280 / 580
8章 異風の旋律
250 銀の乙女に情報提供
しおりを挟む
「アハハハハハ!!
ボールクローグでトーマに初めて傷をつけたのはペルだったのかい!
流石はペルだね!アハハハハハ!!」
くっそーサリサリめ、めちゃくちゃ笑いやがって!
こっちはめちゃくちゃ痛かったんだぞ!
首をかしげたペルが可愛すぎたから何の問題もないけどさ!
無事に銀の乙女の拠点に到着し、今は既に大宴会状態だ。
クリーヌの家族は人見知りをすることもなく、すでに銀の乙女のメンバーにめちゃくちゃ可愛がられている。
わかるわー。リス獣人めっちゃ可愛いよなー。
「トーマが食費を提供してくれたおかげで、今日はペルにも竜肉出してあげたからねぇ。ペルなりのお礼だったんだろうさ。
いやぁトーマが飲み物買ってきてくれて助かった!
食い物ばかりに気を取られて、飲み物の用意が不十分だったからねぇ。
しかし自分は飲まないのに、よくもまぁこんだけの酒を持ってきてくれたモンだよ!」
「俺はお子様舌だからさ、お酒はあまり美味しく感じないんだよねぇ。
でも冒険者も狩人もお酒好きな奴が多い気がしたからさ。せっかくだから用意してきたんだよ」
どうやらこの判断は正解だったようで、銀の乙女もサリサリもウチのメンバーも、クリーヌまでガバガバと浴びるように酒を飲んでいる。
この世界の住人怖いわーと言いたいところなんだけど、ハルも混ざって酒を浴びているのでコメントが出来ない。
俺とかクリーヌ一家の小さい子用に、果実を絞ったような飲み物とかもそれなりに用意してきたけどね。
それはそれで、「トーマは子供かよーー!?」と酒の肴にされたんだけど、まぁこの程度はからかいの範疇だろ。
「しっかし異風の旋律の迷宮殺しは早すぎるだろ。今日の分を合わせて26個だったっけ?どうやったらそんなに早く迷宮殺しが出来るんだい?」
「いやいや逆だろ?銀の乙女の実力なら、1日1つは迷宮討伐が可能なはずだろ。なんでそんなに時間がかかってんだ?」
「サリサリ。異風の旋律は、最深部まで全く戦ってない。迷宮殺しのためだけに迷宮に入ってる。だから早い」
「はあぁぁぁ!?道中のドロップとかスキルを得るための経験とか、そういうの全部無視して迷宮殺しだけしてるってのかい!?
そりゃトーマたちはお金には困ってないんだろうけどさ。魔物討伐の経験を積まないのは勿体なくないかい?」
あ、そっか。この世界の人たちは討伐ボーナスを知らないんだもんな。
銀の乙女26人で迷宮神像を破壊すれば、トータルで26万SPを獲得できることになる。
むしろチマチマ道中で戦っているほうが勿体無いんだよな。
「ん~。サリサリが信じるかどうかは任せるけど、俺から1つ教えておきたい情報があるんだ。
実は金銭面でもスキル取得面でも、道中の魔物を倒していくよりも、迷宮殺しを優先したほうが効率がいいんだよね」
俺の言葉を聞いたサリサリは、先ほどまでの酔っ払い加減がまるで嘘だったかのように、真剣な眼差しで俺を見てくる。
「………………。
他ならぬトーマの言う事だ。一笑に付するのは馬鹿のすることか……。
すまないがトーマ、もう少し詳しく教えてもらえるかい……?」
サリサリの雰囲気に気付いた何人かも、俺たちの会話に聞き耳を立て始めたようだ。
ん~、まぁ音魔法は使わなくていいか。
サリサリに言ってしまえば、銀の乙女全員に共有される情報だろうし。
「まずは金銭面の話だけど、迷宮討伐すると心核ってアイテムが入手できただろ?あれっていくらで売れた?」
「ああ、あれはおったまげたねぇ。心核1つで白金板3枚だよ?
グリーンドラゴンの素材よりも高価な素材なんて、今まで目にしたこともないよ。
ま、グリーンドラゴンの素材を見たのだってこの間なんだけどさ」
これに関しては予想がついていたのだろう。サリサリは少しおどけた感じで話を聞いている。
「そうそう。ドロップアイテムを集めて迷宮殺しをするのと、1日1つ心核を売却するのは、どっちが効率よく稼げるって話さ。
ベイクで60階層より先に潜っている俺たちでさえ、1日で白金板3枚稼ぐのは大変なんだ。
今回頻出している野良迷宮なんて魔物も弱いし、ドロップアイテムはそこまで効率の良い稼ぎじゃないだろ?」
「まぁ金銭的な報酬面ならトーマの言う通りだね。確かに道中の魔物を無視してでも討伐を優先したほうが実入りが良いのは認めるよ。
でもスキル取得を考えるとそうもいかないだろう?
