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2章 強さへの道標
039 カズラの魔法薬屋
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「トーマー、ここだよー」
先頭のリーンが振り返って、目的の店に到着したことを教えてくれた。
案内されたお店はこじんまりとした木製の店舗で、日当たりが悪く怪しげな雰囲気が全体から漂っている。なんか魔女の店って言われても納得するな……。
看板があるので読んでみる。えーと、カズ……カズラの、か。カズラのなんとかって書いてあるけど、後半は重字なのでまだ読めないな。
「悪い。これなんて書いてあるんだ?」
「んー、これは『カズラの魔法薬屋』って書いてるんだよー。カズラっていうのは、このお店の魔法薬を作ってるお婆ちゃんのことだよー」
めちゃくちゃシンプルな店名だった。魔法薬を作ってる人が販売も担当する個人経営店って感じ?
「お婆ちゃんいるー?リーンだよー」
っと、場所をしているだけじゃなく元々知り合いなのか。なんか駄菓子屋に突撃する小学生みたいな入店ですよセンパイ。
ワンテンポ遅れて俺も店に入ると、奥から服を来た人間大のネズミが二足歩行で出てきたところだった。
「最近来なかったねぇリーン。シンも一緒だね。今日はなにか買っていくのかい?」
「カズラさん、ご無沙汰してます」
普通に人間の声だったし会話が通じてる。どうやらこのネズミが魔法薬を作っているカズラさんらしい。
「おや見ない顔だね。2人の知り合いかい?」
「うんっ。トーマって言って、私たちと一緒に迷宮に潜ってる人だよー。」
おっとリーンが簡単に紹介してくれたので、その流れに乗ってしまおう。
「初めましてトーマです。お宅はカズラさんで合ってる?」
「ああ、私が『カズラ』で合ってるよ。見ての通りネズミの獣人で、ここで魔法薬を作らせて貰ってる。
2人が一緒なら悪い男ってわけじゃあないんだろうね。まぁ適当によろしく頼むよ」
亜人ではなく獣人か。人間ベースのケモミミっ子が亜人で、二足歩行する動物って見た目の人が獣人って扱いなのかな?
二足歩行の動物って外見だと見た目で性別が判断できないな。リーンがお婆ちゃんって言ってるから、カズラさんは女性なんだろうけど。
「最近迷宮に潜ってるのは聞いてたけれど、ウチにきたってことは怪我でもしたのかい?治療系の魔法薬は結構値が張るけど大丈夫かね?」
「いやいや、探索は順調だよ。今度4階層に進もうという話になって、暗視の魔法薬を見せてもらおうと思って。
それとトーマが魔法薬を使ったことが無いというので、実物を見ながら少し説明をね。カズラさんも手が空いてたら付き合ってくれないかな?」
シンが簡単に用件を伝える。
「へぇ?若くも無さそうなのに珍しいヤツだね。今は他に客もいないし付き合ってやろうじゃないか。
3人ともこっちおいで」
店の奥のほうにあった、テーブルと椅子のある談話スペースのようなところに案内される。販売店にこんなスペースが必要あるのか?
「なんだかトーマはピンと来ない顔してるねぇ。
魔法薬ってのは高価な上に長持ちしないもんだから、客と納品日や販売量を打ち合わせないといけないのさ。
高い買い物だけに、客が納得できない取引をしちまうとモメごとになりやすいからね」
えっ!魔法薬って長持ちしないのかよ!
「ってあれ?だとすると店頭に並んでる商品はなんなんだ?」
「陳列してあるのは『保存』の魔法処理が施されてるから長持ちするんだよ。保存がかかってる魔法薬は商品価格に金貨3枚上乗せされるけど、そっちの方をお望みかね」
「うえぇぇ、全く手が出ねぇよ……」
「常備できる魔法薬なんてのはいざって時のための優秀な保険だからねぇ。保存効果を付与するのも簡単じゃないし、買い手はいくらでもいるから値は下がらないと思いな」
まぁ回復アイテムとか現実で持ち歩けたらそれだけでチート臭いもんなぁ。
「横道に逸れて悪かった。暗視の魔法薬の話をしよう」
「それじゃあまずは私が教えてあげるねー」
リーン先輩って人に教えるの好きだよな。
「ほぼ全ての魔法薬には『等級』があって、大体の魔法薬は『下級』『中級』『上級』の3種類があると思って良いよー。等級の分け方は魔法薬の効果によってそれぞれって感じかな?
