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8章 異風の旋律
278 おとり作戦① ガールズトーク ※リーン視点
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「全くトーマも心配性だよねー? 私達だって迷宮殺しも成功させてるっていうのにさー」
わざわざ街を出るところまで見送りに来たトーマを思い出して、思わず笑っちゃう。
なんだか、ベイクから行商に出た日を思い出しちゃった。
「ふふ、そうですね。ただ、トーマの考えている事は私には想像できない部分もありますからね。
トーマには、私たちが気付いていない懸念があるのかも知れません」
トルネは固いなー。でもその警戒の根拠もトーマなんだから、やっぱりおかしくなっちゃう。
「異風の旋律っていっつもみんな一緒に行動してるから、こうして女だけで行動するのって珍しいよねー。
これはこれで新鮮な気分だよー」
「うん。私もそう思ってた。あんまりのんびりした日々を過ごしたことないもんね。毎日迷宮潜ってるし。
もう少し私達だけで遊んだりしてもいいかも?」
「それは楽しそうだね……! 私、体質のせいであまり人と関われなかったから、これまでの分を取り返すくらい楽しく過ごそうって思うんだ……!」
楽しく毎日を過ごす。いいよね。明日が楽しみになる言葉だよっ。
私達4人は名実共に仲間であり家族なんだし、もっともっと仲良くしていきたいよねっ。
ハルだって兄さんと結婚するなら、私のお義姉さんになるんだし?
女しかいない空間って新鮮だなぁ。私はずっと兄さんと一緒だったし。
護送中の2人は意識もないし数に入りませんっ!
「今回トーマは頑張っているけど、犠牲を全く出さずに氾濫を乗り越えるのは、流石に厳しいと思うんだよねー。
トーマは今まで信じられない事を沢山やってのけてきたけど、今回の場合は、ボールクローグが滅亡しないだけでも奇跡に近いことだと思うしー」
「そうだよね……。私には自己犠牲は許さないーなんて言っておきながら、今トーマがやってることってなんなのーって感じだよ……。」
「うん。トーマは不誠実な対応されると、割と簡単に相手を切り捨てちゃうイメージがあるんだけど、被害者に非がないと思った時って限界まで頑張っちゃうイメージはあるかな」
「そうですね。それに今回はシンも率先してトーマの補助を買って出ていますからね。異風の旋律はあの2人が中心ですから、私たちが協力しないわけにもいきません」
確かになぁ。普段ならトーマも兄さんも、ボールクローグを諦めて逃げちゃいそうなものなのにねー。
ボールクローグが巻き込まれただけってなったら、逆に逃げるのやめちゃうんだもん。素直じゃないんだよねー。
「うん。それよりも聞きたいんだけど、リーンとトルネって、そろそろ子供が出来てたりしないの?
私と合流する前からトーマと一緒になってたんだから、もう結構経つよね? 体調悪くなったりしないのかな?」
「あーそれトーマにも聞かれたなー。ニホン?では妊娠すると具合が悪くなっちゃう人が多いって話だよねー。
でもこっちではあんまりそういう話って聞かないんだよね。私もトルネも体調に問題はないしさー」
「そうですねぇ。それに、ハルやトーマたちの世界には、子供が出来た事を判別する方法があるみたいですけど、こっちにはそういった手段がありませんからね。
お腹が膨れてきて初めて分かる、という感じですね」
「子供かぁ……。私も早く子供が欲しいなぁ……」
「うん。リーネもすぐ出来ると思うな。トーマも良く頑張ってると思うよ」
なんだろう? 兄さんもトーマもいないと、みんなと話す話題が変わっくる感じがするなぁ。
兄さんもトーマのことも心から信頼してるつもりだけど、女だけで話すのもなんだか楽しい。
「さて、街から結構離れましたから、そろそろ警戒区域ですかね。
トーマの予想では私たちが居る間に襲ってくるって話でしたけど、純粋に救出だけを考えるなら、私たちが去った後を狙うべきですよね?」
「んー、そこは半々だよねー。トーマには確信がある感じだったけど、ここまで用心深い相手が短絡的に行動を起こすのかって言われるとねー」
伐採が済んでいるエリアはもう抜け切って、今進んでいる街道の両端は木々が生い茂っている。隠れる場所は沢山あるし、襲撃がしやすそうな地形ではある。
それでも私たちが幾つも迷宮を殺していた話は、調べればすぐ分かることのはずだよね。
救出を優先するのであれば、私たちが去った後に動き出すのが合理的。
なのにトーマは、俺ならみんながいるところを襲う、って言ってるんだよねー?