今回の迷宮殺しは狩人ギルドからの要請だから断れない。どうせ潜るなら、経験を積むのに効率が良い迷宮で沢山魔物を倒しておきたいじゃないか」
SPが確認できないんだから、討伐ボーナスの存在になんて気付けるわけないんだよな。
でも銀の乙女みたいな大規模パーティこそ、討伐ボーナスを優先するメリットが大きい。
「ここからの話を信じるかどうかは銀の乙女に任せるよ。信じなくても俺は怒ったりしないからな。
銀の乙女も迷宮殺しを達成したってことは、迷宮神像ダンゲルスヌーマを目にしただろ?」
えーと、1万SP獲得したのってどこだったかな。
確か……、60階層ソロってた時だったような気がする。
「迷宮神像を破壊してダンゲルスヌーマを解放するとだな、ダンゲルスヌーマから祝福が得られるんだよ。
具体的に言うと、俺が1人でベイクの迷宮60階層に潜って、ストレージがいっぱいになるまで魔物を殺したときと同じくらいの経験が、パーティ全員に送られるんだ。
道中の魔物を狩って経験を積むよりも、よほど膨大な経験を積めるんだよね」
「……待て待て、ちょっと待ってくれ。60階層に1人でってのも馬鹿げているが、その話に根拠はあるのかい……?そんな話初めて聞いたよ……?」
ソロについてはスキルさえ整っていれば誰でも出来るようになると思う。
攻撃範囲拡張の有る無しで全然変わってくるし。
「示せるような証拠は何もないなぁ。強いて言うなら、異風の旋律の強さの秘密の1つだと思ってくれていいよ。
俺はオッサンだけど、他のメンバーは若すぎるって思わないか?この若さでどうやってあんなにスキルを手に入れられたのかって思わない?
……正直、あまり広めたくない情報なんだけどね。銀の乙女には恩があるし、迷宮殺しを優先して欲しい状況だから、特別に教えた情報だと思って欲しい」
半分は嘘だけど。ウチのメンバーのスキル取得数は単純に、真面目に迷宮に潜ってるからでしかないからね。
でも外から見たら、10代でこのスキルの取得数は異常なはずだ。
ハロイツァが26歳で3等級になったことすら、リヴァーブ王国ではかなりのエリート扱いだったらしいからな。
「そ……、それが本当なら……。迷宮殺しを優先して行えば、銀の乙女のメンバーも、一気に強くなることが出来る。こういうことかいっ……!?」
「むしろ銀の乙女みたいな大きい狩猟団こそ、迷宮殺しを優先したほうが良いんだよ。
銀の乙女の実力と、ペルの移動速度を考えたら、1日に2つは迷宮を討伐できてもおかしくないだろ?
つうか明日か明後日あたりに、今回参加したメンバーで祝福の儀を受けてみりゃ一発だと思う。恐らく全員がスキルを得られるだろうからな。
あと2つも迷宮を潰してからなら、サリサリでさえ確実にスキルが得られるだろ」
サリサリがどのくらいスキルを得ているのかは分からないけれど、3万SPもあれば、1つくらいはスキルを獲得できるだろう。
「く……。でも普段迷宮外で活動してる私達には、今回の件はスクロール入手の貴重な機会なんだよな……。
いや、心核を売った金でスクロールを買えばいいのか……?」
「あ、スクロールで思い出した。
約束してた生活魔法のスクロール60本、今回持ってきてあるんだよね。
ストレージに死蔵されてる状態だから全部置いてくよ」
「みんな聞いてたねっ!?明日から銀の乙女は迷宮殺しを最優先だ!!
他の冒険者に知られる前に、1つでも多くの迷宮を殺していくよ!!
気合入れなぁっ!!」
「「「うおおおおおおおお!!」」」
ひぃぃぃ!
拠点が揺れてるんじゃないかと思うほどの雄叫びだ!
みんな女性だけど!
これで銀の乙女の迷宮殺しのペースが上がってくれれば、異風の旋律にも余裕が出てくれるはずだ。
他の冒険者にも共有したほうがいい情報なのかもしれないけれど……。
名も知らぬ相手にメリットを分配するよりも、俺は身内贔屓を選ぶ。
世話になった銀の乙女には、なるべく良い目を見てもらいたい。
ペル可愛いし。
ボールクローグでトーマに初めて傷をつけたのはペルだったのかい!
