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8章 異風の旋律
298 ロンメノ襲撃作戦
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「しかし、報告の内容にはどん引きしましたよ。神殺しおめでとうございます」
「はは、スカーさんも気安くなってきてくれたね。そのほうが嬉しいよ」
連れて来られたのは、少し広めの2階建て住宅だった。
なんでもハロイツァが街の管理に殆ど興味を持たなかったせいで、この街の景気は悪くなり、空き物件が大量にあるらしい。
シャンダリアの活動拠点として、タイデリア家が購入した物件だそうな。
「それで、調査の進捗なのですが。屋敷に出入りする人間はほぼ把握できています。
戦力としては3~5等級冒険者が50名ほど出入りしており、常に30名以上は屋敷にいるようですね。
それと明らかに戦える動きをしていない者の出入りが激しいですね。こちらは恐らく商人や、あまり身分の高くない貴族家のようです。
カルネジア家との婚姻関係から逆引き出来ましたからね。身元の調査は非常に容易でした」
ふむふむ。聞いたとおりの戦力であれば、タイデリア家だけで制圧できそうな戦力ではあるな。
「それにトルネさんが合流してくれたのは、非常に助かります。
敷地内、屋敷内の詳細な構造が事前に分かるなんて、この襲撃作戦はもう成功したも同然でしょう。通常であれば」
「……異邦人は見分けるの難しいもんねぇ」
「ええ、流石に雇われている者や、天涯孤独の者の身元の照会は困難でして。恐らくこちらの人間だとは思うのですが、確証がないのですよ。
一見して全く戦えそうもない相手が、実は凄まじい戦闘力を秘めているかも知れない……。
それが、異邦人ですからね」
ロンメノの性格上、潜伏場所に異邦人を置いてないってのは考えにくいんだよな。
ま、レンジとかいう異邦人の脱落は想定外のはずだけど。
「スカーさん。以前調査していた異邦人誘拐事件。帰還が確認されていない冒険者の数って、正確に分かったりしない?」
「それなら、未だに所在が不明な者が7名。更にその中で身元が分からなかったのが5名、ですね。
タケルさんとレンジという異邦人を除けば、身元不明なのは3名ということになります」
「なら3名ほど異邦人が居ると考えるべきか……。
ちなみにリヴァーブ王国では、身元が分からない遺体や、行方不明者が誰にも気付かれないこととかって、日常的に起こりうる状況かな?」
「起こってると思いますよ。つい先日も、ミルズレンダで大規模な失踪事件が起きたようですしね?
身分証があれば身元の照会も容易なんですが、例えばパーティが全滅してしまったり、1人で活動する冒険者だったりすると、死んでも気付かれないということは、王国中で日常的に起こっていると思いますよ」
おお、ミルズレンダってのは怖いところだな。絶対に近付かないようにしよう。
「なるほどね。最悪の想定は、戦闘向けチート能力者が3人いることだけど、必ずしもチート能力者が3名いるわけではない、って分かっただけでも気が楽だ」
せめて異邦人の総数が分かってればなー。
ヴェルトーガに送られてきたのはハルを含めて8人だったし、俺たちが把握出来ていない異邦人がいる可能性は否定できないところではある。
でも逆に考えて、送られてきてる異邦人が全員生き残ってるとも言えない訳だし。もうこれ以上は考えるだけ時間の無駄か。
「ふむ。じゃあ最悪の想定として、俺たちが存在を掴みきれてない異邦人が、あと5名は潜伏してると仮定しようか。
この想定で、作戦は任せちゃっていいのかな? 俺たちは素人でしかないし。
スカーさん、というかタイデリア家から俺達に、何か要望や注意点とかあれば教えて欲しいんだけど」
「要望ですか……。では、そうですね、出来れば犯人たちは生け捕りにして頂けると、事後処理がとても楽になります。
ただし皆さんを危険に晒してまでお願いしたいことではありませんので、状況的に可能であれば、程度に考えて頂ければと思います」
「生け捕り希望、ただし無理して優先すべきことではないってね。了解。
じゃあ後は作戦の決行をいつにするか、かな」
「え? いやいやトーマさん、何を仰ってるんですか」
ん? 俺の言葉が意外だったのか、スカーさんは珍しく驚いている。
「作戦の決行、旧カルネジア邸への襲撃は、今すぐ行うつもりですよ?」
「えっ!? 俺たちさっきシャンダリアに着いたばっかで、街の地理すら把握してないんだけど?