例えば治癒ポーションならどれくらいの怪我まで対応できるかだったり、それこそ暗視ポーションの場合は効果の持続する時間で等級が変わったりとか、いろいろだねー」
同じ種類でも効果によって等級がつけられるのか。保存の有無は等級には関係しないって感じか?
「ウチで売ってる暗視ポーションの値段は、下級で銀貨2枚、中級で銀板1の銀貨6枚、上級なら銀板2枚と銀貨4枚ってところだねぇ」
うえええ恐ろしい金額になるな……。必要経費って割り切って良い金額なのか……?
「しかもそれをメンバー分購入する必要があるわけだから、僕たちが手を出せるのは実質下級の暗視ポーションだけってことになるね」
「うわーそうか3倍かかるのか。頭痛くなって来るな。
ちなみに下級ポーションだと、どのくらい暗視効果が持続するんだ?」
カズラさんは少し悩む素振りを見せる。
「そうさねぇ……。夜明けから陽天の報せまでは間違いなく持たないだろうね。
夜明けから日没まで1日中迷宮の中にいるとするなら、恐らくは3つくらいは必要になるかねぇ」
銀貨2枚×3人分×1日3個って、1日1800リーフ計算か。下級ポーションでも銀板2枚近く飛んでいくのかぁ。
「ちなみに中級と上級の持続時間も聞いていいか?買えないけど」
「中級は半日は持つだろうから、日没までに帰ってくるなら効果が切れる心配はないだろうね。上級なら丸1日以上は持つだろう。
朝になれば必要がなくなるから、上級の暗視ポーションはあまり頼まれたことないがねぇ」
連日迷宮に篭り続ける場合でもない限り、上級は必要ないのか。そこまでする冒険者なら、もうスキル取得出来てるんだろうしな。
「魔法薬は作って3日くらいで劣化してしまうから、使う日の朝にその日使う分だけ買っていくってのが良いと思うよ。
当たり前だけど、実際に魔法薬が作られるのはあんたらに引き渡すより前だからね。1つくらい予備を持っても良いかもしれないが、必要以上に買っても無駄になるだけだ。
よく考えてから注文するんだね」
高価な上に日持ちがしない消耗品、ってのは扱いにくいなぁ。
3階層回ってるなら経費以上に稼げるけれど、4階層はどのくらい稼げるかわからないし。
ここはいつも通りシンに聞いてみるべきだな。
困ったときのシンペディア。
先頭のリーンが振り返って、目的の店に到着したことを教えてくれた。
案内されたお店はこじんまりとした木製の店舗で、日当たりが悪く怪しげな雰囲気が全体から漂っている。なんか魔女の店って言われても納得するな……。
看板があるので読んでみる。えーと、カズ……カズラの、か。カズラのなんとかって書いてあるけど、後半は重字なのでまだ読めないな。
「悪い。これなんて書いてあるんだ?」
「んー、これは『カズラの魔法薬屋』って書いてるんだよー。カズラっていうのは、このお店の魔法薬を作ってるお婆ちゃんのことだよー」
めちゃくちゃシンプルな店名だった。魔法薬を作ってる人が販売も担当する個人経営店って感じ?
「お婆ちゃんいるー?リーンだよー」
っと、場所をしているだけじゃなく元々知り合いなのか。なんか駄菓子屋に突撃する小学生みたいな入店ですよセンパイ。
ワンテンポ遅れて俺も店に入ると、奥から服を来た人間大のネズミが二足歩行で出てきたところだった。
「最近来なかったねぇリーン。シンも一緒だね。今日はなにか買っていくのかい?」
「カズラさん、ご無沙汰してます」
普通に人間の声だったし会話が通じてる。どうやらこのネズミが魔法薬を作っているカズラさんらしい。
「おや見ない顔だね。2人の知り合いかい?」
「うんっ。トーマって言って、私たちと一緒に迷宮に潜ってる人だよー。」
おっとリーンが簡単に紹介してくれたので、その流れに乗ってしまおう。
「初めましてトーマです。お宅はカズラさんで合ってる?」
「ああ、私が『カズラ』で合ってるよ。見ての通りネズミの獣人で、ここで魔法薬を作らせて貰ってる。
2人が一緒なら悪い男ってわけじゃあないんだろうね。まぁ適当によろしく頼むよ」
亜人ではなく獣人か。人間ベースのケモミミっ子が亜人で、二足歩行する動物って見た目の人が獣人って扱いなのかな?
