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2章 強さへの道標
025 オーサン宅にお呼ばれします
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「……!?いってぇ!?」
突然、頭に衝撃が走る。
……っていうかここどこだ。さっきまでなにしてたんだっけ?
「人が仕事してんのに、揃いも揃って寝てんじゃねぇよ。
ほら、そいつ等もさっさと起こせ。帰んぞ」
オーサンがいつも通り、めんどくさそうにしている。
……段々思い出してきた。
ロビーまで来たのはいいけど、そこで力尽きて、3人とも寝てしまってたのか。
「いつまで寝ぼけてんだよ。腹減ってんだから、とっとと行くぞ」
状況的に考えて、オーサンに頭をぶっ叩かれたのか。やっぱこいつ、俺にだけ当たり強いよな。
「シン。リーン。2人とも起きろ。帰るぞ」
「ふみゃあ?」とか「むうぅぅ」とか寝ぼけてる2人が、めっちゃ可愛いから困る。
こういうの見ちゃうと、オーサンが2人を叩き起こせなかったのがちょっと分かってしまうのが嫌だわ。
「ブハハハハハ!親子かよお前ら!パーティ間で仲が良さそうで何よりじゃねぇか、ブハハハハハ!」
「うっせぇ笑ってんじゃねぇよこのハゲ!2人とも疲れてんだから不可抗力だっての!」
「ハッハハッ、ハゲとらんわっ!!!」
「分かりやすく動揺してんじゃねーよ自覚症状あんのかオラァ!」
今日1日、全く手も足もでなかったオーサンに、どうでも良い一矢を報いてしまったじゃねーか!
シンもリーンもよほど疲れたのか、起きた後も半分眠ってるみたいに、自分で動ける状態ではなかった。仕方ないので2人と手を繋いで見たら、素直に動いてくれたため、現在右手をシン、左手をリーンと繋いでいる。
2人とも立って歩かせてもまだ意識が覚醒しきらないみたいで、手を離せないのだ。
「動揺してないで、さっさと案内しろよ。お前が急かしたんだろうが」
「ど、ど、動揺なんかしてねぇし?!」
別に、オーサンがハゲてるようには見えないんだけどな。第三者から見て平気でも、本人にとってはデリケートな問題なのだろう。
オーサンにハゲは禁句。ここ一番の時に活用しよう。
しかし、同じ訓練を受けてたのに、俺と2人で状態が違いすぎないか?
俺だってバッテバテだけど、この2人は未だ最低限の回復も出来ていないように見える。
俺も手を抜いたつもりはないけれど、というか手を抜けるような状況でもなかったけど、やはりどこかで「これ以上は危険だ」と無意識にブレーキをかけていたんだろうか。
ある程度の年齢に達してしまうと、勢いだけで完全燃焼するのは難しくなるってことなのかも知れない。最後の一滴まで全力を使い切れるのも、若さの1つなのかもな。
未だぼーっとしている2人と手を繋いだまま、オーサンの後に着いて行く。
「着いたぞ。お前ら連れてくる話はしてあるから、多分メシはもう出来てると思う」
連れて来られたのは、冒険者ギルドから徒歩5分くらいの距離にある一軒家だった。
飯屋に連れて行かれるもんだと思ってたんだけどな、……ってあれ?なんか最近、全く同じこと考えたような気がするぞ?
オーサンは遠慮なくドアを開けて、中へ入っていく。半分ほど家に入ったところでオーサンは振り返って、俺たちに手招きする。
「おうさっさと上がれよ。俺と嫁しかいないから、遠慮は要らんぞ」
……は?
