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8章 異風の旋律
242 最深部
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「私は『クリーヌ』。リスの獣人。よろしく」
狩人ギルドから紹介された案内人はクリーヌというリスの獣人で、140センチもなさそうな身長に、あまりおしゃべりは得意じゃないという女性狩人だった。
あまり人と一緒にいるのが得意ではないそうで、普段はソロで狩人をしている。勿論ソロでは大物を狩ることなど出来ないので、街の近くで木の実や薬草などを採集していることが多いそうだ。
「へぇ?木の実とかあったんだ。俺たちが依頼しても取ってきてくれる?出来れば調理法も教えて欲しいんだけど」
「ん。お金さえ貰えるならやる。料金は先払いのみ」
先払いのみか。しっかりしてるな。
ま、今は迷宮の攻略に集中だな。まだ見ぬ味覚のためにもボールクローグに滅んでもらっては困る。
「あ。見えてきた。あそこはまだ誰も入ってないってエルハが言ってたから、勝手に入っても問題ないはず」
クリーヌが指し示した方向には大きな大樹が生えていて、その根の部分に大きな穴が開いている。アレが入り口なのか?
「あの穴の中に転送魔法陣が現れてて、その先は開放型迷宮になってるんだって。
エルハに貰った地図は毎日の報告で更新されてるらしいから、間違ってないはず」
「そっか。ありがとクリーヌ。じゃあとりあえず中の様子を確認してくるか。可能そうならそのまま殺しちまおう」
「そうだね。話を聞く限りではまだあまり深い迷宮じゃないらしいし、1つの討伐にどの程度時間がかかるのかも知っておきたいね」
シンも賛成してくれたので、このまま迷宮討伐まで挑戦してみることにした。
「クリーヌ。金板2枚渡すから、リーネに御者の技術を教えてやって欲しい。それと適当にここの近辺で取れる木の実とか食い物があれば、集めてきておいてくれないか?
仮に夜明けまでに俺たちが戻らなかったら、俺たちを待たずに街に帰っていいから」
クリーヌに金板2枚手渡す。リーネは迷宮に入れないからな。ただ待ちぼうけするよりは有意義に時間を使わせるべきだろう。
「ん、承った。ただ街の外で夜を明かすのは結構危険だから、出来ればしたくない。夜が耽る前になるべく戻ってきて」
「了解だ。なるべく急いで戻るよ」
話はついたので、さっそく未管理迷宮に足を踏み入れた。
入った迷宮の1階層は、どうやら森林エリアっぽい。外とそんなに変わりがない。
「トーマ。今回は討伐が目的なんだよね?
今回は時間もないし地図も無い。ドロップアイテムの回収とかどうする?
最初にある程度方針を固めておいたほうがいいんじゃないかな」
「そうだな。1つ1つに時間はかけれないから迷宮攻略を最優先。ドロップアイテムはこの際無視しよう。
全速で駆け抜けて一気に迷宮を殺す。次の階層へ進む魔法陣以外は全て無視。敵は即殲滅」
「うん。お金にも困ってないしドロップアイテムの回収は時間がかかるし、今回は諦めてもいいね」
「ただ目の前の敵を打ち破り、ひたすら先に進んでいくのですね。ふふ、腕が鳴ります」
「ふふふー。スネークソードの錆にしてやるーっ!」
全員にもう1度ジェネレイトをかけなおす。
「よし、今回は新たなスキルの試験も実戦で行うことにする。目指すは迷宮最深部。全力で走り抜けるぞ!」
異風の旋律、出陣!
同じ開放型迷宮のヴェルトーガと比べると、敵の数も少なく階層も少し狭く感じる。
やはり管理されることで長い年月生き続けてきた迷宮と違って、新しく生まれた迷宮は難度が低く感じられる。
トルネの槍とリーンのスネークソード、シンの安定した剣技のおかげで、俺とハルはほとんど走ってるだけで進めてしまう。
2階層、3階層と森林エリアが続き、少しずつ森が深くなってエリアも広くなっていく。
ちょいちょい見たことのない魔物もいるが、見つかった端から殺されていくので特に言うべきこともない。
4階層は湖エリアで、魚型の魔物も襲ってくるようになった。
倒す事は問題なかったが、ドロップアイテムとして切り身が手に入ったので、自分が食べる分を適当に確保しながら進んでいく。
5階層、6階層、7階層と進んで、ドロップアイテムは無視しても、スクロールだけは拾っていく。
開放型迷宮は空間魔法のドロップ率が高いらしいしな。流石にスルーできない。
8階層に進むと階層の様子がガラリと変わった。
地面も壁も天井もドクドクと波打ち、一定以上の硬さはあるものの、どこか柔らかさも残している。
まるで何かの体内にでもいるような錯覚を覚える。
「噂でしか知らなかったけど、これは迷宮の最深部じゃないかな。迷宮の最深部はまるで生き物のように蠢いている、って話を聞いたことがあるよ」
「ええ、恐らくシンの言うとおりでしょう。厳密に言うならここは最下層であって、この奥に最深部があるはずです。そこを殺せば迷宮は死ぬハズです」
「最深部の前には『守護者』と呼ばれる魔物が守っているみたいでねー。そいつを倒せば迷宮殺しは達成だよー!たぶんっ」
最下層の更に奥の最深部にガーディアンねぇ。
なんだかゲームじみてるなぁなんて思いながら歩を進める。
「トーマ。見えたよ。多分あの扉の奥が最深部だ」
シンの目線の先には確かに大きな扉があった。
最下層は分岐がないのかな?一直線だったし広くもないようだ。
とその時、扉の前に巨大な魔法陣が現れ、その中から巨大な魔物が姿を現す!
