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6章 波乱のヴェルトーガ
142 異風の旋律の初依頼① 発見
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つららは確信があるように、海の広がる方へ進んでいく。
う~ん、せめて先手取られるのは避けたい。
「ちなみに、これで犯人達や行方不明者を発見したとして、他の警備隊の人とか呼んで来る事って出来る?」
「余裕があればな。
相手の拠点に人が居ない場合とか、相手に抗戦の意志がなければ可能だろうが、今回の相手の話を聞く限り、接触したら即戦闘は覚悟しておくべきだろうな。
つまりは、このメンバーで対処するってこった。 腹括るんだな」
テッドさんはチート能力者に会ってないから、そんなこと言えるんだよぅ。
まさに今、この瞬間に殺される可能性だって、普通にあるんだもんなぁ。
マジで接触したくねぇ。したくねぇけど、テッドさんの言うとおり、腹括るしかないかぁ……。
前回の様に、後れを取るわけには行かない。
覚悟を決めろ。転移者を殺す覚悟を。
ヴェルトーガでは、水路や船は完全に運搬用で、漁業はほぼ行われてない。
理由は簡単。海には魔物が出るから。
そして、海の向こうに交易可能な相手がいるとは、考えられていないから。
なので港なんて整備されてないし、海に近付けば近づくほどに、人は居ないし寂れていく。
魔物に対する警戒なのか、捜索協力中にも何回か警備隊の人とすれ違いはしたが、基本的には殆ど人の往来はない。
まぁ、土地勘がなくても、分かりやすく人が居ない場所なのだ。ヴェルトーガの海側ってのは。潜伏には向いてるだろうなぁ……。
周囲の警備隊の目は、転移魔法でいくらでも掻い潜れるわけだし。
前を行くつららの後を追っているのだが、今のところ建物らしきものは見えない。
「つららの反応からして、何事もないとは考えにくい。
この先、いつ襲われても不思議じゃないってことだけは、念頭においといてくれ」
「わかってる。 前回の例もあるしね。
僕たちの真ん中に、いきなり現れることも覚悟しておくよ」
「トーマ。 相手はあまり多くないと思うって言ってたけど、実際どのくらい居るかな?」
「そう、だな……。 最悪の想定として、相手は10人いると仮定しようか。
10人は居ないと思うけど、相手の人数が確定するまでは、10人いる想定で警戒しよう」
「了解です。 あんな強力な能力者が10人も居るとしたら、ディオーヌ様が言っていた、ヴェルトーガの壊滅という想定も、あながち大袈裟ではないのかもしれませんね」
「うん。 実際、チート能力ってのは異常な能力が多いんだ。 どんな能力を持っているかも、全く分かってないし。
流石に、時間を止める能力とか、ないよね……?」
無いとは思うけど、無いと言い切る事は出来ないんだよなぁ。
「時間を止めるだぁ? そんなこと出来たら、神様もびっくりじゃねぇか!
1等級どころか神殺しなんて、ただの警備兵の俺には手に余らぁ」
「……あまりに非常識で荒唐無稽な話では御座いますが、ディオーヌ様は、みなさんの話は無視すべきでは無いと仰っておりました。
……杞憂であることを、祈りたいところですね」
激しく同意するわ。杞憂であってくれー。
「実際に接触する前に、最後の確認だ。
もしも戦闘になってしまったら捕縛は諦めて、確実かつ迅速に、相手を殺すこと。
戦闘の意思が無ければ、投降を促したいところだけどな。
長引かせるとやばい。回復持ちもいると考えるべきだ」
「うん。 相手の能力次第では、一瞬で全滅することもありえるもんね……」
「ハルは無理しなくていい。 戦闘は僕たちが担う部分だから、自分の身を守ることだけ考えて」
「うん。 私が戦ってもみんなの邪魔にしかならないと思うし」
ハルは魔物との戦闘にすら、まだ慣れてないからな。
日本人を殺せと言っても、まず無理だろう。
俺はもう人殺しだからな。魔物だろうが転移者だろうが、敵なら殺す。確実に。
つららを追って進んでいくと、どうやら水路が海に流れ込む、いわゆる河口が見えてきた。
「この辺に、人の隠れられる場所なんてあったか……?」
テッドに心当たりは無いようだな。
ぶっちゃけ外してくれても良いんだけど、つららの動きに迷いが無いんだよなー。
複合センサーは起動して、いつ異常があっても気付けるようにしておく。
認識阻害系の能力者が居ないことを祈りたい。
「わんっ」
つららが短く鳴き声をあげる。
ふむ?