今なんか幻聴が聞こえたような気がするなぁ。2人に比べて余裕あると思ってたけど、やっぱり俺も疲れてるようだ。
なんかオーサンが妄言吐いた様に聞こえたけど、きっと夢に違いないな。
「そ、それじゃあ上がらせてもらうよ。お邪魔しまーす」
「いらっしゃい。夫から話は聞いてますよ。今日は、いっぱい召し上がってくださいねぇ」
おっとりした女性が、ニコニコと迎えてくれた。
「えええええオーサンって結婚してんの!?うっそだろ!?」
必死に現実逃避してたけど、流石にこれ以上目を逸らしたら話が進まない。戦わなきゃ!現実と!
「あぁん?なんだその反応は。俺らくらいの年齢なら、独り身でいるほうが珍しいだろうが。トーマには、なんか事情があるのかも知れねぇけどよ」
「まぁまぁ!随分可愛らしい子も一緒なのねえ。
さぁさぁ、まずは座ってくださいお客さん。お話は食事をしながらにしましょうね」
オーサンを小一時間ほど問い詰めたかったが、奥さんがシンとリーンにメロメロになってしまったので、大人しく食事を頂く事にしよう。
オーサンめ!これで勝ったと思うなよ!次に会うのは法廷だ!
夕餉の香りに誘われてか、ようやく2人の意識も覚醒してきたようだ。両手塞がったままじゃ、何も食べれないところだったよ。
奥さんと俺たちは初対面なので、簡単に自己紹介を済ませる。
「オーサンの妻の、『クリリク』と言います。今夜は、おなかいっぱい食べてってくださいねえ」
「今日は訓練ご苦労だったな。訓練指導を終えた後、夕飯を奢るのはいつものことなんだ。お前ら、遠慮なく食っていってくれ」
「「「ご馳走になりまーす」」」」
夕飯はバイキング方式とでも言えば良いのか、パンとスープ以外は全て大皿に盛り付けてあって、みんなで取り合って食べる形だ。
とりあえず一番近くに置いてある大皿から、煮込み料理を一口頂く。
おおぅ、普通に旨いな。
オーサンが結婚していて、料理上手な奥さんを貰っているなんて、世の中間違ってるだろ!この世には神も仏もいないのか!
そういえば俺は神ガチャで最悪なの引いたんだったなちくしょーめー!
「全部おいしー。クリリクさんお料理上手だねっ」
「ふふふ。ありがとうねえ。リーンちゃんもシンくんも、いっぱい食べてってねぇ。
2人を見てると、子供が小さかった頃を思い出すわぁ」
オーサン、子供までいんのかよ!
「今日お子さんは家に居ないの?3人で押しかけちゃったけど」
「ああ、もうとっくに家を出てるよ。子育ても終って、今はコイツと2人で、のんびりしてるんだよ」
子供成人済みだと?そういえばオーサンって……。
「今まで聞いたことなかったけど、オーサンって何歳なんだ?」
「あ?そういえば言ってなかったか。俺は今38で、嫁は36だ。
一番下の娘が家を出て、もう5年くらいになるかな」
「えっ、クリリクさんも俺より年上なの?随分若く見えるね」
「あらお上手ねえ。でももう上の子が子供を産んでるから、お婆ちゃんなのよ私」
「36でお婆ちゃんですかー……。俺35なのに、女性の知り合いすら居ないっすわ」
童貞という名の呪いは、異世界に転移してもなお、我が身を蝕み続けるのだ。
「っていうか、トーマこそ35だったのかよ」
「あ、そういえば俺も言ってなかったっけ。悪い悪い、35歳だよ」
「私は11歳!兄さんは14歳だよ」
「トーマって大人っぽいんだか大人気ないんだか、良く分からないよね」
「ガハハハハハハ!やっぱり親子じゃねぇか!」
「親子っていうか、孫っていう方が近い年齢かもねえ」
「みんな、結婚早すぎませんかねぇ!?」
10代の前半で結婚、出産が当たり前かー。異世界恐るべし。
っていうと、35歳童貞が普通に恋愛するのって、ハードル高いんじゃね?
あれ?日本に居ても異世界に来ても、女性に縁がないのは変わらないの?
