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1章 仲間との出会い
018 戦闘指導の申し込み
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翌朝、軽く自己流ストレッチ。体を解したら厨房に向かい、いつも通り仕込みを手伝う。
迷宮の安らぎ亭は、食堂に関しては人を数人雇っているものの、宿泊業務はユリンさんと旦那さんの2人だけで行っているというから驚きだ。
でもよくよく考えてみると、一番の重労働であろう洗濯や掃除を洗浄の魔法で片付けられるのならば、確かに人手は少なくても済むのかもしれない。
泊り客もそんなに多くないっぽいし。この宿が満室になったのを、今のところ見たことがない。
食堂は、朝晩共になかなかの盛況振りであるが。1泊で銀貨2枚は、やっぱりお高いのだろう。
魔法があるという時点で、色々と俺の常識では物事を測れないんだよな。
朝食を済ませてギルドに来たが、シンとリーンは勿論、オーサンすらまだ来ていないようだ。朝の仕込みを手伝って混み合う前に朝食を頂いてるから、他の人が動き始めるよりもまだかなり早い時間なんだろう。
しっかし時計が無いので、待ち合わせが不便でしゃーない。時計があったらあったで、分刻みにスケジュール組みそうな日本人体質が、なかなか抜けてくれないだろうけど。
昨日の夕食の時に確認したんだけど、この世界にはやっぱり時計が無くて、時間の概念はかなり大雑把に認識されているみたいだ。
共通の時間認識は、夜明けと日没、あとは太陽が一番高い時に『陽天の報せ』という鐘が鳴らされる。
日本では確か、正午が一番太陽が高い時間帯だったと思うけど、この世界に当てはまるかはよく分からない。俺の体内時計なんてテキトーなもんだしな。
陽天の報せが鳴らされるタイミングは魔導具で測定されていて、間違いなく正確なタイミングで毎日鳴らされているという話だった。
待ち合わせの際は、夜明け、日没、朝食、夕食、陽天の報せを使って、大雑把に予定を組む。
食事は、毎日3食食べる人も珍しくは無いけど、朝晩の2食だけの人が大半らしい。なので昼食を待ち合わせに使う人は少ない。
種族的に大量に食事を摂る必要がある人や、かなり活発に活動していて安定した収入を得ている冒険者などが、3食の生活を送っている層らしい。
おっと、先に来たのはやっぱりオーサンだったな。2人が来る前に簡単に話を通しておこう。
朝の挨拶を交わしつつ、訓練の話をする。
「昨日の指導の話、実は近いうちに受けようかって話になってな。もうちょっと詳しく聞かせてくれ」
「おうおう、毎度ありってな。みっちり鍛えてやるから、感謝して敬ってくれていいぞ」
「けっ、そのセリフは指導した後で言えよな。
んーと、例えば今日申し込んだとして、すぐに訓練を受けれるのか?」
「いや、一応指導員の俺の予定もあるからな。ギルドの業務に穴開けるわけにもいかねぇし。俺の予定をギルドが調整するから、それに合わせてもらう形になるな。
正直言うと、あまり指導を受けにくるやつっていねーから、予定に組み込まれてねぇんだよ。
ギルドとしても戦える職員を1日送り出さなきゃならんから、あまり安売りは出来ないし、新人にとっては銀貨2枚は結構負担がでかいからな。新人にこそ必要なサービスだってのは分かってるんだが、なかなか上手いこと行ってねぇんだわ」
「なるほどなぁ。迷宮資源は生活の根幹なんだから、新人冒険者に必要なサービスは出来るだけ公的に支援してほしいもんだけど、それをオーサンに言っても仕方ねぇか。
とりあえず指導はお願いしたいから、オーサンの予定を確認してもらっていいか?」
「了解だ。ちょっと待ってろ。上に話通して来るから」
そしてオーサンが席を外しているタイミングで、シンとリーンがギルドに顔を見せた。
「2人ともおはよう。今ちょうど、ギルドに昨日の話をしてたとこだ」
「トーマおはよう!」」
「おはようトーマ。それで、訓練の日にちはどうなったんだ?」
「指導する職員の予定を調整してから決まるってさ。今、その確認をしてもらってる」
シンを見ると、多分昨日折れたものとは違う剣を腰に下げていた。予備の武器があるってのは本当だったんだな。
しっかし俺が武器屋で物色してた時、金属製の刃物って、かなり良い値段がしてたんだよなぁ。10等級の仕事しか出来ない状態で剣を壊してしまうのは、凄まじい損失だよなぁ。
片手で振り回せそうな、金属製で小型の剣、ショートソードっていうのか?