つららの前方には水路しかない。
人が潜伏出来そうな建物とかは見当たらないな。
ハズレであったなら逆に嬉しいんだけど。
ヴェルトーガは海や川からの魔物対策として、かなり高い堤防が設けられている事は観光のときにも聞いたし、実際目の前の水路も、水面まではかなりの距離がある。
「ハル。 とりあえずつららとふわわと一緒に居てくれ。
つららを信じるなら、この付近に何かありそうだ」
俺には水路と海しか見当たらないわけだが。
「この辺ったってなぁ。 俺には人が居るようには見えねぇけどなぁ」
テッドは、水路の落下防止用だと思われる柵から身を乗り出して、水面を覗くように周囲を確認している。
「……なんっだ、ありゃあ……?」
あー当たりっすか?
なんか見つけちゃいました?
俺もテッドに倣って、水路を確認する。
水面から5メートルくらいの高さの場所に、堤防にデカイ穴が開けられている。
そうかー、そうきたかー。
既にある家屋を利用するんじゃなくて、チート能力を使って、1から拠点作っちゃったわけかー。
そりゃ警備隊の人たち、見つけらんねえわ。
「へぇ? そっちから出向いてくるとは、探す手間が省けたぜぇ」
穴からではなく、背後から声をがする。
振り返ると、あの晩襲ってきた男を含めて、4人の男が立っていた。
やっぱ転移って反則だよなぁ。
奇襲してこなかったことだけは感謝しておくよ。
う~ん、せめて先手取られるのは避けたい。
「ちなみに、これで犯人達や行方不明者を発見したとして、他の警備隊の人とか呼んで来る事って出来る?」
「余裕があればな。
相手の拠点に人が居ない場合とか、相手に抗戦の意志がなければ可能だろうが、今回の相手の話を聞く限り、接触したら即戦闘は覚悟しておくべきだろうな。
つまりは、このメンバーで対処するってこった。 腹括るんだな」
テッドさんはチート能力者に会ってないから、そんなこと言えるんだよぅ。
まさに今、この瞬間に殺される可能性だって、普通にあるんだもんなぁ。
マジで接触したくねぇ。したくねぇけど、テッドさんの言うとおり、腹括るしかないかぁ……。
前回の様に、後れを取るわけには行かない。
覚悟を決めろ。転移者を殺す覚悟を。
ヴェルトーガでは、水路や船は完全に運搬用で、漁業はほぼ行われてない。
理由は簡単。海には魔物が出るから。
そして、海の向こうに交易可能な相手がいるとは、考えられていないから。
なので港なんて整備されてないし、海に近付けば近づくほどに、人は居ないし寂れていく。
魔物に対する警戒なのか、捜索協力中にも何回か警備隊の人とすれ違いはしたが、基本的には殆ど人の往来はない。
まぁ、土地勘がなくても、分かりやすく人が居ない場所なのだ。ヴェルトーガの海側ってのは。潜伏には向いてるだろうなぁ……。
周囲の警備隊の目は、転移魔法でいくらでも掻い潜れるわけだし。
前を行くつららの後を追っているのだが、今のところ建物らしきものは見えない。
「つららの反応からして、何事もないとは考えにくい。
この先、いつ襲われても不思議じゃないってことだけは、念頭においといてくれ」
「わかってる。 前回の例もあるしね。
僕たちの真ん中に、いきなり現れることも覚悟しておくよ」
「トーマ。 相手はあまり多くないと思うって言ってたけど、実際どのくらい居るかな?」
「そう、だな……。 最悪の想定として、相手は10人いると仮定しようか。
10人は居ないと思うけど、相手の人数が確定するまでは、10人いる想定で警戒しよう」
「了解です。 あんな強力な能力者が10人も居るとしたら、ディオーヌ様が言っていた、ヴェルトーガの壊滅という想定も、あながち大袈裟ではないのかもしれませんね」
「うん。 実際、チート能力ってのは異常な能力が多いんだ。 どんな能力を持っているかも、全く分かってないし。
流石に、時間を止める能力とか、ないよね……?」
無いとは思うけど、無いと言い切る事は出来ないんだよなぁ。
「時間を止めるだぁ? そんなこと出来たら、神様もびっくりじゃねぇか!
