異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
306 / 580
8章 異風の旋律

276 異邦人タケル③

しおりを挟む
「ああ。俺は迷宮経営をして、スローライフが送りたかったって言ったろ……? 迷宮の魔力使って便利なものを生み出してさ。護衛してくれる魔物とか、家の事を代行してくれる魔物とかを生み出して、のんびり暮らすのが目的だったんだよ。
 でもさ。『迷宮操作』で出来ることって、基本的には誘導なんだよ。指定の場所に迷宮を発生させやすくしたり、発生した迷宮の暴走を誘発させたりとかは出来るけど、どんな迷宮を生み出すのか指定は出来ないし、生み出したあとの迷宮を消し去ったりすることも出来ない。中に入れば当然俺も襲われるしな……」

「……つまりは、迷宮操作なんて名前の割には、迷宮の制御が殆ど出来ない能力って事なのか?
 自在に操れるって要素は、迷宮の発生と魔物の氾濫だけ……?」

「ああ、その認識で合ってると思う。
 迷宮を生み出すだけ生み出して制御が出来ないなんて、使い道が全然ないだろ?
 ……無差別テロでも起こさない限りはっ!」


 なるほどな。迷宮操作なんて能力の割には代償が少ないと思ったけど、使用コストは低くてリスクが大きいって感じの能力なのかもしれない。
 迷宮を発生、暴走を任意に起こすことは可能だけど、タケル本人も襲われるんじゃあ簡単には扱えないもんな。使い勝手が悪い分、使用コストは軽めに設定されているっぽい。


「ってことは、タケルが保護された今、新しく迷宮が発生することは無いと思っていいのか?」

「ん……、それは恐らく、としか言えないかな。
 能力が能力だけに、いままで検証とかして無かったからさ。能力の詳細まで把握しきれているかどうか……。
 ただ、感覚的にはスキルを発動している感じがしない、な」


 フォースだったか。魔法で能力の使用を強制されていたのを解除したわけだから、意識も落ちていたし、もうスキルは使ってないと見ていいかな?


「タケル。話してくれてありがとな。
 そんじゃ俺は戻ります。ディオーヌ様、タケルの事はよろしくお願いします。終わったら迎えに来ますので」

「ええ、引き受けましょう。どうかご武運を」


 とりあえず今はこれ以上状況が悪化しないことが確認できただけで充分だ。
 あとはこの事態を、如何に犠牲を抑えて乗り切るかだ。


「待ってくれ……! トーマ、これからアンタは、俺が起こした迷宮の暴走を解決しに行くんだよな……!?
 だったら俺も、俺も連れてってくれないか……!?
 俺がやっちまったことで危険に晒されてる人たちがいるってのに、当の俺が安全地帯で守られてるなんて冗談じゃねぇよ!! 俺が行ったって出来る事なんか何もないかもしれないけどさ、それでも、自分のしでかしたことから目を背けちまったら、もう楽しくなんて生きていけないだろ!?」

「……タケルの気持ちも分かるけど、命の保障は全く出来ないぞ。
 それにお前に関して言えば、ロンメノにも狙われてるからな。街中でも安全とは言い難い」

「足手纏いになるのも、危険な場所だってのもわかってる! その上でお願いしてるんだよ!
 頼む! 例えなんの力になれなかったとしても、自分が起こしてしまったことの結末くらい、最後まで見届けさせてくれっ!!」


 ……タケルをボールクローグに連れて行くのは合理的じゃない。
 合理的じゃあないんだけど、連れて行ってやりたいとも思う。

 洗脳されて強制的に悪用された自分の能力から目を逸らさない、なかなか熱い男じゃないか。嫌いじゃない。


「あ~ディオーヌ様済みません。タイデリア家のゲート使いが着けてるマスクとマントって、借りれたりしませんかね?」

「……タケルさんをお預かりするよりも当家の負担は軽くなりますから、その程度でしたらすぐにご用意できますよ。
 ですが、トーマさんらしくありませんね。タケルさんをボールクローグに同行させる危険性は、私以上に認識されていると思っているのですが」

「はは、俺も男の子なんで。命を賭けるって言ってる男の邪魔は、したくないんですよ」


 タケルは悪い奴じゃない。悪い奴に利用されただけだ。
 アリスたちと比べると気概があって良い奴に感じる。


「つ、連れてってくれるのか!?」

「ただしこっちの指示には確実に従ってもらうからな。
 ディオーヌ様から借りる衣装を、またここに戻ってくるまでは絶対に脱がないこと。
 この後紹介するけど、俺のパーティメンバー以外には絶対についていかないこと。人伝に伝言することもしないからな。俺のパーティ以外からの指示は全部無視してくれ。
 ちなみに9等級って言ってたけど、祝福の儀、スキルはもう獲得したことがあるのか?」

「い、いやまだスキルは取得できてないな。祝福の儀って金貨3枚なんだろ?手が出なかったんだ。
 SPは今のところ12SP貯まってる」


 まだ魔装術の取得条件である15SPには届いていないか。
 そういえば俺の場合は、9等級になったのとSP初獲得がほぼ同時だった気がするな。
 そう考えるとタケルは9等級にしては頑張ってる方なのかも。


「15SP稼げていれば、魔装術ってスキルが覚えられるんだけどな。ま、こればっかりは仕方ない。
 さて、命の保障は出来ないと言ったが、みすみす殺されてやるつもりなんてねぇからな。
 覚悟を決めろよタケル。自分のしたことから目を逸らさない覚悟と、それでも絶対生き残る覚悟をな」

「覚悟はしたっつうの! いや、実際に現場に行ったら揺らいじまうかもしれないけどさ……。
 誰かに簡単に利用されるような情けない俺だけど、この覚悟は自分で選んだ道なんだよ!」


 ディオーヌ様から衣装を受け取り、タケルが装着する。
 マントのおかげで性別すらわからないし、仮面のおかげで顔も確認できない。
 ボールクローグに着いたら飲み食いも制限されそうなので、ターミナル広場に向かう間に、馬車の中で軽く食事をさせておいた。

 物資の輸送に、タイデリア家から2名ほどゲート使いを派遣してもらえた。
 ゲート使いを普通に複数抱えてるタイデリア家怖いっす。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...