そんなのですら一番安くても、銀板単位で売ってたはずだ。
「おう待たせたな。多少トーマの都合にも合わせられそうだ。
って、そっちの2人はシンとリーンだったか。お前ら知り合いだったのか?」
「いや、昨日知り合ったんだよ。お互い10等級ってことで、一緒に指導を受けないか誘ってみたんだ」
「確かアンタは、オーサンだったか。トーマに便乗する形ではあるけど、指導のほう、よろしく頼む」
「よろしくたのむー!」
冒険者と冒険者ギルド職員だけあって、お互いの紹介は必要無さそうだ。
「ああ任せな。料金分はしっかり鍛えてやる。
戦闘指導はギルドの基本給金に手当てが上乗せされるから、俺としても旨い仕事なんだよ。金に余裕があれば、何度でも指導してやるぜ。
それじゃまずは、実施日をいつにするか決めるとしよう。ギルドの都合で、最短なら3日後だな。今日から5日以内なら、いつでも調整してくれるとギルドには言われてる。いつが良い?」
「俺はなるべく早く指導受けたいから、最短の3日後で構わない。2人の都合は?」
「僕たちも3日後で大丈夫だ。迷宮に入る以外に予定なんて無いから」
「うむ。じゃあ3日後で決まりだな。3日後は今日と同じくらいの時間にギルドに来い。
休憩を挟みながら、日没まで指導することになる。実際には潜らねぇが、迷宮に潜るつもりの装備で来いよ。
銀貨2枚の支払いは当日の朝で大丈夫だ」
オーサンと話もついたので、ギルドを後にする。
すぐに迷宮に向かうつもりだったけれど、シンが壊れた剣を処分しに武器屋に行くというので、俺もついていくことにした。
この棍棒も随分手に馴染んできたけれど、ネズミを一撃で確殺するには威力が足りないんだよな。硬さは申し分ないけど、軽すぎて打撃武器としては少々頼りない。
お財布と相談することになるけれど、出来れば訓練前に一段階武器を更新しておきたいな。
迷宮の安らぎ亭は、食堂に関しては人を数人雇っているものの、宿泊業務はユリンさんと旦那さんの2人だけで行っているというから驚きだ。
でもよくよく考えてみると、一番の重労働であろう洗濯や掃除を洗浄の魔法で片付けられるのならば、確かに人手は少なくても済むのかもしれない。
泊り客もそんなに多くないっぽいし。この宿が満室になったのを、今のところ見たことがない。
食堂は、朝晩共になかなかの盛況振りであるが。1泊で銀貨2枚は、やっぱりお高いのだろう。
魔法があるという時点で、色々と俺の常識では物事を測れないんだよな。
朝食を済ませてギルドに来たが、シンとリーンは勿論、オーサンすらまだ来ていないようだ。朝の仕込みを手伝って混み合う前に朝食を頂いてるから、他の人が動き始めるよりもまだかなり早い時間なんだろう。
しっかし時計が無いので、待ち合わせが不便でしゃーない。時計があったらあったで、分刻みにスケジュール組みそうな日本人体質が、なかなか抜けてくれないだろうけど。
昨日の夕食の時に確認したんだけど、この世界にはやっぱり時計が無くて、時間の概念はかなり大雑把に認識されているみたいだ。
共通の時間認識は、夜明けと日没、あとは太陽が一番高い時に『陽天の報せ』という鐘が鳴らされる。
日本では確か、正午が一番太陽が高い時間帯だったと思うけど、この世界に当てはまるかはよく分からない。俺の体内時計なんてテキトーなもんだしな。
陽天の報せが鳴らされるタイミングは魔導具で測定されていて、間違いなく正確なタイミングで毎日鳴らされているという話だった。
待ち合わせの際は、夜明け、日没、朝食、夕食、陽天の報せを使って、大雑把に予定を組む。
食事は、毎日3食食べる人も珍しくは無いけど、朝晩の2食だけの人が大半らしい。なので昼食を待ち合わせに使う人は少ない。
種族的に大量に食事を摂る必要がある人や、かなり活発に活動していて安定した収入を得ている冒険者などが、3食の生活を送っている層らしい。
おっと、先に来たのはやっぱりオーサンだったな。2人が来る前に簡単に話を通しておこう。