どうやらガーディアンのお出ましのようだ!
光の中から現れたのは、10メートルはあろうかという、巨大なドラゴンの姿だった。
……って、グランドドラゴンじゃねーか!
今さら出てこられても逆に困るわっ!
攻撃範囲拡張で首を叩き落す。
グランドドラゴンの体が融けるのと同時に、最深部への扉が音を立てて開いた。
そしてグランドドラゴンのドロップアイテムが見当たらない。
「ガーディアンはその迷宮の魔物より1段階上の強さの魔物が出現するんだ。だけどドロップアイテムは得られない。
割に合わないと思わせて、最深部を冒険者から守るためとか言われてるけど、本当のところは分かってないみたいだね」
なるほどねぇ。まぁ世の中の全てに尤もらしい理由があるとも限らない。
ガーディアンの考察は後にして、俺たちは開いた扉から最深部へと足を踏み入れた。
最深部は少し開けたドーム状の空間で、中央に一本の柱が立っていた。
柱も最下層の壁や天井と同じように蠢いていて、その中心に真っ白な石像のようなものが内包されているのが見える。
「僕も見るのは初めてだけど……。
これが迷宮の中心であり迷宮の核である、『迷宮神像ダンゲルスヌーマ』だね」
迷宮、神像……?
迷宮を司る神がいる……?
つまり迷宮は、神が創り出した存在ってことになるんだろうか……?
狩人ギルドから紹介された案内人はクリーヌというリスの獣人で、140センチもなさそうな身長に、あまりおしゃべりは得意じゃないという女性狩人だった。
あまり人と一緒にいるのが得意ではないそうで、普段はソロで狩人をしている。勿論ソロでは大物を狩ることなど出来ないので、街の近くで木の実や薬草などを採集していることが多いそうだ。
「へぇ?木の実とかあったんだ。俺たちが依頼しても取ってきてくれる?出来れば調理法も教えて欲しいんだけど」
「ん。お金さえ貰えるならやる。料金は先払いのみ」
先払いのみか。しっかりしてるな。
ま、今は迷宮の攻略に集中だな。まだ見ぬ味覚のためにもボールクローグに滅んでもらっては困る。
「あ。見えてきた。あそこはまだ誰も入ってないってエルハが言ってたから、勝手に入っても問題ないはず」
クリーヌが指し示した方向には大きな大樹が生えていて、その根の部分に大きな穴が開いている。アレが入り口なのか?
「あの穴の中に転送魔法陣が現れてて、その先は開放型迷宮になってるんだって。
エルハに貰った地図は毎日の報告で更新されてるらしいから、間違ってないはず」
「そっか。ありがとクリーヌ。じゃあとりあえず中の様子を確認してくるか。可能そうならそのまま殺しちまおう」
「そうだね。話を聞く限りではまだあまり深い迷宮じゃないらしいし、1つの討伐にどの程度時間がかかるのかも知っておきたいね」
シンも賛成してくれたので、このまま迷宮討伐まで挑戦してみることにした。
「クリーヌ。金板2枚渡すから、リーネに御者の技術を教えてやって欲しい。それと適当にここの近辺で取れる木の実とか食い物があれば、集めてきておいてくれないか?
仮に夜明けまでに俺たちが戻らなかったら、俺たちを待たずに街に帰っていいから」
クリーヌに金板2枚手渡す。リーネは迷宮に入れないからな。ただ待ちぼうけするよりは有意義に時間を使わせるべきだろう。
「ん、承った。ただ街の外で夜を明かすのは結構危険だから、出来ればしたくない。夜が耽る前になるべく戻ってきて」
「了解だ。なるべく急いで戻るよ」
話はついたので、さっそく未管理迷宮に足を踏み入れた。
入った迷宮の1階層は、どうやら森林エリアっぽい。外とそんなに変わりがない。
「トーマ。今回は討伐が目的なんだよね?