二足歩行の動物って外見だと見た目で性別が判断できないな。リーンがお婆ちゃんって言ってるから、カズラさんは女性なんだろうけど。
「最近迷宮に潜ってるのは聞いてたけれど、ウチにきたってことは怪我でもしたのかい?治療系の魔法薬は結構値が張るけど大丈夫かね?」
「いやいや、探索は順調だよ。今度4階層に進もうという話になって、暗視の魔法薬を見せてもらおうと思って。
それとトーマが魔法薬を使ったことが無いというので、実物を見ながら少し説明をね。カズラさんも手が空いてたら付き合ってくれないかな?」
シンが簡単に用件を伝える。
「へぇ?若くも無さそうなのに珍しいヤツだね。今は他に客もいないし付き合ってやろうじゃないか。
3人ともこっちおいで」
店の奥のほうにあった、テーブルと椅子のある談話スペースのようなところに案内される。販売店にこんなスペースが必要あるのか?
「なんだかトーマはピンと来ない顔してるねぇ。
魔法薬ってのは高価な上に長持ちしないもんだから、客と納品日や販売量を打ち合わせないといけないのさ。
高い買い物だけに、客が納得できない取引をしちまうとモメごとになりやすいからね」
えっ!魔法薬って長持ちしないのかよ!
「ってあれ?だとすると店頭に並んでる商品はなんなんだ?」
「陳列してあるのは『保存』の魔法処理が施されてるから長持ちするんだよ。保存がかかってる魔法薬は商品価格に金貨3枚上乗せされるけど、そっちの方をお望みかね」
「うえぇぇ、全く手が出ねぇよ……」
「常備できる魔法薬なんてのはいざって時のための優秀な保険だからねぇ。保存効果を付与するのも簡単じゃないし、買い手はいくらでもいるから値は下がらないと思いな」
まぁ回復アイテムとか現実で持ち歩けたらそれだけでチート臭いもんなぁ。
「横道に逸れて悪かった。暗視の魔法薬の話をしよう」
「それじゃあまずは私が教えてあげるねー」
リーン先輩って人に教えるの好きだよな。
「ほぼ全ての魔法薬には『等級』があって、大体の魔法薬は『下級』『中級』『上級』の3種類があると思って良いよー。等級の分け方は魔法薬の効果によってそれぞれって感じかな?
例えば治癒ポーションならどれくらいの怪我まで対応できるかだったり、それこそ暗視ポーションの場合は効果の持続する時間で等級が変わったりとか、いろいろだねー」
同じ種類でも効果によって等級がつけられるのか。保存の有無は等級には関係しないって感じか?
「ウチで売ってる暗視ポーションの値段は、下級で銀貨2枚、中級で銀板1の銀貨6枚、上級なら銀板2枚と銀貨4枚ってところだねぇ」
うえええ恐ろしい金額になるな……。必要経費って割り切って良い金額なのか……?
「しかもそれをメンバー分購入する必要があるわけだから、僕たちが手を出せるのは実質下級の暗視ポーションだけってことになるね」
「うわーそうか3倍かかるのか。頭痛くなって来るな。
ちなみに下級ポーションだと、どのくらい暗視効果が持続するんだ?」
カズラさんは少し悩む素振りを見せる。
「そうさねぇ……。夜明けから陽天の報せまでは間違いなく持たないだろうね。
夜明けから日没まで1日中迷宮の中にいるとするなら、恐らくは3つくらいは必要になるかねぇ」
銀貨2枚×3人分×1日3個って、1日1800リーフ計算か。下級ポーションでも銀板2枚近く飛んでいくのかぁ。
「ちなみに中級と上級の持続時間も聞いていいか?買えないけど」
「中級は半日は持つだろうから、日没までに帰ってくるなら効果が切れる心配はないだろうね。上級なら丸1日以上は持つだろう。
朝になれば必要がなくなるから、上級の暗視ポーションはあまり頼まれたことないがねぇ」
連日迷宮に篭り続ける場合でもない限り、上級は必要ないのか。そこまでする冒険者なら、もうスキル取得出来てるんだろうしな。
「魔法薬は作って3日くらいで劣化してしまうから、使う日の朝にその日使う分だけ買っていくってのが良いと思うよ。
当たり前だけど、実際に魔法薬が作られるのはあんたらに引き渡すより前だからね。1つくらい予備を持っても良いかもしれないが、必要以上に買っても無駄になるだけだ。
よく考えてから注文するんだね」
高価な上に日持ちがしない消耗品、ってのは扱いにくいなぁ。
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困ったときのシンペディア。
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