異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
285 / 580
8章 異風の旋律

255 カルマと再会

しおりを挟む
 マーサが燃えまくっていたので、邪魔するのも悪いし、工房を出てボールクローグの宿に戻った。
 新しい弓、翠緑の風については完成品扱いなので、一応2本とも受け取ってきた。


「トーマ……。マーサに教えてあげなくて良かったの……?心核がいっぱいあるんだって……」


 リーネさん。そこは空気読んでください。
 あのマーサにそんなこと言える訳ないじゃないですかー。

 心核が大量に入手できる機会って、神様も想定してなかったんだろうなぁ……。


 なおその夜の寝室は、マーサに負けないくらい燃え上がった模様。



 翌朝起床して、いつも通り狩人ギルドへ向かう。

 受付にはエルハが待っていて、「予定通りあの情報は昨晩公開させてもらったわ」とだけ告げられた。
 ふむ。これで迷宮殺しに終わりが見えれば良いんだけどね。

 馬車に乗り込み迷宮討伐へ。


「昨日討伐された迷宮は12。うち2つが銀の乙女。新しく確認された迷宮の数は5つ。残っているのは28箇所」

「銀の乙女が動いてくれたのはありがたいな。でも迷宮の発生ペースも上がってるのか……」


 状況は好転してるけど、予断は許さないって感じか。
 最悪の場合は夜通し迷宮殺しを続行して、一晩で狩り尽くすことなんだろうけど、それをやったら別方面から厄介事が舞い込みそうだから出来ればやりたくない。
 これは本当に最後の手段に取っておく。
 
 他の冒険者達も討伐に力を入れてくれたら、こんな方法取らずに済むしな。




 今日も3つずつ迷宮を殺して業務終了。
 もはや完全に作業になりつつあるけど、今日の2つ目に討伐した迷宮は今までと少し勝手が違った。

 積層型迷宮は今まで沢山討伐してきたけど、その迷宮は積層型ではあったけれど、下に降りるのではなく上に上っていくタイプの迷宮だったのだ。


「へぇ。珍しいね。確か高層型迷宮って言うらしいよ。
 管理迷宮の中では1箇所くらいしかないんじゃなかったかな?比較的珍しい種類の迷宮みたいだね」


 合流したシンに聞いてみたら当然のように知っていた。
 シンは商人になるための教養以上を身につけてる気がしてならないわ。 

 狩人ギルドでいつもの定例報告を済ませる。
 カルマさんとの面会は狩人ギルドに迎えに来てくれるという話なので、宿には戻らずこのまま待つ。

 心核がどんどん貯まっていくことに若干の恐怖を感じていたら、スカーさんとカルマさんが狩人ギルドに入ってきたのが見えた。


「ご無沙汰しております。パーティを結成されたと聞きましたよ。
 ボールクローグへようこそ。異風の旋律の皆様。
 この度はボールクローグのために尽力してくださっているそうですね。
 カルネジア家を代表してお礼申し上げます」


 そう言ってカルマさんは初めて会ったときと同じように、軽くウインクして見せた。
 変わらないなぁこの人は。


「久しぶりカルマさん。スカーさんも仲介ありがとう。
 さて、迎えに来たってことは移動するんだよね?パーティ全員連れてってもらえるのかな?」

「それはもちろんです。私オススメの店で夕食をご馳走させて頂きますよ。
 それにしても皆様、随分と腕を上げられましたね。
 あの後ハロイツァ様にもスキルを取得させましたが、それ以上の成長を感じます」


 おおすげぇな。さすがは達人って奴?
 俺なんか未だに相手の強さとか一切感じないんだよなぁ。


「そうなの?もちろんあのときよりは成長してる自信はあるけどさ。そういうのって見ただけで分かるもんなの?」

「ふふ。あの時と比べまして、トーマ様はとても自然体になられました。
 私に対して警戒をしていないわけでもないのに、緊張が見られませんから。
 あの時の自然体は諦めから来るものだったと思いますが、今の自然体は自信に裏打ちされているように感じますね。
 皆様とお話するのがとても楽しみになってきました。
 ささ、馬車にお乗りください。早速参りましょう」


 ギルドの前に止めてあった、意外と質素な感じの馬車に乗り込む。
 ちなみに馬車を引いていたのはブラックタイガーだった。ベイクの迷宮36階層の魔物だったか。


「一応以前交わした約定は継続した状態ですからね。今回用意した馬車もカルネジア家のものは使用出来ませんでした。
 少々簡素な造りではありますが、何卒ご容赦下さいませ」

「乗れれば気にしないよ。俺たちは冒険者だからね。そんな繊細じゃないさ」


 なるほどね。カルネジア家の馬車はもっと豪華なのか。
 そんなもんで乗り降りしたらアホみたいに目立ちそうだから、かえって助かった気がする。


 そして到着したのは、ちょっと高そうではあるけど、あくまで大衆食堂の域を出ないような感じの店だった。
 店内は賑っていて、とても繁盛しているようだ。


「この店は私の行きつけで御座いましてね。
 私と同じ時期に屋敷で働いていた料理人が独立して開いた店なのです。
 手ごろな値段なのですが味は保証しますよ」

「へぇ~いいね。下手な高級店よりもこういうとこのが好きだよ。
 流石カルマさん。良い線突くねぇ」

「お褒め頂恐縮ですが、実は裏が御座いましてね。
 馬車と一緒で、一応今回は非公式の面会ということになりますので、食事代は私持ちなのです。
 なので仕方なく、安くて旨い店をご紹介させて頂くしかなかっただけなのですよ。
 ささ、部屋は予約してあります。どうぞお入りください」


 カルマさんに促され入店した。
 ちなみに今回はスカーさんも立ち会うことになっている。
 調査のためにカルネジア家と接触したのだから、その調査を担当しているスカーさんが立ち会うのは当たり前だ。
 1人分多く払わなきゃいけないカルマさんにはちょっと申し訳ないけどな。


 用意された料理はどれも素晴らしかった。
 迷宮資源を極力使わない、ボールクローグ近郊で取れた食材をふんだんに使っている。
 昨晩ベイクで食べた料理も美味しかったが、同じ食材でも調理の仕方でこんなにも味が変わるのかと、感心させられる味だった。


「しかしトーマ様も無用心で御座いますね。
 この料理に毒が盛られている可能性や、この店で襲撃される可能性などは考慮されていないのですか?」

「個人の武を最も重んじるカルネジア家がそんなダサいことするの?
 まぁそれ以前に、俺は別にカルネジア家と対立してる覚えはないからね。カルネジア家からも敵視されているとは思ってないだけだよ」


 無用心も何も、カルネジア家が俺を排除する理由がそもそもないだろうって話。
 ハロイツァの撃退が理由になるなら、あいつは犯罪奴隷になんかされずに助けられていただろうからな。


「ふむ。見透かされておりますねぇ。確かにカルネジア家には異風の旋律に対して悪意を抱いてる者はおりません。一目置いている者はそれなりに居るようですが。
 つまらない前置きでした。忘れてください。それでは本題に移りましょうか。
 今回の騒動の解決のためにカルネジア家と接触したかったのだとお聞きしております。
 異風の旋律の皆様、タイデリア家のスカー様。本日は一体どのようなお話なのでしょう?」


 さてさて、手がかりが得られるかは分からないけれど、まずは話を聞いてみないことに始まらない。
 しかし、当主に心酔してるっぽいカルマさんに、当主に恨みを持っている人物は?なんて聞いてもやぶ蛇になりかねない。

 どんな質問をするべきだろう?
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...