異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
284 / 580
8章 異風の旋律

254 心核の価値

しおりを挟む
「こいつが今回作った弓だぜ!名付けるなら『翠緑の風』ってところだ!
 グリーンドラゴンの背中の魔力発動体で作ってあって、魔力を通すと魔力体の矢を生み出すんだぜ! 
 もちろん実物の矢も使えるけど、魔力矢なら魔力が尽きない限りは撃ち放題だ!」


 マーサが見せてくれたのは、美しい緑色の複合弓だった。
 本体部分はグリーンドラゴンの背中に生えていた大木のような魔力発動体のようだが、他にも色々な魔物素材がふんだんに使用されている。
 これって値段を付けるとしたらいくらぐらいになるんだろ?


「矢のほうはもうちょっと時間をくれ!
 この弓と合わせて、魔力で戻ってくるような機構を組み込む予定だからよ!
 それが成功すりゃ、強力な矢を撃ち放題出来るって寸法さ!」


 すっげぇな。マーサのテンションが振り切れてる。
 しかし弾切れを心配せずに使える弓ってのは最高だな。

 現状だと魔力が切れると撃てなくなりそうだが、その時は実物の矢を番えればいいだけだ。


「我ながらいい出来だと思うぜ!こんなに魔物素材を使いまくれるなんて、ミルズレンダでもありえねぇよ!
 この弓で質の良い矢を放てば、恐らくグリーンドラゴンにも傷をつけられるはずだ。
 これから作る強力な矢を合わせれば、間違いなくグリーンドラゴンも貫けるぜ!私が保証する!」


 マジか!?グリーンドラゴンに傷をつけられる威力ってのはマジで嬉しいんだけど!

 任意発動スキル強化を取ったけど、現状魔装術がどれほど強化されてるのかいまいちわからないんだよね。
 強化前の魔装術でも余裕の魔物しか相手してないから。


「あ、素材と言えばマーサ。心核って装備品に使えたりするの?
 今回ボールクローグに行って迷宮殺してきたんだけどさ。使い道が分からなくて」


 シルバーライト製武器の既製品が白金貨1枚くらいの価値で、心核1つで白金板3枚とかって話だからな。
 もし装備に使えるんであれば、相当強力な装備が完成しそうな気がする。
 装備素材に使えるのか俺にはわからないんだけど。

 っと、さっきまでテンションMAXだったマーサが、目玉が飛び出そうなほど目を見開いて俺を凝視しているんだが。
 え、なにこのマーサ怖い。ホラー映画か何か?


「………………。
 おいトーマよぉ。私の聞き間違いじゃなけりゃあ、心核を手に入れたって言ったよな?」

「ああ、今回のボールクローグの仕事が迷宮殺しだったんだよ。だから心核が手に入ったんだ。
 でも何の素材なのか知ってる奴が居なくてね。
 金には困ってないし、死蔵させておくのも勿体無いから、もしマーサが使えるなら使ってもらおうかと思って」

「ふざけんなよお前ええええええ!!!
 たった今最高傑作の装備品を作ったつもりだったってのに、あっさりそれ以上の素材を持ち込みやがってえええええ!!!
 バカなのか!!?お前バカなんだろトーマァッ!!!」


 すげぇ。マーサが情緒不安定だ。
 テンションが最高と最低を行ったり来たりしてる。
 相変わらず忙しい奴だな。


「ってことは装備に使えるってことなんだな?
 悪いマーサ。俺たちは心核の用途を良くわかってないんだよ。
 マーサが知ってる範囲でいいから説明してくれる?」

「あああもうなんでお前は全然動じてないんだよっ!!
 くそっ!取り乱して悪い!!ちょっとだけ落ち着くを時間くれ!!」


 マーサが両手で顔を覆って深呼吸している。
 職人であるマーサがここまで取り乱すってことは、相当やばい素材なんだろうな。
 今ストレージに35個入ってるけど。


「ねぇねぇトーマ。数についてはマーサが落ち着くまで伝えるのはやめてあげてねー?」


 リーンが小声で耳打ちしてくる。
 マーサへの追い討ちを止めるリーンセンパイは優しいなぁ。


「っし、もう大丈夫だ。取り乱して悪かった!
 まずは迷宮殺しおめでとう。お前らはどこまでも私の想像を超えてくるすげぇパーティだと思うぜ」

「おう。ありがとうな。
 それで心核ってどんなものに使える素材なんだ?
 装備作成に限らず、心核で作れるものを教えて欲しい」


 ストレージから心核を1つだけ取り出して、マーサに手渡す。


「これが、心核か……!
 私も実際に手にするのは初めてだぜ……!」


 両手で大切そうに持って、感動したように心核を見つめている。
 なんとなく邪魔しちゃ悪い気がするので、マーサの気が済むまで待ってやるか。


「……………………。
 …………。
 あっ悪い!つい感動しちまった!
 えっとなんだっけ、心核の使い道だったか?」


 マーサさんおかえりなさいませ。


「えっと、まずは一般的な用途からだな。
 心核ってのは本当に特殊な素材でな。心核が無いと作れないものってのがそれなりにあるんだ。
 その代表的なものが『儀式魔法陣』だな。
 スキル神殿では祝福の儀と識別、冒険者ギルドでは鑑定、『魔法ギルド』では『解析』の儀式魔法陣が使用されてるし、奴隷商館や商工ギルドには、それぞれに対応した契約魔法陣が設置してあるんだ」


 あ、冒険者ギルドの鑑定って儀式魔法だったのか。
 っていうか俺って儀式魔法覚えれるし、儀式魔法陣作ったらスキル神殿に行かなくても良くなったりする?