朝の挨拶を交わしつつ、訓練の話をする。
「昨日の指導の話、実は近いうちに受けようかって話になってな。もうちょっと詳しく聞かせてくれ」
「おうおう、毎度ありってな。みっちり鍛えてやるから、感謝して敬ってくれていいぞ」
「けっ、そのセリフは指導した後で言えよな。
んーと、例えば今日申し込んだとして、すぐに訓練を受けれるのか?」
「いや、一応指導員の俺の予定もあるからな。ギルドの業務に穴開けるわけにもいかねぇし。俺の予定をギルドが調整するから、それに合わせてもらう形になるな。
正直言うと、あまり指導を受けにくるやつっていねーから、予定に組み込まれてねぇんだよ。
ギルドとしても戦える職員を1日送り出さなきゃならんから、あまり安売りは出来ないし、新人にとっては銀貨2枚は結構負担がでかいからな。新人にこそ必要なサービスだってのは分かってるんだが、なかなか上手いこと行ってねぇんだわ」
「なるほどなぁ。迷宮資源は生活の根幹なんだから、新人冒険者に必要なサービスは出来るだけ公的に支援してほしいもんだけど、それをオーサンに言っても仕方ねぇか。
とりあえず指導はお願いしたいから、オーサンの予定を確認してもらっていいか?」
「了解だ。ちょっと待ってろ。上に話通して来るから」
そしてオーサンが席を外しているタイミングで、シンとリーンがギルドに顔を見せた。
「2人ともおはよう。今ちょうど、ギルドに昨日の話をしてたとこだ」
「トーマおはよう!」」
「おはようトーマ。それで、訓練の日にちはどうなったんだ?」
「指導する職員の予定を調整してから決まるってさ。今、その確認をしてもらってる」
シンを見ると、多分昨日折れたものとは違う剣を腰に下げていた。予備の武器があるってのは本当だったんだな。
しっかし俺が武器屋で物色してた時、金属製の刃物って、かなり良い値段がしてたんだよなぁ。10等級の仕事しか出来ない状態で剣を壊してしまうのは、凄まじい損失だよなぁ。
片手で振り回せそうな、金属製で小型の剣、ショートソードっていうのか?
そんなのですら一番安くても、銀板単位で売ってたはずだ。
「おう待たせたな。多少トーマの都合にも合わせられそうだ。
って、そっちの2人はシンとリーンだったか。お前ら知り合いだったのか?」
「いや、昨日知り合ったんだよ。お互い10等級ってことで、一緒に指導を受けないか誘ってみたんだ」
「確かアンタは、オーサンだったか。トーマに便乗する形ではあるけど、指導のほう、よろしく頼む」
「よろしくたのむー!」
冒険者と冒険者ギルド職員だけあって、お互いの紹介は必要無さそうだ。
「ああ任せな。料金分はしっかり鍛えてやる。
戦闘指導はギルドの基本給金に手当てが上乗せされるから、俺としても旨い仕事なんだよ。金に余裕があれば、何度でも指導してやるぜ。
それじゃまずは、実施日をいつにするか決めるとしよう。ギルドの都合で、最短なら3日後だな。今日から5日以内なら、いつでも調整してくれるとギルドには言われてる。いつが良い?」
「俺はなるべく早く指導受けたいから、最短の3日後で構わない。2人の都合は?」
「僕たちも3日後で大丈夫だ。迷宮に入る以外に予定なんて無いから」
「うむ。じゃあ3日後で決まりだな。3日後は今日と同じくらいの時間にギルドに来い。
休憩を挟みながら、日没まで指導することになる。実際には潜らねぇが、迷宮に潜るつもりの装備で来いよ。
銀貨2枚の支払いは当日の朝で大丈夫だ」
オーサンと話もついたので、ギルドを後にする。
すぐに迷宮に向かうつもりだったけれど、シンが壊れた剣を処分しに武器屋に行くというので、俺もついていくことにした。
この棍棒も随分手に馴染んできたけれど、ネズミを一撃で確殺するには威力が足りないんだよな。硬さは申し分ないけど、軽すぎて打撃武器としては少々頼りない。
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