異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

303 現実

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「あ~ようやく帰ってこれたぁ!」


 ゲートを使用して、ベイクに戻ってきた。

 ロンメノたちへの取調べはタイデリア家が引き続き行ってくれるし、素人の俺たちがいつまでも居座っては邪魔になるだけだからな。
 明日、タケル、アサヒ、カンナの3人を連れて、ディオーヌ様と会うことになったけどね。

 3人はロンメノに騙されたということで、今回は処分を考えていないらしいが、ロンメノが異邦人をどのように扱っていたのかを確認するためにも、詳しく話を聞きたいのだそうだ。


「っていうか、トーマってマジで空間魔法が使えるんすねぇ……。
 空間魔法使いはめちゃくちゃレアだって聞いてたんすけど」

「……それに、治療魔法も使ってたよね? 私、初めて見たよ。治療魔法」

「俺はチートを持たなかった分、真面目に冒険者やってたからね。
 お前らも冒険者を続けるなら、貰った能力に頼りきらずに真面目に訓練して強くなるといいよ」


 まずは自宅に向かわず雑貨屋と服屋に寄って、タケルの分を含めて、着替えや雑貨などを買い揃える。

 タケルの荷物はどうなっているのか分からないし、ミルズレンダには近づけないので、新たに買い揃えるしかない。
 アサヒとカンナの荷物も特に貴重品は無かったらしいが、タイデリア家に屋敷ごと接収されてしまったので、どの程度一緒に暮らすかは分からないけど、ひと通り揃える事にした。


「あらぁ、今日はみんな早かったのねぇ? まだ日没前よぉ?」


 自宅に戻ると、夕食の準備をしているクリリクさんが出迎えてくれた。
 せっかくクリリクさんを雇ったっていうのに、なかなか早く帰れなくて、あんまり会えてなかったよなぁ。


「今日で今回の騒動は終息したと思うよ。時間も中途半端だし、新しい住人もいるから、早めに戻ってきたんだよ。
 タケルに追加して、更に女性2人くらい増えても大丈夫だよね?」


 クリリクさんと話している間に、ふわわとつららがマーサの肩から飛び降りて、オードルとじゃれあっている。
 ああ、この3匹の絡み、久しぶりに見たわぁ。


「問題ないと思うわよぉ。でもこれから旋律の運び手のみんなが夕食を取りに来る頃だと思うから、1階はちょっと騒がしくなっちゃうかもねぇ?」


 ボールクローグ防衛戦に参加した奴等は、カンパニー資金からゲート使用料を支払って、全員戻ってきているようだ。
 報酬とか要らないのかとも思ったけど、正式な依頼じゃなかったしなぁ。
 あいつら金銭的にも余裕があるし。

 2階に上がり、アサヒとカンナ、タケルの部屋を改めて決める。アサヒとカンナは同室を希望した。

 荷物を置いたら、2階で一番広い俺の寝室に集まって、今後の事を話し合う。


 タケルも、アサヒとカンナのペアも、異風の旋律には加入しないが、旋律の運び手には参加することになった。

 元々3人とも、思ったよりも楽しく異世界生活を満喫していたそうだが、今回ロンメノに一方的に利用されてしまったことで、リヴァーブ王国民に強い不信感を抱いてしまったらしい。

 3人でパーティを組んで、堅実に強くなって、異世界を改めて楽しみたいのだそうだ。
 ベイクのダンジョンは初心者に優しい場所だからな。3人いっしょなら心配ないだろう。


「私とカンナは、普通にファミレスで駄弁ってたら、店に車が突っ込んできて死んじゃったんすよねぇ。
 そんでまぁ、氷炎の魔女コンビとかかっこいいかなって、この能力を貰ったんすよ」

「……でも、思ったより自由度が低くて、期待してたほど使えないのよね。攻撃魔法は魔力の消費が大きいし、冒険者として活動していくのには、あまり役立てられなかったの」

「いやいや! 俺の能力なんかマジで地雷だからな? 2人の能力がめっちゃ羨ましいっつの!
 ま、俺たちはこっから仕切り直しだよな。ホント、誰も死ななくて良かったぜ……」