モテない男は、異世界に転移したくらいで、急にモテ男になったりはしないと言うわけか。
こんなとこまでリアルに設定しなくて良かったんじゃないですかね神様ぁぁぁぁ!
突然、頭に衝撃が走る。
……っていうかここどこだ。さっきまでなにしてたんだっけ?
「人が仕事してんのに、揃いも揃って寝てんじゃねぇよ。
ほら、そいつ等もさっさと起こせ。帰んぞ」
オーサンがいつも通り、めんどくさそうにしている。
……段々思い出してきた。
ロビーまで来たのはいいけど、そこで力尽きて、3人とも寝てしまってたのか。
「いつまで寝ぼけてんだよ。腹減ってんだから、とっとと行くぞ」
状況的に考えて、オーサンに頭をぶっ叩かれたのか。やっぱこいつ、俺にだけ当たり強いよな。
「シン。リーン。2人とも起きろ。帰るぞ」
「ふみゃあ?」とか「むうぅぅ」とか寝ぼけてる2人が、めっちゃ可愛いから困る。
こういうの見ちゃうと、オーサンが2人を叩き起こせなかったのがちょっと分かってしまうのが嫌だわ。
「ブハハハハハ!親子かよお前ら!パーティ間で仲が良さそうで何よりじゃねぇか、ブハハハハハ!」
「うっせぇ笑ってんじゃねぇよこのハゲ!2人とも疲れてんだから不可抗力だっての!」
「ハッハハッ、ハゲとらんわっ!!!」
「分かりやすく動揺してんじゃねーよ自覚症状あんのかオラァ!」
今日1日、全く手も足もでなかったオーサンに、どうでも良い一矢を報いてしまったじゃねーか!
シンもリーンもよほど疲れたのか、起きた後も半分眠ってるみたいに、自分で動ける状態ではなかった。仕方ないので2人と手を繋いで見たら、素直に動いてくれたため、現在右手をシン、左手をリーンと繋いでいる。
2人とも立って歩かせてもまだ意識が覚醒しきらないみたいで、手を離せないのだ。
「動揺してないで、さっさと案内しろよ。お前が急かしたんだろうが」
「ど、ど、動揺なんかしてねぇし?!」
別に、オーサンがハゲてるようには見えないんだけどな。第三者から見て平気でも、本人にとってはデリケートな問題なのだろう。
オーサンにハゲは禁句。ここ一番の時に活用しよう。
しかし、同じ訓練を受けてたのに、俺と2人で状態が違いすぎないか?
俺だってバッテバテだけど、この2人は未だ最低限の回復も出来ていないように見える。
俺も手を抜いたつもりはないけれど、というか手を抜けるような状況でもなかったけど、やはりどこかで「これ以上は危険だ」と無意識にブレーキをかけていたんだろうか。
ある程度の年齢に達してしまうと、勢いだけで完全燃焼するのは難しくなるってことなのかも知れない。最後の一滴まで全力を使い切れるのも、若さの1つなのかもな。
未だぼーっとしている2人と手を繋いだまま、オーサンの後に着いて行く。
「着いたぞ。お前ら連れてくる話はしてあるから、多分メシはもう出来てると思う」
連れて来られたのは、冒険者ギルドから徒歩5分くらいの距離にある一軒家だった。
飯屋に連れて行かれるもんだと思ってたんだけどな、……ってあれ?なんか最近、全く同じこと考えたような気がするぞ?
オーサンは遠慮なくドアを開けて、中へ入っていく。半分ほど家に入ったところでオーサンは振り返って、俺たちに手招きする。
「おうさっさと上がれよ。俺と嫁しかいないから、遠慮は要らんぞ」
……は?
