異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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5章 カルネジア・ハロイツァ

082 不穏

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「ふぇふぇふぇ、確かに金板2枚に金貨6枚受け取ったよ。
 トーマさんはこれからも長生きして、この店の売り上げに貢献して欲しいねぇ」


 カズラさんは非常に上機嫌だ。
 まぁリヴァーブ王国の平均年収くらいの大口取引があったのだから、頬も緩むだろうね。
 払ったこっちとしては痛かったけどな!
 まぁ必要経費だ。


 こういう時、これだけ稼げる冒険者という職業の、社会的信用の低さに違和感を覚えるんだよなぁ。

 シンとリーンにも聞いてみたのだが、迷宮に入るのはあくまでスキルを取得するためであって、生涯望んで冒険者を続けている人は多くないって話なのだ。

 うーん、危険なことは危険なんだろうけど、まだ初級冒険者の俺ですら平均年収くらい簡単に稼げるのに、冒険者ってもっと居てもいい気がするんだけどなぁ。

 ただカズラさんやホムロみたいな、恐らく特殊なスキルを取得したであろう職人さんは、命の危険もなくでっかい取引が出来るようになってるわけで。
 それを思うと、安全に暮らせるなら迷宮になんか潜りたくない、と思う人が多いんだろうか?

 ふむ、冒険者と魔物と迷宮って、俺がまだ理解出来てない一般認識がありそうな気がするわ。
 特殊スキルを得るまで迷宮に篭り続けた人たちが、挙って冒険者を引退する理由、コレガワカラナイ。



 シンもリーンも6階層では全く問題無さそうだったので、2人と相談して、今日はもう7階層に上がってしまう事にした。
 魔装術無しでフレアリザードに攻撃が通るか、試したいとのこと。

 結果から言えば、攻撃が通ったことは通った。
 ただし、シンのショートソードでも一撃で両断することは出来ず、リーンのナイフも刃は通るものの、刃渡りが足らずに致命傷を与えるのは難しそうだった。
 やっぱ魔装術がないときつそうだな。ちなみに攻撃魔法を使えばどれでも一撃だった。

 フレアリザードのクセしてフレイムアローに耐性ないとか、やる気あるのかねキミィ?

 ……なんかこの流れ、以前もやった気がする。



 フレアリザードとシャドウボアに対して火力が少し足りないだけで、7階層でも2人は問題なく戦い抜くことが出来そうだ。
 今日は流石に7階層を続けるけど、明日には稼ぎの良い8階層に上げれそうですねぐへへへへ。


 3周ほどしてみたものの、流石に3人で回ったおかげか、まだ日没には時間があるようだった。

 魔装術の早期獲得も視野に入れて、1日の周回数を増やすべきだろうか。


「……そうだね。僕たち2人が飲んでるのも上級暗視ポーションだし、日没前に探索を終えるのは、少し勿体無い気がするよ」

「私も早く強くなりたいし、続けても全然いいよー。まだ疲れも感じないかな。
 でも夜通し潜るのは、もうやりたくないよー?」

「夜通し探索は俺だって好きでやったんじゃねぇっつの。
 2人に余裕があるなら、もうちょい続けっか」


 ということで、本日4度目の探索に向かうことにする。



 それにしても、SPの取得が鈍い気がするのは、やはりふわわとつららにも経験値が流れていると見るべきだな。
 祝福の儀っていぬねこコンビも受けられるんだろうか?
 最悪、フードのポケットに隠して俺と一緒に、って感じか。



 7階層に到着し、探索を続けていると、突然つららが唸りだした。


「ゥゥゥ……!」

「つらら?どうかしたか?」


 つららに声をかけると、フードにインしていたふわわが華麗に脱出。しきりに後ろの方を気にしている。
 俺には何もわからないけど、これは恐らく……。


「シン、リーン。ここからは魔法は使うな。2匹の様子がおかしい。警戒しろ」


 俺も魔装術は控えるとしよう。手の内は隠すべきだ。
 幸い俺にはメイスとスリングショットがあるから、火力的には問題ない。


「分かった。気をつけるよ」

「トーマ……。敵かな?」

「多分な。何もなければそれで良し。制限つきの訓練だとでも思うとしよう。
 まぁ俺は2匹の感覚を信じるけどな」


 2人がなにを感じ取ったのかは分からないが、うちの子を信じない選択肢は無い。
 何も無いなら、それに超したことはないのだし。

 しかし刺客だった場合はきついな。
 せめて2人の魔装術取得くらいまでは来て欲しくなかったが、やはり間に合わなかったかな。


 その後、魔法もスキルも、ついでにスリングショットも封印した状態で3回ほど戦闘をこなした時、前方から会った事のないのおっさんが現れた。
 どうやら来たようだ。


「さっきから見させてもらってたが、駆け出しと犯罪奴隷にしちゃ良い腕してるじゃねぇか。
 なぁお前らっ!」


 男に続いて、更に3名のおっさんが出てくる。
 く、この空間のおっさん濃度が飽和しそうだ!


「ふわわ。つらら。さっき話したとおりに」


 小声で2匹に指示を出す。俺が呼ぶまでなんの気配もしない場所で待っていろ、という指示内容。
 2匹は返事もせずに、俺達が歩いてきた方向に消えていく。挟撃はなさそうか?


「それはどうも。
 人のことを駆け出し扱いってこたぁ先輩様かい?なんか用か?」


 警戒はしているがまだ敵意はない、くらいの態度に見えていれば良いが。


「おうおう。口の利き方がなっちゃいねぇ新人だなぁ?まぁ良い。当然用事があるんだよ。
 ちょっと、とある依頼を受けてな?依頼人はそっちの女をご所望なんだよ。
 大人しくこっちに引き渡せば、手荒なことはしねぇと約束してやるぜぇ?なぁ?」


 そう言っておっさん4人はゲラゲラと下品に笑っている。
 んー、仮にリーンを渡しても解放してくれなさそうだなぁ。渡す気ないけど。


「は、はぁ?勘弁してくれよ先輩。この女には白金貨1枚と金板2枚も払ったんだぜ?
 それとも先輩方が金払ってくれるって言うのか?」

「ガハハハハハ!そりゃあ災難だったな?
 駆け出しのてめぇが頑張って貯めた金で買った女を、目の前で犯してやっても面白そうだが、依頼人の手前、そういうわけにもいかねぇか。
 まぁ運が悪かったと思って、諦めてくれや?」

「う、嘘だろ……?
 くそ、これでも俺は7等級に上がったんだぞ!?ただでやられると思うな!」


 我ながら大根役者も良い所って感じだが、これで相手も名乗ってくれたらありがたいなぁ?


「おうおう可哀想になぁ?俺達は4人とも6等級なんだよぉぉぉ!
 7等級の雑魚が、精々頑張って抵抗してくれよぉ?ガッハハハハ!!」


 親切にも名乗ってくれた。
 6等級か。俺よりは格上だがオーサンよりは下。いけるか?

 まるでテンプレのようなチンピラ冒険者だけど、6等級ってことは魔装術は使えると見て、まず間違いないだろう。
 
 貴族を相手取ろうって時に、たとえ格上だろうが、子飼いですらないチンピラに負けるわけには行かない。


 覚悟を決めろ。
 こいつ等は『敵』だ。
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