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8章 異風の旋律
241 ボールクローグで起きている事
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狩人ギルドの会議室に通される。
話を聞ければどこでも良いんだけど、わざわざ移動したって事は情報規制でもされてるのかね?
「で、話ってのは何?冒険者ギルドでは迷宮が増えまくってるって話は聞いたけど」
「ああ、知ってるなら話が早い。その話だよ。トーマさんたちにも協力して欲しいんだ」
「そのつもりで来たんだけど、冒険者ギルドで聞いた話だと、上級冒険者とカルネジア家が頑張ってるから大丈夫って雰囲気だったよ?
俺たちにまで協力を要請するほど切羽詰ってるようには見えなかったんだけど」
「ちっ!ホントにそんなこと言ってたのかよ!?あいつら状況が分かってんのか……!?」
あらら?冒険者ギルドと狩人ギルドのこの温度差は一体何なんだ?
「……今のボールクローグははっきり言って、予断を許さない状況なんだよ。
現在確認されている迷宮だけでも、その数は優に30を超えている。
なのにまだまだ新しい迷宮が増え続けているんだ……」
「30……。んっと、上級冒険者の協力やカルネジア家の戦力で、現在どの程度対応できてるんだ?」
「……1日に1つ潰せればいいほうかな。
迷宮は新しく発生したものだから、50階層未満のものも多いらしいけど。時間が経てば経つほど迷宮が成長して、討伐が難しくなっていくんだ。
それなのに今は、確認できるだけでも1日3つくらいずつ迷宮が増えてる。
トーマさんたちに話をした冒険者ギルド員は危機感足りなすぎだろ。ぶっちゃけこの街の存亡の危機だと思ってるよ俺は」
迷宮が発生するペースに討伐するペースが追いついていないのか。
今すぐどうこうなるってワケじゃないだろうが、このペースだといずれ魔物の反乱が起こっても不思議じゃないと。
……っていうか、迷宮からの魔物の氾濫って、周囲の魔力が枯渇したために、魔力を求めて迷宮から魔物が出てくるって流れなんだよな?
迷宮が増えれば増えるほど、魔物の反乱が起こる可能性は加速度的に高まっていくんじゃないのか……?
「で、協力ってのは迷宮の討伐をすればいいのか?
つうか勝手にやっても大丈夫なのそういうの?」
「だからもうそんなこと言ってる余裕ないんだって!
トーマさんたちってグリーンドラゴン倒してるし、50階層もない迷宮を殺すくらい出来るはずだろ!?」
「いやいや、協力するのは吝かじゃないけどさ。それによって俺たちが不利益を被るのはゴメンだってば。
迷宮の場所も分からないし、街の外に出るなら足だって必要だろ。
困ってるから助けて!なんて、全部丸投げされても困るって話だよ。
協力するのは構わない。だけどちゃんと正規の手段で、そして効率よく協力出来る様に手配してもらいたいってことだよ」
「く、確かにちょっと焦りすぎてたか……!
ちょっとだけ、ちょっとだけ待っててくれるか!色々話通してくるからよ!」
俺の返事も待たずにギルド職員は出ていった。そういえば名前も聞いてないな。
「僕たちの等級で勝手に迷宮討伐なんてしたら変な注目を集めそうだね。それに迷宮の場所も移動手段もないし、協力すると言っても、現状出来ることがあまりないよね」
「んーそういう意味でも銀の乙女に合流するのが手っ取り早かったんだけどねー。あそこにはペルもいるから」
「ペルちゃんに会いたかったけど、出払ってたから仕方ないよね……」
何気にリーネもペルと仲良くなってるらしい。
っと、入り口の扉がコンコンと軽くノックされる。
「入りますよ」
これまた返事も待たずに、初めて見る女性が入室してきた。
お、よく見るとこの人耳長族っぽいな。
「ボールクローグ狩人ギルドマスターの『エルハ』よ。話は聞かせてもらったわ。
グリーンドラゴンを討伐した貴方達の実力を見込んで、狩人ギルドは正式に異風の旋律に協力を要請するわ。
新しく出来た迷宮への案内もつけましょう。報酬は応相談って感じかしら?」
「異風の旋律のトーマだ。話が早くて助かる。
報酬は後から決めてもいいかな?俺たち金には困ってないからさ」
