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6章 波乱のヴェルトーガ
141 捜査協力
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「そんじゃふわわ、つらら。 よろしく頼むよ」
人の多い場所は、既に警備隊とタイデリア家が捜索を行っているので、俺たちは空き家などの、複数人が潜伏できる建物があったり、あまり人が訪れない水路などを重点的に回ることになった。
必然的に街の外側になるので、移動範囲はなかなかに広い。
昨晩警備隊に捜査協力の話をしたのだが、リンカーズでは犬を用いた犯罪捜査などは前例がないとのことで、役に立つかは半信半疑のようだった。
俺自身、絶対の保障がある作戦ではなかったので、あまり強い説得も出来なかったのだが、ディオーヌ様の指名依頼は警備隊も聞いていたようで、情報の共有と捜査への協力を受け入れてもらえた。
実際、ヴェルトーガはかなり大きな都市なので、捜索にはいくら人手があっても足りないそうだ。
結局、香水作戦はあまり意味は無さそうだったけど、生活魔法を使って色々実験したのは単純に楽しくて、みんなにも好評だった。
この件が片付いたら、改めて色々試してみることにした。
「俺は『テッド』。 見ての通り熊の獣人だ。 街の案内は任せてくれ。
あんた等は戦えると聞いてるからな。 頼りにさせてもらうぞ」
「私も改めて自己紹介を。 タイデリア家に仕えさせて頂いている『スカー』と申します。
私は蛇の獣人ですね。 戦闘には多少の心得が御座います。 宜しくお願いします」
警備隊からテッドさん、タイデリア家からは、俺たちを案内した蛇男のスカーさんが俺たちと同行する。
「結構な距離を歩かせることになるが、よろしく頼むぜ。
お前らベイクから来たんだってな?
あそこには俺の弟が済んでてな。 俺も何度か行ったことがあるんだ」
黙ってても仕方ないので、雑談しながらの捜索である。
ふわわとつらら頼みなので、俺はあまりやることがないのだ。
「ん? ベイクで熊獣人って、もしかして街の入り口を警備してる人?」
「お、そいつだぜ。 『マッド』って言うんだ。 知り合いだったか?」
「いや、初めてベイクに入った時に対応してもらっただけだよ。
でも親切に対応してもらって、凄く助かったんだ」
「がはは! 弟が力になれたんなら良かったぜ」
世の中狭いもんだなぁ。思わぬところであの人の名前を知ってしまった。
俺たちは街の西側の、海に面したエリアの捜索を任されている。
勿論警備隊も同じエリアを捜索しているが、海側は民家も少なく範囲も広い。
身分証や、奴隷契約された人を追跡する魔法はあるらしいが、あいつらには使えない。
以前トルネが言っていた魔力を使った捜査は、切り落とした右腕を用いることで準備されているらしいが、切り落された右腕に残留している魔力量が少なくて、今のところ上手くいってないそうだ。
トルネの場合、肉親であるハロイツァの魔力を元に魔力を捜索されると、トルネの魔力は簡単に特定されてしまうために、カルネジア家から逃げられなかったんだと。
朝から歩き回って、陽天の報せが聞こえてきたけど、未だ進展なし。
軽く休憩を挟みつつ、捜索を続ける。
正直な話、出来れば俺は見つけたくないんだよなぁ。
リスクが読めないんだよなー。チート能力者が相手ってなると。
一応奇襲を警戒して複合センサーは起動してるけど、範囲は大体5メートル行ったかな?くらいしか知覚できないので、捜索には向いてないんだよねぇ。
俺に音が届けば、もうちょっと広い範囲の情報を拾えるんだけど。
超音波でもない限り、音が聞こえた時点で耳で充分なわけだから、やっぱり捜索には向いてない。
「しっかし、こんなチビどもが本当にアテになるのか?」
テッドさんは馬鹿にしているというよりは、純粋に疑問に思っているように聞こえる。
「まぁ絶対の自信はないけど、信用はしてるよ。
俺たちのパーティメンバーでは、この2匹が敵に気付くの一番早いからさ」
「へぇ? お前さん、こいつらも一緒に迷宮に連れてってるのか。
聞いた通り、なかなかの変わりモンだな」
「うーん。 テッド、私達ってもしかして信用されてないー?
