28 / 580
2章 強さへの道標
026 不真面目な話と真面目な話
しおりを挟む
オーサンとクリリクさんの、馴れ初めの話を聞いている。
オーサンが、冒険者ギルドに勤める前に冒険者として活動していたのは、以前にも聞いた通り。
ある依頼で立ち寄った村が、魔物に襲われて壊滅状態に。生き残った人たちも生活するアテもなく、多くの人が奴隷労働者になる道を選んだ。その生き残りの奴隷労働者の中に、クリリクさんも居たらしい。
彼らの境遇を憐れんだオーサンは、私財を投げ打ち、足りない分は多くの依頼をこなすことで補い、村の人たちの最低限の生活を保障し、奴隷労働者の道から解放する。
その時の無茶がきっかけで、一緒に組んでいたパーティメンバーとは拗れてしまって、パーティは解散。仲間と別れ、失意の中にいたオーサンを救ったのが、かつてオーサンに救われたクリリクさん。
互いに救われた2人が惹かれあうのには、時間は必要なかった、みたいな話である。
オーサンが大恋愛しててビビる。確かになんかコイツ、妙にお節介な所あるよな。
俺に声をかけ続けていたのも、恐らくはお節介の1つだったのだと思う。
しかし、『異世界』と『奴隷』が合わさるとロマンを感じる。
普通の恋愛が無理なら、奴隷という手もあるんじゃなかろうか?お金が出来たら奴隷について詳しく調べてみようそうしよう。
奴隷を買うということならまだしも、見ず知らずの奴隷の借金を肩代わりして解放してしまうなんてことは、俺には出来ないな。
俺はどんな些細なことでも損得勘定を忘れることが出来ないし、どんな相手にも最終的な一線を保とうとするところがある。
無責任に他人の事情に踏み込むのは怖くて仕方が無いし、他人の人生を背負うなんて、重荷に感じてしまうだろう。
こんな俺だから女性に縁がないのは仕方ないだろうな、という自覚だけはある。俺を選ばない世の中の女性の目は確かだ。
リンカーズで安定して生活できるようになって、経済的に余裕が出来たら改めて考えてみよう。誰かと一緒に生きるという選択肢を。
オーサンの恋バナが終ると、俺たち3人の今後について、真面目な話し合いが始まった。
「お前ら随分仲良さそうだけど、正式に3人でパーティを結成する気はないのか?」
「ああ、それはもう話してあるんだ。実はさ……」
ここ何日か一緒に行動することも多くて、2人とは色々な話をした。
その中で2人は、正式な固定パーティを組むのは難しい、と告げてきたのだ。
俺の方は正式も臨時も分からなかったから、何も考えてなかっただけである。
2人は現在ここベイクで冒険者として活動しているが、冒険者としての力をつけて経験を積んだら、両親の行商に付いて行きたいと思っているのだ。
そのため、他のグループに参加することに遠慮してしまって、結果2人だけで迷宮に入り続けていたらしい。
俺なんてなんの事情もないのにずっとソロだったけどね、というセリフはなんとか飲み込んだ。
そんな2人の話を聞いた印象は『微笑ましい』だった。こいつら可愛すぎかよ。
こんな良い子たちをおっさんが邪魔するなんて、世界にとって損失でしかない。
ということで、2人がベイクにいる間は臨時パーティを組む、という話で決着した。
「なるほどねぇ。やっぱトーマはちょっと変わってるところがあるよな。まぁ当人同士が納得してんなら、俺から言うことはねぇ。
次は3階層について話をしよう」
ベイク迷宮3階層には『小亜鬼』という魔物が出現する。
とうとうド定番の、ゴブリン種の登場ですよ!しかしレッサーって、リンカーズのゴブリン種の扱いってどうなってるんだろうな。
レッサーゴブリンも、戦闘能力だけを見れば、そこまで強い魔物ではないらしい。それでも、3階層から危険度が跳ね上がると言われるのは、レッサーゴブリンが集団で襲ってくるためだ。
本能的に群れる習性があり、最低でも常に3体ずつくらいで行動していて、運が悪ければ10体以上の群れと遭遇するケースも少なくないとか。
彼らの攻撃は基本的に噛み付きで、武器を使ったり指揮系統の概念があるわけではないそうだが、数が多いというのはそれだけで厄介なものだ。
俺たちも先日2階層で、数の脅威を体験したばかりだし。
それに、武器を使わず噛み付きがメインであっても、その両手で掴みかかってきたり引き倒そうとしてきたり、ある種対人戦に近い対応が求められるそうだ。
戦い慣れていない者が3階層に足を踏み入れるのは、大変危険だというのが良くわかった。
ちなみにドロップは『亜麦粉』と言って、安価な小麦粉だそうだ。単価は5リーフとネズミの魔法石よりも安いが、集団戦が基本なのでドロップアイテムの集まり方が全く違うらしい。
3階層は戦闘経験とスキル経験値と資金稼ぎの3点から考えて、駆け出しが成長する為には無視できない階層ということらしい。
3階層で戦えるくらいになると、ちょうど9等級に上がるくらいに稼げるそうだ。
「俺の見立てでは、お前ら3人で挑むのであれば、3階層でも戦えると思う。挑戦するなら止めねぇ。
ただし、シンの武器の予備と、トーマのサブウェポンと、防具周りは整えてからにしたほうがいい。不測の事態に、事故が起こることを避けるためにな」
多少お金の余裕はあるし、装備は整えられる気がするな。
明日あたり3人で、もう一度検討してみようか。