エルハは少し迷うような仕草を見せた。
「……こちらが用意できない報酬は断らせてもらうけど、それでも良いなら後からでも構わないわ」
「ああ、無茶なことを頼むつもりはないよ。今ちょっと欲しいものが思いつかないだけだ。
それじゃあ正式に仕事の話を進めようか。まずは今の状況と、そっちの要望を教えてくれ」
エルハが姿勢を正す。自然と部屋に緊張感が漂い始める。
「現在ボールクローグ近郊に、毎日新しい迷宮が、少なくとも1日に1つ以上は出現しているわ。
カルネジア家の戦士を含めた、手練れの冒険者と狩人が手分けして迷宮討伐を進めているけれど、1日1つ殺せれば良い方ね。迷宮が生まれるほうが断然早いの。
このままだと遠くない未来に、周辺地域の魔力枯渇が起きて、その時残っている迷宮全てから魔物が溢れ出す可能性が低くないわ。
異風の旋律はその実力を活かして、単独でどんどん迷宮を減らして欲しいの。グリーンドラゴンを狩れる戦力ならば、50階層級迷宮くらい単独で討伐できるはずですから。
移動手段と案内は狩人ギルドで用意致します。ぜひともご協力を」
エルハは静かに頭を下げた。
「頭を上げてくれ。そこまでされなくても協力するってば。
しかし狩人ギルドは6等級冒険者の俺に対して謙りすぎじゃないのか?侮られるよりは話が早くて助かるんだけどさ」
「我々はグリーンドラゴンの素材の現物をこの目で見ているからね。それにサリサリたちが、異風の旋律がいなかったら出会い頭のブレスで骨も残らなかった、グリーンドラゴンは異風の旋律だけで倒したんだ、って吹聴して回ってますからね。
優秀な狩人の言う事は信用することにしているの」
「サリサリに感謝だな。
それじゃあこれから迷宮に案内してもらうことは出来ないか?
どんな状況なのか、今日中に1度体験しておきたいんだが」
「こちらとしても助かるわ。すぐに手配しましょう」
エルハが手配をしてくれる間に、食料などをある程度買っておく。
今回はドロップアイテム回収の優先度は低いので、ストレージを空にしておく必要性はあまりない。
ほどなくして、6本足の馬が引く馬車が用意され、迷宮に向かうことになった。
さてさて、迷宮殺しって奴に挑戦してみますかね。
話を聞ければどこでも良いんだけど、わざわざ移動したって事は情報規制でもされてるのかね?
「で、話ってのは何?冒険者ギルドでは迷宮が増えまくってるって話は聞いたけど」
「ああ、知ってるなら話が早い。その話だよ。トーマさんたちにも協力して欲しいんだ」
「そのつもりで来たんだけど、冒険者ギルドで聞いた話だと、上級冒険者とカルネジア家が頑張ってるから大丈夫って雰囲気だったよ?
俺たちにまで協力を要請するほど切羽詰ってるようには見えなかったんだけど」
「ちっ!ホントにそんなこと言ってたのかよ!?あいつら状況が分かってんのか……!?」
あらら?冒険者ギルドと狩人ギルドのこの温度差は一体何なんだ?
「……今のボールクローグははっきり言って、予断を許さない状況なんだよ。
現在確認されている迷宮だけでも、その数は優に30を超えている。
なのにまだまだ新しい迷宮が増え続けているんだ……」
「30……。んっと、上級冒険者の協力やカルネジア家の戦力で、現在どの程度対応できてるんだ?」
「……1日に1つ潰せればいいほうかな。
迷宮は新しく発生したものだから、50階層未満のものも多いらしいけど。時間が経てば経つほど迷宮が成長して、討伐が難しくなっていくんだ。
それなのに今は、確認できるだけでも1日3つくらいずつ迷宮が増えてる。
トーマさんたちに話をした冒険者ギルド員は危機感足りなすぎだろ。ぶっちゃけこの街の存亡の危機だと思ってるよ俺は」
迷宮が発生するペースに討伐するペースが追いついていないのか。
今すぐどうこうなるってワケじゃないだろうが、このペースだといずれ魔物の反乱が起こっても不思議じゃないと。
……っていうか、迷宮からの魔物の氾濫って、周囲の魔力が枯渇したために、魔力を求めて迷宮から魔物が出てくるって流れなんだよな?
迷宮が増えれば増えるほど、魔物の反乱が起こる可能性は加速度的に高まっていくんじゃないのか……?
「で、協力ってのは迷宮の討伐をすればいいのか?
