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7章 更なる強さを求めて
159 過保護
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「初探索で5階層も進んでくるとか、お前頭おかしいんじゃねぇの?トーマが6等級って絶対嘘だわ」
「嘘じゃねぇっつの。なんなら身分証見ますぅ?6等級に上がったのもつい先日ですけどー?」
「ああっと、6等級と言えば、シン、リーン、トルネの3人は6等級になったから身分証貸してくれ。ハルも8等級に昇級だから身分証くれ。
お前らはトーマを見習わずにどんどん昇級試験受けて欲しい。トーマはもう諦めた」
今回の探索で洗浄のスクロールが出てハルがめちゃくちゃ喜んでた。気持ちは分からないでもない。この世界ではある意味一番お世話になるもんね、洗浄魔法って。
「そんじゃオーサン。カンパニーの説明頼むよ。出来ればシンは付き合って。女性陣はハルに稽古つけておいてくんないかな?弓の練習でもいいけど。そこは任せるから」
「はーい。先輩の私が見てあげるねー。ハルに階層攻略のペースが合ってないから、ハルは当分訓練で技術を磨いてこー」
「うん。リーンセンパイ。ご指導宜しくね」
「では行きましょうか。弓も基本くらいなら私でも解説できますし、焦らず行きましょう」
練習用の弓と矢を渡す。近接戦闘は厳しくても、遠距離攻撃が出来るようになれば、今の階層でも援護は出来るようになるからな。と言っても進むペース速すぎて厳しいか。
「それで?カンパニー立ち上げるのは構わないんだけどよ。お前は何がしたいんだ?わざわざカンパニー立ち上げないと出来ないことなのか?」
「俺がしたいのは貧困層の引き上げだよ。具体的にはオーサンの訓練指導みたいなことを広く行って、冒険者全体の生活水準と戦闘力の水準を上げたいんだよね。
いつかのポーターの子供達みたいなことを、もっと大規模にやりたいって感じかなぁ。
そういえばあの時の子供達ってどうなってんの?元気してるん?」
「ああ、あいつらは3階層で手堅く稼いでるみたいだな。装備も良くなったし安定してるな」
「はぁ?なんでまだ3階層にいるんだよ。あの時の18人ならもう暗視も魔装術も取れるだろ?スキル神殿の利用料にも充分な報酬だったはずなのに、なんで未だに3階層なんて回ってんだよ?オーサンの指導だって受けてるはずだろ?」
「いやいや、トーマが異常なペースで進んでるだけで、あいつらの年齢で3階層を安定して回ってるのは充分優秀なんだよ。あまり無理して危険な目に遭わせるわけにもいかんだろ」
「リーンは11歳だけど、うちの立派な戦力だ。オーサン、子供だからって甘やかしてんじゃねぇ。お前の指導を3回以上受けてて、まだ3階層探索させてるとか舐めすぎだろ。
俺が異常だ?違うんだよ。他の冒険者がサボりすぎなんだよ。前例とか常識とかくっだらねぇ。だから俺がカンパニーなんか作らなきゃならねえんだろうが!」
馬鹿馬鹿しい。戦える力もあって向上心もあるのに、この世界の常識が邪魔ばかりしやがってる。先天スキルもない異邦人の俺ですら、スキルなしで5階層をソロで回ってたってのに。
「オーサンよ。お前は知ってるだろ?俺が何の力も持たずに迷宮に入って、1人でも戦い続けてたのをよぉ?
人数も居て、金もあって、指導も受けてるのに、ガキだからってだけで、いつまで3階層を周らせておく気だ。過保護もいい加減にしろ。新人が育たないのは貧困のせいだけじゃねぇ。周りが甘やかしすぎるからだバーカ」
「……好き勝手いってくれるじゃねぇかよぉ?それでガキ共が死んだら、テメェに責任が取れるってのか、あぁ!?」
「だからそれが勘違いだって言ってんだろうが!なんでお前が他人の人生の責任まで負う必要があるんだよ!?あいつらの不始末の責任は、あいつらが取れば良いんだろうが!
思い上がんのもいい加減にしとけよオーサン。あいつらはお前の子供じゃねぇし、お前もあいつらの保護者じゃねぇんだ。迷宮に潜る危険性はあいつらだって分かってて潜ってんだよ。お前がやるべきはあいつらの手を引いて道を示すことだろうが。足引っ張ってどうすんだよオイ?」
「……俺が、俺がしてることが、あいつらの足を引っ張ってるだけだと?」
オーサンの考えが全部間違ってるわけじゃない。こいつのお節介に救われた人は多いはずだ。俺自身、オーサンのお節介がなければ死んでいたかもしれない。
でもこれからは状況が変わる。現役の5等級冒険者が簡単に制圧されるような能力者が、際限なく送られてくる可能性すらある。
「ヴェルトーガで色々話し合ったから、恐らくそのうちベイクにも情報共有されるとは思うんだけどな。今回俺たちが解決した事件の犯人は、1度も魔物と戦ったことがないのに1等級犯罪者と認定された、正真正銘の化け物だったんだよ。
そしてこれからは、そんな奴らがどんどん現れる可能性が高いんだ。誰もが今までのままじゃいられないんだよ。生きていくためにはな」
「……正直、トーマの話はよくわからねぇ。よくわからねぇけど、これからこの国に何かが起こりそうだって事はわかった。その時までに力をつけておかないと、結局はあいつらが死ぬかもしれないって、そう言いたいんだよな……?」
「そうだ。そうなった時に自分を責めたって何の意味もねぇんだよ。そうしないように若輩者を導くのが俺たちおっさんの役目だろうが。
守ることと育てることは同じじゃねぇ。見守るだけじゃ守れねぇんだよ。いくら子供でもあいつらだって冒険者だ。勝手な言い分であいつらの自立を邪魔するな」
オーサンをせめても仕方ないのは分かってはいるんだが、あの18人に未だに3階層探索させてる件だけは指摘しておかないと駄目だ。3日間で金貨15枚も貰っておいて、経験値だって手に入れておきながら、指導訓練も何度も受けておきながら、未だ3階層は流石に馬鹿馬鹿しすぎる。中学生に四則計算教えてるようなもんだろ。
「国も大人も、誰も人を育てようとしてないから、仕方なく俺がやろうっつう話だよ。とりあえず俺が話したいって、ポーターの子達と連絡取ってほしい。
要は救貧院を出た後に、冒険者として自立するのを助けようって話なんだよ。子供達を助けたいってんなら、お前も協力しろよオーサン」
相互扶助と自力救済主義は、相反する考え方ではないと思うんだよな。
WIN-WINの関係に落ち着けば両立できると思うわけですよ。
手を出すところは出して、任せるところは任せる。
そして貰うもんはしっかり貰う!
慈善事業?そんなものは暇人にでも任せておけばいいんだよ。
「嘘じゃねぇっつの。なんなら身分証見ますぅ?6等級に上がったのもつい先日ですけどー?」
「ああっと、6等級と言えば、シン、リーン、トルネの3人は6等級になったから身分証貸してくれ。ハルも8等級に昇級だから身分証くれ。
お前らはトーマを見習わずにどんどん昇級試験受けて欲しい。トーマはもう諦めた」
今回の探索で洗浄のスクロールが出てハルがめちゃくちゃ喜んでた。気持ちは分からないでもない。この世界ではある意味一番お世話になるもんね、洗浄魔法って。
「そんじゃオーサン。カンパニーの説明頼むよ。出来ればシンは付き合って。女性陣はハルに稽古つけておいてくんないかな?弓の練習でもいいけど。そこは任せるから」
「はーい。先輩の私が見てあげるねー。ハルに階層攻略のペースが合ってないから、ハルは当分訓練で技術を磨いてこー」
「うん。リーンセンパイ。ご指導宜しくね」
「では行きましょうか。弓も基本くらいなら私でも解説できますし、焦らず行きましょう」
練習用の弓と矢を渡す。近接戦闘は厳しくても、遠距離攻撃が出来るようになれば、今の階層でも援護は出来るようになるからな。と言っても進むペース速すぎて厳しいか。
「それで?カンパニー立ち上げるのは構わないんだけどよ。お前は何がしたいんだ?わざわざカンパニー立ち上げないと出来ないことなのか?」
「俺がしたいのは貧困層の引き上げだよ。具体的にはオーサンの訓練指導みたいなことを広く行って、冒険者全体の生活水準と戦闘力の水準を上げたいんだよね。
いつかのポーターの子供達みたいなことを、もっと大規模にやりたいって感じかなぁ。
そういえばあの時の子供達ってどうなってんの?元気してるん?」
「ああ、あいつらは3階層で手堅く稼いでるみたいだな。装備も良くなったし安定してるな」
「はぁ?なんでまだ3階層にいるんだよ。あの時の18人ならもう暗視も魔装術も取れるだろ?スキル神殿の利用料にも充分な報酬だったはずなのに、なんで未だに3階層なんて回ってんだよ?オーサンの指導だって受けてるはずだろ?」
「いやいや、トーマが異常なペースで進んでるだけで、あいつらの年齢で3階層を安定して回ってるのは充分優秀なんだよ。あまり無理して危険な目に遭わせるわけにもいかんだろ」
「リーンは11歳だけど、うちの立派な戦力だ。オーサン、子供だからって甘やかしてんじゃねぇ。お前の指導を3回以上受けてて、まだ3階層探索させてるとか舐めすぎだろ。
俺が異常だ?違うんだよ。他の冒険者がサボりすぎなんだよ。前例とか常識とかくっだらねぇ。だから俺がカンパニーなんか作らなきゃならねえんだろうが!」
馬鹿馬鹿しい。戦える力もあって向上心もあるのに、この世界の常識が邪魔ばかりしやがってる。先天スキルもない異邦人の俺ですら、スキルなしで5階層をソロで回ってたってのに。
「オーサンよ。お前は知ってるだろ?俺が何の力も持たずに迷宮に入って、1人でも戦い続けてたのをよぉ?
人数も居て、金もあって、指導も受けてるのに、ガキだからってだけで、いつまで3階層を周らせておく気だ。過保護もいい加減にしろ。新人が育たないのは貧困のせいだけじゃねぇ。周りが甘やかしすぎるからだバーカ」
「……好き勝手いってくれるじゃねぇかよぉ?それでガキ共が死んだら、テメェに責任が取れるってのか、あぁ!?」
「だからそれが勘違いだって言ってんだろうが!なんでお前が他人の人生の責任まで負う必要があるんだよ!?あいつらの不始末の責任は、あいつらが取れば良いんだろうが!
思い上がんのもいい加減にしとけよオーサン。あいつらはお前の子供じゃねぇし、お前もあいつらの保護者じゃねぇんだ。迷宮に潜る危険性はあいつらだって分かってて潜ってんだよ。お前がやるべきはあいつらの手を引いて道を示すことだろうが。足引っ張ってどうすんだよオイ?」
「……俺が、俺がしてることが、あいつらの足を引っ張ってるだけだと?」
オーサンの考えが全部間違ってるわけじゃない。こいつのお節介に救われた人は多いはずだ。俺自身、オーサンのお節介がなければ死んでいたかもしれない。
でもこれからは状況が変わる。現役の5等級冒険者が簡単に制圧されるような能力者が、際限なく送られてくる可能性すらある。
「ヴェルトーガで色々話し合ったから、恐らくそのうちベイクにも情報共有されるとは思うんだけどな。今回俺たちが解決した事件の犯人は、1度も魔物と戦ったことがないのに1等級犯罪者と認定された、正真正銘の化け物だったんだよ。
そしてこれからは、そんな奴らがどんどん現れる可能性が高いんだ。誰もが今までのままじゃいられないんだよ。生きていくためにはな」
「……正直、トーマの話はよくわからねぇ。よくわからねぇけど、これからこの国に何かが起こりそうだって事はわかった。その時までに力をつけておかないと、結局はあいつらが死ぬかもしれないって、そう言いたいんだよな……?」
「そうだ。そうなった時に自分を責めたって何の意味もねぇんだよ。そうしないように若輩者を導くのが俺たちおっさんの役目だろうが。
守ることと育てることは同じじゃねぇ。見守るだけじゃ守れねぇんだよ。いくら子供でもあいつらだって冒険者だ。勝手な言い分であいつらの自立を邪魔するな」
オーサンをせめても仕方ないのは分かってはいるんだが、あの18人に未だに3階層探索させてる件だけは指摘しておかないと駄目だ。3日間で金貨15枚も貰っておいて、経験値だって手に入れておきながら、指導訓練も何度も受けておきながら、未だ3階層は流石に馬鹿馬鹿しすぎる。中学生に四則計算教えてるようなもんだろ。
「国も大人も、誰も人を育てようとしてないから、仕方なく俺がやろうっつう話だよ。とりあえず俺が話したいって、ポーターの子達と連絡取ってほしい。
要は救貧院を出た後に、冒険者として自立するのを助けようって話なんだよ。子供達を助けたいってんなら、お前も協力しろよオーサン」
相互扶助と自力救済主義は、相反する考え方ではないと思うんだよな。
WIN-WINの関係に落ち着けば両立できると思うわけですよ。
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