「そうだな。まずは魔装術と身体能力強化を取得できれば、結構変わってくるかもな。
 それと魔力は訓練するほど増えていくからさ。なるべく日常的に使用する事をオススメするよ。
 魔力切れの不快感はキツいけど、確実に魔力量増えていくからさ」


 3人は今までも冒険者として活動していたんだから、すぐに軌道に乗るだろう。
 タケルはもうSP堪ってるし、2人のSPと金貨6枚稼げれば、順調に進んでいけそうだよな。


「…………。
 トーマたちには、いくら感謝しても足りねぇよ。みんなのおかげで、俺は大量殺人を犯さずに済んだんだ。
 誰も犠牲にならなかったから、これからの事を前向きに考えられるんだと思う。
 本当に、本当にありがとう」

「……そうっすね。改めて思うと、私はどこか、この世界を舐めてたかもしれないっす。
 この世界は現実で、生きている人が生活していて、様々な思惑があるっていうのに、自分が騙される可能性なんて、考えたこともなかったんすよ……」

「……私も、どこか浮かれていたところはあったかも知れないわ。
 どこか、この世界はフィクションであって、私達に都合の悪いことなんて起きないって、何の根拠も無く思い込んでた気がする」


 正直言って耳が痛い話だ。
 俺だってこの世界に来て浮かれていた覚えはあるし、未だにゲーム的な考え方を捨てきれないからな。

 俺がこの世界に馴染めたのは、チートを貰えなかった事と、ベイクの人たちが良い人たちばかりだったというのが大きいだろう。

 そしてこの3人が利用されたことだけど、ヴェルトーガでの1件が関わっているのは間違いないんだから、俺にだって責任がないわけじゃないよな。
 それを黙っておくのはフェアじゃないか。


「タケルに礼を言われる筋じゃないさ。
 俺たちはヴェルトーガって所で、他の異邦人が起こした騒動と出くわしてな。その時に、異邦人の危険性や特徴を、リヴァーブ王国の上層部に報告した経緯があるんだ。
 だから今回3人が狙われた事には、俺にも少なからず責任があると思ってる。
 3人に迷惑をかけるつもりはなかったけど、結果的に利用されることになってしまった。
 俺こそ、本当に申し訳なかった」


 3人に向かって頭を下げる。
 この3人は、自分たちだけでこの世界の生活を楽しんでいたんだ。
 それを邪魔してしまったのは、俺のほうだから。


「トーマが謝ることじゃねぇだろ。とりあえず頭上げてくれるか。話し辛ぇからさ」


 タケルに促されたので頭を上げて、3人を見る。


「正直な話、複雑に思う気持ちはあるだけどさ。
 自分の能力と、今回起こった騒動を考えると、トーマのせいで俺が利用されたっていうよりは、トーマのおかげで利用されずに済んだんだって気持ちの方がデケェかな……」

「私も同じっすかね。私はレンジさんが負けるなんて、全く想像してなかったっすから。
 異風の旋律さんが居なかったら、自覚もなく大量殺人犯のテロリストに与していた可能性も低くないっす。
 私が過ちを犯す前に助けてくれて、感謝してるっすよ」

「お腹を蹴られた事については思うところがあるけどね。
 レンジさんやタケルの能力を考えたら、トーマが取った行動を責めることは出来ないわ。
 それに、今後も異邦人が増えるわけでしょう?
 異邦人と敵対したことがなかったから考えなかったけど、今後はタケルやレンジさんのような能力者と敵対したり、欲望のままに能力を使用する人も現れるかもしれない。
 そう考えると、王国側への協力は絶対に必要だわ」

「……他でもない、お前ら3人がそう言ってくれるなら、俺も少し楽になるよ」


 自分が利用されたという事実は、俺が思っている以上に重い出来事だろう。
 それでも3人とも、今後の異世界生活に前向きになってくれたようで、本当に良かったと思う。

 でも、今回起こった事を考えると、異邦人に対して後手に回るのは危険すぎるよな。
 もっと積極的に異邦人への対策を取らないと、リヴァーブ王国が滅亡してしまう。

 まだまだ忙しい日が続きそうだわ。
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