つうか勝手にやっても大丈夫なのそういうの?」
「だからもうそんなこと言ってる余裕ないんだって!
トーマさんたちってグリーンドラゴン倒してるし、50階層もない迷宮を殺すくらい出来るはずだろ!?」
「いやいや、協力するのは吝かじゃないけどさ。それによって俺たちが不利益を被るのはゴメンだってば。
迷宮の場所も分からないし、街の外に出るなら足だって必要だろ。
困ってるから助けて!なんて、全部丸投げされても困るって話だよ。
協力するのは構わない。だけどちゃんと正規の手段で、そして効率よく協力出来る様に手配してもらいたいってことだよ」
「く、確かにちょっと焦りすぎてたか……!
ちょっとだけ、ちょっとだけ待っててくれるか!色々話通してくるからよ!」
俺の返事も待たずにギルド職員は出ていった。そういえば名前も聞いてないな。
「僕たちの等級で勝手に迷宮討伐なんてしたら変な注目を集めそうだね。それに迷宮の場所も移動手段もないし、協力すると言っても、現状出来ることがあまりないよね」
「んーそういう意味でも銀の乙女に合流するのが手っ取り早かったんだけどねー。あそこにはペルもいるから」
「ペルちゃんに会いたかったけど、出払ってたから仕方ないよね……」
何気にリーネもペルと仲良くなってるらしい。
っと、入り口の扉がコンコンと軽くノックされる。
「入りますよ」
これまた返事も待たずに、初めて見る女性が入室してきた。
お、よく見るとこの人耳長族っぽいな。
「ボールクローグ狩人ギルドマスターの『エルハ』よ。話は聞かせてもらったわ。
グリーンドラゴンを討伐した貴方達の実力を見込んで、狩人ギルドは正式に異風の旋律に協力を要請するわ。
新しく出来た迷宮への案内もつけましょう。報酬は応相談って感じかしら?」
「異風の旋律のトーマだ。話が早くて助かる。
報酬は後から決めてもいいかな?俺たち金には困ってないからさ」
エルハは少し迷うような仕草を見せた。
「……こちらが用意できない報酬は断らせてもらうけど、それでも良いなら後からでも構わないわ」
「ああ、無茶なことを頼むつもりはないよ。今ちょっと欲しいものが思いつかないだけだ。
それじゃあ正式に仕事の話を進めようか。まずは今の状況と、そっちの要望を教えてくれ」
エルハが姿勢を正す。自然と部屋に緊張感が漂い始める。
「現在ボールクローグ近郊に、毎日新しい迷宮が、少なくとも1日に1つ以上は出現しているわ。
カルネジア家の戦士を含めた、手練れの冒険者と狩人が手分けして迷宮討伐を進めているけれど、1日1つ殺せれば良い方ね。迷宮が生まれるほうが断然早いの。
このままだと遠くない未来に、周辺地域の魔力枯渇が起きて、その時残っている迷宮全てから魔物が溢れ出す可能性が低くないわ。
異風の旋律はその実力を活かして、単独でどんどん迷宮を減らして欲しいの。グリーンドラゴンを狩れる戦力ならば、50階層級迷宮くらい単独で討伐できるはずですから。
移動手段と案内は狩人ギルドで用意致します。ぜひともご協力を」
エルハは静かに頭を下げた。
「頭を上げてくれ。そこまでされなくても協力するってば。
しかし狩人ギルドは6等級冒険者の俺に対して謙りすぎじゃないのか?侮られるよりは話が早くて助かるんだけどさ」
「我々はグリーンドラゴンの素材の現物をこの目で見ているからね。それにサリサリたちが、異風の旋律がいなかったら出会い頭のブレスで骨も残らなかった、グリーンドラゴンは異風の旋律だけで倒したんだ、って吹聴して回ってますからね。
優秀な狩人の言う事は信用することにしているの」
「サリサリに感謝だな。
それじゃあこれから迷宮に案内してもらうことは出来ないか?
どんな状況なのか、今日中に1度体験しておきたいんだが」
「こちらとしても助かるわ。すぐに手配しましょう」
エルハが手配をしてくれる間に、食料などをある程度買っておく。
今回はドロップアイテム回収の優先度は低いので、ストレージを空にしておく必要性はあまりない。
ほどなくして、6本足の馬が引く馬車が用意され、迷宮に向かうことになった。
さてさて、迷宮殺しって奴に挑戦してみますかね。
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