今なんか幻聴が聞こえたような気がするなぁ。2人に比べて余裕あると思ってたけど、やっぱり俺も疲れてるようだ。
なんかオーサンが妄言吐いた様に聞こえたけど、きっと夢に違いないな。
「そ、それじゃあ上がらせてもらうよ。お邪魔しまーす」
「いらっしゃい。夫から話は聞いてますよ。今日は、いっぱい召し上がってくださいねぇ」
おっとりした女性が、ニコニコと迎えてくれた。
「えええええオーサンって結婚してんの!?うっそだろ!?」
必死に現実逃避してたけど、流石にこれ以上目を逸らしたら話が進まない。戦わなきゃ!現実と!
「あぁん?なんだその反応は。俺らくらいの年齢なら、独り身でいるほうが珍しいだろうが。トーマには、なんか事情があるのかも知れねぇけどよ」
「まぁまぁ!随分可愛らしい子も一緒なのねえ。
さぁさぁ、まずは座ってくださいお客さん。お話は食事をしながらにしましょうね」
オーサンを小一時間ほど問い詰めたかったが、奥さんがシンとリーンにメロメロになってしまったので、大人しく食事を頂く事にしよう。
オーサンめ!これで勝ったと思うなよ!次に会うのは法廷だ!
夕餉の香りに誘われてか、ようやく2人の意識も覚醒してきたようだ。両手塞がったままじゃ、何も食べれないところだったよ。
奥さんと俺たちは初対面なので、簡単に自己紹介を済ませる。
「オーサンの妻の、『クリリク』と言います。今夜は、おなかいっぱい食べてってくださいねえ」
「今日は訓練ご苦労だったな。訓練指導を終えた後、夕飯を奢るのはいつものことなんだ。お前ら、遠慮なく食っていってくれ」
「「「ご馳走になりまーす」」」」
夕飯はバイキング方式とでも言えば良いのか、パンとスープ以外は全て大皿に盛り付けてあって、みんなで取り合って食べる形だ。
とりあえず一番近くに置いてある大皿から、煮込み料理を一口頂く。
おおぅ、普通に旨いな。
オーサンが結婚していて、料理上手な奥さんを貰っているなんて、世の中間違ってるだろ!この世には神も仏もいないのか!
そういえば俺は神ガチャで最悪なの引いたんだったなちくしょーめー!
「全部おいしー。クリリクさんお料理上手だねっ」
「ふふふ。ありがとうねえ。リーンちゃんもシンくんも、いっぱい食べてってねぇ。
2人を見てると、子供が小さかった頃を思い出すわぁ」
オーサン、子供までいんのかよ!
「今日お子さんは家に居ないの?3人で押しかけちゃったけど」
「ああ、もうとっくに家を出てるよ。子育ても終って、今はコイツと2人で、のんびりしてるんだよ」
子供成人済みだと?そういえばオーサンって……。
「今まで聞いたことなかったけど、オーサンって何歳なんだ?」
「あ?そういえば言ってなかったか。俺は今38で、嫁は36だ。
一番下の娘が家を出て、もう5年くらいになるかな」
「えっ、クリリクさんも俺より年上なの?随分若く見えるね」
「あらお上手ねえ。でももう上の子が子供を産んでるから、お婆ちゃんなのよ私」
「36でお婆ちゃんですかー……。俺35なのに、女性の知り合いすら居ないっすわ」
童貞という名の呪いは、異世界に転移してもなお、我が身を蝕み続けるのだ。
「っていうか、トーマこそ35だったのかよ」
「あ、そういえば俺も言ってなかったっけ。悪い悪い、35歳だよ」
「私は11歳!兄さんは14歳だよ」
「トーマって大人っぽいんだか大人気ないんだか、良く分からないよね」
「ガハハハハハハ!やっぱり親子じゃねぇか!」
「親子っていうか、孫っていう方が近い年齢かもねえ」
「みんな、結婚早すぎませんかねぇ!?」
10代の前半で結婚、出産が当たり前かー。異世界恐るべし。
っていうと、35歳童貞が普通に恋愛するのって、ハードル高いんじゃね?
あれ?日本に居ても異世界に来ても、女性に縁がないのは変わらないの?
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