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7章 更なる強さを求めて
171 稼いだお金を回す
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冒険者ギルドで換金を済ます。ドロップ数が増えてきたスクロールだけど、攻撃魔法も防御魔法も拾えなかった。残念。
生活魔法は、メンバー全員が覚えたものはジーンさんとリンシアさんにも覚えてもらおう。調理や掃除がラクになるから、迷宮に潜らない人にも役に立てるはず。
冒険者ギルドを出て、商工ギルドに向かう。
「あ、トーマさん待ってたよ。私は直ぐに出れるけどすぐ行くかい?」
ポポリポさんは予定を合わせてくれていたので、紹介する物件に案内してもらう。
案内してもらった物件は、確かに1家族が暮らすことを想定してるような、こじんまりとした家が4つ隣接していた。元パーティメンバーで揃えて建てたという話のせいか、外見はかなり似通っている。
1つ1つは小さい家だが、それぞれの家に庭もあるし、全部まとめるとなかなかの広さになりそうだ。まぁまずはこのまま運用していこうかな。
ポポリポさんに鍵を開けてもらって、内見させてもらう。
「4軒とも構造は殆ど変わらないみたいだね。多少内装が違う程度で、住み心地は殆ど一緒じゃないかねぇ」
各家に寝室、リビング、キッチン、トイレがあるから設備としては充分かな。ただ収容人数を考えると、トイレの数が微妙に足りない気がするな。トイレだけもうちょっと増設するか。
リンカーズのトイレって、魔導具さえ購入できれば配管周りを気にする必要ないからラクでいい。
「うん。ポポリポさん。4軒とも購入させてもらうよ。購入が済んだら早速手を入れたいんだけど、購入後なら問題ないんだよね?」
「毎度ありがとうございますってね。
購入さえしてしまえばあとは自由だよ。ぶっ壊して更地にしちまっても問題ないさ」
「なら手続きが終ったら大工さんとか家具屋さんに行かなきゃな。1軒8人前後の想定だとして、自宅と合わせて50人って所か。
悪いけど引き続き物件探しお願いするよ。今回みたいな隣接してる土地じゃなくていいからさ」
「ん?隣接してなくていいならすぐに案内できる場所はいくつか在るけど……。流石に後日にしたほうがいいかねぇ。今日はまず購入手続きを済ましちまおうか」
商工ギルドに戻り、身分証と住所の紐付けを済ませる。
「はいこれが鍵だよ。許可なく鍵を複製するのは罰せられる場合があるから、もし鍵を増やすときは商工ギルドを通して依頼しておくれよ。
それにしてもトーマさん稼いでるねぇ。386万リーフをポンと払えちまうわけだ。トーマさんのおかげで、担当の私にもなにか手当てが出そうでありがたいもんだよ。アッハッハ!」
「今はカンパニーにお金が無いけど、物件の購入費用とかは後々、カンパニー資金から回収させてもらうけどね。
それじゃありがとうねポポリポさん。引き続き宜しくー」
商工ギルドを出て、トイレの魔導具を5つ、大きいテーブルを5つと椅子を10脚ずつ用意する。食器類と調理器具も一通り揃えて、寝具は小さめの2段ベッドを5つずつ注文した。
大工にもお願いして、トイレの壁を壊して各家に1つずつトイレを増やす。10人想定でもトイレ2つあれば充分だろ。緊急時はお隣さんに借りればいいんだし。
寝室に、小さめとはいえベッド5つも並べたら結構ギュウギュウになるとは思うけど、迷宮の安らぎ亭だってベッドしかなかったわけだし、むしろベッドがあるだけでもありがたいんじゃないかな。
男女タコ部屋送りのほうがエロいこと起きにくい気がするし。
大工さんはわりと良心的な値段で、トイレ一室の拡張だけなら金貨6枚ほどで請け負ってくれるみたいだった。今回は急ぎってことで金板1枚支払ったら、俺から鍵を奪って直ぐに取り掛かろうとしてくれた。家具屋に鍵預けちゃってたからそっちに案内したらすっ飛んでいった。
やはりお金で誠意を表すのは効果的だ。つうか実際、迷宮資源を調達する冒険者って、日本でいう一次産業に当たると思うんだよね。働けば働くほど稼げる一次産業とか夢みたいな話で、わりと大雑把に金をばら撒いても、回収するのがめちゃくちゃ簡単なんだよな。
一次産業が活性化すれば、ベイク全体の景気も良くなって、他の都市もベイクになにが起こったか気になって真似し始めるかもしれない。それで駆け出しの冒険者の地位が少しでも向上してくれるなら、今身銭を切る価値は充分にある。
「つまりさ、社会ってのは圧倒的に数が多い底辺層が支えてるモンなんだよ。まぁ駆け出し冒険者が潤えば、底辺層が入れ替わるだけかもしれないけどさ。それでも一番下で社会を支えている層が潤えば、社会全体も潤い始めると思うんだよね。
一番数の少ない権力者層が富を独占するのは、国の将来的な発展を狙うならやっちゃいけないことだと思うんだ。まぁ別に政治や経済について詳しいわけじゃない、ただの素人のおっさんの考えなんだけどさ」
「なるほどね。トーマは商人とか統治者の視点とも違う、なんていうか俯瞰した考え方してるよ。
僕たちも商人の端くれとして、お金を使う必要性というのは教えられてきたけど、それはあくまで投資って意味で教えられた気がするよ」
「トーマは自分のことを度外視してるのか、自分のことしか考えてないのか、よくわかんないだよねー。自分を投げ打って動いてるようにも見えるし、結局自分の利益のためだけに動いてるようにも見えるしー」
「分不相応な荷物は負担にしかならないからな。いざって時の保険以上のお金なんて、社会に還元したほうが健全だってだけの話だよ」
「お金にはあまり興味が無さそうですけど、迷宮には積極的に潜りますよね。もはや4~3等級くらいの戦闘力はあるんじゃないかと思うんですけど」
「ん~。正直俺も最強とか目指すつもりはないんだけどね。チート能力者に対応できる程度の能力って考えると、少なくともスカーさんクラスまでは鍛えないと駄目だろ」
「うん。私達異邦人のせいで、リヴァーブ王国の状況は一変しちゃったよね。短絡的な人ばかりが来るわけじゃないはずだけど、冷静で計画的に動ける悪意を持ったチート能力者、なんて考えてしまうと、自衛のためにはまだまだ鍛えないとなって思うわ」
この世界にはTVなんて無いからな。他の場所で異邦人が暴れていたとしても、俺たちには知る術がない。
すでに異邦人が潜伏し、今もなおこの世界に馴染んで力をつけていたとしても全くおかしくない。
チート能力を持っていると、迷宮攻略のペースもかなり速まりそうだからな。あまり楽観はできない。
う~ん……。
50階層で足踏みしてる間は、やっぱり探索3回ペースに戻した方がいい気がする。
生活魔法は、メンバー全員が覚えたものはジーンさんとリンシアさんにも覚えてもらおう。調理や掃除がラクになるから、迷宮に潜らない人にも役に立てるはず。
冒険者ギルドを出て、商工ギルドに向かう。
「あ、トーマさん待ってたよ。私は直ぐに出れるけどすぐ行くかい?」
ポポリポさんは予定を合わせてくれていたので、紹介する物件に案内してもらう。
案内してもらった物件は、確かに1家族が暮らすことを想定してるような、こじんまりとした家が4つ隣接していた。元パーティメンバーで揃えて建てたという話のせいか、外見はかなり似通っている。
1つ1つは小さい家だが、それぞれの家に庭もあるし、全部まとめるとなかなかの広さになりそうだ。まぁまずはこのまま運用していこうかな。
ポポリポさんに鍵を開けてもらって、内見させてもらう。
「4軒とも構造は殆ど変わらないみたいだね。多少内装が違う程度で、住み心地は殆ど一緒じゃないかねぇ」
各家に寝室、リビング、キッチン、トイレがあるから設備としては充分かな。ただ収容人数を考えると、トイレの数が微妙に足りない気がするな。トイレだけもうちょっと増設するか。
リンカーズのトイレって、魔導具さえ購入できれば配管周りを気にする必要ないからラクでいい。
「うん。ポポリポさん。4軒とも購入させてもらうよ。購入が済んだら早速手を入れたいんだけど、購入後なら問題ないんだよね?」
「毎度ありがとうございますってね。
購入さえしてしまえばあとは自由だよ。ぶっ壊して更地にしちまっても問題ないさ」
「なら手続きが終ったら大工さんとか家具屋さんに行かなきゃな。1軒8人前後の想定だとして、自宅と合わせて50人って所か。
悪いけど引き続き物件探しお願いするよ。今回みたいな隣接してる土地じゃなくていいからさ」