流石はペルだね!アハハハハハ!!」
くっそーサリサリめ、めちゃくちゃ笑いやがって!
こっちはめちゃくちゃ痛かったんだぞ!
首をかしげたペルが可愛すぎたから何の問題もないけどさ!
無事に銀の乙女の拠点に到着し、今は既に大宴会状態だ。
クリーヌの家族は人見知りをすることもなく、すでに銀の乙女のメンバーにめちゃくちゃ可愛がられている。
わかるわー。リス獣人めっちゃ可愛いよなー。
「トーマが食費を提供してくれたおかげで、今日はペルにも竜肉出してあげたからねぇ。ペルなりのお礼だったんだろうさ。
いやぁトーマが飲み物買ってきてくれて助かった!
食い物ばかりに気を取られて、飲み物の用意が不十分だったからねぇ。
しかし自分は飲まないのに、よくもまぁこんだけの酒を持ってきてくれたモンだよ!」
「俺はお子様舌だからさ、お酒はあまり美味しく感じないんだよねぇ。
でも冒険者も狩人もお酒好きな奴が多い気がしたからさ。せっかくだから用意してきたんだよ」
どうやらこの判断は正解だったようで、銀の乙女もサリサリもウチのメンバーも、クリーヌまでガバガバと浴びるように酒を飲んでいる。
この世界の住人怖いわーと言いたいところなんだけど、ハルも混ざって酒を浴びているのでコメントが出来ない。
俺とかクリーヌ一家の小さい子用に、果実を絞ったような飲み物とかもそれなりに用意してきたけどね。
それはそれで、「トーマは子供かよーー!?」と酒の肴にされたんだけど、まぁこの程度はからかいの範疇だろ。
「しっかし異風の旋律の迷宮殺しは早すぎるだろ。今日の分を合わせて26個だったっけ?どうやったらそんなに早く迷宮殺しが出来るんだい?」
「いやいや逆だろ?銀の乙女の実力なら、1日1つは迷宮討伐が可能なはずだろ。なんでそんなに時間がかかってんだ?」
「サリサリ。異風の旋律は、最深部まで全く戦ってない。迷宮殺しのためだけに迷宮に入ってる。だから早い」
「はあぁぁぁ!?道中のドロップとかスキルを得るための経験とか、そういうの全部無視して迷宮殺しだけしてるってのかい!?
そりゃトーマたちはお金には困ってないんだろうけどさ。魔物討伐の経験を積まないのは勿体なくないかい?」
あ、そっか。この世界の人たちは討伐ボーナスを知らないんだもんな。
銀の乙女26人で迷宮神像を破壊すれば、トータルで26万SPを獲得できることになる。
むしろチマチマ道中で戦っているほうが勿体無いんだよな。
「ん~。サリサリが信じるかどうかは任せるけど、俺から1つ教えておきたい情報があるんだ。
実は金銭面でもスキル取得面でも、道中の魔物を倒していくよりも、迷宮殺しを優先したほうが効率がいいんだよね」
俺の言葉を聞いたサリサリは、先ほどまでの酔っ払い加減がまるで嘘だったかのように、真剣な眼差しで俺を見てくる。
「………………。
他ならぬトーマの言う事だ。一笑に付するのは馬鹿のすることか……。
すまないがトーマ、もう少し詳しく教えてもらえるかい……?」
サリサリの雰囲気に気付いた何人かも、俺たちの会話に聞き耳を立て始めたようだ。
ん~、まぁ音魔法は使わなくていいか。
サリサリに言ってしまえば、銀の乙女全員に共有される情報だろうし。
「まずは金銭面の話だけど、迷宮討伐すると心核ってアイテムが入手できただろ?あれっていくらで売れた?」
「ああ、あれはおったまげたねぇ。心核1つで白金板3枚だよ?
グリーンドラゴンの素材よりも高価な素材なんて、今まで目にしたこともないよ。
ま、グリーンドラゴンの素材を見たのだってこの間なんだけどさ」
これに関しては予想がついていたのだろう。サリサリは少しおどけた感じで話を聞いている。
「そうそう。ドロップアイテムを集めて迷宮殺しをするのと、1日1つ心核を売却するのは、どっちが効率よく稼げるって話さ。
ベイクで60階層より先に潜っている俺たちでさえ、1日で白金板3枚稼ぐのは大変なんだ。
今回頻出している野良迷宮なんて魔物も弱いし、ドロップアイテムはそこまで効率の良い稼ぎじゃないだろ?」
「まぁ金銭的な報酬面ならトーマの言う通りだね。確かに道中の魔物を無視してでも討伐を優先したほうが実入りが良いのは認めるよ。
でもスキル取得を考えるとそうもいかないだろう?
