異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

297 迷宮都市シャンダリア

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 迷宮都市シャンダリア。
 トルネの母が幽閉されていた場所であり、ちょっと前までハロイツァが治めていた街か。

 ……ハロイツァが治めていたってだけで不安になるのすげぇな。


「えっと、どうするかな? 恐らくタイデリア家のほうから接触してくるって話だったから、ちょっと待ちの時間になるんだけど、なにしようか?
 各種ギルドに用事はないし、いつ連絡が来るか分からない状態で迷宮に入るわけにもいかないし」

「ん、確かに僕たちから見ると、シャンダリアには特に用事はないよね。
 いつも通り救貧院に寄付でもしながら、適当に街を見て歩くのもいいんじゃないかな?
 少しのんびりした時間を過ごしたいよ」

「あ~そりゃそうだな。それじゃせっかくだしシャンダリア観光と洒落込もうか。
 トルネにはあんまり楽しめないかも知れないけどさ」

「いや、そうでもないですよ? 私は自由に歩き回ったり出来ませんでしたからね。
 勿論見慣れた街並みではありますが、気持ち的にはとても新鮮ですよ」

「うん。じゃあトルネに案内してもらったらいいんじゃないかな?
 トルネも、今まで行きたかったけど、行けなかった場所とかないかな?」

「案内は出来ますよ。流石に監禁されていたわけではありませんからね。
 ですが、行きたかった場所ですか……。
 ちょっと直ぐには思い浮かびませんねぇ……」

「じゃあまずは救貧院に案内してよー。用事を先に済ませちゃって、後は適当に見て回りたいなー」

「そうだね、初めてきた場所だし、色々見て回りたいかな……?
 ここも城壁に登れるなら、街の外も見てみたいし……」

「はははっ! リーネはすっかり外の世界に夢中になったなぁ!
 私は特に希望はないぜ。成り行きで付いてきちまっただけだし、他の街ってだけで新鮮だからよ」

「俺はまぁ、みんなに付いていくしかないわけだし、任せるよ。
 強いて言うなら、なんか旨いもん食わせてもらえりゃ文句ねぇわ」


 いつものメンバーに加えて、マーサとタケルも加わってるから賑やかに感じるな。
 でもこれでも小規模パーティに分類されるんだろうな。
 26名居た銀の乙女が一般的な冒険団、狩猟団の規模らしいし。


「分かりました。それではまず救貧院に向かいますね。
 用事が済んだら、飲食店や商店を中心に案内しましょうか」


 トルネに続いてシャンダリアの街を歩く。

 ふむ。シャンダリアもリヴァーブ王国の1都市でしかないので、ベイクとさほど雰囲気は変わらないかな?
 ただなんとなく、最近の好景気に沸いているベイクと比べてしまうと活気がない気がする。

 それになんていうか、ちょっと荒れた感じがするな。
 建物の損傷も目立つし、洗浄魔法の普及しているこの世界にしては、ちょっと清潔感が足りない。


 予定を変更し、先に商店に寄って、ストレージいっぱいに食糧を買い込む。

 ハロイツァに対する完全な偏見なんだけどさ。ここの救貧院の扱い、悪そうな気がして仕方ない。
 もしも食料が足りていなければ、寄付よりも食い物だろう。

 買い物を終えて、改めて救貧院に案内してもらう。


「おやおやおや! トルネ様じゃありませんかっ!
 最近見かけなくなりましたので、少し心配していたんですよ。お元気そうで何よりです」

「はい。ご心配おかけしましたが、見ての通り元気でやってますよ。
 院長もお変わりない様子で何よりです」


 救貧院の管理をしているのは、獅子の亜人の中年男性だった。
 う~ん、多分だけど、オーサンよりも年上かなぁ?

 しかし、獅子の血を引く人が救貧院の管理責任者ってのは意外だ。


 寄付の話と食料の提供を申し出ると、院長と呼ばれた男は大喜びで申し出を受け入れてくれた。


「いやいや、本当に助かりますよ……! はっきり言って、うちの経営は楽じゃないですからね。
 ハロイツァ様は統治に興味を示されませんでしたし、カルネジア家は戦えない者には容赦がないですからね。うちの待遇はあまり良くないんです」


 買い込んだ食料を食糧倉庫に放出し、白金貨5枚を寄付。
 ついでにタケル以外の全員で、救貧院全体に洗浄をかけて回った。
 
 老朽化は激しいけれど、ピカピカになった食堂で、持ち込んだ食料を瞬く間に食べきった子供達にも洗浄をかけて回る。
 ……正確な数は数えちゃいないが、どう見てもベイクよりも人数が多いな。建物の規模は小さいってのに。
 ロンメレの件が片付いたら、ここも少し見て回ったほうが良さそうだ。

 院長と子供達には凄く引き止められたが、用事があることと再訪を約束することで、何とか解放してもらった。
 子供達のパワーってのは凄いよ。常にアクセル全開だもんなぁ。


 救貧院を出ると、すぐ近くにはスキル神殿がある。
 んー、俺は何も取れないけど、タケルは祝福の儀を受けるのも悪くないかもな。


「タケル。そこのでかい建物がスキル神殿なんだけどよ。
 もし祝福の儀を受けたいってんなら、代金は立て替えてもいいけど、どうするよ?」

「……ん~、やめておくよ。それは自分で金を稼いで、いつか自力で受けようと思う。
 カンパニーには参加するつもりだけどよ。あくまで異風の旋律とは別の、俺だけの冒険って奴を楽しみたいと思ってんだ。
 姫プレイみたいなことばっかりするわけにはいかねぇぜ!」

「何が悲しくてお前なんかに貢がなきゃいけねぇんだよ?
 まぁ了解したよ。その考え方は俺も嫌いじゃない」


 なんとなく、タケルとはプレイスタイルが似てる気がするんだよなぁ。
 あまり世話を焼かれすぎると楽しめなくなっちゃうタイプのプレイヤーというか。


 飲食店を中心に見て回り、買い食いしながらシャンダリアの街を歩く。
 あまり目を引くような物は無かったけれど、こうやってゆったりとした時間をみんなと過ごすのは悪くないな。

 そう考えると、やっぱり探索しすぎかねぇ?
 もうちょっと生活にゆとりがあってもいいかも知れない。


 タイデリア家との接触がないので、今夜の宿はどうしようかなと相談していると、複合センサーには引っかからない気配を感じた。
 これに気付けたのは間違いなく、五感強化のおかげだろうな。


「まさか気付かれるとは思いませんでしたよ。短期間でどこまで腕を上げるつもりなんですか?」

「厄介事さえ起きなければ、変に腕を磨くつもりはないんだけどね。
 今日はもう接触して来ないかと思ったよ」


 振り返ると見慣れた蛇顔。タイデリア家のスカーさんが立っていた。


「先ほど報告を受けました。異風の旋律が協力してくれるのはありがたいですよ。
 ではちょっと場所を変えて話をしましょうか。今回は馬車がなくて、少々申し訳ないのですけどね」


 さて、居場所も判明済みなわけだし、一気に解決までいきたいところだな。

 問題は相手の残存戦力がどの程度あるかだよなぁ。
 チート持ちが複数居るとかマジ勘弁して欲しいんだが、どうなることやら。
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