トーマの考えの根拠が、私にはいまいち理解できてないかなぁ。
「皆さん、どうやらトーマの考えのほうが当たってるようですよ。戦闘準備を」
御者を務めるトルネから短く警告が届く。
その声の根拠を探ってみると、街道を塞ぐように大木が横倒しにされていた。
どう考えても、馬車の足止め目的だとしか思えないよね。
「悪いなお嬢さん方。運んでる2人は我々の同志でね。大人しく引き渡してくれると嬉しい」
足止めされた馬車の背後から、20人前後の男が現れた。
そこまでの実力者には見えないけど、人数で圧倒しているためなのか、変な余裕が感じられる。
「この2人はボールクローグを危機に陥れた張本人ですよ? その2人を引き渡せと言われて、はいそうですかと従えるわけがないでしょう?」
実際に悪いのはブルガーゾって感じもするけどね。
それでもこの2人だって計画の実行犯の1人なのだから、責任がないなんて言わせないけど。
「ヒュウ! 遠目で見てたときも思ってたけど、やっぱり美人揃いじゃねぇか! みんなへの手土産にちょうどいいぜ!」
「そうだな! 全体的に肉付きは良くねぇが、容姿は悪くねぇ! 同志たちにもたまにはご褒美ってもんが必要だよなぁ!?」
うわ……。なんだか嫌な事を思い出しちゃうな。
ん~~! なんでこんなどうでもいい男ばかりに求められて、トーマはもっと求めてくれないの~っ!?
4人とも素早く馬車から降りて、迎撃体勢を取る。
ハルとリーネはセットで動いてもらう予定。
今回こちらにとって有利なのは、馬車の中の2人を守る必要がないってことだ。
でも、なるべく相手にそのことを悟られないようにしなくちゃね。
わざわざ街を出るところまで見送りに来たトーマを思い出して、思わず笑っちゃう。
なんだか、ベイクから行商に出た日を思い出しちゃった。
「ふふ、そうですね。ただ、トーマの考えている事は私には想像できない部分もありますからね。
トーマには、私たちが気付いていない懸念があるのかも知れません」
トルネは固いなー。でもその警戒の根拠もトーマなんだから、やっぱりおかしくなっちゃう。
「異風の旋律っていっつもみんな一緒に行動してるから、こうして女だけで行動するのって珍しいよねー。
これはこれで新鮮な気分だよー」
「うん。私もそう思ってた。あんまりのんびりした日々を過ごしたことないもんね。毎日迷宮潜ってるし。
もう少し私達だけで遊んだりしてもいいかも?」
「それは楽しそうだね……! 私、体質のせいであまり人と関われなかったから、これまでの分を取り返すくらい楽しく過ごそうって思うんだ……!」
楽しく毎日を過ごす。いいよね。明日が楽しみになる言葉だよっ。
私達4人は名実共に仲間であり家族なんだし、もっともっと仲良くしていきたいよねっ。
ハルだって兄さんと結婚するなら、私のお義姉さんになるんだし?
女しかいない空間って新鮮だなぁ。私はずっと兄さんと一緒だったし。
護送中の2人は意識もないし数に入りませんっ!
「今回トーマは頑張っているけど、犠牲を全く出さずに氾濫を乗り越えるのは、流石に厳しいと思うんだよねー。
トーマは今まで信じられない事を沢山やってのけてきたけど、今回の場合は、ボールクローグが滅亡しないだけでも奇跡に近いことだと思うしー」
「そうだよね……。私には自己犠牲は許さないーなんて言っておきながら、今トーマがやってることってなんなのーって感じだよ……。」
「うん。トーマは不誠実な対応されると、割と簡単に相手を切り捨てちゃうイメージがあるんだけど、被害者に非がないと思った時って限界まで頑張っちゃうイメージはあるかな」
「そうですね。それに今回はシンも率先してトーマの補助を買って出ていますからね。異風の旋律はあの2人が中心ですから、私たちが協力しないわけにもいきません」
確かになぁ。普段ならトーマも兄さんも、ボールクローグを諦めて逃げちゃいそうなものなのにねー。
ボールクローグが巻き込まれただけってなったら、逆に逃げるのやめちゃうんだもん。素直じゃないんだよねー。
「うん。それよりも聞きたいんだけど、リーンとトルネって、そろそろ子供が出来てたりしないの?