今回の迷宮殺しは狩人ギルドからの要請だから断れない。どうせ潜るなら、経験を積むのに効率が良い迷宮で沢山魔物を倒しておきたいじゃないか」
SPが確認できないんだから、討伐ボーナスの存在になんて気付けるわけないんだよな。
でも銀の乙女みたいな大規模パーティこそ、討伐ボーナスを優先するメリットが大きい。
「ここからの話を信じるかどうかは銀の乙女に任せるよ。信じなくても俺は怒ったりしないからな。
銀の乙女も迷宮殺しを達成したってことは、迷宮神像ダンゲルスヌーマを目にしただろ?」
えーと、1万SP獲得したのってどこだったかな。
確か……、60階層ソロってた時だったような気がする。
「迷宮神像を破壊してダンゲルスヌーマを解放するとだな、ダンゲルスヌーマから祝福が得られるんだよ。
具体的に言うと、俺が1人でベイクの迷宮60階層に潜って、ストレージがいっぱいになるまで魔物を殺したときと同じくらいの経験が、パーティ全員に送られるんだ。
道中の魔物を狩って経験を積むよりも、よほど膨大な経験を積めるんだよね」
「……待て待て、ちょっと待ってくれ。60階層に1人でってのも馬鹿げているが、その話に根拠はあるのかい……?そんな話初めて聞いたよ……?」
ソロについてはスキルさえ整っていれば誰でも出来るようになると思う。
攻撃範囲拡張の有る無しで全然変わってくるし。
「示せるような証拠は何もないなぁ。強いて言うなら、異風の旋律の強さの秘密の1つだと思ってくれていいよ。
俺はオッサンだけど、他のメンバーは若すぎるって思わないか?この若さでどうやってあんなにスキルを手に入れられたのかって思わない?
……正直、あまり広めたくない情報なんだけどね。銀の乙女には恩があるし、迷宮殺しを優先して欲しい状況だから、特別に教えた情報だと思って欲しい」
半分は嘘だけど。ウチのメンバーのスキル取得数は単純に、真面目に迷宮に潜ってるからでしかないからね。
でも外から見たら、10代でこのスキルの取得数は異常なはずだ。
ハロイツァが26歳で3等級になったことすら、リヴァーブ王国ではかなりのエリート扱いだったらしいからな。
「そ……、それが本当なら……。迷宮殺しを優先して行えば、銀の乙女のメンバーも、一気に強くなることが出来る。こういうことかいっ……!?」
「むしろ銀の乙女みたいな大きい狩猟団こそ、迷宮殺しを優先したほうが良いんだよ。
銀の乙女の実力と、ペルの移動速度を考えたら、1日に2つは迷宮を討伐できてもおかしくないだろ?
つうか明日か明後日あたりに、今回参加したメンバーで祝福の儀を受けてみりゃ一発だと思う。恐らく全員がスキルを得られるだろうからな。
あと2つも迷宮を潰してからなら、サリサリでさえ確実にスキルが得られるだろ」
サリサリがどのくらいスキルを得ているのかは分からないけれど、3万SPもあれば、1つくらいはスキルを獲得できるだろう。
「く……。でも普段迷宮外で活動してる私達には、今回の件はスクロール入手の貴重な機会なんだよな……。
いや、心核を売った金でスクロールを買えばいいのか……?」
「あ、スクロールで思い出した。
約束してた生活魔法のスクロール60本、今回持ってきてあるんだよね。
ストレージに死蔵されてる状態だから全部置いてくよ」
「みんな聞いてたねっ!?明日から銀の乙女は迷宮殺しを最優先だ!!
他の冒険者に知られる前に、1つでも多くの迷宮を殺していくよ!!
気合入れなぁっ!!」
「「「うおおおおおおおお!!」」」
ひぃぃぃ!
拠点が揺れてるんじゃないかと思うほどの雄叫びだ!
みんな女性だけど!
これで銀の乙女の迷宮殺しのペースが上がってくれれば、異風の旋律にも余裕が出てくれるはずだ。
他の冒険者にも共有したほうがいい情報なのかもしれないけれど……。
名も知らぬ相手にメリットを分配するよりも、俺は身内贔屓を選ぶ。
世話になった銀の乙女には、なるべく良い目を見てもらいたい。
ペル可愛いし。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
388
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる