仲間との出会い
016 楽しい夕餉
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「俺は街に戻ろうと思ってるけど、2人はどうするんだ?」
「こっちも戻るつもりだよ。武器も無くなってしまったし」
そう言いながら、シンは折れてしまった武器を見せた。
「じゃあせっかくだし一緒に戻ろうぜ。街まではそのまま棍棒持ってて良いよ。
あと忘れないうちに、こいつも渡しておくよ」
と、シンに魔法石を渡そうとしたのだが「助けてもらった上にドロップを折半するなど恥知らずなことは出来ない。それはトーマが貰ってくれ」と言って、受け取ってくれなかった。
「んー、2人で倒したことは間違いないのに俺が総取りってのは、あんまり気分が良くないな」
シンもリーンもとても若く見える。おっさんとしては、子供から搾取するようなことはしたくないところだ。
「じゃあ街に戻ったら、3人で夕食でも食わねぇか?これの報酬で奢るよ。俺がいる宿は食事が自慢だけあって、マジで旨いぞ」
せっかく初めて知り合った冒険者仲間なので、夕飯に誘ってみた。
「いやいやいや!お礼をするのはこっちであって、トーマはお礼されるほうでしょ!なんでトーマが奢ってくれる流れになるんだよ!」
「そうは言うけど、シンは武器も壊れて報酬も無しじゃ大損だろ?
せっかく駆け出し同士知り合ったんだし、メシくらい誘っても良いだろ。メシ代として使っちまうなら、俺も気兼ねなく報酬受け取れるって話だからさ。俺にお礼したいってんなら、大人しく奢られてくれ」
「大人しく奢られろってなんだよ!?」
その後もシンはツッコミに忙しそうだったが、リーンの「おなか減ったー」の一言で、シンはあえなく撃沈したのであった。
さてはシスコンだなテメー?
街に戻って一旦別れる。
装備などを家に置いてくるそうだ。あの2人は、ベイクに実家があるのかな。
棍棒二刀流で、防具無しの俺と比べると、折れたとはいえ金属製の片手剣と、防具もそれなりに揃えてあるように見えたな。
同じ10等級冒険者なのに、俺は蛮族スタイルである。いったい何処で差がついたというのか。慢心。環境の違い。
迷宮の安らぎ亭の場所も説明する必要がなかった。「10等級であそこに泊まってるの!?」と驚かれたけどな。
防虫施設、洗浄サービスが受けられる、旨い飯が食べられる、ユリンさんは美人。
むしろ、他の宿とか考えられないですしおすし。
ギルドで換金を済ませ宿に戻る。ユリンさんに2人分の食事を追加して欲しい旨を伝えて、料金を前払い。ここだけの話、14リーフでは足が出てしまったが、こちらが誘ったわけだし気にしない。
部屋に荷物を置いてから、ロビーで2人を待つ。
この宿は宿泊客以外にも食事を提供しているので、本当なら事前連絡は必要ないのだが、宿泊客に出す料理と、食事客に出すメニューが、実は別なんだよね。
別々の料理を頼んでみんなでシェアするって手もあったけれど、どうやらここの料理が旨いのはベイクでも有名らしいので、普段宿泊客にしか出していない料理のほうが喜ばれると思ったのだ。
ベイクに実家があるならなおさらだろう。
ロビーで待っていると、恐る恐る宿に入ってくる2人が見えた。
いやいや、挙動不審すぎて逆に目立ってるじゃねぇか。さっさと回収しよう。
「2人ともこっちだ。もう注文は通してあるから、すぐ持ってきてもらえるぞ。早速行こうぜ」
「やったー楽しみー!」
「こらリーン!済まないトーマ。今晩はご馳走になるよ」
「ああ、素直に食事を楽しもう。まじで旨いから期待してて良いぞ。こっちだ」
雇われウェイトレスさんに、食事を始めたいと伝えて、空いてる席に座った。
思えばこっちに来てからはずっと1人で食事をしていたからなぁ。これを機会に仲良くなりたいもんだ。
「どれもおいしいね、兄さん!お野菜も沢山入ってるよ!」
「確かに美味しいな。迷宮の安らぎ亭の料理が美味しいのは有名だけど、これは想像以上だったよ」
「2人とも、口に合ったようで何より。
この街に来て、初めて口にしたのがここの料理だったせいでな。多少高かろうが、今更他の宿に行く気になれねぇんだよな」
「あははは。この味を知ってしまったら、トーマの気持ちも分からないでもないね」
2人とも、この宿の料理を口にするのは初めてだそうで、どの料理もとても美味しそうにもぐもぐしている。
料理を口に運ぶ度に、頭の上のケモミミがピコピコと激しく揺れている。
……うん、そろそろ突っ込んでみるか。
「そういや迷宮では気付かなかったけど、2人ともケモミミなんだな」
「ケモミミってなんだい?