オーサンが、冒険者ギルドに勤める前に冒険者として活動していたのは、以前にも聞いた通り。
ある依頼で立ち寄った村が、魔物に襲われて壊滅状態に。生き残った人たちも生活するアテもなく、多くの人が奴隷労働者になる道を選んだ。その生き残りの奴隷労働者の中に、クリリクさんも居たらしい。
彼らの境遇を憐れんだオーサンは、私財を投げ打ち、足りない分は多くの依頼をこなすことで補い、村の人たちの最低限の生活を保障し、奴隷労働者の道から解放する。
その時の無茶がきっかけで、一緒に組んでいたパーティメンバーとは拗れてしまって、パーティは解散。仲間と別れ、失意の中にいたオーサンを救ったのが、かつてオーサンに救われたクリリクさん。
互いに救われた2人が惹かれあうのには、時間は必要なかった、みたいな話である。
オーサンが大恋愛しててビビる。確かになんかコイツ、妙にお節介な所あるよな。
俺に声をかけ続けていたのも、恐らくはお節介の1つだったのだと思う。
しかし、『異世界』と『奴隷』が合わさるとロマンを感じる。
普通の恋愛が無理なら、奴隷という手もあるんじゃなかろうか?お金が出来たら奴隷について詳しく調べてみようそうしよう。
奴隷を買うということならまだしも、見ず知らずの奴隷の借金を肩代わりして解放してしまうなんてことは、俺には出来ないな。
俺はどんな些細なことでも損得勘定を忘れることが出来ないし、どんな相手にも最終的な一線を保とうとするところがある。
無責任に他人の事情に踏み込むのは怖くて仕方が無いし、他人の人生を背負うなんて、重荷に感じてしまうだろう。
こんな俺だから女性に縁がないのは仕方ないだろうな、という自覚だけはある。俺を選ばない世の中の女性の目は確かだ。
リンカーズで安定して生活できるようになって、経済的に余裕が出来たら改めて考えてみよう。誰かと一緒に生きるという選択肢を。
オーサンの恋バナが終ると、俺たち3人の今後について、真面目な話し合いが始まった。
「お前ら随分仲良さそうだけど、正式に3人でパーティを結成する気はないのか?」
「ああ、それはもう話してあるんだ。実はさ……」
ここ何日か一緒に行動することも多くて、2人とは色々な話をした。
その中で2人は、正式な固定パーティを組むのは難しい、と告げてきたのだ。
俺の方は正式も臨時も分からなかったから、何も考えてなかっただけである。
2人は現在ここベイクで冒険者として活動しているが、冒険者としての力をつけて経験を積んだら、両親の行商に付いて行きたいと思っているのだ。
そのため、他のグループに参加することに遠慮してしまって、結果2人だけで迷宮に入り続けていたらしい。
俺なんてなんの事情もないのにずっとソロだったけどね、というセリフはなんとか飲み込んだ。
そんな2人の話を聞いた印象は『微笑ましい』だった。こいつら可愛すぎかよ。
こんな良い子たちをおっさんが邪魔するなんて、世界にとって損失でしかない。
ということで、2人がベイクにいる間は臨時パーティを組む、という話で決着した。
「なるほどねぇ。やっぱトーマはちょっと変わってるところがあるよな。まぁ当人同士が納得してんなら、俺から言うことはねぇ。
次は3階層について話をしよう」
ベイク迷宮3階層には『小亜鬼』という魔物が出現する。
とうとうド定番の、ゴブリン種の登場ですよ!しかしレッサーって、リンカーズのゴブリン種の扱いってどうなってるんだろうな。
レッサーゴブリンも、戦闘能力だけを見れば、そこまで強い魔物ではないらしい。それでも、3階層から危険度が跳ね上がると言われるのは、レッサーゴブリンが集団で襲ってくるためだ。
本能的に群れる習性があり、最低でも常に3体ずつくらいで行動していて、運が悪ければ10体以上の群れと遭遇するケースも少なくないとか。
彼らの攻撃は基本的に噛み付きで、武器を使ったり指揮系統の概念があるわけではないそうだが、数が多いというのはそれだけで厄介なものだ。
俺たちも先日2階層で、数の脅威を体験したばかりだし。
それに、武器を使わず噛み付きがメインであっても、その両手で掴みかかってきたり引き倒そうとしてきたり、ある種対人戦に近い対応が求められるそうだ。
戦い慣れていない者が3階層に足を踏み入れるのは、大変危険だというのが良くわかった。
ちなみにドロップは『亜麦粉』と言って、安価な小麦粉だそうだ。単価は5リーフとネズミの魔法石よりも安いが、集団戦が基本なのでドロップアイテムの集まり方が全く違うらしい。
3階層は戦闘経験とスキル経験値と資金稼ぎの3点から考えて、駆け出しが成長する為には無視できない階層ということらしい。
3階層で戦えるくらいになると、ちょうど9等級に上がるくらいに稼げるそうだ。
「俺の見立てでは、お前ら3人で挑むのであれば、3階層でも戦えると思う。挑戦するなら止めねぇ。
ただし、シンの武器の予備と、トーマのサブウェポンと、防具周りは整えてからにしたほうがいい。不測の事態に、事故が起こることを避けるためにな」
多少お金の余裕はあるし、装備は整えられる気がするな。
明日あたり3人で、もう一度検討してみようか。
3
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる