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6章 波乱のヴェルトーガ
150 依頼達成
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あーでもないこーでも無いと、全然纏まらずに会議は長引いた。
大半の者はチート能力そのものに懐疑的だし、異邦人の存在にも懐疑的だからな。そりゃあ話も進みませんて。
アリスはちょいちょい退出を許されたし、ディオーヌ様は会議だけに出席していられるほど暇な人ではないということで、会議室は男100%のむっさいむっさい空間になってしまった。しかも年齢高め、戦士率高めである。
そして俺は、異邦人でありながらリヴァーブに来て100日以上経っているため、双方の常識に明るく、実際にチート能力者と戦闘し勝利を収めた人間として、会議からの退出を一切許されなかった。
ディオーヌ様が戻ってくる度にツヤッツヤになってるのが、すっげぇ気になるんですけど?ほんとにこの人って忙しい方なんですか?ねぇ?
小休憩を挟みながら、昼も夜も構わずに会議は続けられ、ようやく王家にあげる報告書がまとまった。
今はただ、何も考えずにゆっくり休みたいよぅ……。
会議室にはむさい男達の屍と、ツヤッツヤのディオーヌ様の姿があった。まぁ、この人実際タフなんだろうな。何度か休憩を挟んだとはいえ、全然疲労が見えないのは素直に凄い。
「みなさんご苦労さまでした。今回の会議はこれにて終了いたします。帰りは馬車を用意してありますので、申し付けてくださいね。
今回はヴェルトーガのためにお集まり頂き、感謝申し上げますわ。これからもヴェルトーガの平和と繁栄のために、皆様の協力に期待します」
終ったー!寝るぞー!腹も減ってるけど、とりあえず寝るぞー!
「ああ、トーマさんは少しお待ちください。まだ用が御座います」
「ええええ、まだ帰れないんですか?俺」
やべ、露骨に嫌な顔しちゃった。気を抜いたタイミングだから素が出てしまった。
「お時間は取らせませんのでご安心を。
まずは、これにて正式に依頼達成とさせて頂きますわ。冒険者ギルドには当家から報告しておきます。それで成功報酬ですが、異風の旋律のメンバー1人当たりに白金貨10枚。合計白金板5枚を支払います。
そして空間魔法のスクロールですが、当家が現在確保してある空間魔法を、全種類1枚ずつ進呈しましょう。
具体的には『長距離移動』『跳躍』『収納』『短距離転移』の4枚です。これは既に用意してありますので、どうぞお持ち帰りになって」
控えていたスカーさんに、4枚のスクロールを渡される。
え、まじ?スキップもすげーんだけど、ストレージ!?アイテムボックスあるの!?そしてジャンプとな?ゲートとどう違うんだろ?
「有り難く貰っておきますけど、報酬多すぎません?空間魔法のスクロールなんて、白金板積んでも買えないって聞いたことありますよ?貰えるお金だけでも凄まじい額ですし、いくらなんでも払いすぎでしょ」
「あら、報酬が少なくて文句を言われるのなら分かりますが、多すぎだろうと貰う側に言われるとは思いませんでしたわ。それだけ私たちは、今回の件を重く見ているとお考え下さい。
1等級犯罪者、しかも集団でしたからね。懸賞金と考えれば、決して法外な額とは思いません。被害が出る前に早期解決できたことを考えるなら、むしろ安く済んだと言えるくらいです。
スクロールに関しても、それだけ私が皆さんに感謝していると思って頂きたいですわ」
1等級の犯罪者ってそんなにやべぇのか。絶対会わんとこ。
「アリスと被害者の今後については、我がタイデリア家が責任を持ちましょう。ただ今回の件で異邦人による犯罪が、今後も頻発する可能性が示唆されました。勿論情報さえ共有できれば、各地を治める者が対応して鎮圧する予定ではあります。
ですが、もしその時の対応者の手に余る場合、異風の旋律の皆さんには次の機会も協力をお願いする可能性があります。なので皆さんには空間魔法を覚えて頂いて、身軽に移動できるようにしておいて欲しいのですよね」
「ぶっちゃけてきましたねぇ……。一応、断る自由はありますよね?」
「勿論です。が、皆さんに連絡が行った場合は、その時の対応が既に失敗している場合が考えられます。
現地だけではなく、リヴァーブ王国全てを巻き込んだ危機的状況になりえますから、どうか協力して頂けると有り難いですわね。シンくんの顔も見れますし」
「最後のは聞かなかったことにして、1つだけ条件をつけさせて下さい。俺たちへの協力要請は、タイデリア家を通して欲しいんです。タイデリア家を通さない、他の貴族家や有力者の要請は、全て例外なく拒否させて頂きたいんですけど。呑んでもらえますかね?」
「あら?トーマさんは当家を随分買ってくださるのですね。ありがとうございます。
一応了承出来ますけど、他の家から要請が行くこと自体は止められないと思いますわよ?結局自分たちで断らないといけないと思いますが、それでも宜しければ」
「充分です。ありがとうございます。
以前接触のあったカルネジア家には良い印象が全く無くて。出来るだけ、貴族や有力者とは関係を持ちたくないなと。ディオーヌ様とはここまで関わりましたから。今更ですね」
「あら?トーマさんこそ、とても率直な物言いですこと。
何も無ければ私たちはもう、お会いする事はないかもしれません。ですが私は、またお会いする機会があると思っております。トーマさんも同じでしょう?」
「まぁ……。そう思ったから、2日間もむさ苦しい部屋に付き合ったわけですしね。報酬はありがたく頂いておきます。
俺も、ヴェルトーガとリヴァーブ王国が今後も平和であることを、心から祈ってますよ」
「ええ。私も同感です。それではトーマさん、ごきげんよう。今回は、本当にご苦労様でした」
ディオーヌ様は流れるように自然な動作で、左足を少し後ろ引き、左手でスカートを少し持ち上げ、右手は胸に、そして軽く膝を曲げて微笑んだ。
あまりの美しさに、思わず見蕩れてしまう。
カーテシー。この世界にもあったのか。
カーテシーを終えると、ディオーヌ様は屋敷の奥に去っていった。
今のが指名依頼の報酬だったのかな。
優雅で美しい、高貴な者だけが出来るであろう、本物のカーテシー。
ディオーヌ様。出来れば性癖を知らないままで付き合いたかったっすよ……。
大半の者はチート能力そのものに懐疑的だし、異邦人の存在にも懐疑的だからな。そりゃあ話も進みませんて。
アリスはちょいちょい退出を許されたし、ディオーヌ様は会議だけに出席していられるほど暇な人ではないということで、会議室は男100%のむっさいむっさい空間になってしまった。しかも年齢高め、戦士率高めである。
そして俺は、異邦人でありながらリヴァーブに来て100日以上経っているため、双方の常識に明るく、実際にチート能力者と戦闘し勝利を収めた人間として、会議からの退出を一切許されなかった。
ディオーヌ様が戻ってくる度にツヤッツヤになってるのが、すっげぇ気になるんですけど?ほんとにこの人って忙しい方なんですか?ねぇ?
小休憩を挟みながら、昼も夜も構わずに会議は続けられ、ようやく王家にあげる報告書がまとまった。
今はただ、何も考えずにゆっくり休みたいよぅ……。
会議室にはむさい男達の屍と、ツヤッツヤのディオーヌ様の姿があった。まぁ、この人実際タフなんだろうな。何度か休憩を挟んだとはいえ、全然疲労が見えないのは素直に凄い。
「みなさんご苦労さまでした。今回の会議はこれにて終了いたします。帰りは馬車を用意してありますので、申し付けてくださいね。
今回はヴェルトーガのためにお集まり頂き、感謝申し上げますわ。これからもヴェルトーガの平和と繁栄のために、皆様の協力に期待します」
終ったー!寝るぞー!腹も減ってるけど、とりあえず寝るぞー!