1等級どころか神殺しなんて、ただの警備兵の俺には手に余らぁ」
「……あまりに非常識で荒唐無稽な話では御座いますが、ディオーヌ様は、みなさんの話は無視すべきでは無いと仰っておりました。
……杞憂であることを、祈りたいところですね」
激しく同意するわ。杞憂であってくれー。
「実際に接触する前に、最後の確認だ。
もしも戦闘になってしまったら捕縛は諦めて、確実かつ迅速に、相手を殺すこと。
戦闘の意思が無ければ、投降を促したいところだけどな。
長引かせるとやばい。回復持ちもいると考えるべきだ」
「うん。 相手の能力次第では、一瞬で全滅することもありえるもんね……」
「ハルは無理しなくていい。 戦闘は僕たちが担う部分だから、自分の身を守ることだけ考えて」
「うん。 私が戦ってもみんなの邪魔にしかならないと思うし」
ハルは魔物との戦闘にすら、まだ慣れてないからな。
日本人を殺せと言っても、まず無理だろう。
俺はもう人殺しだからな。魔物だろうが転移者だろうが、敵なら殺す。確実に。
つららを追って進んでいくと、どうやら水路が海に流れ込む、いわゆる河口が見えてきた。
「この辺に、人の隠れられる場所なんてあったか……?」
テッドに心当たりは無いようだな。
ぶっちゃけ外してくれても良いんだけど、つららの動きに迷いが無いんだよなー。
複合センサーは起動して、いつ異常があっても気付けるようにしておく。
認識阻害系の能力者が居ないことを祈りたい。
「わんっ」
つららが短く鳴き声をあげる。
ふむ?
つららの前方には水路しかない。
人が潜伏出来そうな建物とかは見当たらないな。
ハズレであったなら逆に嬉しいんだけど。
ヴェルトーガは海や川からの魔物対策として、かなり高い堤防が設けられている事は観光のときにも聞いたし、実際目の前の水路も、水面まではかなりの距離がある。
「ハル。 とりあえずつららとふわわと一緒に居てくれ。
つららを信じるなら、この付近に何かありそうだ」
俺には水路と海しか見当たらないわけだが。
「この辺ったってなぁ。 俺には人が居るようには見えねぇけどなぁ」
テッドは、水路の落下防止用だと思われる柵から身を乗り出して、水面を覗くように周囲を確認している。
「……なんっだ、ありゃあ……?」
あー当たりっすか?
なんか見つけちゃいました?
俺もテッドに倣って、水路を確認する。
水面から5メートルくらいの高さの場所に、堤防にデカイ穴が開けられている。
そうかー、そうきたかー。
既にある家屋を利用するんじゃなくて、チート能力を使って、1から拠点作っちゃったわけかー。
そりゃ警備隊の人たち、見つけらんねえわ。
「へぇ? そっちから出向いてくるとは、探す手間が省けたぜぇ」
穴からではなく、背後から声をがする。
振り返ると、あの晩襲ってきた男を含めて、4人の男が立っていた。
やっぱ転移って反則だよなぁ。
奇襲してこなかったことだけは感謝しておくよ。
応援ありがとうございます!
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