私と合流する前からトーマと一緒になってたんだから、もう結構経つよね? 体調悪くなったりしないのかな?」
「あーそれトーマにも聞かれたなー。ニホン?では妊娠すると具合が悪くなっちゃう人が多いって話だよねー。
でもこっちではあんまりそういう話って聞かないんだよね。私もトルネも体調に問題はないしさー」
「そうですねぇ。それに、ハルやトーマたちの世界には、子供が出来た事を判別する方法があるみたいですけど、こっちにはそういった手段がありませんからね。
お腹が膨れてきて初めて分かる、という感じですね」
「子供かぁ……。私も早く子供が欲しいなぁ……」
「うん。リーネもすぐ出来ると思うな。トーマも良く頑張ってると思うよ」
なんだろう? 兄さんもトーマもいないと、みんなと話す話題が変わっくる感じがするなぁ。
兄さんもトーマのことも心から信頼してるつもりだけど、女だけで話すのもなんだか楽しい。
「さて、街から結構離れましたから、そろそろ警戒区域ですかね。
トーマの予想では私たちが居る間に襲ってくるって話でしたけど、純粋に救出だけを考えるなら、私たちが去った後を狙うべきですよね?」
「んー、そこは半々だよねー。トーマには確信がある感じだったけど、ここまで用心深い相手が短絡的に行動を起こすのかって言われるとねー」
伐採が済んでいるエリアはもう抜け切って、今進んでいる街道の両端は木々が生い茂っている。隠れる場所は沢山あるし、襲撃がしやすそうな地形ではある。
それでも私たちが幾つも迷宮を殺していた話は、調べればすぐ分かることのはずだよね。
救出を優先するのであれば、私たちが去った後に動き出すのが合理的。
なのにトーマは、俺ならみんながいるところを襲う、って言ってるんだよねー?
トーマの考えの根拠が、私にはいまいち理解できてないかなぁ。
「皆さん、どうやらトーマの考えのほうが当たってるようですよ。戦闘準備を」
御者を務めるトルネから短く警告が届く。
その声の根拠を探ってみると、街道を塞ぐように大木が横倒しにされていた。
どう考えても、馬車の足止め目的だとしか思えないよね。
「悪いなお嬢さん方。運んでる2人は我々の同志でね。大人しく引き渡してくれると嬉しい」
足止めされた馬車の背後から、20人前後の男が現れた。
そこまでの実力者には見えないけど、人数で圧倒しているためなのか、変な余裕が感じられる。
「この2人はボールクローグを危機に陥れた張本人ですよ? その2人を引き渡せと言われて、はいそうですかと従えるわけがないでしょう?」
実際に悪いのはブルガーゾって感じもするけどね。
それでもこの2人だって計画の実行犯の1人なのだから、責任がないなんて言わせないけど。
「ヒュウ! 遠目で見てたときも思ってたけど、やっぱり美人揃いじゃねぇか! みんなへの手土産にちょうどいいぜ!」
「そうだな! 全体的に肉付きは良くねぇが、容姿は悪くねぇ! 同志たちにもたまにはご褒美ってもんが必要だよなぁ!?」
うわ……。なんだか嫌な事を思い出しちゃうな。
ん~~! なんでこんなどうでもいい男ばかりに求められて、トーマはもっと求めてくれないの~っ!?
4人とも素早く馬車から降りて、迎撃体勢を取る。
ハルとリーネはセットで動いてもらう予定。
今回こちらにとって有利なのは、馬車の中の2人を守る必要がないってことだ。
でも、なるべく相手にそのことを悟られないようにしなくちゃね。
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