異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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6章 波乱のヴェルトーガ

131 事件の噂

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「行方不明事件?」


 探索前に冒険者ギルドに顔を出すと、ウサギさんが不穏なことを言ってきた。


「ああ。ここ2、3日の事なんだがね。行方不明者が出てるんだ。
 行方不明者の人数はまだ少ないらしいが、足取りが全く掴めなくてね。
 なんらかの事件に巻き込まれた可能性が高いので、ギルドでも注意喚起をしてるのさ」

「迷宮で冒険者が、というわけではないんですね?」


 シンが確認する。
 そのケースなら事件とまでは行かないだろうからな。


「ああそうだ。行方不明者は現在3名。その3名全員が、迷宮の外で失踪したのはまず間違いない。
 迷宮の入り口には常に警備が敷いてあるからね。出入りが見張られてるのは冒険者なら知ってるだろ?
 勿論街の外に向かったという情報もなくてな。
 3名とも夜間に単独行動した後から消息を発っている。
 夜間は外出自体を控えるか、止むを得ない場合でも絶対に単独行動はするなよ」

「了解。忠告通りに単独行動は控えるよ」


 元々単独行動ってあんまりしてないし。


「警備隊だけじゃなく、タイデリア家の私兵まで動員されるみたいだから、間もなく解決するとは思うけどね。
 行方不明者の1人は5等級冒険者だったから、事件解決までは決して気を抜くんじゃないよ」


 オーサンと同級の冒険者が被害に遭ってると思うと、結構やばいな。


「懸賞金もかけられててね。何らかの有力情報には金板1枚。
 結果的に事件解決に繋がった情報には、白金貨1枚が贈呈されるよ。
 報告は警備隊か、いずれかのギルドにしてくれれば、すぐさま街全体で共有される。
 ああ、冒険者ギルドに来るなら私に持ってきな。兎獣人の『ピリカト』ってんだ。よろしく頼むよ」

「了解ピリカトさん。何か分かったら必ず報告するよ」

「ピリカトでいい。ギルド員と冒険者で変な遠慮はいらねぇって」


 おおう、ピリカトさん男前っすね~。女性なんだけど。

 それにしても2、3日前からってのが物凄くキナ臭いよなぁ……。
 だってハルがヴェルトーガに来たタイミングとほぼ一緒なんだもの……。

 しかしディオーヌ様は気前良くお金使うなぁ。
 私兵の動員に懸賞金か。
 俺たちに対してもケチる素振りも見せないし、あれで変態じゃなければ最高の女性なのに。

 っとお金と言えば、リンカーズで流通してる貨幣って誰が作ってるんだろ?


「ああ、トーマとハルは知らないか。
 貨幣は王国の人口に合わせて、商業の神『トレポール』様が用意してると言われていてね。
 迷宮のまぁまぁ奥の方まで行くと、稀に硬貨袋がドロップするんだよ。
 銅貨しか入ってないこともあれば、白金板まで入ってることもある、冒険者にとっては夢のあるアイテムだね。
 まぁ深階層域くらいまで行かないといけないらしいけどさ」


 なるほどねぇ。神が用意しているから偽物なんて用意しようもないし、人口に比例するという一文が、最低限の生活保障を整備する根拠になるわけか。
 実際の基準は誰にも分からないけれど、少なくとも支配者層は、気軽に虐殺とか考えるわけにはいかなくなるのだろうな。



「よし、それじゃ今日は2階層に向かうぞ。
 ハルは今日は荷物持ちは免除。その代わり少し移動を早めるからそのつもりでな。
 ふわわとつららはハルの護衛。リーンもスネークソードを使って、なるべくハルの近くで戦ってくれ」


 ハルは昨日1日で2SP獲得している。魔装術の取得条件は15SPを獲得すること。
 免疫上昇が消費1、環境適応が消費3、暗視が5に魔装術が10なので、19SPが溜まった時点で一度祝福の儀は受けさせておきたい。
 その為には夜間の探索を行わないといけないんだけど、暗視が使えた方が夜間の安全性は向上すると思うので、事件に巻き込まれないよう注意しつつ、条件をクリアしておきたいところだ。


「地面が軽くぬかるんでいるね。それに滑りそうだ。
 戦闘中は足を取られないよう気をつけないといけないね」

「移動するだけでも少し弊害がありそうだね。
 ハル。辛いときは無理せず教えてね」

「うん。ありがとうリーンセンパイ。なるべく頑張ってみるわ」


 ヴェルトーガ2階層は湿地帯エリア。
 全体的に開けた空間ではあるのだが、草原よりも生えている草の背が高く、視界が遮られる。
 加えて地面が湿っているせいで、足場も悪い。
 環境適応のおかげで、高い湿度にさほどの不快感を覚えずに済んでいるが、逆を言えばハルにはかなり辛い階層とも言えるだろう。
 出来れば今日、明日あたりには19SPまで稼いでやりたいところだ。

 所々太い木が生えていたり、草に隠れて沼地があったりと、1階層と比べて地形的な変化も大きい。
 また、開けている割に少し薄暗く感じる。
 これは迷宮の先に進んだからなのか、単にそういう暗さのエリアだからなのか、現時点では判断がつかないな。
 一応暗視スキルをONにしておく。


「1階層と比べると、冒険者の装備がかなり違いますね。
 ベイク迷宮で例えるなら、10階層くらいに潜れそうな装備を揃えている感じですか」


 トルネの言うとおり、周りの冒険者の装備が目に見えて良くなっているように感じる。
 1階層から本格的な戦闘のある迷宮だし、その分稼ぎもベイクとは全然違うからな。

 しっかり準備が整ってから先に進んでいるのかもしれない。


「トーマ。前から魔物の群れがこっちに来てるよ。
 初めて見る魔物も混ざってる」


 OK、ヴェルトーガ2階層での初戦闘だ。
 油断せずに蹴散らしていこう。
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