「マーサちょっとだけストップ。
 ごめんシン。魔法ギルドと解析ってなんだか教えてくれる?」

「あ、そうか。トーマは魔法ギルドを利用したことないんだったね。
 魔法ギルドはその名の通り、スクロールの流通を管理しているギルドだね。
 スクロールの買取は冒険者ギルドでもやってたし、スクロールは全部ドロップしたものしか使ってなかったから、トーマは魔法ギルドを利用する機会が無かったんだね」


 あー。そういえばスクロールが売ってるところは見たことなかったな。
 音魔法を拾ったときに、リーンが売り物のスクロールは見たことがあるって言ってたのに、実際に売ってるところは目にしたこと無かったんだよね。
 なるほど、スクロールの販売は専用のギルドが行っていたわけか。


「それで『解析』なんだけど、簡単に言えば識別と同じで、取得している魔法を確認できるんだよね。
 まぁ解析を使わないといけないほど魔法を沢山覚えられる人って少ないから、識別と比べて利用者は少ないんだ。
 トーマやハルには全く必要のない儀式魔法だしね。
 魔法ギルドと解析についてはこんなところだよ」


 異邦人にはステータス確認が出来るからな。
 スクロールの購入も考えていなかったから、今まで全く縁が無かったのか。


「話の腰を折って悪かった。マーサ、続きを頼む」

「魔法ギルドを使用しねぇでお前らの魔法の数はありえねぇんだけど、まぁいいわ。
 儀式魔法陣の他に、特殊な魔導具製作の材料としても使われるぜ。
 代表的なのは陽天の報せを鳴らしてる鐘や、ターミナルなんかだな。
 心核でしか作れない魔導具ってのは、用途が特殊なものが多い」


 ターミナルが作れるのは魅力的だな。
 ターミナルは触れなければゲートに登録できないから、人里離れた俺だけの別荘とか作れるかもしれない。


「儀式魔法も特殊魔導具も国に管理されてるもんだからな。勝手に作ると重罪だから注意しろよ」


 ですよねー。私的に使うのはアウトか。
 もしも作る場合は、正式に国にお伺いを立てよう。


「そして、装備品の素材に使用する場合だけど……。
 心核を使用した武器、防具ってのは王国でも何点かはあるんだよ。俺も見たことがあるしな。
 でもそれら全てが国宝指定されていて、国の有事の際にしか持ち出しを許可されないほどの装備品でな。
 普段は武器としてではなく芸術品扱いされてて、王都で展示されてるんだよ。
 リヴァーブ王国建国神話に出てくるレベルの装備品だからな。どんな性能なのかは想像も出来ねぇ」


 神話級の武器かぁ。
 そんなもの持ち歩いてるとやばいかなぁ?


「心核装備の価値は分かったけど、2つ聞かせて欲しい。
 マーサは心核を使って装備品を作れるのか。
 心核で装備を作った場合、持ち歩くとマズいのか?」

「心核を使って装備品を作れるかは、実際に試してみねぇとわからねぇ……。任されるなら絶対に作ってみせるがな。
 心核装備を持ち歩くのは、多分問題ねぇハズだ。見た目だけで心核が使われている装備を見抜くことは出来ねぇ……ハズ。
 私が見た王都で展示されていた剣が、間違いなく本物であったなら、の話だけどな」


 あー、展示品だから本物じゃない可能性もあるのか。
 まぁ心核はこれからいっぱい取れそうだしね。とりあえずって気持ちで作ってもらってもいいかな?


「とりあえずマーサに任せようかな。俺からの要望はただ1つ。マーサが心核を使って作りたい装備を作ってみて欲しい。
 誰用の装備でもいいし、武器でも防具でも構わない。失敗しても咎めない。
 生きるミルズレンダと言われたマーサに出来る、最高の一品を作ってくれ」

「はっ!この上なく厄介な注文出しやがって!任されたぜぇ!
 他の装備品の作成よりも、心核装備を優先していいんだよなぁ!?」

「もちろんだ。余計な事は考えなくていい。他に必要な素材があったら遠慮なく言え。
 だからマーサは最高の一品を作り上げることだけに集中して欲しい」

「ああ、ありがとうよトーマ。素材は充分だ。これで作れなきゃ私の腕のせいしかありえねぇ。
 まさか心核を使って装備を作れるとはなぁ。
 こんなの、装備職人としての最高の誉れってもんだぜぇ……!」


 マーサが静かに燃えている。
 敵意を向けられているわけでもないのに圧倒されそうなほどの闘志だ。

 心核ってそれほどに特殊な素材なんだなぁ。


 ……あと34個あるのは黙っとこ。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...