「ん?隣接してなくていいならすぐに案内できる場所はいくつか在るけど……。流石に後日にしたほうがいいかねぇ。今日はまず購入手続きを済ましちまおうか」
商工ギルドに戻り、身分証と住所の紐付けを済ませる。
「はいこれが鍵だよ。許可なく鍵を複製するのは罰せられる場合があるから、もし鍵を増やすときは商工ギルドを通して依頼しておくれよ。
それにしてもトーマさん稼いでるねぇ。386万リーフをポンと払えちまうわけだ。トーマさんのおかげで、担当の私にもなにか手当てが出そうでありがたいもんだよ。アッハッハ!」
「今はカンパニーにお金が無いけど、物件の購入費用とかは後々、カンパニー資金から回収させてもらうけどね。
それじゃありがとうねポポリポさん。引き続き宜しくー」
商工ギルドを出て、トイレの魔導具を5つ、大きいテーブルを5つと椅子を10脚ずつ用意する。食器類と調理器具も一通り揃えて、寝具は小さめの2段ベッドを5つずつ注文した。
大工にもお願いして、トイレの壁を壊して各家に1つずつトイレを増やす。10人想定でもトイレ2つあれば充分だろ。緊急時はお隣さんに借りればいいんだし。
寝室に、小さめとはいえベッド5つも並べたら結構ギュウギュウになるとは思うけど、迷宮の安らぎ亭だってベッドしかなかったわけだし、むしろベッドがあるだけでもありがたいんじゃないかな。
男女タコ部屋送りのほうがエロいこと起きにくい気がするし。
大工さんはわりと良心的な値段で、トイレ一室の拡張だけなら金貨6枚ほどで請け負ってくれるみたいだった。今回は急ぎってことで金板1枚支払ったら、俺から鍵を奪って直ぐに取り掛かろうとしてくれた。家具屋に鍵預けちゃってたからそっちに案内したらすっ飛んでいった。
やはりお金で誠意を表すのは効果的だ。つうか実際、迷宮資源を調達する冒険者って、日本でいう一次産業に当たると思うんだよね。働けば働くほど稼げる一次産業とか夢みたいな話で、わりと大雑把に金をばら撒いても、回収するのがめちゃくちゃ簡単なんだよな。
一次産業が活性化すれば、ベイク全体の景気も良くなって、他の都市もベイクになにが起こったか気になって真似し始めるかもしれない。それで駆け出しの冒険者の地位が少しでも向上してくれるなら、今身銭を切る価値は充分にある。
「つまりさ、社会ってのは圧倒的に数が多い底辺層が支えてるモンなんだよ。まぁ駆け出し冒険者が潤えば、底辺層が入れ替わるだけかもしれないけどさ。それでも一番下で社会を支えている層が潤えば、社会全体も潤い始めると思うんだよね。
一番数の少ない権力者層が富を独占するのは、国の将来的な発展を狙うならやっちゃいけないことだと思うんだ。まぁ別に政治や経済について詳しいわけじゃない、ただの素人のおっさんの考えなんだけどさ」
「なるほどね。トーマは商人とか統治者の視点とも違う、なんていうか俯瞰した考え方してるよ。
僕たちも商人の端くれとして、お金を使う必要性というのは教えられてきたけど、それはあくまで投資って意味で教えられた気がするよ」
「トーマは自分のことを度外視してるのか、自分のことしか考えてないのか、よくわかんないだよねー。自分を投げ打って動いてるようにも見えるし、結局自分の利益のためだけに動いてるようにも見えるしー」
「分不相応な荷物は負担にしかならないからな。いざって時の保険以上のお金なんて、社会に還元したほうが健全だってだけの話だよ」
「お金にはあまり興味が無さそうですけど、迷宮には積極的に潜りますよね。もはや4~3等級くらいの戦闘力はあるんじゃないかと思うんですけど」
「ん~。正直俺も最強とか目指すつもりはないんだけどね。チート能力者に対応できる程度の能力って考えると、少なくともスカーさんクラスまでは鍛えないと駄目だろ」
「うん。私達異邦人のせいで、リヴァーブ王国の状況は一変しちゃったよね。短絡的な人ばかりが来るわけじゃないはずだけど、冷静で計画的に動ける悪意を持ったチート能力者、なんて考えてしまうと、自衛のためにはまだまだ鍛えないとなって思うわ」
この世界にはTVなんて無いからな。他の場所で異邦人が暴れていたとしても、俺たちには知る術がない。
すでに異邦人が潜伏し、今もなおこの世界に馴染んで力をつけていたとしても全くおかしくない。
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