今回は時間もないし地図も無い。ドロップアイテムの回収とかどうする?
最初にある程度方針を固めておいたほうがいいんじゃないかな」
「そうだな。1つ1つに時間はかけれないから迷宮攻略を最優先。ドロップアイテムはこの際無視しよう。
全速で駆け抜けて一気に迷宮を殺す。次の階層へ進む魔法陣以外は全て無視。敵は即殲滅」
「うん。お金にも困ってないしドロップアイテムの回収は時間がかかるし、今回は諦めてもいいね」
「ただ目の前の敵を打ち破り、ひたすら先に進んでいくのですね。ふふ、腕が鳴ります」
「ふふふー。スネークソードの錆にしてやるーっ!」
全員にもう1度ジェネレイトをかけなおす。
「よし、今回は新たなスキルの試験も実戦で行うことにする。目指すは迷宮最深部。全力で走り抜けるぞ!」
異風の旋律、出陣!
同じ開放型迷宮のヴェルトーガと比べると、敵の数も少なく階層も少し狭く感じる。
やはり管理されることで長い年月生き続けてきた迷宮と違って、新しく生まれた迷宮は難度が低く感じられる。
トルネの槍とリーンのスネークソード、シンの安定した剣技のおかげで、俺とハルはほとんど走ってるだけで進めてしまう。
2階層、3階層と森林エリアが続き、少しずつ森が深くなってエリアも広くなっていく。
ちょいちょい見たことのない魔物もいるが、見つかった端から殺されていくので特に言うべきこともない。
4階層は湖エリアで、魚型の魔物も襲ってくるようになった。
倒す事は問題なかったが、ドロップアイテムとして切り身が手に入ったので、自分が食べる分を適当に確保しながら進んでいく。
5階層、6階層、7階層と進んで、ドロップアイテムは無視しても、スクロールだけは拾っていく。
開放型迷宮は空間魔法のドロップ率が高いらしいしな。流石にスルーできない。
8階層に進むと階層の様子がガラリと変わった。
地面も壁も天井もドクドクと波打ち、一定以上の硬さはあるものの、どこか柔らかさも残している。
まるで何かの体内にでもいるような錯覚を覚える。
「噂でしか知らなかったけど、これは迷宮の最深部じゃないかな。迷宮の最深部はまるで生き物のように蠢いている、って話を聞いたことがあるよ」
「ええ、恐らくシンの言うとおりでしょう。厳密に言うならここは最下層であって、この奥に最深部があるはずです。そこを殺せば迷宮は死ぬハズです」
「最深部の前には『守護者』と呼ばれる魔物が守っているみたいでねー。そいつを倒せば迷宮殺しは達成だよー!たぶんっ」
最下層の更に奥の最深部にガーディアンねぇ。
なんだかゲームじみてるなぁなんて思いながら歩を進める。
「トーマ。見えたよ。多分あの扉の奥が最深部だ」
シンの目線の先には確かに大きな扉があった。
最下層は分岐がないのかな?一直線だったし広くもないようだ。
とその時、扉の前に巨大な魔法陣が現れ、その中から巨大な魔物が姿を現す!
どうやらガーディアンのお出ましのようだ!
光の中から現れたのは、10メートルはあろうかという、巨大なドラゴンの姿だった。
……って、グランドドラゴンじゃねーか!
今さら出てこられても逆に困るわっ!
攻撃範囲拡張で首を叩き落す。
グランドドラゴンの体が融けるのと同時に、最深部への扉が音を立てて開いた。
そしてグランドドラゴンのドロップアイテムが見当たらない。
「ガーディアンはその迷宮の魔物より1段階上の強さの魔物が出現するんだ。だけどドロップアイテムは得られない。
割に合わないと思わせて、最深部を冒険者から守るためとか言われてるけど、本当のところは分かってないみたいだね」
なるほどねぇ。まぁ世の中の全てに尤もらしい理由があるとも限らない。
ガーディアンの考察は後にして、俺たちは開いた扉から最深部へと足を踏み入れた。
最深部は少し開けたドーム状の空間で、中央に一本の柱が立っていた。
柱も最下層の壁や天井と同じように蠢いていて、その中心に真っ白な石像のようなものが内包されているのが見える。
「僕も見るのは初めてだけど……。
これが迷宮の中心であり迷宮の核である、『迷宮神像ダンゲルスヌーマ』だね」
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