この耳のことなら、我が家は父が猫の獣人で、母が犬の亜人でね。僕は犬の、リーンは猫の亜人として生まれたんだ。迷宮では2人とも帽子被ってたから気付かなかったんだね」
シンは自分の耳を摘みあげて、簡単に説明してくれた。
しかし、獣人と亜人ねぇ。2つの呼び方の違いはなんだろう。
こういう常識っぽいことって、迂闊に聞けないから困るなぁ。
踏み込んで聞くのは今はやめておこう。色々踏んじゃったら、メシが不味くなってしまうからな。
「ほら、遠慮せず腹いっぱい食え食え。この料理は俺も仕込みを手伝ったんだぜ。うめぇだろ」
「おいしー!トーマって料理も出来るんだねっ」
「トーマって意外と色々やってるんだね。うん、確かに旨いよ」
食べ慣れた宿の食事だったけれど、なんだかいつもより美味しく感じる。
誰かと一緒に食べる食事ってのは、やっぱり旨いもんだな。
他人から見たら、親父が子供を外食に連れて来たように見えそうだけど。
顔面レベルが違いすぎるって?余計なお世話じゃい。
「こっちも戻るつもりだよ。武器も無くなってしまったし」
そう言いながら、シンは折れてしまった武器を見せた。
「じゃあせっかくだし一緒に戻ろうぜ。街まではそのまま棍棒持ってて良いよ。
あと忘れないうちに、こいつも渡しておくよ」
と、シンに魔法石を渡そうとしたのだが「助けてもらった上にドロップを折半するなど恥知らずなことは出来ない。それはトーマが貰ってくれ」と言って、受け取ってくれなかった。
「んー、2人で倒したことは間違いないのに俺が総取りってのは、あんまり気分が良くないな」
シンもリーンもとても若く見える。おっさんとしては、子供から搾取するようなことはしたくないところだ。
「じゃあ街に戻ったら、3人で夕食でも食わねぇか?これの報酬で奢るよ。俺がいる宿は食事が自慢だけあって、マジで旨いぞ」
せっかく初めて知り合った冒険者仲間なので、夕飯に誘ってみた。
「いやいやいや!お礼をするのはこっちであって、トーマはお礼されるほうでしょ!なんでトーマが奢ってくれる流れになるんだよ!」
「そうは言うけど、シンは武器も壊れて報酬も無しじゃ大損だろ?
せっかく駆け出し同士知り合ったんだし、メシくらい誘っても良いだろ。メシ代として使っちまうなら、俺も気兼ねなく報酬受け取れるって話だからさ。俺にお礼したいってんなら、大人しく奢られてくれ」
「大人しく奢られろってなんだよ!?」
その後もシンはツッコミに忙しそうだったが、リーンの「おなか減ったー」の一言で、シンはあえなく撃沈したのであった。
さてはシスコンだなテメー?