「ああ、トーマさんは少しお待ちください。まだ用が御座います」
「ええええ、まだ帰れないんですか?俺」
やべ、露骨に嫌な顔しちゃった。気を抜いたタイミングだから素が出てしまった。
「お時間は取らせませんのでご安心を。
まずは、これにて正式に依頼達成とさせて頂きますわ。冒険者ギルドには当家から報告しておきます。それで成功報酬ですが、異風の旋律のメンバー1人当たりに白金貨10枚。合計白金板5枚を支払います。
そして空間魔法のスクロールですが、当家が現在確保してある空間魔法を、全種類1枚ずつ進呈しましょう。
具体的には『長距離移動』『跳躍』『収納』『短距離転移』の4枚です。これは既に用意してありますので、どうぞお持ち帰りになって」
控えていたスカーさんに、4枚のスクロールを渡される。
え、まじ?スキップもすげーんだけど、ストレージ!?アイテムボックスあるの!?そしてジャンプとな?ゲートとどう違うんだろ?
「有り難く貰っておきますけど、報酬多すぎません?空間魔法のスクロールなんて、白金板積んでも買えないって聞いたことありますよ?貰えるお金だけでも凄まじい額ですし、いくらなんでも払いすぎでしょ」
「あら、報酬が少なくて文句を言われるのなら分かりますが、多すぎだろうと貰う側に言われるとは思いませんでしたわ。それだけ私たちは、今回の件を重く見ているとお考え下さい。
1等級犯罪者、しかも集団でしたからね。懸賞金と考えれば、決して法外な額とは思いません。被害が出る前に早期解決できたことを考えるなら、むしろ安く済んだと言えるくらいです。
スクロールに関しても、それだけ私が皆さんに感謝していると思って頂きたいですわ」
1等級の犯罪者ってそんなにやべぇのか。絶対会わんとこ。
「アリスと被害者の今後については、我がタイデリア家が責任を持ちましょう。ただ今回の件で異邦人による犯罪が、今後も頻発する可能性が示唆されました。勿論情報さえ共有できれば、各地を治める者が対応して鎮圧する予定ではあります。
ですが、もしその時の対応者の手に余る場合、異風の旋律の皆さんには次の機会も協力をお願いする可能性があります。なので皆さんには空間魔法を覚えて頂いて、身軽に移動できるようにしておいて欲しいのですよね」
「ぶっちゃけてきましたねぇ……。一応、断る自由はありますよね?」
「勿論です。が、皆さんに連絡が行った場合は、その時の対応が既に失敗している場合が考えられます。
現地だけではなく、リヴァーブ王国全てを巻き込んだ危機的状況になりえますから、どうか協力して頂けると有り難いですわね。シンくんの顔も見れますし」
「最後のは聞かなかったことにして、1つだけ条件をつけさせて下さい。俺たちへの協力要請は、タイデリア家を通して欲しいんです。タイデリア家を通さない、他の貴族家や有力者の要請は、全て例外なく拒否させて頂きたいんですけど。呑んでもらえますかね?」
「あら?トーマさんは当家を随分買ってくださるのですね。ありがとうございます。
一応了承出来ますけど、他の家から要請が行くこと自体は止められないと思いますわよ?結局自分たちで断らないといけないと思いますが、それでも宜しければ」
「充分です。ありがとうございます。
以前接触のあったカルネジア家には良い印象が全く無くて。出来るだけ、貴族や有力者とは関係を持ちたくないなと。ディオーヌ様とはここまで関わりましたから。今更ですね」
「あら?トーマさんこそ、とても率直な物言いですこと。
何も無ければ私たちはもう、お会いする事はないかもしれません。ですが私は、またお会いする機会があると思っております。トーマさんも同じでしょう?」
「まぁ……。そう思ったから、2日間もむさ苦しい部屋に付き合ったわけですしね。報酬はありがたく頂いておきます。
俺も、ヴェルトーガとリヴァーブ王国が今後も平和であることを、心から祈ってますよ」
「ええ。私も同感です。それではトーマさん、ごきげんよう。今回は、本当にご苦労様でした」
ディオーヌ様は流れるように自然な動作で、左足を少し後ろ引き、左手でスカートを少し持ち上げ、右手は胸に、そして軽く膝を曲げて微笑んだ。
あまりの美しさに、思わず見蕩れてしまう。
カーテシー。この世界にもあったのか。
カーテシーを終えると、ディオーヌ様は屋敷の奥に去っていった。
今のが指名依頼の報酬だったのかな。
優雅で美しい、高貴な者だけが出来るであろう、本物のカーテシー。
ディオーヌ様。出来れば性癖を知らないままで付き合いたかったっすよ……。
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