それにこんな明るいうちから、元とはいえ貴族邸に襲撃なんか仕掛けて、問題になるんじゃ?」
「いえ。どれも問題ありませんよ。
まず1つ。トーマさんたちにお願いしたいのは、異邦人が出てきた場合の対応のみです。異邦人さえいなければ、タイデリア家の戦力でも、なにも問題なく制圧できる程度の戦力ですからね。
2つ。どうせお互いに殆どの人間が、暗視を使えるでしょうからね。闇夜に紛れる意味は薄いでしょう。
3つ。この襲撃が問題になる場合は、ロンメノたちを取り逃がしてしまった場合のみです。
彼らは今回、リヴァーブ王国を滅亡させる一歩手前まで仕掛けてしまったわけですからね。タケルさんのスキルと、タイデリア家の調査だけでも、問題なく犯罪者に落せます。誰に咎められる謂れも御座いません。
というかですね。異邦人の存在さえなければ、とっくに制圧できている話だったんですよね。異邦人への対応というただ1点で、私たちは動けなかったんですよ。
異邦人への対応を異風の旋律の皆さんにお願いできるのであれば、これ以上時間をかける意味もないのです」
あ、あちゃ~……。スカーさん、微妙に怒ってる……?
どう見ても自分たちだけで制圧出来る案件を、異邦人の可能性だけで足止めを食らっていたのは、かなりストレスを感じていたのかもしれない。
「ってことで、これからいきなりトルネの実家を襲撃する運びになったみたい。
タケルとマーサは、リーネと常に一緒に行動してくれ。ふわわとつららも、引き続きマーサにくっついててくれ。
あとは必要な準備とかあるか? チート能力者と戦う心の準備とかも必要だぞ?」
「私の実家って言うのやめてもらえませんかねぇ!? あそこに良い思い出、ひとっつもないんですからっ!」
「戦闘できる準備は整ってるし、すぐでも行けるよ。
異邦人相手を相手取るときは、事前に対策を立てるのも難しいし」
「だねー。むしろさっさと終わらせて、今日はベイクでゆっくり寝たいっ!」
「全くもってリーンに同感だぜ! お前らの装備製作も進めなきゃなんねぇし、ランドビカミウリの素材も手に入ったし、早いとこ戻りてぇんだよ私はよぉ!」
「素材の運搬は、やっぱりトーマ頼みになっちゃうのかな……?
ゲートってとっても便利だけど、トーマの代わりを出来る人が居ないから、負担が集中しちゃうね……」
「うん。トーマには頑張ってもらうとして、私もそろそろゆっくり休みたいし、早期解決に1票かな」
「……ああ、俺だって、俺を陥れやがった奴の顔を、早く拝んでみてぇからよぉ。
守られるばかりで申し訳ねぇが、すぐにでも始めてほしいと思ってるぜ……!」
やれやれ、息つく間もないな。
そりゃあ早期解決に越した事はないけどさ。ほんと俺らってバタバタしてるよなぁ。
多分ロンメノを捕まえたとしても、当分はバタバタしちゃうんだろうし、な……。
「はは、スカーさんも気安くなってきてくれたね。そのほうが嬉しいよ」
連れて来られたのは、少し広めの2階建て住宅だった。
なんでもハロイツァが街の管理に殆ど興味を持たなかったせいで、この街の景気は悪くなり、空き物件が大量にあるらしい。
シャンダリアの活動拠点として、タイデリア家が購入した物件だそうな。
「それで、調査の進捗なのですが。屋敷に出入りする人間はほぼ把握できています。
戦力としては3~5等級冒険者が50名ほど出入りしており、常に30名以上は屋敷にいるようですね。
それと明らかに戦える動きをしていない者の出入りが激しいですね。こちらは恐らく商人や、あまり身分の高くない貴族家のようです。
カルネジア家との婚姻関係から逆引き出来ましたからね。身元の調査は非常に容易でした」
ふむふむ。聞いたとおりの戦力であれば、タイデリア家だけで制圧できそうな戦力ではあるな。
「それにトルネさんが合流してくれたのは、非常に助かります。
敷地内、屋敷内の詳細な構造が事前に分かるなんて、この襲撃作戦はもう成功したも同然でしょう。通常であれば」
「……異邦人は見分けるの難しいもんねぇ」
「ええ、流石に雇われている者や、天涯孤独の者の身元の照会は困難でして。恐らくこちらの人間だとは思うのですが、確証がないのですよ。
一見して全く戦えそうもない相手が、実は凄まじい戦闘力を秘めているかも知れない……。
それが、異邦人ですからね」
ロンメノの性格上、潜伏場所に異邦人を置いてないってのは考えにくいんだよな。
ま、レンジとかいう異邦人の脱落は想定外のはずだけど。
「スカーさん。以前調査していた異邦人誘拐事件。帰還が確認されていない冒険者の数って、正確に分かったりしない?」
「それなら、未だに所在が不明な者が7名。更にその中で身元が分からなかったのが5名、ですね。
タケルさんとレンジという異邦人を除けば、身元不明なのは3名ということになります」
「なら3名ほど異邦人が居ると考えるべきか……。
ちなみにリヴァーブ王国では、身元が分からない遺体や、行方不明者が誰にも気付かれないこととかって、日常的に起こりうる状況かな?」
「起こってると思いますよ。つい先日も、ミルズレンダで大規模な失踪事件が起きたようですしね?