街に戻って一旦別れる。
装備などを家に置いてくるそうだ。あの2人は、ベイクに実家があるのかな。
棍棒二刀流で、防具無しの俺と比べると、折れたとはいえ金属製の片手剣と、防具もそれなりに揃えてあるように見えたな。
同じ10等級冒険者なのに、俺は蛮族スタイルである。いったい何処で差がついたというのか。慢心。環境の違い。
迷宮の安らぎ亭の場所も説明する必要がなかった。「10等級であそこに泊まってるの!?」と驚かれたけどな。
防虫施設、洗浄サービスが受けられる、旨い飯が食べられる、ユリンさんは美人。
むしろ、他の宿とか考えられないですしおすし。
ギルドで換金を済ませ宿に戻る。ユリンさんに2人分の食事を追加して欲しい旨を伝えて、料金を前払い。ここだけの話、14リーフでは足が出てしまったが、こちらが誘ったわけだし気にしない。
部屋に荷物を置いてから、ロビーで2人を待つ。
この宿は宿泊客以外にも食事を提供しているので、本当なら事前連絡は必要ないのだが、宿泊客に出す料理と、食事客に出すメニューが、実は別なんだよね。
別々の料理を頼んでみんなでシェアするって手もあったけれど、どうやらここの料理が旨いのはベイクでも有名らしいので、普段宿泊客にしか出していない料理のほうが喜ばれると思ったのだ。
ベイクに実家があるならなおさらだろう。
ロビーで待っていると、恐る恐る宿に入ってくる2人が見えた。
いやいや、挙動不審すぎて逆に目立ってるじゃねぇか。さっさと回収しよう。
「2人ともこっちだ。もう注文は通してあるから、すぐ持ってきてもらえるぞ。早速行こうぜ」
「やったー楽しみー!」
「こらリーン!済まないトーマ。今晩はご馳走になるよ」
「ああ、素直に食事を楽しもう。まじで旨いから期待してて良いぞ。こっちだ」
雇われウェイトレスさんに、食事を始めたいと伝えて、空いてる席に座った。
思えばこっちに来てからはずっと1人で食事をしていたからなぁ。これを機会に仲良くなりたいもんだ。
「どれもおいしいね、兄さん!お野菜も沢山入ってるよ!」
「確かに美味しいな。迷宮の安らぎ亭の料理が美味しいのは有名だけど、これは想像以上だったよ」
「2人とも、口に合ったようで何より。
この街に来て、初めて口にしたのがここの料理だったせいでな。多少高かろうが、今更他の宿に行く気になれねぇんだよな」
「あははは。この味を知ってしまったら、トーマの気持ちも分からないでもないね」
2人とも、この宿の料理を口にするのは初めてだそうで、どの料理もとても美味しそうにもぐもぐしている。
料理を口に運ぶ度に、頭の上のケモミミがピコピコと激しく揺れている。
……うん、そろそろ突っ込んでみるか。
「そういや迷宮では気付かなかったけど、2人ともケモミミなんだな」
「ケモミミってなんだい?
この耳のことなら、我が家は父が猫の獣人で、母が犬の亜人でね。僕は犬の、リーンは猫の亜人として生まれたんだ。迷宮では2人とも帽子被ってたから気付かなかったんだね」
シンは自分の耳を摘みあげて、簡単に説明してくれた。
しかし、獣人と亜人ねぇ。2つの呼び方の違いはなんだろう。
こういう常識っぽいことって、迂闊に聞けないから困るなぁ。
踏み込んで聞くのは今はやめておこう。色々踏んじゃったら、メシが不味くなってしまうからな。
「ほら、遠慮せず腹いっぱい食え食え。この料理は俺も仕込みを手伝ったんだぜ。うめぇだろ」
「おいしー!トーマって料理も出来るんだねっ」
「トーマって意外と色々やってるんだね。うん、確かに旨いよ」
食べ慣れた宿の食事だったけれど、なんだかいつもより美味しく感じる。
誰かと一緒に食べる食事ってのは、やっぱり旨いもんだな。
他人から見たら、親父が子供を外食に連れて来たように見えそうだけど。
顔面レベルが違いすぎるって?余計なお世話じゃい。
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