異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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4章 2人のために出来ること

078 馴染みの宿を出る

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「ね~む~い~……」

「ふわぁ」


 夜通し続けた3階層の探索を終えて出てくると、夜明けからそれなりに時間が経っているようだった。
 成長期の2人には悪いが、とりあえずこれで暗視スキルの取得条件は満たしたと思う。

 なんか俺自身は、夜通し探索してても何の新鮮味も無いな。
 早く普通の生活習慣に戻したいもんだ。

 ふわわとつらら?
 優雅にお休み中で御座いますよ?



 一度宿に帰り、2人を少しだけ眠らせる。
 出来れば2人を休ませたまま用事を済ませたいのだけど、それはそれで危険なのだから仕方ない。
 明日からは普通の生活習慣に戻そう。
 決してフラグではない。


 2人を起こし、用事回りを始める。まずは商工ギルドへ。


「ああトーマさん。スレイさんには伝言お伝えしておいたよ。今夜こちらに来るって」

「了解~。あと金板1枚下ろしてちょうだいな」

「……トーマさん。あんなに稼いだのに、全然お金無くなっちゃったわねぇ」

「まぁ出費はあと1回くらいの予定で、この後は溜まっていくとは思うよ。
 ……ってことは、購入手続きは済んだってこと?」

「えぇえぇ、今日から使えるよ。こちらが鍵だね。
 あと、ちょっと身分証を貸してくれるかい」


 ほいっと身分証を渡す。


「今住所登録しちゃうから、ちょっとだけ待っててね。
 なんか後ろの2人が今にも寝ちゃいそうなとこ悪いんだけど」

「なるはやで頼みまーす」

ってなんだい?初めて聞いたよ。
 そうそう、今日から使って構わないんだけど、手入れもされてないし、家具なんかも全部処分されちゃってるからね。
 ベッドすらないから気をつけてね」

「あっちゃーそうか。もうちょっと出費は続きそうだね……」


 白金貨稼いだなんて、夢だったに違いない。



「カズラさん悪い。とりあえず手付けとして、金板1枚だけ渡しておくよ。
 残りも5日以内には必ず持ってくるからさ」

「ああ、こっちの納品の方が後だし、それは構いやしないんだけどね……。
 なんだか2人が随分眠そうじゃないかい?
 アンタまさか2人とも……?」

「そういうのはいいっての。ちょっとこっちの都合で夜通し潜ってたんだよ。
 じゃあ暗視ポーション2つ、貰ってくよー」

「ああちょっとお待ちよ。
 上級止血ポーション1つだけだが出来てるから、持っていきな」

「お、マジで?助かるぅ~」

「ちゃんと管理するんだよ。
 暗視ポーションと間違えて飲んだ、なんて言われても困るからねぇ」


 キモに命じておきます。金欠だし。


 ホムロの店で整備をしつつ、2人はまたもお休み中。
 いぬねこコンビは元気いっぱいに遊びまわって、ホムロが頬を赤らめながら、横目でチラチラ様子を伺っている。

 気持ち悪いから普通に見ればいいのに。


 
 ホムロの恥じらい顔を見るのも苦痛になってきた頃、装備のメンテナンスが終了したので、逃げるように店を出る。

 次の目的地は衣料品店、服屋だ。頼んであった服は完成していた。


 俺が頼んだ服は、簡単に言えばフード付きの外套コートだ。
 フードも外套もリンカーズには既に存在しているのだが、今回頼んだものはフードのデザインが少し特殊だ。

 フードの中が2分割されており、首の後ろ部分にも、少し大きめのポケットを作ってもらった。


 そう!つまりいぬねこコンビを、フードに入れて連れ歩くためである!
 もし雨が降ったら、首の後ろのポケットに移動してもらって、2匹と仲良くフードを被れる仕様にしてもらった。
 ふわわもつららもとても頭が良いので、教えればすぐに理解してくれるだろう。

 やっぱ地球のいぬねこより、頭良い気がするなぁ。


 さっそく使ってみると、2匹は大人しくフードの中に入って、顔だけちょこんと出したようだ。



 しまったあああああああああああああああああああ俺はなんてアホなんだあああああああああ!!!!

 

 周囲はめっちゃ笑顔になってるけど、俺自身が2匹を見れないじゃん!!!

 いぬねこコンビは頭良いなぁ、とか言ってる場合じゃなかった!俺こそアホじゃん!


 ああああでも2匹がめっちゃ近くで幸せでもあるううううう。

 近くて幸せ。でも近すぎて可愛い姿が見れない。
 くっ!これがパラドクスか!絶対違うけど!



 でも結局フードに2匹をを収めたままで、家具屋さん、木工職人の工場らしい、に向かう。場所はシンが知っていた。

 気持ち悪くなったり降りたくなったら肩を叩くんだよー、って言ったら、2匹とも耳元でお返事してくれた。

 ……ひゅー、危ない危ない。なんとか致命傷で済んだぜ。



 2人には家を購入したことを伝え、家具などを選ばせる。

 家具ってのは何処の世界も上を見ればキリがないが、俺も2人も家具に関しては特に高級志向と言うわけではないので、昨晩の探索の報酬で足りる程度の出費で済んだ。

 住所を伝え鍵を預ける。運び終わったら施錠して、俺がまた鍵を受け取りにここに来るという流れ。



 最後に迷宮の安らぎ亭に寄って、今日でチェックアウトする旨を伝えた。
 ベイクに家を買ったので、そちらに引っ越しますと。


「はぁ~。始めのトーマは、連泊するお金もなくて困ってたってのにねぇ。
 とうとう自分の家を持つほどになったってのは、なんだか感慨深いじゃないかい!」


 ユリンさんには最後まで背中をばしばし叩かれた。
 これって地味に痛いんですけどぉ。


「ああ、ダンナには私から言っておくから構いやしないよ。ベイクを離れるわけじゃなし、挨拶なんて要らない要らない!
 それにこんな商売やってちゃ、出会いと別れは日常茶飯事ってね」


 なんかもっとしんみりするかと思ったら、豪快に送り出されてしまった。
 今夜の夕食にも来るし、今後もちょいちょい食事には来ますね、とだけは何とか伝えることが出来た。


 リンカーズに来て初めて泊まってから、ずっと利用してきた『迷宮の安らぎ亭』。

 食事も口に合ったし、ユリンさんの豪快ながらも気配りが行き届いたサービスのおかげで、本当に心地良く宿泊させてもらえたと思う。

 初めて送り出してもらったときにくれた、あのお弁当がなかったら、あの日食べるものがなかっただろうなぁ。

 俺がリンカーズを嫌いにならずに済んだのは、ユリンさんに出会えたのがとても大きいと思う。


 今まで本当にお世話になりました。

 俺にとっては最早、実家みたいな感覚だな。


 もう泊まることは無いと思うけど。

 今後もちょいちょい顔は出したいな。
 
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