身分証があれば身元の照会も容易なんですが、例えばパーティが全滅してしまったり、1人で活動する冒険者だったりすると、死んでも気付かれないということは、王国中で日常的に起こっていると思いますよ」
おお、ミルズレンダってのは怖いところだな。絶対に近付かないようにしよう。
「なるほどね。最悪の想定は、戦闘向けチート能力者が3人いることだけど、必ずしもチート能力者が3名いるわけではない、って分かっただけでも気が楽だ」
せめて異邦人の総数が分かってればなー。
ヴェルトーガに送られてきたのはハルを含めて8人だったし、俺たちが把握出来ていない異邦人がいる可能性は否定できないところではある。
でも逆に考えて、送られてきてる異邦人が全員生き残ってるとも言えない訳だし。もうこれ以上は考えるだけ時間の無駄か。
「ふむ。じゃあ最悪の想定として、俺たちが存在を掴みきれてない異邦人が、あと5名は潜伏してると仮定しようか。
この想定で、作戦は任せちゃっていいのかな? 俺たちは素人でしかないし。
スカーさん、というかタイデリア家から俺達に、何か要望や注意点とかあれば教えて欲しいんだけど」
「要望ですか……。では、そうですね、出来れば犯人たちは生け捕りにして頂けると、事後処理がとても楽になります。
ただし皆さんを危険に晒してまでお願いしたいことではありませんので、状況的に可能であれば、程度に考えて頂ければと思います」
「生け捕り希望、ただし無理して優先すべきことではないってね。了解。
じゃあ後は作戦の決行をいつにするか、かな」
「え? いやいやトーマさん、何を仰ってるんですか」
ん? 俺の言葉が意外だったのか、スカーさんは珍しく驚いている。
「作戦の決行、旧カルネジア邸への襲撃は、今すぐ行うつもりですよ?」
「えっ!? 俺たちさっきシャンダリアに着いたばっかで、街の地理すら把握してないんだけど?
それにこんな明るいうちから、元とはいえ貴族邸に襲撃なんか仕掛けて、問題になるんじゃ?」
「いえ。どれも問題ありませんよ。
まず1つ。トーマさんたちにお願いしたいのは、異邦人が出てきた場合の対応のみです。異邦人さえいなければ、タイデリア家の戦力でも、なにも問題なく制圧できる程度の戦力ですからね。
2つ。どうせお互いに殆どの人間が、暗視を使えるでしょうからね。闇夜に紛れる意味は薄いでしょう。
3つ。この襲撃が問題になる場合は、ロンメノたちを取り逃がしてしまった場合のみです。
彼らは今回、リヴァーブ王国を滅亡させる一歩手前まで仕掛けてしまったわけですからね。タケルさんのスキルと、タイデリア家の調査だけでも、問題なく犯罪者に落せます。誰に咎められる謂れも御座いません。
というかですね。異邦人の存在さえなければ、とっくに制圧できている話だったんですよね。異邦人への対応というただ1点で、私たちは動けなかったんですよ。
異邦人への対応を異風の旋律の皆さんにお願いできるのであれば、これ以上時間をかける意味もないのです」
あ、あちゃ~……。スカーさん、微妙に怒ってる……?
どう見ても自分たちだけで制圧出来る案件を、異邦人の可能性だけで足止めを食らっていたのは、かなりストレスを感じていたのかもしれない。
「ってことで、これからいきなりトルネの実家を襲撃する運びになったみたい。
タケルとマーサは、リーネと常に一緒に行動してくれ。ふわわとつららも、引き続きマーサにくっついててくれ。
あとは必要な準備とかあるか? チート能力者と戦う心の準備とかも必要だぞ?」
「私の実家って言うのやめてもらえませんかねぇ!? あそこに良い思い出、ひとっつもないんですからっ!」
「戦闘できる準備は整ってるし、すぐでも行けるよ。
異邦人相手を相手取るときは、事前に対策を立てるのも難しいし」
「だねー。むしろさっさと終わらせて、今日はベイクでゆっくり寝たいっ!」
「全くもってリーンに同感だぜ! お前らの装備製作も進めなきゃなんねぇし、ランドビカミウリの素材も手に入ったし、早いとこ戻りてぇんだよ私はよぉ!」
「素材の運搬は、やっぱりトーマ頼みになっちゃうのかな……?
ゲートってとっても便利だけど、トーマの代わりを出来る人が居ないから、負担が集中しちゃうね……」
「うん。トーマには頑張ってもらうとして、私もそろそろゆっくり休みたいし、早期解決に1票かな」
「……ああ、俺だって、俺を陥れやがった奴の顔を、早く拝んでみてぇからよぉ。
守られるばかりで申し訳ねぇが、すぐにでも始めてほしいと思ってるぜ……!」
やれやれ、息つく間もないな。
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