だから同行は2人だけで、こんな遠いところを歩かされてるのー?」
リーンセンパイが相変わらず容赦ない。
もうちょっと歯に布着せて喋って貰えません?
「いや、むしろ信用されてるんじゃねぇかなぁ。 ベンベム隊長はこっちの西側の範囲が本命だと思ってるっぽいしよ。
本命の捜索を任されてるのに、同行は俺ともう1人だけって事は、戦闘面でも人間性でも信用されてるって事だと思うぜ。
相手とグルだとか思われてっと、もう3、4人くらいは同行させっだろ。
勿論スカーさんが居るから、戦力面での人手は必要ないと判断された部分もでかいだろうがな」
「恐縮です。
捜索ではお力になれない分、戦闘ではタイデリアの名に恥じないよう貢献させていただく所存です」
やっぱめちゃくちゃ強いんだろうな。
ひょっとしたら、カルマさんクラスなのかもしれない。
カルマさんもスカーさんも、今の俺に戦える相手ではないと思う。全く底が見えないからなぁ。
つくづく、ディオーヌ様と対立せずに済んで良かったわ。
全然関係ないところから別の問題が発生したのは、心底うんざりしてるけど。
がんばる2匹の姿に癒されつつ捜索を続けたが、特に進展はなかった。
間もなく日も暮れる。
流石に初日に進展があるほど、虫のいい話はないか。
捜査協力の間は迷宮にいけないから、SPもお金も稼げないんだよなぁ。
余裕はあるし、滞在費もタイデリア持ちだから、贅沢なこと言ってるとは思うけどさ。
んー、でも全員暗視持ちのこっちと、恐らく誰も暗視持ってない向こうという条件で考えると、むしろ夜に接触できた方が有利に戦えるか?
まぁその辺はみんなと、あと警備隊とも相談してからになるかな。
「わんっ!」
とか考えてたら、つららさんが一声あげて、ある方向に歩き出した。
まじかー。まじで見つかっちゃったかー。
チート能力者を敵に回すとか、マジで戦いたくないんだけどなぁ……。
人の多い場所は、既に警備隊とタイデリア家が捜索を行っているので、俺たちは空き家などの、複数人が潜伏できる建物があったり、あまり人が訪れない水路などを重点的に回ることになった。
必然的に街の外側になるので、移動範囲はなかなかに広い。
昨晩警備隊に捜査協力の話をしたのだが、リンカーズでは犬を用いた犯罪捜査などは前例がないとのことで、役に立つかは半信半疑のようだった。
俺自身、絶対の保障がある作戦ではなかったので、あまり強い説得も出来なかったのだが、ディオーヌ様の指名依頼は警備隊も聞いていたようで、情報の共有と捜査への協力を受け入れてもらえた。
実際、ヴェルトーガはかなり大きな都市なので、捜索にはいくら人手があっても足りないそうだ。
結局、香水作戦はあまり意味は無さそうだったけど、生活魔法を使って色々実験したのは単純に楽しくて、みんなにも好評だった。
この件が片付いたら、改めて色々試してみることにした。
「俺は『テッド』。 見ての通り熊の獣人だ。 街の案内は任せてくれ。
あんた等は戦えると聞いてるからな。 頼りにさせてもらうぞ」
「私も改めて自己紹介を。 タイデリア家に仕えさせて頂いている『スカー』と申します。
私は蛇の獣人ですね。 戦闘には多少の心得が御座います。 宜しくお願いします」
警備隊からテッドさん、タイデリア家からは、俺たちを案内した蛇男のスカーさんが俺たちと同行する。
「結構な距離を歩かせることになるが、よろしく頼むぜ。
お前らベイクから来たんだってな?
