異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
273 / 580
8章 異風の旋律

243 迷宮神像

しおりを挟む
「迷宮神像?って、迷宮を司る神がいるってことか?迷宮ってこの世界ではどういう存在なんだ……?」


 柱の中の神像から目が離せない。
 中があまり良く見通せないが、多分男神像で、両手を組んで祈りを捧げているようなデザインだ。
 
 ……少なくとも、禍々しい雰囲気は感じない。


「僕もあまり詳しいわけじゃないから、ざっくりとしか説明できないけど。
 リヴァーブ王国建国神話によると、神々からスキルを得てもなお、人々は魔物に対抗するには脆弱すぎたらしいんだよね。実際僕たちも装備品がなければ戦えないわけだし。
 そこで世界に満ちている魔力を集めて人々に役立つ資源を生み出したのが、迷宮神像に姿を残すダンゲルスヌーマ神だと言われているんだ。
 人々のために自ら迷宮となって様々な恩恵を齎した神として、ラーゼリア、リーゼリアと共に、リヴァーブ王国の最高神の1柱に数えられているね」

「迷宮の神、ダンゲルスヌーマ……」


 確かにリンカーズの迷宮のシステムは、人にとって都合が良すぎるとは思っていた。
 少しずつ難度の上がる階層。解体の必要がないドロップアイテムというシステム。稀に落ちるスクロールというボーナスアイテム。
 元々が人々の繁栄のために生まれた存在だとするならば、むしろ納得がいく。

 管理迷宮に、迷宮資源か。
 まさに迷宮とは人々に管理され、資源を齎すためのシステムであって、管理されている姿こそが正しい形ということなのか。


「うん。まさか迷宮も神様が作った施設だとは思ってなかったけどさ。迷宮を殺すっていう事は、この神像を破壊するっていうことなんだよね?
 それってダンゲルスヌーマ様への冒涜行為に当たらないのかな?」

「それは大丈夫ですよハル。迷宮とは人に恩恵を齎すもの。ですが人の手を離れてしまうと迷宮は暴走してしまいます。
 暴走した迷宮は人々にとって脅威となり、それはダンゲルスヌーマの望みではありません。
 人々の手に負えない迷宮は速やかに討伐する、それは人々のために迷宮を生み出したダンゲルスヌーマの願いであると言われています。
 迷宮神像がどうして生まれるかは諸説ありますが、少なくともこの神像はダンゲルスヌーマ本体ではないですから。遠慮は要りませんよ」

「それに迷宮神像を破壊する行為は、ダンゲルスヌーマを迷宮から解放する行為であるとも言われてるんだよねー。
 迷宮が死ぬと、迷宮に蓄積されていた魔力が大気に還るらしいんだけど、それが迷宮から解放されたダンゲルスヌーマの一部だと思ってる人も少なくないんだよー」


 迷宮からの解放か。
 確かに、柱の中の神像を見てしまうと、迷宮に囚われているように思えるもんな。


「そっか。なら早く解放してやらないとな」


 ロングソードに魔力を込める。


「ダンゲルスヌーマ様。今までお疲れ様でした。
 貴方の願いにそぐわない他の迷宮も、なるべく早く解放しますね」


 ロングソードを右斜め上から振り下ろす。
 柱ごと神像は両断され、斜めにずれて地面に崩れ落ちた。

 粉々に崩れた神像が光を放ち、手のひらサイズの光の球が浮かび上がって、俺の目の前にゆっくりと飛んできた。

 俺は何も考えずに手を伸ばし、光の球に触れる。

 その瞬間視界がブレた。
 と思った瞬間には、俺は根元に大きな穴の空いた大木の前に立っていた。


 ……ここは、迷宮の入り口?

 っとそうだ!?みんなはどうなった!?
 焦って周りを見回してみると、どうやら全員が迷宮の外に出てきているみたいだった。
 

「みんな無事か?どこも異常ないか?」

「大丈夫だよ。迷宮殺しが成功すると、中の人間は強制的に排出されるって話は聞いてたしね。
 どうやら無事に迷宮は討伐され、ダンゲルスヌーマは解放されたみたいだよ」


 シンが迷宮の入り口があった大木の根元を指差す。
 魔法陣があった場所から七色の光の粒が、天に向かってゆっくりと吐き出されていた。


「トーマが持ってるのが心核って言われてるアイテムでねー。迷宮を討伐したときにしか得られない、すっごく貴重な魔法素材なんだってー!」


 リーンに言われて、自分が綺麗な球体を握っていることに気付かされた。
 これは神像から出た光の球の本体、心核っていうアイテムなのか。


「何の素材かは知られてませんけど、ギルドに持っていくと凄まじい金額で買い取ってくれるらしいですよ。なんでも王家が買い集めているらしいですね。
 そんな高額なアイテムを持ち歩くのは怖いので、トーマのストレージに保管してもらうのが良いと思いますよ」

「うん。ストレージなら絶対安全だもんね。トーマよろしくね」


 確かにストレージなら今のところ安全だよな。
 金に困ってるわけでもないし、とりあえずストレージの肥やしにしておこう。


「あれ。もう戻った?木の実集め、ちょっと張り切りすぎちゃったか」


 心核を収納したタイミングでクリーヌが戻ってきた。
 御者はリーネが務めている。なかなか有意義な時間を過ごしたみたいだな。


「いや、俺たちもちょうど戻ってきたとこだよ。
 今日はもう戻ろうぜ。間もなく日没だよな?」

「ん。早く帰るに越したことはない。色々取ってきたから馬車がちょっと狭いかも」


 馬車を覗くと床一面に色々な木の実が置かれていた。全てストレージに収納して乗り場を確保。


「空間魔法いいね。私も欲しい」

「ま、手に入れるのは結構大変だったからな。
 街に戻ったら一緒に夕食食べないか?出来れば取ってきた木の実の食べ方とか教えて欲しいんだが」

「ん。夕食奢ってくれるなら。
 でもその前に仕事の話。明日もこの迷宮に連れてくればいいの?」

「ん?ここの迷宮は討伐出来たから、明日は違う場所で頼むよ」

「……は?え、ちょっと待って」


 馬車を飛び降りたクリーヌは、大木の根元を確認してアタフタしている。


「えっえっ、どういうこと?なんで迷宮なくなってる?迷宮を討伐?え?どうやって?え?え?」

「おーいクリーヌ。まずは帰ろうぜ。聞きたいことがあれば道中で話した方が無駄がなくていいだろ?」


 クリーヌは振り返ると、ダッシュで馬車に戻ってきて俺に詰め寄ってきた。
 あ~リスの獣人もかわいいなぁ。


「どどどっど、どういうこと……!?なんでこんな短時間で迷宮が死んでる……!?
 貴方達は5等級と6等級の冒険者パーティだとエルハに聞いてる……!
 だから私は事前調査か何かを頼まれてるんだと思ってた……!」

「等級は合ってるよ。でもエルハから頼まれたのは迷宮の討伐だよ。
 まぁまぁクリーヌ。まずはボールクローグに帰ろうぜ。話は飯でも食いながらでいいだろ」

「その前に狩人ギルドで報告しないと駄目!報告しないと二度手間になるから。
 少し急いで戻る。あ、夕飯は奢ってもらう」


 クリーヌはリーネから手綱を取り返して、馬車を急いで走らせた。

 とりあえず野良迷宮のレベルがかなり低めだってことが分かった。
 これだと異風の旋律は、バラけて攻略したほうが効率いいかもなぁ。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...