あそこには俺の弟が済んでてな。 俺も何度か行ったことがあるんだ」
黙ってても仕方ないので、雑談しながらの捜索である。
ふわわとつらら頼みなので、俺はあまりやることがないのだ。
「ん? ベイクで熊獣人って、もしかして街の入り口を警備してる人?」
「お、そいつだぜ。 『マッド』って言うんだ。 知り合いだったか?」
「いや、初めてベイクに入った時に対応してもらっただけだよ。
でも親切に対応してもらって、凄く助かったんだ」
「がはは! 弟が力になれたんなら良かったぜ」
世の中狭いもんだなぁ。思わぬところであの人の名前を知ってしまった。
俺たちは街の西側の、海に面したエリアの捜索を任されている。
勿論警備隊も同じエリアを捜索しているが、海側は民家も少なく範囲も広い。
身分証や、奴隷契約された人を追跡する魔法はあるらしいが、あいつらには使えない。
以前トルネが言っていた魔力を使った捜査は、切り落とした右腕を用いることで準備されているらしいが、切り落された右腕に残留している魔力量が少なくて、今のところ上手くいってないそうだ。
トルネの場合、肉親であるハロイツァの魔力を元に魔力を捜索されると、トルネの魔力は簡単に特定されてしまうために、カルネジア家から逃げられなかったんだと。
朝から歩き回って、陽天の報せが聞こえてきたけど、未だ進展なし。
軽く休憩を挟みつつ、捜索を続ける。
正直な話、出来れば俺は見つけたくないんだよなぁ。
リスクが読めないんだよなー。チート能力者が相手ってなると。
一応奇襲を警戒して複合センサーは起動してるけど、範囲は大体5メートル行ったかな?くらいしか知覚できないので、捜索には向いてないんだよねぇ。
俺に音が届けば、もうちょっと広い範囲の情報を拾えるんだけど。
超音波でもない限り、音が聞こえた時点で耳で充分なわけだから、やっぱり捜索には向いてない。
「しっかし、こんなチビどもが本当にアテになるのか?」
テッドさんは馬鹿にしているというよりは、純粋に疑問に思っているように聞こえる。
「まぁ絶対の自信はないけど、信用はしてるよ。
俺たちのパーティメンバーでは、この2匹が敵に気付くの一番早いからさ」
「へぇ? お前さん、こいつらも一緒に迷宮に連れてってるのか。
聞いた通り、なかなかの変わりモンだな」
「うーん。 テッド、私達ってもしかして信用されてないー?
だから同行は2人だけで、こんな遠いところを歩かされてるのー?」
リーンセンパイが相変わらず容赦ない。
もうちょっと歯に布着せて喋って貰えません?
「いや、むしろ信用されてるんじゃねぇかなぁ。 ベンベム隊長はこっちの西側の範囲が本命だと思ってるっぽいしよ。
本命の捜索を任されてるのに、同行は俺ともう1人だけって事は、戦闘面でも人間性でも信用されてるって事だと思うぜ。
相手とグルだとか思われてっと、もう3、4人くらいは同行させっだろ。
勿論スカーさんが居るから、戦力面での人手は必要ないと判断された部分もでかいだろうがな」
「恐縮です。
捜索ではお力になれない分、戦闘ではタイデリアの名に恥じないよう貢献させていただく所存です」
やっぱめちゃくちゃ強いんだろうな。
ひょっとしたら、カルマさんクラスなのかもしれない。
カルマさんもスカーさんも、今の俺に戦える相手ではないと思う。全く底が見えないからなぁ。
つくづく、ディオーヌ様と対立せずに済んで良かったわ。
全然関係ないところから別の問題が発生したのは、心底うんざりしてるけど。
がんばる2匹の姿に癒されつつ捜索を続けたが、特に進展はなかった。
間もなく日も暮れる。
流石に初日に進展があるほど、虫のいい話はないか。
捜査協力の間は迷宮にいけないから、SPもお金も稼げないんだよなぁ。
余裕はあるし、滞在費もタイデリア持ちだから、贅沢なこと言ってるとは思うけどさ。
んー、でも全員暗視持ちのこっちと、恐らく誰も暗視持ってない向こうという条件で考えると、むしろ夜に接触できた方が有利に戦えるか?
まぁその辺はみんなと、あと警備隊とも相談してからになるかな。
「わんっ!」
とか考えてたら、つららさんが一声あげて、ある方向に歩き出した。
まじかー。まじで見つかっちゃったかー。
チート能力者を敵に回すとか、マジで戦いたくないんだけどなぁ……。
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